富士火山東山麓で新たに採取された試料の14C年代測定と外来テフラの対比を行った.御殿場岩屑なだれ堆積物中の木片(OYM201,OYM201b)からは2,490 ± 20 BPと2,510 ± 20 BP,S-13 降下火砕物直下の黒色土壌(OYM202)からは2,860 ± 30 BP, 富士黒土層基底部の黒色土壌(OYM203)からは8,520 ± 30 BP,馬伏川岩屑なだれ堆積物中の木片(OYM205)からは16,270 ± 50 BPの14C年代が得られた.また,馬伏川岩屑なだれ堆積物の上位の土壌層からは,立川ローム上部ガラス質火山灰に対比される外来テフラが検出された.得られた結果から,御殿場岩屑なだれの発生年代は800 cal BC頃,馬伏川岩屑なだれの発生時期は18,000 cal BC頃と考えられる.
北陸堆積盆東部の段丘堆積物と沖積層を除く新生界層序は下位より楡原層,岩稲層,黒瀬谷層,東別所層,天狗山層,音川層下部,音川層上部,三田層,呉羽山層に区分される.このうち中–上部中新統の東別所層から音川層上部について,模式地の八尾地域と東方の相当層について対比を行った.本報告では,串田,北山,黒川及び稗畠地域における19試料について珪藻化石分析を試みた.東別所層相当層の釈泉寺層からDenticulopsis lauta帯(NPD4A)に対比される珪藻化石が得られたが,音川層及びその相当層から珪藻化石を得ることができなかった.検討の結果,各層は次のように対比される.東別所層は,釈泉寺層,笹川層,最禅層下部に,天狗山層は,最禅層上部に,音川層下部は,高畠層にそれぞれ対比される.高畠層は八尾地域東域から黒川地域では分布しない.音川層上部は早月川まで分布し,早月川以北では分布しない.
十和田火山の積算マグマ噴出量階段図を作成した.噴出量及び年代データについては,先行研究をコンパイルするとともに,不足する部分は本報告により補った.具体的には,先カルデラ期~カルデラ形成期初期の給源遠方テフラについて,筆者による層序データと先行研究による等層厚線図を用いて年代と噴出量を見積もった.本報告では,十和田火山の階段図とその根拠となるデータを提示し,この階段図を利用する際の注意事項と今後の課題について述べる.
北部北上帯南西縁に分布する中津川コンプレックスは,先行研究で報告された陸源性砕屑岩に含まれるジルコンのU–Pb年代値や示準化石から,前期ジュラ紀と中期ジュラ紀の2 つの付加体ユニットから構成されることが示唆されている.本研究では,両ユニットの分布をより詳細に制約するために,これまでに砕屑性ジルコンU–Pb年代値が報告された地点の中で,地質構造的中間に位置する大川支流域の砂岩2試料(OM-07 及びOM-06)について,砕屑性ジルコンU–Pb年代測定を行った.その結果,前期ジュラ紀(それぞれ183.3 ± 1.0 Ma と176.7 ± 1.6 Ma)の最若クラスター年代が得られた.本研究と先行研究から,本コンプレックスは南西縁部からOM-06の分布域までが前期ジュラ紀,OM-06よりも北東部が中期ジュラ紀に形成され,両者の間に有意な年代ギャップがないことが明らかにされた.