西南日本内帯の白亜紀後期-古第三紀の鉱床と岩石産の硫化物を領家帯5個,山陽-苗木帯18個,羽越-関東帯15個,山陰-白川帯47個についてδ
34S値を測定した. 既発表資料と合わせて鉱床別平均値を, チタン鉄鉱系花崗岩地帯で109 個, 磁鉄鉱系花崗岩地帯で56個求めた. δ
34S値は鉱床のタイプや鉱種よりも先ず花崗岩系列により変化し, チタン鉄鉱系地帯では0パ-ミルよりも軽く, 磁鉄鉱系地帯では0パ-ミルよりも重い. この対配列は日本列島において特徴的なもので,“日本型”と呼ばれたが, その成因は前弧の圧縮場において形成された付加体と背弧の張力的な構造場においてマグマ活動が生じた結果として説明される. 各系列では地域別にδ
34S値と鉱種に変化が見られることがあり, これはその地域の成因的背景を暗示するものとして, ドメインと呼ばれた. チタン鉄鉱系地帯では著しくδ
34S値が低い目玉が現れ, いずれも美濃-丹波帯で代表される付加体で認められる. 付加体は深所まで達するために花崗岩マグマの発生に関与し, 泥質岩からの還元性硫黄がマグマを経由して鉱床に反映したものと考えられる. 京都の大谷-鐘打と山口県東部の目玉では鉱種がタングステンである共通性があり, Sと共にWも堆積岩に由来する可能性がある. 生野-明延多金属型鉱床は+1パ-ミル前後の値を持つ珪長質マグマから形成されたが, 明延では母岩からの硫黄の供給の可能性も考えられる.
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