【目的】本研究は機械学習を用いて,急性期脳卒中患者の退院時日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADL)に関する因子を検討することとした。【方法】246名を対象に,医学的情報や臨床的評価等の下位項目点を用いてeXtreme Gardient Boosting(XGBoost)で,退院時ADL自立の可否を予測した。そして寄与因子をSHapley Additive exPlanations(SHAP)で調査した。【結果】退院時ADLの予測精度は高く,寄与因子としてFunctional Ambulation Category, Brünnstrom Recovery Stage下肢,Ability for Basic Movement Scale II(以下,ABMS-II)寝返り,Barthel index更衣,ABMS-II立位が高寄与順であった。【結論】急性期脳卒中患者の退院時ADLは,歩行や麻痺側下肢機能,動作能力が最も寄与することが示唆された。
【目的】これまでに,高齢心不全患者の運動耐容能と下肢筋力の改善に適した運動療法について知見は乏しい。本研究の目的は,高齢心不全患者に対する運動療法が運動耐容能と下肢筋力の改善に有効か検証することとした。【方法】本研究のデザインは,システマティックレビューとメタアナリシスとした。2023年1月以前の臨床論文から,5つの電子データベースより,運動耐容能と下肢筋力に対する運動療法の効果を検証したランダム化比較試験を検索した。【結果】8編が対象となった。統合の結果,有意な効果を示したのは,最高酸素摂取量と6分間歩行距離および筋持久力であった。有意な効果を示した論文では,慢性期の心不全患者に中強度以上の有酸素運動とレジスタンストレーニングまたはバランス運動による複数の運動療法を実施していた。【結論】高齢心不全患者の運動耐容能の改善には,複数の運動療法を組み合わせることが有効である可能性が示唆された。
【目的】原因が特定されていない慢性めまい症に対して,医師の指示のもと短期間の集中的な前庭リハビリテーションを実施し,バランス機能・日常生活動作の改善を認めた症例を経験した。先行研究と比較し,移動能力改善に大幅な効果が得られたと考えられたため報告する。【症例】60歳代男性。診断名:めまい症。めまいの増悪があり救急搬送され入院となった。主治医よりめまいのリハビリテーションの適応と判断され,理学療法介入をした。前庭リハビリテーションは1日40分,頻度は週5回とし,1回10分1日4回の自主トレーニングを指導した。第20病日に自宅退院となった。自覚症状の強度に改善はみられなかったが,バランス機能,移動能力,日常生活動作能力で改善がみられた。【考察】低頻度の介入である先行研究と比較し,移動能力は短期的に大幅な改善がみられた。【結論】短期間の集中的な前庭リハビリテーションは効率的に効果を得られる可能性があると考えられる。
【背景】生体腎移植術後早期のリハビリテーションは確立されていない。本報告の目的は,移植腎超音波検査を併用する腎移植周術期リハビリテーションプログラムの有用性を,腎移植合併症の発生と術後7日までの連続1 km歩行の達成の指標で検証することである。【方法】当院で腎移植を受けた全11名に本プログラムを実施し,腎移植合併症や連続1 km歩行を達成するまでの日数を調査した。【結果】腎移植合併症を発生した者は0名,術後7日までに連続1 km歩行の達成した者は8名であった。術後7日までの連続1 km歩行が未達成であった3名のうち2名は,術後8日で連続1 km歩行を達成した。【結論】術後7日以内の連続1 km歩行を達成した者は11名中8名であり,本プログラムの有用性は不十分であった。今後,目標達成の期限やプログラム対象者の条件を再検討し,本プログラムの中長期的な効果を比較研究で検証することが必要である。
【目的】腰痛の患者立脚型アウトカム(Patient-reported Outcome Measures:以下,PROM)の使用状況,利点,使用のための条件についての認識を明らかにすること。【方法】日本筋骨格系徒手理学療法研究会会員を対象としたWeb調査を実施した。腰痛のPROM使用の有無や頻度,使用に当たっての利点,使用していない理由や使用のための条件について質問した。【結果】PROMの使用率は63.9%で,使用者の中で健康関連Quality of Life(QOL),心理社会的側面の使用頻度は各94%, 84%以上が「全く/まれに」と回答した。利点として,臨床推論プロセスや評価の質の向上,患者との情報共有などが挙げられた。使用していない理由は時間や知識の不足,実施の手間,職場の理解や環境の不足,PROMの優先順位の低さであった。PROM不使用者は使用のための時間の確保や職場の理解,PROMの教育機会の向上を求めていた。【結論】腰痛のPROMを普及するには,職場での組織的な取り組みや教育の必要性が示唆された。