理学療法学
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35 巻, 6 号
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原著
  • 島田 裕之, 石渡 喜一, 金子 文成, 古名 丈人, 鈴木 隆雄
    原稿種別: 本文
    2008 年 35 巻 6 号 p. 271-278
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,成人と高齢者の長時間歩行時の下肢筋活動を,[18F]fluorodeoxyglucoseを使用したPositron Emission Tomography(FDG-PET)によるグルコース代謝評価から分析し,歩行時に主要な働きをする筋を明らかにすることである。対象は成人男性10名(平均年齢24.1 ± 2.1歳)と高齢者男性6名(平均年齢75.5 ± 2.1歳)であり,50分間のトレッドミル歩行を実施し,FDG-PET撮影を行った。関心領域(regions of interest:ROI)は,PET画像上,筋の同定が可能であった股関節,膝関節,足関節の屈曲,伸展,外転の主動作筋を対象とし,各ROIにおける糖代謝は標準化集積値(standardized uptake value,SUV)を用いて評価した。各関節運動に関与する筋群間でFDG取り込み量のSUVを比較すると,成人の平均値では股関節外転筋群,足関節底屈筋群,足関節背屈筋群のSUVが有意に高く,高齢者では,股関節外転筋群が顕著に高値を示し,股関節屈曲,膝関節伸展,足関節底屈筋群間に有意差を認めた。両群ともに有意に高いSUVを示した股関節外転筋群では,成人では小殿筋が中殿筋の約3倍の値を示し有意に高値を示した。一方,高齢者では小殿筋と中殿筋間に有意差を認めず,大殿筋を含む股関節周囲筋群全般にわたる高い糖代謝が観察された。また,成人で高値を示した足関節底屈筋群は,高齢者では低いSUVを示した。以上の結果から,長時間の歩行遂行には,股関節外転筋群が重要な役割を果たし,高齢者では足関節底屈筋群の活動が相対的に低く,これらの筋群に着目した理学療法が歩行持久性を向上させる効果的な介入方法となり得る可能性が示唆された。
研究報告
  • 岡田 洋平, 高取 克彦, 梛野 浩司, 徳久 謙太郎, 生野 公貴, 鶴田 佳世, 庄本 康治
    原稿種別: 本文
    2008 年 35 巻 6 号 p. 279-284
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,地域高齢者163名(平均年齢75.9 ± 5.2歳,男性55名女性108名)を対象に,自己の身体能力の認識誤差の指標としてリーチ距離の見積り誤差(Error in estimated reach Distance: ED),および転倒恐怖心を評価し,転倒との関係について調査した。評価項目は,過去1年間の転倒歴,Functional Reach Test(FRT),ED,ED絶対値(|ED|),転倒恐怖心(Falls Efficacy Scale: FES)とした。データ解析は,「転倒無し」「1回転倒」「複数回転倒」の3群における各調査項目の比較,「複数回転倒の有無」に関係する調査項目の抽出を行った。その結果,EDは,複数回転倒群は負の値を示し,転倒無し群と比較して有意に小さく,自己のリーチ能力を過大評価する傾向にあった。複数回転倒の有無を目的変数,FRT,ED,|ED|,FESを説明変数として,年齢と性別を調整して多重ロジスティック回帰分析を行った結果,複数回転倒の予測因子としてEDとFESが選択された。以上の結果から,リーチ距離の見積り誤差が地域高齢者の複数回転倒に関連している可能性が示唆された。
  • 星 孝, 伊橋 光二, 吉野 英, 島貫 順子, 大島 和子, 中野 美紀, 中川 直子, 西堀 陽輔
    原稿種別: 本文
    2008 年 35 巻 6 号 p. 285-291
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する吸気筋トレーニングの呼吸機能維持効果の検証をすることである。対象はALSの診断を受け病名の告知を受けている患者14名。多施設間共同研究形式での非無作為化臨床試験により,通常行うトレーニングのみの群(コントロール群)とそれに加えて吸気筋トレーニングを行う群(トレーニング群)に分け,比較検討した。吸気トレーニングにはインセンティブスパイロメーターを使用し,自覚的運動強度(修正Borg scale)4の「ややきつい」程度の負荷強度で行った。トレーニング期間は8週間とした。評価項目は日本語版改訂ALS機能尺度(ALSFRS-R),呼吸機能(肺活量,努力性肺活量,最大咳嗽流速PCF,呼吸筋力),血液ガス分析値であった。期間の前後でALSFRS-Rはコントロール群で変化無く,トレーニング群で低下した。期間中の経過ではPCFがコントロール群で有意な低下を示したが,トレーニング群では維持された。その他の評価項目は有意な変化はなかった。また,最大吸気筋力変化率がコントロール群で低下し,トレーニング群で上昇する傾向を示した。これらの結果から,吸気筋トレーニングは,吸気筋力や咳嗽力低下の傾向に抑制をかけられる可能性が示唆されたと考える。
  • 中山 裕子, 大西 秀明, 中林 美代子, 大山 峰生, 石川 知志
    原稿種別: 本文
    2008 年 35 巻 6 号 p. 292-298
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,肩甲下筋の機能的な違いを明らかにすることである。対象は健常成人6名とし,運動課題は5秒間の肩関節最大等尺性内旋運動で,筋力測定器(BIODEX)を使用した。計測肢位は肩甲上腕関節回旋中間位,内旋45度位,外旋45度位で,上肢下垂位,屈曲60度・120度,肩甲骨面挙上60度・120度,外転60度・120度の計21肢位であり,肩甲下筋上部・中部・下部の筋活動をワイヤー電極にて導出した。筋電図積分値は内外旋中間位上肢下垂位の値を基に正規化した(%IEMG)。最大トルク値と%IEMG値は挙上角度による比較を行った。肩内外旋中間位・肩甲骨面挙上および外転位での内旋運動において,最大トルク値は,120度の値が下垂位および60度の値より有意に低く,運動肢位により内旋トルクの変化が見られた。また,%IEMGについては,内外旋中間位・外転において,肩甲下筋上部は,下垂位が60度および120度に比べ高い傾向が見られた。また,内外旋中間位・肩甲骨面挙上において,肩甲下筋中部は,60度の値が,下垂位および120度の値に比べ高い傾向が見られた。下部においては,120度の値は下垂位,60度に比べ高い傾向が見られた。以上より,肩甲下筋は肩内外旋中間位における挙上角度の変更により上腕骨長軸に対し垂直に近い線維が最も強く肩関節内旋運動に作用することが示唆された。
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