理学療法学
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20 巻, 6 号
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原著
  • 新田 収, 中嶋 和夫, 小野 裕次郎
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 347-354
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究は脳性麻痺成人を対象に,関節可動域と年齢,性別,姿勢反射,運動能力,麻痺のタイプ,癲癇との関連性について分析した。
    関節可動域は四肢6箇所の関節,13方向を両側で測定した値をもとに主成分分析を行い,ここで得られた第一主成分が可動域の大きさ(拘縮の程度)を反映したものと解釈できたことから,このサンプル得点と前記要因との関連性について,数量化Ⅰ類を用いて検討した。その結果,発達的に運動能力もしくは姿勢反射の獲得水準が低いものほど可動域の制限は大きく,また痙直型はアテトーゼを随伴する症例に比して関節可動域の制限が大きいことが明らかにされた。
    以上のことは,脳性麻痺成人の関節可動域は運動能力もしくは姿勢反射の程度と麻痺のタイプに強く影響されていることを示唆するものである。
報告
  • 大橋 ゆかり
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 355-359
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は力の強さに関する運動情報(力量情報)の保持特性を検討することである。短大生50名を対象に,EMG活動量の視覚的フィードバックを用いて基準運動を遂行させ,後に再生させる手続きを反復した。この手続きにおいて,基準運動遂行から運動再生までの間を休止時間に当てる群と挿入課題遂行時間に当てる群を設け,各群の再生誤差を比較した。基準運動は等尺性肘屈曲運動,挿入課題はこれに拮抗する運動とした。結果として,休止時間の延長および挿入課題負荷により再生誤差の増大が生じた。これより,力量情報は時間経過に従い自然減衰する特性と何等かの保持ストラテジを利用することにより保持可能な特性を併せもつことが示唆された。
  • 対馬 栄輝, 尾田 敦, 近藤 和泉
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 360-366
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    股関節手術患者(17例),健常人(10例)を対象として,股関節外転筋の最大収縮力と片脚立位時,歩行時(立脚期)の筋活動量を比較検討した。
    健常人と寛骨臼回転骨切り術施行患者群の歩行時の外転筋活動量は片脚立位時の筋活動量と比較して有意に高かったが,全人工股関節置換術施行群の歩行時の外転筋活動量は片脚立位時の筋活動量と比較して有意に低かった。また,歩行時筋活動量が片脚立位時より低い者に跛行が生じる傾向にあった。
    このことから寛骨臼回転骨切り術群は健常群と同様な筋活動様式を示しているため,跛行が生じにくく,全人工股関節置換術群では関節包が除去されるため,片脚立位時と比較して歩行時の筋活動量が有効に得られず,跛行の原因となっているものと考えられた。
  • 井出 宏
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 367-370
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    今回,安静時空気下において低酸素血症をきたさず,歩行時低酸素血症をきたす症例に酸素吸入を行い歩行距離がどの様に変化するか検討した。対象は,慢性閉塞性肺疾患患者2名,慢性呼吸不全1名であった。
    課題は,空気下と鼻腔カニューレにより1l/min,3l/minの酸素吸入時における6分間歩行であった。測定項目は,歩行距離,自覚症状,酸素飽和度(パルスオキシメーター),心拍数,休憩回数であった。その結果,酸素吸入量を増やす事により歩行距離の延長,自覚症状の改善,酸素飽和度の改善,休憩回数の減少の改善がみられた。
  • ―座面傾斜の影響について―
    水上 昌文
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 371-375
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脊髄損傷者の車椅子上の座圧分布に対する影響を車椅子形状並びに体格因子の両面から検討することにより,褥瘡予防の一助とすることである。
    対象は完全脊損者10例及び対照群として健常者10例である。座面圧の測定は圧力分布測定装置を使用し,これを座面各部調節式測定台に載せ,座面傾斜角5°,8°,11°の3条件にて測定を行なった。体格因子として標準体重比,大腿周径を測定し検討した。その結果,体格因子との関係では,脊損者にて圧の集中度と大腿最大周径との間に有意な正の相関が認められた。座面圧力値及び圧の集中度は,脊損者において座面傾斜角の増大に従って増加し,8°,11°間に有意差が見られた。以上より脊損者の座圧は,車椅子座面傾斜・大腿最大周径の影響を受け,座角度は11°より8°,5°の方が望ましいことが示唆された。
  • 備酒 伸彦, 藤林 英樹, 吉成 俊二, 神沢 信行, 大藪 弘子, 成瀬 進, 桝田 康彦, 沖山 努
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 376-382
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    在宅障害高齢者の「生活」に関する知識・認識を得るため,60歳以上の,脳血管障害による在宅障害者132名(平均年齢66.6歳 ± 7.3歳)を対象として,日常生活動作・日常生活関連動作の価値序列に関する調査を行った。結果については,先に実施した健常者に対する調査結果とも併せて検討した。
    健常者と障害者では日常生活動作・日常生活関連動作に対する価値観に明らかな差異がみられた。特に,「屋内移動」が障害者では健常者に対して高く位置づけられており,対して「整容」が低く位置づけられていた。「仕事(家事)」に対する価値観は,健常者と障害者の間に大きな差はみられなかったが,障害群を患側手機能別に分類して比較した結果,機能の低いグループほど高い価値観が認められた。
  • 辻井 洋一郎, 小林 紘二, 河上 敬介
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 383-386
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    筋硬結部のTrigger Point(TP)と,その圧迫刺激にて遠隔部や深部に発生する関連痛の研究が疼痛学領域でも注目されている。本研究は関連痛領域に発生する筋硬結の確認を目的とした。その結果,腰・殿部筋の筋硬結への指圧迫と鍼刺入で誘起された関連痛領域に,さらに遠隔部に関連痛を発生させた新たな筋硬結を確認した。TPの機械的刺激が誘起する関連痛の発生機序は不明であるが,それに交感神経性血流不全が関与するとの見解がJ.G. Travellらにより提唱されている。また病理学的に,筋硬結は阻血による筋のジストロフィー様変化である。本研究の結果はある筋硬結が交感神経活動などを介して他の筋硬結を発生させている可能性を示唆する。
  • 朝山 信司, 塚越 和巳
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 387-391
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    当センタ一人所中の男性の片麻痺者17名(44.7 ± 9.7歳)を対象に,無酸素性作業閾値(Anaerobic Threshold,AT)と施設生活の活動水準を測定し,その関係を検討した。日常生活の活動水準には,安静時心拍数に対する日中の平均心拍数の割合(12時一心拍比)を用いた。ATは,VE,VCo2の急上昇する点,VE/VCo2の変化を伴わず VE/Vo2の増加する点を用い総合的に判定した。ATの値は19.0 ± 3.2ml/kg・minで日常生活活動水準は122 ± 11であった。また両者の間には有意な正の相関が認められた(r = 0.80,p < 0.01)。これらのことより片麻痺者の有酸素性作業能力は,日常の生活活動水準と深く関係していることが明らかになり,棟内訓練の導入や生活様式を改善するなどの工夫が重要であると考えられた。
  • 臼田 滋, 長谷川 恵子, 福屋 靖子, 宇川 康二, 江口 清, 福林 徹
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 392-398
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    陳旧性膝前十字靭帯損傷で,腸脛靭帯をLigament-Augmentation-Deviceにて補強した二重支持再建法術後患者16例に対して,等速度性訓練を早期より取り入れた筋力増強訓練プログラムを施行し,術後3,6ヵ月での膝周囲筋の等速度性筋出力を評価した。ピークトルク値(60 deg/sec)の健患比率では,伸展で3ヵ月66%,6ヵ月91%,屈曲でそれぞれ81,96%と良好な結果であった。伸展でのピークトルク発生角度では,3,6ヵ月ともに伸展位への偏位が有意に認められた。また屈曲位でのトルク値では,30°屈曲位においてピークトルク発生角度の偏位の影響を認めた。
    以上の結果より,膝関節運動範囲などの訓練条件に配慮することで等速度性訓練は術後早期より安全に施行でき,その有効性が示唆された。
短報
  • ―健常者と変形性股関節症患者について―
    坂本 年将
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 399-403
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    健常女性15名30股(正常群)と変形性股関節症患者75例121股(患者群)において,最大随意等尺性外転筋力(最大筋力)を得るために必要な股関節外転運動回数を求めた。患者群は,X線像と臨床症状より,健側群(片側性患者の正常側 : 26股),臼蓋形成不全群(16股),前期群(11股),初期群(22股),進行期群(36股),末期群(10股)に分類した。各群において80〜90%の対象股から最大筋力を得るためには,正常群,健側群,臼蓋形成不全群,前期群,初期群では少なくとも4〜5回,進行期群,末期群では,少なくとも8回の外転運動が必要であった。最大筋力の発揮に6回以上の外転運動を要したものは,正常群,健側群,臼蓋形成不全群では全て50歳以上の症例であった。股関節症の進行と加齢は最大筋力の発揮の遅延を引き起こす因子であると考えられた。
  • 浅川 康吉, 遠藤 文雄, 黒木 裕士, 森永 敏博, 鈴木 康三, 亀田 実
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 404-406
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,最大酸素摂取量の観点から授産施設における慢性血液透析患者の作業について基礎的検討を行うことである。
    対象は通所授産施設でワープロ部品の組み立て等の作業を行っている慢性血液透析患者7名である。自転車エルゴメーターによる運動負荷を行った結果,最大酸素摂取量は平均値20.2 ± 3.3(ml/kg/min),最小値16.3(ml/kg/min)であった。また,最小値を示した対象者からは就労による疲労感について「かなり疲れる」との回答を得た。
    最大酸素摂取量16.3(ml/kg/min)程度は,授産施設でワープロ部品の組み立て等の作業に就労することが可能な水準であった。
  • 坂本 浩樹, 平島 俊弘, 遊佐 隆, 黒田 重史, 森石 丈二
    原稿種別: 本文
    1993 年 20 巻 6 号 p. 407-410
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    腱板断裂の手術後の固定肢位としてstockinette-Velpeau固定を用い,理学療法をおこなった30例31肩に対し術前,術後の成績を日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準に基づいて比較検討した。総合点は術前平均68.3点から術後平均95.4点と良好な成績が得られた。術前に高度な痛みを訴えていた者,長時間上肢挙上作業に従事している者,筋力の回復が遅い者に術後痛みが残存する傾向を認めた。術後患側を下にして寝る事のみ不能なものが5肩に認められた。術後自動挙上はすべて15点,自動外旋は平均7.8点と良好な成績を示した。
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