理学療法学
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30 巻, 2 号
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報告
  • 黒橋 佳洋, 島 欽也, 羽山 和生
    原稿種別: 本文
    2003 年30 巻2 号 p. 29-34
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    成人脳性麻痺者に対する治療経験から,痙縮の軽減および4ヵ月以降の正常乳児にみられる背臥位における正中位ヘの抗重力屈曲運動を引き出す2つの刺激方法を考案した。まず第1の手技は痙縮軽減を目的として,胸背部の特定の部位に5分間の持続した圧迫刺激を行った。第2の手技では抗重力屈曲運動を出現させることを目的として,足底腱膜の踵骨付着部を外側から持続的に圧迫刺激を行った。第1の手技に対しては,脳性運動障害者19例36下肢にSLRspasms-angleと足クローヌスの回数をそれぞれ5段階に別けて判定し,判定3以上(SLR10度以上の改善,足クローヌスは出現回数の減少とアキレス腱の伸張性の増大)を有効判定として評価した。その結果,それぞれの有効判定率でSLRspasms-angleを評価できた10例20下肢の改善度は95.0%であり,足クローヌス出現様式を評価できた15例27下肢の改善度は81.4%であった。第2の手技に対しては,9例に抗重力屈曲運動が出現するか否かをビデオ記録を用いて評価した。その結果,9例中8例に抗重力屈曲運動が出現することを確認できた。今回の結果から,提示した2つの刺激方法は,痙縮の軽減と抗重力屈曲運動をもたらす有効な手技であることが示唆された。
  • ―在院日数及び肺合併症の比較から―
    藤村 宜史, 戸羽 勝味, 荒本 美和, 甲斐 健児, 豊田 章宏, 平松 和嗣久
    原稿種別: 本文
    2003 年30 巻2 号 p. 35-40
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    上部開腹術における肺理学療法の有効性を術後の肺合併症発症率,在院日数により検討するとともに,手術前後の肺機能変化から術後早期における肺理学療法の重要性も検討した。対象は待機的に上部開腹術を施行した127例であり,次の2群に分類した。リハビリテーション(以下リハ)群は外科よりリハ科へ肺理学療法の処方のあった52例で,術前より肺理学療法を施行し,術後は早期離床プログラムも併せて行った。一方,対照群の75例は,周術期のリハ科の関与はなく,排痰および離床は病棟看護師によって促された。なお肺機能評価はリハ群のうち肺合併症を認めなかった48例を対象とし,術前と術後1週において測定した。肺合併症発症率については,肺炎はリハ群3.8%,対照群4.0%とほぼ同率に発症しており,両群に有意差を認めなかったが,無気肺の合併はリハ群1.9%,対照群12.0%で,対照群で有意に高い発症率を認めた(p < 0.05)。在院日数については,対照群の51.4 ± 32.8日に対しリハ群では44.0 ± 19.3日と約7日間の差を示したものの,両群間で統計学的な有意差を認めなかった。また肺機能については,%肺活量(以下%VC)が術前後で89.1 ± 21.0%から63.9 ± 18.4%へと有意な低下を認めた。以上より,無気肺の予防という点より肺理学療法の有効性が示唆された。そして肺理学療法の実施にあたっては術後早期,特に術後1週間以内における肺合併症への対応が重要であると考えられた。
  • 樋口 由美, 須藤 洋明, 竹田 祥子, 田中 則子, 淵岡 聡, 林 義孝
    原稿種別: 本文
    2003 年30 巻2 号 p. 41-47
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    介護老人保健施設の利用者90名(男性22名,女性68名,平均年齢82.9 ± 7.1歳)を対象に,転倒しても重篤なケガをしなかった高齢者の特徴を明らかにすることを目的として自記式調査票による研究を行った。非転倒群,(転倒による)ケガなし群,(転倒による)ケガあり群の3群間において,年齢,性別,住居地,痴呆度および歩行能力は,それぞれ有意差を認めなかった。ケガなし群はケガあり群に比べ,視力低下など自己の身体機能低下を有意に自覚し,非転倒群に比べ,バランス能力,筋力の低下を認めた。また,ケガなし群は非転倒群に比べて,「転倒が怖くて外に出るのを控えることがある」という項目が,年齢,性別,住居地,痴呆度,歩行能力に関係なく,有意な特性であった。一方,ケガあり群と非転倒群の間には,有意な差は認められなかった。以上から転倒しても重篤なケガをしなかった高齢者の特徴は,バランス,筋力の低下がみられるものの,自己の機能低下を強く自覚し,日常生活において転倒に留意している様子が推察された。
  • ―民間フィットネスクラブ1施設における検討―
    大工谷 新一, 鈴木 俊明, 原田 宗彦
    原稿種別: 本文
    2003 年30 巻2 号 p. 48-54
    発行日: 2003/04/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    アドヒアランスとは,人が何かに対して愛着を感じ,それを継続するということを表す概念であり,運動アドヒアランスとは運動を継続するという強い意志を示す概念である。本研究は,民間フィットネスクラブの会員として継続的に運動を実施している40歳以上の中高年者を対象として,運動アドヒアランスに影響する要因を明らかにすることを目的とした。調査項目は運動アドヒアランス関連項目,対象者の属性,現在の運動参加状況とし,留置法(手渡し)により実施した。なお,本研究における運動参加状況は,運動開始からの経過期間と運動実施頻度から準備期,実行期,維持期に分類した。因子分析の結果,本研究における運動アドヒアランス関連因子として,社会関係,運動効果,施設,運動技能,施設環境,自己確信の6因子が抽出された。因子得点の男女別比較から,女性では社会関係を重視しており,運動効果としての身体像の変化,健康増進への期待が大きいこと,運動実施により自己確信を高めていることが考えられた。男性では,興味ある催しなどで実際に運動を実施することや運動技術が上達することへの関心が高かった。運動参加状況別比較からは,準備期では施設環境に影響されやすいこと,実行期では運動効果や施設環境が重要であること,維持期では社会関係に影響されやすいことが示唆された。本研究の結果から,中高年者における健康の維持・増進を目的に,運動アドヒアランスを高める介入方法としては,以下のことが必要であることがわかった。女性には社会関係や運動効果を示し,男性には運動実施欲を満たしながら,運動技能を向上させることが必要である。また,運動が習慣化していない者には施設環境を強調し,運動が習慣化してくるにつれ,運動実施による社会関係形成や運動効果に介入方法を変化させることが必要である。
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