ベトナム北部のタンマイパイロフィライト鉱床は5つの鉱体で構成され,うち2鉱体が開発されている. 鉱床の原岩は珪長質火山岩で,鉱床は鉄分の少ない変質岩からなる.変質岩をその構成鉱物から,カオリン帯,パイロフィライト帯,珪化帯,ダイアスポア帯,アルーナイト帯に区分することを試み,その生成順序と物理条件を推定した.最初にカオリン帯が形成された.熱水の温度上昇に伴い,パイロフィライト帯と珪化帯が,それぞれの原岩透水率の違いにより形成された.ダイアスポア帯は珪化帯中の割れ目に沿って形成されているが,その産状から熱水の温度上昇よりは,むしろ垂直的な割れ目の生成にともなうP H
2Oの低下が原因で生成されたらしい.アルーナイト帯は熱水活動の末期に形成された.鉱床の主体をなすパイロフィライト帯の形成温度は,その鉱物組み合わせからおよそ260-290°Cと見積も られる.
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