【目的】保存期CKD 患者は腎機能低下に伴い筋力も低下しているが,健常者と比較しどの程度低下しているかは明らかでない。保存期CKD 患者の筋力年齢予測比を明らかにする。【方法】保存期CKD 患者291 例を対象に筋力(握力,膝伸展筋力)を測定し,健常者平均値から筋力年齢予測比を算出した。さらに男女別,年代別の筋力値の比較を行った。【結果】CKD ステージG3a,3b,4,5 の順に,握力年齢予測比は84.4%,85.5%,78.6%,72.3%,膝伸展筋力年齢予測比は104.6%,95.9%,88.3%,84.2% であった。男女別,年代別の筋力値は,高齢女性で低下が顕著であった。【結論】CKD ステージG4,5 の保存期CKD 患者において,握力は健常者平均値の70 ~80%,膝伸展筋力は85 ~90% 程度の低下を示す可能性が示唆された。
【目的】人工股関節全置換術(total hip arthroplasty;以下,THA)術後急性期患者におけるベッドからの起き上がり方法の違いが,動作時の股関節角度,時間,疼痛,困難感に与える影響を明らかにすること。【方法】THA 術後第7 病日の患者18 名を対象とした。降りる方向と自己介助方法により分けた6 種類のベッドからの起き上がり方法を実施し,三次元動作解析装置を用いて分析した。評価項目は動作時股関節最大角度(屈曲,内転,内旋),動作時間,疼痛と困難感とし,各方法間で比較した。【結果】術側方向への起き上がり方法は,非術側方向に比べて,動作時術側股関節最大内転角度が各方法間で有意に低値であった。最大屈曲角度,最大内旋角度,動作時間,疼痛と困難感は各方法間において差を認めなかった。【結論】術側方向への起き上がり方法は,非術側方向への方法に比べて,動作時の術側股関節の最大内転角度が低値を示す。
【目的】急性期脳卒中患者の基本的姿勢における呼吸・循環反応を測定し,各姿勢の代謝を把握すること,脳卒中急性期の代謝の特徴を理解することを目的とした。【方法】急性期脳卒中患者31 名を対象に呼気ガス分析装置を用い,臥位,ヘッドアップ,端座位,車いす座位,立位の5 つの基本的姿勢での呼吸代謝を測定し,さらに回復期脳卒中患者と比較した。【結果】臥位,ヘッドアップ,端座位,車いす座位の各姿勢での呼気ガス指標には有意な差を認めなかった。一方で立位は他の姿勢よりも有意に高く,2.00 METs であった。すべての姿勢で呼気ガス指標は回復期患者群よりも有意に高かった。%REE は約132%であった。【結論】臥位,ヘッドアップ,端座位,車いす座位における代謝の違いはほとんどなく負荷量も高くなかったが,立位保持練習は身体負荷が高い可能性があり全身状態に留意する必要がある。急性期の代謝亢進は組織修復等による可能性が示唆された。
【目的】冠動脈疾患急性治療後の糖代謝異常患者におけるinterleukin-6(以下,IL-6)の運動時急性応答と血糖変動,骨格筋指数(skeletal muscle index:以下,SMI)との関連を明らかにすること。【方法】対象は冠動脈疾患急性治療後の糖代謝異常患者13 例とした。有酸素運動前,運動終了直後にIL-6 と血糖値(blood glucose:以下,BG)を測定した。SMI は多周波数インピーダンス法にて測定し,運動前後のIL-6の変化量(⊿IL-6)とBG の変化量(⊿BG),SMI との関連を検討した。【結果】⊿IL-6 と⊿BG との間に有意な負の相関関係を認め,⊿IL-6 とSMI との間に有意な正の相関関係を認めた(p <0.05)。【結論】単回の有酸素運動でも,IL-6 の分泌増加が骨格筋でのグルコースの取りこみ促進に関連し,分泌されるIL-6量には筋肉量が関連していることが示唆された。
【目的】日本語版ACL-Return to Sport after Injury(以下,ACL-RSI)scale を作成し,表面的妥当性と内的整合性を検討すること。【方法】国際的なガイドラインに準拠して,日本語版ACL-RSI scale の翻訳を行った。翻訳した日本語版ACL-RSI scale を使用して,術後4 ヵ月以上経過したACL 再建術後患者40名を対象に予備テストを実施した。得られたデータを記述的に要約し,天井および床効果の有無とクロンバックのα 係数を確認した。【結果】日本語版ACL-RSI scale の平均回答時間は1分49秒で,無回答率は0.01%未満であった。平均点数は59.3 点で,天井・床効果は認められなかった。クロンバックのα 係数は0.94 であった。【結論】日本語版ACL-RSI scale は表面的妥当性および内的整合性ともに良好であり,実用性の高い質問紙票であると考えられる。
【目的】6 ヵ月以上持続している慢性の非特異的腰痛患者に対する4 種のストレッチングの介入効果を,初回評価におけるdirectional preference(以下,DP)の有無で比較することで,初回評価のDP がストレッチング治療におけるサブグループ化の指標になるかを検討すること。【方法】初回評価でDP を認めた症例41名,DP を認めなかった症例32 名に分類し,週1 回の介入と4 週間のセルフエクササイズを指導した。介入前後でVAS,ROM,SF-36,JOABPEQ,ODI を評価した。【結果】いずれの項目も群間には有意差を認めず,2 群とも介入前後で全項目に有意な改善を認めた。【結論】慢性の非特異的腰痛患者に本ストレッチングを施行する場合,初回評価のDP の有無にかかわらず,疼痛・身体機能・精神機能すべてに有効性を認めたことから,今回の一定の条件下では,本ストレッチングの成果にDP の有無は関与しない可能性が示唆された。
【目的】慢性期の脳卒中片麻痺患者に対して就労支援を行った経験について報告する。【症例紹介】症例は右片麻痺と失語症を呈した40 代の女性である。2012 年10 月,左の被殻出血を発症した。他院にて6 ヵ月間の入院リハ実施後,2013 年3 月に退院し,以後,当院外来リハが開始となった。来院時の移動能力は4 点杖利用下にて短距離歩行自立,その他は車椅子自走レベルであった。【経過】理学療法では,歩行能力の向上や公共交通機関の利用に関するリハを実施した。結果,T 字杖利用下での屋内外の歩行が可能となり、介入36 ヵ月目にはバスや電車の利用が可能となった。また,多職種とも連携を図り,結果として新規の就労が可能となった。【結論】就労支援の問題点は多岐にわたるため,個々の症例の問題点を把握し,包括的に支援することが重要と思われた。
【目的】リハビリテーション(以下,リハビリ)分野の自費診療を行っている病院・施設において,Web サイト上の質の評価を行うこととした。【方法】リハビリ分野において自費診療を行っている病院,施設を抽出するために,自費診療とリハビリに関する検索語を選定し,Web サイトの検索を行った(Database:Google)。対象のWeb サイトに対し,e ヘルス倫理コード2.0,医療広告ガイドライン,医療機関ホームページガイドラインを参考にWeb サイトの質の評価を行った。【結果】Web サイト内の治療の効果やリスクに関する情報について,引用を示して記載したものは45 件中1 件(2.2%)であり,その他の医療広告ガイドラインの項目についても遵守割合が低いものが認められた。【結論】リハビリ分野において自費診療を行っている病院・施設のWeb サイトは誇大に広告されている可能性があり,情報提供者は治療の利害情報の正確な提供が必要である。