琵琶湖北湖の北部の最深部に近い今津沖,及び北湖の湖盆が二分された鞍部のほぼ頂上部に相当する高島沖で, それぞれ2001年と2014年に底質調査を行った.得られたコアを用いてPb-210 法及びCs-137 法による堆積速度を求め,堆積速度の変遷や過去の堆積環境を調べた.その結果,平均堆積速度は最深部に近い今津沖コアの方がわずかに大きいものの,約0.1g/cm2/y,0.1–0.3cm/yの値が得られ,従来琵琶湖で測定された堆積速度の範囲内であった. 最深部に近い今津沖のコアでは,1960年代以前の堆積物に多くの過剰 Pb-210が蓄積されており,洪水堆積物や湖底斜面表層の地震性タービダイトなどにより多くの過剰 Pb-210が供給されたと推測された.これは,1891年,1963年の地震性タービダイトや1896年,1917年の大豪雨や1950年代,1960年代の大規模な洪水に起因すると考えられる堆積物が供給されたためであり,現在よりも堆積速度が大きかったと推定される. 一方,鞍部のほぼ頂上部に相当する高島沖で採取したコアの表層部は,含水率やPb-210濃度などに変動が見ら れ,表層での底生生物による攪乱や人工的な混合などが可能性の一つと考えられた.
東北日本の北部北上帯には,玄武岩・石灰岩・チャート・泥岩・砂岩などの多様な岩石から構成される堆積岩複合体が分布する.岩手県北部の一戸−九戸地域におけるこれらの岩石のうち5地点の珪質泥岩ならびに2地点の泥岩から,Nassellaria目が卓越する放散虫群集を得た.本報告ではこれらの放散虫化石群集を記載するとともにその種構成に基づき,一戸−九戸地域に分布する珪質泥岩ならびに泥岩の地質時代が前期ジュラ紀(Toarcian)から後期ジュラ紀(Kimmeridgian)に至ると結論した.