北海道の然別地域に産する蛍光を呈する2つのオパール標本について,色調の異なる層状部分の化学分析を行った.化学元素と蛍光色の間に明確な関係は見い出せなかったが,化学組成についての特徴を明らかにすることができた.すなわち,不純物としてLi,Be,Ga,As,Rb,Csなどが数100 ppm,Sbが数1,000 ppmの濃度で存在していた.また,一つの試料中の異なる蛍光色を呈する部位にもかかわらず,Na,K,Li,Rb,Csのアルカリ元素やCa,Sr,Baのアルカリ土類元素は,あまり大きな濃度変動を示さなかった.蛍光現象の解明のためには,研究対象を有機化合物などに拡大した研究が必要である.
「青サバ」と呼ばれる未利用の低品位粘土質花崗岩は鉄分を含む有色鉱物を有するものの,蛙目(がいろめ)粘土の代替原料として期待されている.これまでの予察的な研究により,青サバに含まれる10 %程度のカオリン質粘土は水簸(すいひ)によって回収可能であることが判明している.そこで,本研究では,90 %を占める青サバを水簸した後の残渣を対象とし,有色鉱物に粒度特性があることに着目し,ふるい分けによる分級およびレアアースロールセパレータによる磁力選鉱で,残渣からの脱鉄を試みた.残渣の比較的大きな粒群には,有色鉱物が含有していないことが判明し,分級によって有色鉱物を適切に除去された.また,磁力選鉱では,粒度に依らず,鉄分を含む有色鉱物を良好に除去・回収された.したがって,乾式条件下では,分級および磁力選鉱を用いて適切かつ簡便に鉄分を含む有色鉱物を残渣から除去・回収できることが明らかになった.
四国東部の観音寺地域に分布する和泉層群から採取し た泥岩について放散虫化石分析を行った.全19試料を処理したうち,14 試料から放散虫化石を得た.多くの試料がDictyomitra koslovaeやAmphipyndax tylotusを含むと同時に,Clathrocyclas tintinnaeformis,Myllocercion acineton,Clathrocyclas gravisを含まないことから,山﨑(1987)のAmphipyndax tylotus群集帯(AT群集帯),Hollis and Kimura (2001)のAmphipyndax tylotus 間隔帯(At 間隔帯)及びHashimoto et al. (2015)のArchaeodictyomitra lamellicostata 帯(Al帯)に対応する.このことから,本地域における 和泉層群の堆積年代は後期白亜紀の後期カンパニアン期の前期と推定される.