理学療法学
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31 巻, 1 号
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報告
  • 吉田 英樹, 近藤 健男, 中里 信和, 菅野 彰剛, 出江 紳一
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,視床出血の急性期から体性感覚誘発磁界(以下,SEF)を測定し,急性期SEF所見と早期運動麻痺回復との関連性について検討することであった。対象は視床出血例9例であり,発症後72時間以内(以下,急性期)に左右の下口唇,母指,正中神経,尺骨神経,後脛骨神経への電気刺激にてSEFを測定した。神経学的検査は,急性期と発症後1ヵ月の2回実施し,運動麻痺は上田の12グレード評価法(上肢,手指,下肢)にて評価し,感覚障害は麻痺側の2点識別覚,触覚,関節位置覚を評価した。病巣側大脳半球からの正中神経,尺骨神経,後脛骨神経の急性期SEF所見で反応を認めた症例群では,発症後1ヵ月での上肢,手指,下肢の運動麻痺で良好な回復が認められたが,反応を認めなかった症例群では,発症後1ヵ月での上肢,手指,下肢の運動麻痺で中等度もしくは重度障害が認められた。これと同様の傾向は,発症後1ヵ月での感覚障害との間にも認められた。以上から,視床出血における病巣側大脳半球からの正中神経,尺骨神経,後脛骨神経の急性期SEF所見は,体性感覚機能だけでなく皮質脊髄路機能も評価可能であり,発症後1ヵ月程度での運動麻痺回復の予後予測指標と成り得る可能性が示唆された。
  • 松木 儀浩, 大西 秀明, 八木 了, 伊橋 光二, 半田 康延, 池田 知純
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維の機能的な違いを明らかにすることである。対象は健常男性7名であり,中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維に双極ワイヤー電極を刺入して筋電図を導出した。導出された筋電図から中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維の筋電図積分値(Integrated Electromyogram: IEMG)を算出し,(1)各筋のIEMGおよび股関節外転最大張力と股関節屈曲位に内旋・外旋位を組み合わせた肢位との関係と(2)各筋のIEMGと外転張力との関係を解析した。股関節外転最大張力および各筋から導出されたIEMGと股関節回旋肢位との関係をみると,股関節外転最大張力は股関節外旋位で最も弱く(p < 0.01),中段筋前部・中部・後部線維のIEMGも外旋位で有意に低い値を示した(p < 0.01)。また,股関節外転最大張力および各筋から導出されたIEMGと股関節屈曲肢位との関係をみると,股関節屈曲角度が増加するにともない股関節外転最大張力は低下し(p < 0.01),股関節外転運動時における中殿筋前部線維の筋活動量も低下することが示された(p < 0.01)。股関節外転張力と首筋の筋活動との関係をみると,股関節外転張力の増加にともない,中殿筋の各線維および大腿筋膜張筋の筋活動は増大したが,大殿筋上部線維の筋活動はほぼ一定であった。これらの結果は,股関節外転筋である中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維の機能的な違いの一部を示していると考えられる。
  • 田中 貴子, 北川 知佳, 中ノ瀬 八重, 田所 杏平, 千佳 秀明
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸器疾患患者に対する呼吸理学療法の長期効果について検討する目的で,一定期間の集中的な呼吸理学療法終了後,2〜3回/週の呼吸理学療法を3年間継続可能であった慢性呼吸器疾患患者20例の肺機能,6分間歩行距離,ADLスコアの経年的変化と疾患・重程度別で年間あたりの変化量を比較検討した。その結果,経年的変化は1秒率のみ有意に低下していたものの,他の肺機能検査項目は維持されていた。また年間変化量は疾患および重症度の違いによる有意な差は認められなかった。このことから呼吸理学療法の継続は,疾患,重症度に関係なく肺機能,6分間歩行距離,ADLを維持することができ長期的効果があるものと示唆された。集中的な呼吸理学療法終了後もその効果を維持するためには呼吸理学療法の継続が重要であると思われる。
  • 丸田 和夫
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,椅子のシート角度が立ち上がり動作時の体幹前傾に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は18〜29(平均年齢20.8 ± 2.9)歳の健常若年者52名(男26,女26)である。椅子のシート角度は後傾10度,後傾5度,水平0度,前傾5度および前傾10度の5条件とした。立ち上がり動作時の体幹前傾角度,下腿角度および立ち上がり動作時間を計測した。計測と解析には,2次元動画解析システムを用いた。その結果,体幹前傾角度は水平0度に比べて後傾位で有意に増大,前傾位で有意に減少した。下腿角度は水平0度に比べて後傾位で有意に減少,前傾位で有意に増大した。立ち上がり動作時間は水平0度に比べて後傾位で有意に延長した。体幹前傾角度と下腿角度とでは有意の負の相関,体幹前傾角度と立ち上がり動作時間とでは有意の正の相関が認められた。シート角度の後傾によって,立ち上がり動作時に体幹前傾角度が増大することが明らかとなった。シート角度の後傾がもたらす体幹前傾角度の増大は高齢者や片麻痺者の車いすからベッドや洋式便器への移乗などにおいて,立ち上がり動作を必要とする日常生活活動を制限する可能性があると推測された。そのような困難性を解消するためには,シート角度を動作目的に応じて調整する必要性のあることが示唆された。
  • 村岡 慶裕, 鈴木 里砂, 島岡 秀奉, 藤原 俊之, 石原 勉, 内田 成男
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    脳卒中患者の麻痺肢の運動機能改善を目的として,随意運動介助型電気刺激装置(EMG-TES)を開発し,従来の治療的電気刺激(Passive-TES: p-TES)と臨床治療効果を比較した。EMG-TESは,一対の刺激電極から刺激と同時に随意筋電を検出できる装置であり,検出した随意筋電に比例した強度の電気刺激を与える。また,随意筋電の検出されていない時は,閥値下刺激を与え,随意収縮を促通する。脳卒中患者10名(SIAS foot pat score 2-3の症例)を対象に,D-TES群5名とEMG-TES群5名に無作為に分け,足関節背面運動の治療を15分間行った。その結果,D-TES群と比較して,EMG-TES群で有意な背面力の増加と自動ROM範囲の増加傾向を認めた。
  • ―軟部組織(皮膚・筋)と関節構成体由来の制限因子について―
    岡本 眞須美, 沖田 実, 加須屋 茜, 中野 治郎, 鍬塚 幸子, 西田 まどか, 友利 幸之介, 吉村 俊朗
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,関節可動域(ROM)の制限因子を皮膚と筋で構成される軟部組織とそれ以外の関節構成体に分け,これらが不動期間の延長に伴ってどう変化するのかを検討した。Wistar系雄ラット50匹を25匹ずつ実験群と対照群に分け,実験群は両側足関節を最大底面位で1,2,4,8,12週間(各5匹)ギプス固定した。そして,ギプス除去直後と皮膚切開後,下腿三頭筋切除後の足関節背面角度を測定し,ROM制限が各々の実験処置でどの程度改善するのかを割合で求めた。その結果,いずれの不動期間ともROM制限は皮膚切開によって10%程度改善するが,下腿三頭筋切除では不動1週後で80.5%,2週後で63.8%,4週後で54.7%,8週後で35.5%,12週後で25.4%改善した。したがって,ROMの制限因子としては,1ヶ月程度の不動期間では軟部組織の変化に由来した制限が優位で,不動期間が2〜3ヶ月におよぶと関節構成体の変化に由来した制限が優位になることが示唆された。
2002年度研究助成論文
指定研究論文
  • 前野 里恵, 井上 早苗, 足立 徹也
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は転倒による大腿骨頚部骨折症例に対して,退院後の生活状況,歩行能力やQOLについて郵送アンケート調査したものである。89/170例から回答が得られ(回収率52.4%),女性76例男性13例,平均年齢77.2 ± 8.7歳であった。骨折前の生活に「戻っていない」21%,「股関節痛を感じる」50%,不安感は「多少」「かなり」を合わせて45%であった。再転倒は32%に発生し,環境整備は段差解消と手ずり設置であった。移動能力は退院時に低下するが,1年後は徐々に向上していた。WHO/QOL26は一般高齢者と比べて有意に低く,特に車椅子群が低かった。また,61%で機能訓練が継続されていた。退院後のQOLの決定要因として受傷前生活への復帰状況および外出が重要であったこと,退院時介助歩行群以下であっても退院後にも歩行能力が向上する傾向が確認されたことから,退院後のQOL向上には継続した歩行訓練が必要であることが示唆された。
  • ―印旛村における疫学調査から―
    縄井 清志, 田辺 勇人, 土屋 美智子, 菅沼 一男, 南 和文, 二見 俊郎
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,介護サービスにおける福祉用具使用時の事故を調査して現状を把握することと,事故防止に対する効果的介入を検討することである。対象は,人口約1万人(高齢者率18.9%)の千葉県印旛村をサービス領域にしている介護支援事業者116施設であった。方法は,質問紙(ひやり・はっと報告)を送付し,郵送にて回収した。また,介入の検討方法は,同じ対象者に対して研修会を行い研修前後にアンケート調査を行った。結果,約10ヶ月で29件の事故が発生しており,その原因の多くはヒューマンエラーであった。同じ対象者に本調査結果を踏まえた安全教育研修会を行ったところ,安全への意識を高めることはできたが,約4割は不満足を表明していることから,安全教育では用具ごとの役割や場面別に具体的な安全対策を示す必要が示唆された。
助成研究論文
  • 藤野 英己, 武田 功, 禰屋 俊昭, 中 徹, 仁木 恵子
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,ラットを用いて後肢懸垂モデルおよび関節ギプス固定モデルの二種の骨格筋萎縮モデルを作成し、それぞれの異なる萎縮モデルでの骨格筋における力学特性を調べると共に,筋の伸張運動に対する筋の力学特性の変化を検討する目的で,次のような実験を行った。1)摘出したラットヒラメ筋標本を用い,筋を伸長した時の張力の変化(他動張力)を測定した。2)筋標本を伸長・弛緩を繰り返した後(持続的な他動伸張運動)の他動張力を測定した。3)筋標本を断裂が生じるまで伸長し続け,その時の張力変化を測定した。その結果,他動張力は二種モデルで異なった力学特性を示し,正常節と比較して,後肢懸垂モデルでは他動張力の低下,ギプス固定モデルでは増加することが明らかとなった。また,10分間の持続的な他動伸張運動によりギプス固定モデルの他動張力を減少させる効果が得られた。一方,筋断裂までの他動張力の変化を測定すると,筋の伸長に伴い他動張力は増加し,筋の断裂が生じる直前には急激な張力の上昇が確認できた。これらの結果から,個々の病態により,他動張力が低下,増加などの変化を示すことや筋の断裂時には急激な張力の増加が観察され,注意が必要なことが示唆された。また,他動張力が増加した病態では,持続的な他動運動を行うことで他動張力が回復することが明確になり,ラットヒラメ筋に対する他動運動の効果が示唆された。
  • 沖田 実, 中居 和代, 片岡 英樹, 豊田 紀香, 中野 治郎, 折口 智樹, 吉村 俊朗
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,温熱負荷ならびに温熱負荷と持続的筋伸張運動を併用した場合の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を明らかにすることである。実験動物は,7週齢のWistar系雄ラットで,1週間の後肢懸垂によってヒラメ筋に廃用性筋萎縮を惹起させるとともに,その過程で約42℃の温熱ならびに持続的筋伸張運動,両者を併用した方法を負荷し,筋湿重量とタイプI・II線維の筋線維直径の変化,Heat shock protein 70(Hsp70)の発現状況を検索した。温熱負荷によってHsp70の発現が増加し,タイプI・II線維とも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めた。そして,これはHsp70の作用によってタンパク質の合成低下と分解亢進が抑制されたことが影響していると考えられた。一方,持続的筋伸張運動でも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めたが,温熱負荷と併用した方法がより効果的であり,これはHsp70の作用と機械的伸張刺激の作用の相乗効果によるものと推察された。
  • 前田 貴司, 広田 桂介, 梅津 祐一, 志波 直人, 松尾 重明, 田川 善彦
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    低周波と中周波の電気刺激による筋収縮状態の違いについて,MRIを用いて検討した。対象は健常男性11名。方法は右大腿直筋,内外側広筋に対して低周波と中周波による電気刺激を行い,その直後にMRIを撮像した。また安静時も撮像した。MRI画像より大腿直筋,内外側広筋,中間広筋を同定しROIを設定した。ROIの値よりT2値を求め,安静時に対する各電気刺激後の増加率を求め,低周波と中周波の比較を行った。大腿直筋,内外側広筋の表層部と深層部の増加率は,2つの電気刺激とも表層部に比べ深層部は低下した。また,3つの筋の表層部と深層部の増加率は,2つの電気刺激で違いはなかった。中間広筋においても,2つの電気刺激で違いはなかった。刺激周波数を高くすることで,皮膚抵抗値が低下する。この点が中周波の通電時の皮膚不快感がないことと関係あると考えられた。電気刺激に対しては神経の間値が低く,筋の閾値が高いため電気刺激ではまず神経が反応する。この点が低周波と中周波で筋収縮状態に違いがなかった理由と考えられた。
  • 武村 啓住, 細 正博, 由久保 弘明, 松崎 太郎, 小島 聖, 渡邊 晶規, 立野 勝彦
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 76-85
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    関節固定後の拘縮の治療手段としてストレッチが関節構成体に及ぼす影響を観察する目的で研究を行った。対象は9週齢のWistar系雄ラット16匹(正常群,拘縮群,非治療群,治療群それぞれ4匹)を用いた。正常群は2週間通常飼育を行った。拘縮部は膝関節最大屈曲位で2週間ギプス固定して飼育した。非治療群は,拘縮作製後,ギプス除去し2週間通常飼育した。治療部では,拘縮作製後,ストレッチを2週間施行した。ラットは安楽死後,膝関節とハムストリングスを採取し,組織に対してヘマトキシリン・エオジン染色を行った。組織の観察は,滑膜組織,滑膜軟骨移行部,関節包後部,ハムストリングス中央部で行った。結果,拘縮部では滑膜細胞の萎縮と増殖,関節包の密性化,筋線維束間の狭小化が起こっていた。この変化が,治療群では正常群に近い状態へ回復傾向を示しており,非治療群では治療群ほどの回復は見られなかった。このことからストレッチは固定によって生じた関節拘縮の治療として有効な手段である事が示唆された。
  • 木藤 伸宏, 島澤 真一, 弓削 千文, 奥村 晃司, 菅川 祥枝, 吉用 聖加, 井原 秀俊, 三輪 恵, 神谷 秀樹, 岡田 恵也
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 1 号 p. 86-94
    発行日: 2004/02/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,3軸の加速度センサを用いて歩行時の下腿近位部に生じる加速度の計測を行い,腰OAから得られた加速度波形とそのパワースペクトルより健常例とは異なるパラメーターを同定し,その特徴を明らかにする事を目的とする。対象は健常群10名(過去に腰痛の経験がない),膝OA群9名(Kellgren & Lawrence分類 ; Grade IV)である。結果は,膝OAでは健常人と異なる加速度波形・速度波形が確認できた。また,周波数解析の結果,膝OAは健常例と異なる測方加速度パワースペクトルが認められた。膝OAの加速度波形の特徴は衝撃吸収メカニズムの破綻と膝関節安定メカニズムの欠如によって起こっていると推測した。周波数解析の結果からは,筋による下腿運動の制御が不十分であると推測した。加速度センサによる歩行時の脛骨運動の測定は,病態運動の把握と定量的評価,理学療法プログラム立案,治療法の効果判定などのスクリーニング検査として有用性が高く,他党的指標の一つになり得る。また,非侵襲的であり,コスト面からも十分に臨床応用が可能である。
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