福島県南部から茨城県北部を流れる久慈川は,関東北部山地と関東平野の北東部を横断する川である.久慈川沿いに発達する段丘の編年は,関東北部山地の隆起や山地と平野部での造構運動の違いを検討する情報をもたらす.今回,久慈川右岸の大子町南田気地区に発達する段丘から,大山倉吉テフラ(DKP)を発見した.本テフラは火山ガラスが残存しており,その屈折率と主成分化学組成及び鉱物の記載岩石学的特徴は既報のDKPテフラのデータと一致する.段丘の離水年代と現河床と段丘面の比高に基づくと,関東北部山地内と関東平野部(瓜連丘陵東部)の久慈川沿いに発達する段丘は,現河床からの比高に基づく対比が可能であることが分かった.また,少なくとも最近6万年以降は関東北部山地と関東平野北部の間で顕著な造構運動の違いはなかったことが考えられた.
茨城県大子町に露出する中新統内大野層の泥岩について石灰質ナノ化石群集に基づく堆積年代の検討を行った.得られた試料のうち4地点5試料から石灰質ナノ化石の産出が認められ,それらはいずれも石灰質ナノ化石帯CN3もしくはCN4帯を示し,堆積年代は17.65 – 13.60 Ma(前期~中期中新世)の年代範囲内と考えられる.これらの結果は既存研究による火砕岩類の放射年代や珪藻化石年代と整合的である.