理学療法学
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49 巻, 4 号
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研究論文(原著)
  • —基本属性および外向性との交互作用の検証—
    太田 幸志, 原田 和弘, 増本 康平, 岡田 修一
    2022 年 49 巻 4 号 p. 265-274
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】他者との運動実施が高齢者の運動継続に望ましい影響を与えるかと,この影響の強さは基本属性や外向性(性格の1側面)によって異なるかを検証した。【方法】神戸市灘区で計3回の質問紙調査(事前,1年後,3年後)を実施した。1年後の運動継続は434名を,3年後の運動継続は380名を分析対象とした。【結果】重回帰分析の結果,事前調査で他者と運動を実施していることは,1年後と3年後の運動継続へ有意に影響していなかった。他者との運動実施と基本属性や外向性との交互作用項のうち,仕事の有無との交互作用が3年後の運動継続へ有意に影響していた。層別解析の結果,統計的に有意でなかったが,仕事をしている者のほうが,他者との運動実施による好影響を受けやすい傾向にあった。【結論】本研究では,仕事状況によって影響の強さは異なる可能性があるものの,他者との運動実施が運動継続に及ぼす影響は限定的であることが示唆された。

  • 松下 武矢, 葉山 恵利, 中島 龍星
    2022 年 49 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】回復期脳卒中患者の膝伸展筋力と病棟歩行自立の関連を調査し,そのカットオフ値を決定すること。【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟に入院している脳卒中片麻痺患者。麻痺側,非麻痺側,および両側を組み合わせた膝伸展筋力が,歩行自立と関連するかを二項ロジスティック回帰分析で検討した。また,Receiver operating characteristic curve, Youdenインデックスにより,歩行自立のカットオフ値を算出した。【結果】解析対象者は658名(年齢中央値74歳,女性45%)で,歩行自立群は393名(60%)であった。歩行自立に対して膝伸展筋力は独立して関連しており(P<0.001),カットオフ値は麻痺側,非麻痺側,両側合計でそれぞれ,0.631 Nm/kg, 1.010 Nm/kg, 1.621 Nm/kgであった。【結論】回復期脳卒中患者において膝伸展筋力は歩行自立の判断基準となり得る。

  • 松下 健, 田中 誠也, 白川 絢日, 宮本 聖也, 岡田 麻央, 辻本 昌史, 鈴木 啓介, 中島 浩敦
    2022 年 49 巻 4 号 p. 281-288
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/09
    ジャーナル フリー

    【目的】診療記録を用いて肩関節周囲炎における臨床症状および日常生活動作(以下,ADL)や手段的日常生活動作(以下,IADL)の特徴の性差について検討した。【方法】肩関節周囲炎と診断され理学療法を実施した片側罹患例45名(男性17名,女性28名)を対象として,理学療法開始時点での患者背景情報および身体機能検査,画像検査,Shoulder36(以下,Sh36)について解析した。【結果】夜間痛の有無,患側Range of Motion(ROM)の外転,握力,臼蓋上腕角,上腕骨頭径について男女間で有意差を認めた。Sh36においては,36項目中17項目で女性が有意に低値であった。Sh36のドメインでは,健康感を除いた5項目で女性が有意に低値であった。【結論】肩関節周囲炎の日常生活への影響に性差がある可能性が示唆された。肩関節周囲炎に起因するADL・IADL制限に対しては性別を考慮した評価が必要と考える。

  • 平尾 利行, 山田 拓実, 妹尾 賢和, 白圡 英明
    2022 年 49 巻 4 号 p. 289-298
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/09
    ジャーナル フリー

    【目的】二次性変形性股関節症患者(以下,股OA)に対し理学療法を実施した際に病期によって疼痛,日常生活動作(以下,ADL),身体機能の経時変化に差があるかを明らかにすること。【方法】二次性股OA患者をKellgren/Lawrence分類Grade 1(以下,KL1)群14名,Grade 2(以下,KL2)群20名,Grade 3(以下,KL3)群16名に分類し理学療法を行った。疼痛,ADL, 身体機能を測定し3ヵ月の経過を分析した。【結果】3ヵ月を通じKL3群は疼痛が強く,ADLと身体機能は低下していたが,KL分類に関わらず3ヵ月間で改善を認めた。年齢調整後の屈曲,外転,内旋ROMはKL3群が低値を示し,このうち内旋ROMは3ヵ月間で有意な変化を認めなかった。【結論】二次性股OAに対し理学療法を実施した際,3ヵ月間の疼痛,ADL, 身体機能の経時変化は病期に関わらず改善を示す。

  • 小林 琢, 岩崎 孝俊, 倉田 裕子, 二階堂 暁, 幡 芳樹
    2022 年 49 巻 4 号 p. 299-305
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/09
    ジャーナル フリー

    【目的】後期高齢心疾患患者の基本チェックリスト(以下,KCL)によるフレイル評価と30-Second Chair Stand Test(以下,CS30)の関連性を明らかにする。【方法】対象は当院の生活習慣病外来を受診した75歳以上の心疾患患者141名(男104例,79.6±3.4歳)とした。KCL総合点と体組成,身体機能(握力,CS30),片脚立位保持時間),運動習慣,運動耐容能を測定して,その関連性を解析した。【結果】KCL総合点による分類では,対象者のうち約2割がフレイルを有していた。また,CS30とフレイルは有意に関連していた(オッズ比:0.795, 95%信頼区間:0.663–0.952, p=0.013)。【結論】後期高齢心疾患患者におけるCS30の低値は,フレイル患者の特徴を表す重要な指標のひとつである。

短報
  • 宮原 謙一郎, 若月 康次, 坪島 功幸, 太田 大樹, 片野坂 公明, 水村 和枝, 西条 寿夫, 田口 徹
    2022 年 49 巻 4 号 p. 306-312
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】線維筋痛症は広範囲の痛みを主訴とする慢性疾患であるが,痛みの主たる発生源である筋組織内の変化は十分に特徴づけられていない。本研究では,線維筋痛症モデルラットを用いた組織学的解析からこの点の解明を試みた。【方法】7~9週齢の雄性SDラットに,生体アミンの枯渇剤であるレセルピンを投与し線維筋痛症モデルを作製した。モデル動物の下腿筋標本において,壊死線維や中心核線維の有無,筋湿重量や筋線維横断面積の変化を観察・定量化した。【結果】モデル動物では,壊死線維や中心核線維は観察されなかったが,筋湿重量が顕著に低下し,筋線維横断面積が顕著に減少することがわかった。【結論】本研究ではレセルピン投与による線維筋痛症モデルラットの筋内に生じる組織学的変化を明らかにした。得られた結果は難治性疼痛である線維筋痛症のメカニズム解明に繋がる基礎的知見であり,同疾患に対する理学療法アプローチの確立に有用であると考えられる。

症例報告
  • 河合 結実, 橋立 博幸, 太田 智裕, 山根 佑典, 中筋 祐輔
    2022 年 49 巻 4 号 p. 313-320
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/09
    ジャーナル フリー

    【目的】脊髄損傷後に両下肢の痙縮と歩行障害を認めた症例に対する振動療法を併用した運動療法の経過について記述することを目的とした。【症例】脊髄損傷受傷から12週後の回復期病院入院時,歩行に全介助を要し,両側足関節底屈筋の痙縮modified Ashworth scale(以下,mAs)2,足関節背屈の関節可動域(以下,ROM)右−10°,左−20°であった。【結果】足関節底屈筋の痙縮に対する振動療法を併用した運動療法を入院後16週間行った結果,足関節底屈筋mAs右1+,左1,両側足関節背屈ROM 5°へ改善し,補装具を用いた軽介助歩行が可能となった。入院16週後以降も運動療法を継続した結果,入院24週後の退院時では,両側足関節底屈筋mAs 1へ改善し,補装具を用いずに見守り歩行が可能となった。【結論】脊髄損傷後の本症例では,振動療法を併用した運動療法が痙縮,ROM,歩行能力を改善させるために有益であったと考えられた。

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