理学療法学
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43 巻, 4 号
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研究論文(原著)
  • 中村 睦美, 木㔟 千代子, 山形 沙穂, 長谷川 恭一, 佃 麻人, 浅川 育世, 水上 昌文
    2016 年 43 巻 4 号 p. 283-292
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/04/19
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,人工膝関節置換術患者における主観的側面,背景因子を含む活動,参加に関与する諸要因の関係を明らかにすることである。【方法】人工膝関節置換術を行った118 名に対して,心身機能,活動,参加,主観的健康観,背景因子にあてはまる評価測定を行い,各測定項目の術前後の値を比較するとともに,これらの変数を用いて活動,参加に関与する諸要因の関係についてパス解析モデル構築を試みた。【結果】術前では下肢筋力とTimed up and go test は直接「活動」に,間接的に「参加」に影響を与え,術後は,術前の要因に加えて膝関節疼痛が精神的健康に影響を,精神的健康は「活動」に影響を与え,さらに,性別が「参加」に影響を与えることが示された。【結論】人工膝関節置換術患者に対しては,術後は下肢筋力や疼痛を改善するとともに精神的なケアやサポート,背景因子への考慮も必要であることが示唆された。
  • 楠本 泰士, 高木 健志, 津久井 洋平, 新田 收, 松田 雅弘, 松尾 篤
    2016 年 43 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/05/07
    ジャーナル フリー
    【目的】脳性麻痺児における粗大運動機能別の股関節筋解離術前後5 年間の股関節脱臼の変化を明らかにすること。【方法】対象は粗大運動能力分類システム(以下,GMFCS)レベルⅢ~Ⅴの脳性麻痺児33 名(38 ~159 ヵ月)とした。股関節のレントゲン画像を術前・術後1 年・術後3 年・術後5 年で調査し,反復測定二元配置分散分析および単純主効果検定にて検討した。【結果】すべての項目で術後主効果を認め,Sharp 角と臼蓋外側縁傾斜角では交互作用が確認された。GMFCS レベルⅢにて大腿骨頭の側方化の指標である骨頭-涙痕間距離は術後変化なく,Sharp 角は術前と比較して術後3 年・術後5 年で,術後1 年と比較して術後5 年で有意に値が小さかった。【考察】GMFCS レベルⅢ・Ⅳでは,大腿骨頭の側方化は変化しないが骨盤の被覆が改善することで,股関節脱臼が改善したことが示唆された。運動機能の違いが骨盤の臼蓋形成に影響する可能性が示唆された。
  • 高木 健志, 新田 收, 楠本 泰士, 西野 展正, 松尾 沙弥香, 若林 千聖, 津久井 洋平, 干野 遥
    2016 年 43 巻 4 号 p. 300-304
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/05/23
    ジャーナル フリー
    【目的】臨床経験上,腰痛をもつ脳性麻痺アテトーゼ型患者の疼痛の質には差が見られる。アテトーゼ型患者の腰痛に対し経皮的末梢神経電気刺激(以下,TENS)を行うが,どのような質の疼痛に鎮痛効果を及ぼすかは明らかでない。本研究の目的は,疼痛の質的評価法(以下,SF-MPQ-2)を用いて,疼痛の質とTENS の効果の関係を明らかにすることとした。【方法】脳性麻痺アテトーゼ型患者8名を対象とした。対象全員が,TENS と通電せず電極のみを貼付する偽TENS を受け,疼痛の変化をSF-MPQ-2 を用い評価した。SF-MPQ-2 の各スコアを従属変数,介入前後と介入方法を対応のある因子とした二元配置分散分析を行った。【結果】TENS の効果は,間欠的な痛みのみで,他の項目は介入前後で変化がないか,偽TENS の効果と変わらなかった。【結論】アテトーゼ型患者の腰痛に対しTENS を行うと,SF-MPQ-2 における間欠的な痛みに効果が得られる。
  • ─単盲検準ランダム化比較試験─
    山口 正貴, 高見沢 圭一, 原 慶宏, 後藤 美和, 横田 一彦, 芳賀 信彦
    2016 年 43 巻 4 号 p. 305-314
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    【目的】6 ヵ月以上持続している慢性の非特異的腰痛患者に対するMcKenzie 法(以下,M 群)とストレッチング(以下,S 群),その両方(以下,M+S 群)の介入効果について検討する。【方法】directional preference(DP)を認めた症例98名をM群31名,S群35名,M+S 群32名に分類し,週1 回の介入と4週間のセルフエクササイズを指導した。【結果】3 群とも介入前後でVAS,ROM,SF-36,JOABPEQ,Oswestry Disability Index(以下,ODI)の全項目で有意な改善を認めた。さらにROM はM+S 群>M 群・S 群,VAS(腰痛)とODI はS 群・M+S 群>M 群で有意差を認めた。【結論】3 群とも疼痛,身体機能,精神機能すべてに有効性を認めた。群間比較ではM+S 群>S 群>M 群の順に高い効果を認めた。
  • ─後方視的研究─
    松永 玄, 山口 智史, 鈴木 研, 近藤 国嗣, 大高 洋平
    2016 年 43 巻 4 号 p. 315-322
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/06/04
    ジャーナル フリー
    【目的】通所リハビリテーションを2 年間利用した脳卒中者の歩行能力と下肢筋力の変化を検討する。【方法】脳卒中者126 名(平均年齢64 歳)の利用開始時,利用後3,6,12,24 ヵ月の歩行能力と下肢筋力を,開始時の歩行速度によりHousehold 群(0.4 m/s 未満),Limited 群(0.4 m/s ~0.8 m/s),Full群(0.8 m/s 以上)に分類した。【結果】Household 群の歩行速度は,開始時と比較し,6 ヵ月以降で有意に向上し,麻痺側筋力は利用後12,24 ヵ月で有意な増加を認めた。Limited 群の歩行速度は,6 ヵ月以降で有意に向上し,麻痺側筋力は24 ヵ月で有意な増加を認めた。Full 群は有意な変化を認めなかった。【結語】2 年間の通所リハビリテーション利用により,生活期の脳卒中者においても歩行速度と下肢筋力は改善・維持することが示され,その傾向は開始時の歩行能力が低い群で特に得られることが示唆された。
症例研究
  • 岡前 暁生, 原田 和宏, 岡田 誠, 松下 和弘, 村岸 亜伊子, 和田 智弘, 和田 陽介, 浅川 康吉, 道免 和久
    2016 年 43 巻 4 号 p. 323-332
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,ショートステイ利用前後における要介護者のADL の変化と介護者の介護負担の変化に関連する要因,および自宅と施設における離床時間について検証することである。【方法】対象はショートステイを利用する要介護者50 名とその主介護者50 名とした。調査項目は要介護者のADLと介護者の介護負担とした。【結果】ショートステイ利用後に要介護者のADLは有意な改善が認められた。多重ロジスティック回帰分析の結果,介護者の介護負担の変化に関連する要因として,要介護度,介護者仕事の有無が有意な関連因子として抽出された。自宅とショートステイ利用中の離床時間には有意な差は認めなかった。【結論】ショートステイの利用により要介護者のADL は悪化よりむしろ改善することが示唆された。また,介護者の介護負担は,要介護者の要介護度が高く,仕事をしている介護者において不変であるか減少する可能性が示唆された。
実践報告
  • 村上 祐介, 藤井 勇佑, 時田 春樹
    2016 年 43 巻 4 号 p. 333-336
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/05/12
    ジャーナル フリー
    【目的】脳卒中治療専門病棟(Stroke Care Unit;以下,SCU)担当理学療法士の増員および実施回数の増加が入院中の機能的生活自立度(Functional Independence Measure ;以下,FIM)の改善に与える影響について検証した。【方法】当院に入院した脳卒中急性期患者で,理学療法士増員前に理学療法を実施した159 名(増員前群)と,理学療法士増員後に理学療法を実施した118 名(増員後群)を対象に理学療法開始までの期間と理学療法の平均単位数,FIM 利得の比較を行った。【結果】理学療法開始までの期間に有意な差は認めなかったが,理学療法の平均単位数とFIM 利得は増員後群において有意な改善を認めた。【結論】SCU 担当理学療法士を増員し,実施回数を増加させることは,FIM の改善要因のひとつになる可能性が考えられた。
  • 渡邊 亜紀, 川井 康平, 佐藤 浩二, 宮崎 吉孝, 伊藤 寿弘, 森 照明
    2016 年 43 巻 4 号 p. 337-341
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    [早期公開] 公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的はHONDA 歩行アシスト(以下,歩行アシスト)を用いた歩行練習が歩行速度とバランス機能,ADL の改善を促進するかを明らかにすることである。【方法】平成23年6月~平成24年8月までに当院回復期リハビリテーション病棟に入院し歩行アシストを用いた歩行練習を実施した者(以下,実施群)20名と平成22年5月~平成23年5月までに当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,通常の歩行練習を実施した者(以下,非実施群)20名を対象とし,4週間後の快適歩行速度,TUG,BBS,FIM の得点を比較した。【結果】実施群,非実施群ともに4週間後の快適歩行速度,TUG,BBS,FIM の得点は有意に向上した(p<0.05)。一方,実施群と非実施群の変化量の比較では,快適歩行速度のみ実施群で有意に大きかった(p<0.01)。【結論】歩行アシストを用いた歩行練習は快適歩行速度の向上効果があることが示唆された。
理学療法トピックス
シリーズ「内部障害に対する運動療法の最前線」
シリーズ「中枢神経機能の計測と調整」
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