理学療法学
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16 巻, 1 号
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原著
  • 灰田 信英, 立野 勝彦
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    寡運動(Hypokinesia/Hypodynamia)による若齢及び成熟マウスの腓腹筋の萎縮の差異について検索することを目的とした。4週齢(若齢群),12週齢(成熟群)のマウス40匹をそれぞれ実験群と対照群に分け,実験群に対してはMorey等のtail suspensionモデルを用いて後肢を無荷重状態とした。2週間の寡運動後,即ち6及び14週齢でマウスを屠殺し,体重を測定した。その後腓腹筋を採取し,湿重量を計測後,凍結切片を作成し,Myosin ATPase,ヘマキシリン・エオジン染色を実施し,組織化学的,組織学的検索を行なった。寡運動により,若齢群は対照群に比べ体量は減少したが,成熟群では変化は認められなかった。腓腹筋の湿重量は若齢群,成熟群ともに低下するものの,前者の方が大であった。細胞径は若齢群ではタイプ1,2線維ともに著しく減少し,かつタイプ1線維の構成比率が増加した。一方成熟群の細胞径は,タイプ1線維の方がタイプ2線維より著明に減少した。筋線維構成比率の変化は見られなかった。ヘマトキシリン・エオジン染色の結果,若齢群には,中心核,細胞の壊死や結合織の増殖像が認められ,myopathicな変化を示した。若齢群に見られる著しい筋萎縮は寡運動に伴う成長の一時的停滞の為と推測される。
  • 灰田 信英, 立野 勝彦
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    寡運動(Hypokinesia/Hypodynamia)に伴う筋萎縮が,ジストロフィー筋の病理組織学的変化並びに筋収縮特性に与える影響について検索した。4週齢(若齢群)と12週齢(成熟群)の 129B6F1系ジストロフィーマウス31匹をそれぞれ実験群と対照群に分け,実験群に対してはMoreyのtail suspensionモデルを用いて後肢を無荷重状態とした。2週間の寡運動後,腓腹筋を採取し,湿重量測定後myosin ATPase,Hematoxylin & Eosin染色を実施し,組織化学的並びに組織学的検索を行った。また合わせて対側腓腹筋の単収縮,強縮張力から収縮特性について計測した。
    その結果,寡運動の影響は幼若ジストロフィーマウス群に著しく,体重,筋重量,単収縮及び強縮張力は対照群に比べ減少した。しかし組織化学的変化は若齢群,成熟群共に腓腹筋のタイプ1型,2型線維は同程度に萎縮し,かつ1型線維の構成比率の増加が認められた。病理組織学的所見は,組織化学的変化と同様に,若齢群,成熟群共に筋線維の大小不同がび漫性に,さらに中心核,炎症細胞,壊死や結合織の増殖像が同頻度に出現した。
    以上の結果より,若齢群に見られた変化は,寡運動に伴う成長の一時的停滞であり,ジストロフィー筋に対して本法による寡運動性萎縮は病理学的変化になんら影響を及ぼさない事が示唆された。
  • 柳澤 健, 中村 隆一, 藤原 孝之
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    固有受容性神経筋促通手技(PNF)には各運動パターンに対応する開始肢位がある。上肢の開始肢位が下腿ヒラメ筋アルファー運動ニューロンにどのような影響を与えるかを知る目的で,誘発筋電図H波振幅による検索を行った。1側性肢位(8通り)と両側性肢位(16通り)のうち,基本肢位と比べ肩伸展・外転・内旋位(同側,対側および両側対称性肢位など)でH波増大がみられた。また,すべてのPNF肢位において,H波抑制に作用する肢位はなかった。これらの結果について神経生理学的な考察を加えた。
報告
  • ―筋電図積分値における分析―
    小林 茂, 西本 勝夫, 西本 東彦, 幸田 利敬
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    理学療法の治療対象である筋に,治療手段としてよく用いる温及び冷刺激を加え,筋活動がどのように変化するかを,筋電図積分値を用いて分析してみた。健康な男性(18歳〜29歳)11名の右上腕二頭筋を対象とした。手関節部に5kgの負荷を加え,肘関節90°屈曲位での等尺性収縮を行わせ,まず無刺激で5秒間のIEMGを得,次いで冷刺激(皮膚温20°5分),温刺激(皮膚温40°10分)を加え同様にIEMGを得た。無刺激時のIEMGを100%とした場合,冷刺激では82〜201%の変化で,上昇したもの8名であった。温刺激では62〜92%の変化で,減少したもの9名であった。このように温,冷刺激が対照的な筋活動の変化をもたらすことが確かめられた。
  • 藤田 博暁, 今泉 寛, 小山内 隆, 栗原 美智, 木村 博光, 丸山 仁司
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    心電図R-R間隔を求め変動係数・自己回帰モデルにより,高齢者における特性を調査した。特に長期臥床が身体に及ぼす影響を分析するため,ベッド上寝たきりの群と屋内ADLの自立している群の両者を比較した。
    その結果R-R間隔の変動係数は平均1.63±0.62%であり,60歳以上の高齢者においても加齢と共に低下する傾向を示した。また,両群の比較ではベッド上寝たきり群において有意にCVが低下していた。
    R-R間隔を時系列データとして考え,自己回帰モデルにあてはめて分析すると,屋内ADLの自立している群に比し,ベッド上寝たきり群では呼吸性変動を表わす0.2〜0.3(Beat)-1リズムの減少が見られ,廃用性による呼吸循環器系の機能低下が考えられた。
  • ―健常者について―
    青木 一治, 平野 孝行, 太田 智子
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    健常者132名(男子72名,女子60名)により,等速性筋力計(Cybex II)を用いて,体幹筋筋力(腹筋,背筋筋力)の男女の年代別正常値の決定を試みた。各年代は男女とも20代,30代,40代に分けて行った。また,身長,体重,lever armの長さが筋力に与える影響についても検討した。その結果,男女とも腹筋筋力は背筋筋力よりも弱かった。また,腹筋,背筋筋力ともに女子は男子よりも弱かった。これらはいずれの年代でも同様であった。背筋筋力に対する腹筋筋力の割合は,男子では平均43.6%で,20代が大きく,30代,40代はほぼ同値であった。女子では平均31.6%で,各年代ともほぼ同じであった。身長と筋力は有意な相関はなく,体重は背筋筋力において,男女ともに,体重が増すに従い筋力も増加した。lever armの長さと筋力においては,男女とも,腹筋,背筋筋力でarmの長さが長くなると筋力も強くなるという相関があった。
  • ―保健婦に対するアンケート調査より―
    小嶋 裕, 長崎 香代, 田村 千恵, 川村 博文, 松井 順夫, 本久 博一
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    老人保健法機能訓練事業における理学療法士の関わりについて,保健婦に対しアンケート調査を実施し,幾つかの提言を得た。
    1)理学療法士参加の実施回数は,月1〜2回を適度としている。
    2)理学療法士に対しては,障害全般に及ぶ役割,社会・生活環境全般に及ぶ指導効果を期待している。
    3)実施上の問題点としては,システム上の不備,人的資源不足などを挙げている。
    4)実施協力については,協議会の設置,実施マニュアルの作成を望んでいる。
    5)地域保健活動における理学療法士の常勤化については,その必要性を認めており,保健所を核とした幅広い活動を期待している。
    6)理学療法士に対する要望としては,協議の機会を多く持つこと,派遣理学療法士の研修の必要性などを挙げている。
  • ―肩関節の動きと加速度の関係について―
    沖住 省吾, 稲垣 稔, 立花 孝, 髙浜 照, 髙浜 寿喜子, 松岡 俊哉
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    我々は上肢を最大速度で挙上させた時の肩関節の動きを,挙上時の加速度と肩甲骨の上方回旋の面から解析した。測定面は肩甲骨面を用いた。上肢挙上角0度から30度間で肩甲骨は急速に上方回旋し,この間加速度の方向は肩関節の上方に向かっていた。また,垂直方向を示す加速度の大きさは最大値を示し,上肢を挙上する力として作用していた。挙上角70度から加速度の方向は下向きへと変化していた。つまり減速が起こり始めていた。挙上角140度から150度間では肩甲骨は急激に制動され,加速度の方向は上腕長軸に対してほぼ垂直下方を示した。
    肩関節の動態解析は静止の状態やゆっくりした動きだけではなく早い速度の面からも検討することも必要である。
症例研究
  • ―慢性関節リウマチの一症例を通して―
    對馬 均, 舘山 智格, 川嶋 順蔵, 片野 博
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1989/01/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    人工股関節全置換術を目的として入院となったものの,疼痛,ROM制限,筋力低下,不良姿勢,などの機能的諸問題により手術施行が延期された慢性関節リウマチの一症例を経験した。この症例に対して7週間に渡り術前訓練を徹底して行った結果,手術―術後訓練と良好に経過し,ADL自立にて自宅退院させることができた。本症例に対する理学療法を通じて,術前訓練の意義として,①術前に機能状態を高めておくことが,術後の機能状態を大きく左右する,②術前から起居動作・移動動作を習熟させておくことによって,術後早期離床・部分荷重歩行へのスムーズな移行が可能となる,③術前訓練の励行によって達成された身体的効果が,手術や術後機能に関する心理的問題に好影響を及ぼす,④全人的理学療法という観点からも術前訓練は重要である,などの点を再確認した。
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