理学療法学
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27 巻, 7 号
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原著
  • 玉木 彰, 松尾 善美, 阿部 和夫
    原稿種別: 本文
    2000 年27 巻7 号 p. 217-222
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病患者は病態の進行に伴って呼吸機能が低下すると言われているが,その原因は未だ明確ではない。本研究では17名のパーキンソン病患者(PD群)と14名の健常成人(健常群)を対象に,呼吸機能と胸・腹部運動を同時に計測することで,呼吸機能に及ぼす胸・腹部運動の影響について検討した。肺活量(VC)と努力性肺活量(FVC)をオートスパイロメーターにて測定し,胸部および腹部運動をRespirarory Inductive Plethysmographyを用いて測定した。その結果,PD群は健常群に比べ%VCが有意に低下しており,その時の胸部運動量も有意に低下していた。さらに%VCと胸部運動量の間に有意な相関関係が認められた。%FVCも同様にPD群が健常群に比べ有意に低下しており,この時の胸部吸気運動量,腹部呼気運動量,そして胸部呼気運動量が有意に低下していた。さらに%FVCと腹部吸気運動量,胸部呼気運動量の間に有意な相関関係が認められた。以上の結果から,パーキンソン病患者の呼吸機能低下には吸気および呼気における胸・腹部運動量の低下が関与していることが示唆された。
報告
  • ―新しい心臓核医学検査法としての定量的心拍同期SPECTによる検討―
    丸岡 弘, 久保田 章仁, 今井 嘉門, 小仲 良平, 柳澤 千香子, 押見 雅義, 窪田 幸生, 加子 恵, 洲川 明久, 諏訪 二郎, ...
    原稿種別: 本文
    2000 年27 巻7 号 p. 223-228
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞発症後の運動耐容能,特に呼気ガス分析と左心機能との関連について,急性心筋梗塞患者90例(男性88例,女性2例,平均年齢56.5 ± 9.1歳)で検討した。左心機能は発症後数日以内に施行した心拍同期心臓シンチグラフィ(シンチ)で検査し,梗塞部位での気絶心筋の有無はBMIPP/Tl二核種シンチで評価した。酸素摂取量は心臓核医学検査と同時期に実施した50m歩行負荷時と,発症後2週間を経過した時点での階段昇降負荷時に測定した。50m歩行負荷の最高酸素摂取量は,安静時の左心機能との相関を認めなかった。また心機能の改善が予測されるサルベージ群の経時的な心臓リハビリテーション(以下RH)中の最高酸素摂取量の経過(50m歩行負荷と階段昇降負荷の比)は,非サルベージ群と比べて有意に高値であった(1.78 ± 0.52 vs 1.48 ± 0.40,p < 0.01)。以上の結果から,経時的なRH中の諸動作における最高酸素摂取量の測定は,左心機能の改善を予測できる可能性が示唆された。
  • 原田 和宏, 齊藤 圭介, 津田 陽一郎, 香川 幸次郎, 中嶋 和夫, 高尾 芳樹
    原稿種別: 本文
    2000 年27 巻7 号 p. 229-236
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本調査研究は,脳卒中患者における心理的QOL指標の構成概念妥当性を検討することを目的とした。調査対象は,岡山県K市内の医療機関に通院する脳卒中患者とした。調査に同意が得られ,発症から1年以上経過し明らかな知的衰退のない115名を集計対象として,指標について提起されている2つの因子モデルを共分散構造分析による確証的因子分析を用いて比較検討した。そして,最適とされた因子モデルの因子不変性について,同県S市内の高齢者227名との間で同時因子分析を行い検討した。また,主観的幸福感と関連が指摘される心身機能が指標の得点へ適切に反映されるかどうか検討した。その結果,9項目で構成された因子モデルがデータへの適合に優れ,加えて高齢者との間に因子構造の不変性を有することが支持された。また,心身機能と尺度得点との関係が先行研究の所見と整合するものであることが確認された。本研究結果から,脳卒中患者における心理的QOL指標(9項目)の構成概念妥当性が支持された。
  • 齋藤 圭介, 原田 和宏, 津田 陽一郎, 香川 幸次郎, 中嶋 和夫, 高尾 芳樹
    原稿種別: 本文
    2000 年27 巻7 号 p. 237-244
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,ADLとIADLとの統合尺度である「拡大ADL尺度」を取り上げ,その因子構造モデルの適合度を在宅脳卒中患者のデータを用いて検討した。調査対象は,岡山県内倉敷市K病院に外来通院しているすべての脳卒中患者769名とし,調査は質問紙による面接調査法で実施した。調査を実施した222名のうち,性,年齢,尺度項目に欠損値を有さない196名(男性99名,女性97名)の資料を分析に用いた。統計解析には共分散構造分析を用いた。本尺度の構成概念に関しては,先行の研究業績を参考として因子構造モデルを理論的に措定し,標本に対する適合度を検討した。その結果,著者らが地域高齢者の標本で行った検討結果と同様,「移動動作」に関する評価項目を除き「身辺処理」と「IADL」の2因子9項目から構成した2次因子モデルで適合度指標であるGFIが0.919を示し,統計学的な許容水準を満たした。さらに探索的因子分析で因子所属項目の適切さを吟味した結果,「入浴動作」が前記2つの因子から影響を受けていることが明らかにされ,この項目を除き再度因子構造モデルの適合度を検討したところ統計学的な許容水準を十分満たした。この修正版尺度の信頼性係数は統計学的に適切な範囲にあり,かつ「年齢」,「厚生省障害老人の日常生活自立度判定基準」,「健康度自己評価」,「サービス利用の有無」と有意な関連を示した。以上の事から,在宅脳卒中患者を測定対象とするADLとIADLとの統合尺度の構成概念としては,「移動動作」ならびに「入浴動作」に関する尺度項目を除くことがより適切なことが示唆された。
症例研究
  • 綾 伸二
    原稿種別: 本文
    2000 年27 巻7 号 p. 245-252
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    Angelman症候群(Angelman syndrome; AS)は,重度精神遅滞を主要な症状とし,容易に誘発される笑いとあやつり人形様歩行(失調性歩行)を特徴とする疾患である。今回,生後10ヵ月より4年1ヵ月間継続している一症例の特徴的臨床所見を3期に分類し検討した。第1期(10ヵ月〜2歳7ヵ月)では,失調症状の改善に伴いつたい歩きが可能となった。第2期(2歳8ヵ月〜3歳9ヵ月)では,特異的な行動(以下AS行動)が出現したことにより上部体幹に過緊張をもたらしたため,過緊張抑制手技を取り入れた。3歳9ヵ月時,室内歩行は自立したがあやつり人形様歩行を呈した。第3期(3歳10ヵ月〜4歳11ヵ月)では,理学療法の継続に伴い過緊張の減少及びあやつり人形様歩行の改善がみられた。同時に,AS行動に対して周囲の人々が落ち着いた対応を心掛けることでAS行動の自己抑制も可能となった。
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