アドヒアランスとは,人が何かに対して愛着を感じ,それを継続するということを表す概念であり,運動アドヒアランスとは運動を継続するという強い意志を示す概念である。本研究は,民間フィットネスクラブの会員として継続的に運動を実施している40歳以上の中高年者を対象として,運動アドヒアランスに影響する要因を明らかにすることを目的とした。調査項目は運動アドヒアランス関連項目,対象者の属性,現在の運動参加状況とし,留置法(手渡し)により実施した。なお,本研究における運動参加状況は,運動開始からの経過期間と運動実施頻度から準備期,実行期,維持期に分類した。因子分析の結果,本研究における運動アドヒアランス関連因子として,社会関係,運動効果,施設,運動技能,施設環境,自己確信の6因子が抽出された。因子得点の男女別比較から,女性では社会関係を重視しており,運動効果としての身体像の変化,健康増進への期待が大きいこと,運動実施により自己確信を高めていることが考えられた。男性では,興味ある催しなどで実際に運動を実施することや運動技術が上達することへの関心が高かった。運動参加状況別比較からは,準備期では施設環境に影響されやすいこと,実行期では運動効果や施設環境が重要であること,維持期では社会関係に影響されやすいことが示唆された。本研究の結果から,中高年者における健康の維持・増進を目的に,運動アドヒアランスを高める介入方法としては,以下のことが必要であることがわかった。女性には社会関係や運動効果を示し,男性には運動実施欲を満たしながら,運動技能を向上させることが必要である。また,運動が習慣化していない者には施設環境を強調し,運動が習慣化してくるにつれ,運動実施による社会関係形成や運動効果に介入方法を変化させることが必要である。
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