地質調査研究報告
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62 巻 , 3-4 号
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論文
  • 実松 健造, 守山 武, Sotouky Laochou, 渡辺 寧
    2011 年 62 巻 3-4 号 p. 105-129
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
     本稿はラオス南部ボラヴェン台地の玄武岩と砂岩のラテライト化によるAl,Ga,Sc の地球化学的挙動と濃集について報告する.ボラヴェン台地は新第三紀から新生代の玄武岩とその下位に位置する白亜紀堆積岩から構成される.玄武岩や堆積岩起源のラテライトはこれらの原岩の上に発達している.ラテライト化の進行によって Si,アルカリ元素,アルカリ土類元素といった移動性元素が失われ,相対的にAl,Ga,Sc といった難移動性元素が原岩に対して富むようになる.その結果,Al2O3含有量は玄武岩で10~15 %,サプロライトで16~30 %,玄武岩ラテライトで17~48 %,堆積岩ラテライトは15~47 % である.Ga 含有量は玄武岩で6~20 ppm,サプロライトで9~46 ppm,玄武岩ラテライトで24~83 ppm,堆積岩ラテライトで22~68 ppm である.Sc 含有量は玄武岩で14~23 ppm,サプロライトで14~45 ppm,玄武岩ラテライトで24~69 ppm,堆積岩ラテライトで13~84 ppm である.玄武岩ラテライトと堆積岩ラテライトの間でこれらの元素の濃集度に有意な違いは認められない.Ga とAl そしてSc とFe の間には地球化学的挙動の類似性と線的な正の相関が確認され,これらはラテライト中でGa とSc がそれぞれAl とFe を置換して存在していることを示唆する.Ga/Al 比はラテライト化の進行に伴って様々な値をとるようになるが,Ga はAl に対してほとんど枯渇することはない.Sc/Fe 比は強いラテライト化によってSc がFe に対して若干枯渇することがあることを示す.
  • 石原 舜三, 松枝 大治
    2011 年 62 巻 3-4 号 p. 131-142
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
     豊羽鉱床の第IV ステージに属するインジウム高品位多金属鉱石の化学的性質を,東西系の信濃−出雲−石見脈,西北西系の宗谷脈,南- 北系の空知−根室脈について検討した.インジウム含有量は最高1%(空知脈,-430 mL)に達するほど多く含まれるが,平均値では分析例が少ない根室- 空知脈 (4,050 ppm, 1000In/Zn=9.1, n=5),宗谷(1,467 ppm, 1000In/Zn=3.1, n=4) では少し高く,分析例が多い出雲脈(582 ppm, 1000In/Zn=1.9 ppm, n=7),信濃脈(568 ppm, 1000In/Zn=9.0, n=29),石見脈(371 ppm, n=17; 1000In/Zn=6.4 (n=16, 異常に高い1 個を除く, n=16) では一桁低下する.全平均値は854 ppm(n=62),1000In/Zn=7.1(n=61) である.これらのインジウム多金属鉱石は鉱液の供給口と考えられている南東部で多く見られる.
     インジウム含有量は鉱石の亜鉛含有量と信濃脈では正相関( 相関係数0.65)するが,この相関係数は全体としては0.51 に低下する.インジウムと錫との正相関性は,石見脈(0.71) などで局部的に高い.上下500m 間の垂直変化では,深部へ向けて亜鉛含有量は減少するが,錫と砒素,インジウム含有量は増加の傾向を示す.これらの化学的特徴は熱水鉱液中でインジウムが錫および砒素を親密に伴っていたことを示唆する.ボリビアの堆積岩地域に産出する同様なインジウム含有鉱石と比較すると,豊羽鉱床はインジウム含有量では類似するが,鉄・銅・砒素・ニッケル・コバルト・銀などに富んでいる傾向がある.他方,ボリビア産の鉱石はマンガン・アンチモン・ビスマス・錫などに富む傾向が見られる.これらの傾向はそれぞれの鉱床母岩が,豊羽鉱床で苦鉄質火山岩類,ボリビアで堆積岩・珪長質火成岩類が卓越することに関係していると考えられる.
  • -「深層熱水型資源」・「大深度(掘削)温泉」の事例研究-
    茂野 博
    2011 年 62 巻 3-4 号 p. 143-176
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
     北海道の西部と中央部の境界部に位置する太平洋岸の白老地域では,1960 年代から深度400 ~1,600 m の坑井掘削によって,温度40 ~60℃の温泉水が広域的に多量に湧出している.本地域を中心に周辺の3 広域地域(西方の第四紀火山域,東方の石狩低地帯と古第三系域)を含めて,地下(特に深度~1,500 m 深までおよび~3,000 m 深まで)に賦存する熱水系の特徴と起源を明らかにする目的で,地表水・地下水・温泉水について地球化学・同位体化学的な調査・研究を行った.これらの地域についての従来の各種研究の成果を基礎として,その結果は以下の(1) ~(4) のようにまとめられる.
     (1) 第四紀火山域(北海道西部の東縁山地にあたり,先古第三系を基盤として新第三系が分布し,第四紀火山活動が活発)では,多様な温泉が自然湧出している.特に,登別地区(高温噴気地や酸性変質帯を伴う)では,高温・高塩濃度で酸性~中性・Na-Ca-Cl 型の温泉が分布し,温泉水の高いδD 値・δ18O 値などからマグマ起源の流体の寄与が推定される.地熱開発促進調査の坑井調査によってカルルス地区周辺では,深部に隠された高温熱水系(~200℃以上)の存在が捕捉されている.
     (2) 白老地域(下記(3) の石狩低地帯の南西端部にもあたるが,北海道西部に位置して上記(1) の第四紀火山域に接する海岸平野~丘陵域)では,低塩濃度の中性・Na-Cl 型(西部ではSO4 に富み,東部ではNa-HCO3 型となる傾向)の温泉水が上記のように湧出し,西部では最高90℃/km に達する温泉水の湧出温度に基づく高い見掛けの「地温勾配」を持つ.本地域(特に西部・中部)の温泉水については,近接する第四紀火山群の分布,上記の化学的・温度的な特徴,温泉水の同位体組成(~+1.0‰のδ18O 値シフト),地球化学的温度計(Na-K 温度計,Na-K-Ca 温度計,混合水モデルによるSiO2 温度計)による高い推定温度(200 ~250℃)などから,(1) の西方山地への降水を起源として地下深部のマグマ溜まり~高温火成岩体を伝導的な熱源とした潜頭性の本源的な深部高温熱水系(白老地域に近接する上記のカルルス地区周辺で捕捉されたものに類似)が起源となっている可能性が高いと推測される.δD 値・δ18O 値の特徴などから,白老地域の熱水系については上記の登別地区のようなマグマ起源流体の寄与は小さく,また倶多楽湖・支笏湖の湖水,海水・化石海水の寄与は非常に小さいと言える.
     (3) 石狩低地帯(新第三紀~第四紀の海成堆積岩類が厚く分布する大規模な沈降帯で,地温勾配が低い)では,「大深度温泉」は広域的に深部に分布し高塩濃度・中性・Na-Cl 型の海水~化石海水を主要な起源とするものと,西部などの相対的に浅部に分布し低塩濃度・中性・NaHCO3 型の降水を起源とするものに概略的に2分される.石狩低地帯西部の千歳蘭越地区の深度~1,000 m からの低塩濃度のものは,特異的に低いδD 値・δ18O 値を持ち,上記(1) の西方山地の標高~1,000 m の降水(過去の寒冷期の可能性あり)を起源としていると推定される.一方,石狩低地帯東部の馬追松原地区の浅い坑井からの低塩濃度と高塩濃度の温泉水は,分布する活逆断層・褶曲によって地下深部から温泉水が上昇していることを示す.
     (4) 古第三系域(上記(3) の石狩低地帯の東方で,夕張山地の南縁部−日高山脈の西縁部の丘陵地にあたり,白亜紀~新第三紀の海成堆積岩類が厚く分布する複雑な逆断層・褶曲帯)に湧出する穂別村上地区の温泉水は,低温・高塩濃度の中性・Ca-Na-Cl 型で高いδD 値・δ18O 値を持ち,起源水として続成作用が進んだ化石海水に富むと考えられる.北方の夕張炭田地域では,同様の化学的特徴を持つ「大深度温泉」(深度~1,500 m で~57℃)が開発されるとともに,石油・天然ガス基礎調査の「基礎試錐」のコア試料によって,衝上断層群の周辺に~200℃以上で生成した流体包有物の分布が報告されている.これらのことは,太平洋プレート−スラブの斜め沈み込みによって,千島弧の前孤域に位置するが特異な隆起・断裂形成環境にある夕張山地−日高山脈とその周辺地域では,地下深部から上昇するかなり高温の温泉水が少なくとも局地的に賦存していることを示唆している.
短報
  • 下司 信夫, 大石 雅之
    2011 年 62 巻 3-4 号 p. 177-183
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
     新期榛名火山の主要な3回の火砕噴火の噴出物について,炭素14年代値が得られたので報告する.得られた年代値は白川火砕流堆積物から2件,二ッ岳渋川テフラから3件,二ッ岳伊香保テフラから4件である.白川火砕流から得られた年代値は45 ka であり,これは新期榛名火山最初で最大の火砕噴火の年代を示す.二ッ岳渋川テフラから得られた年代値は1540~1640 yr BP であり,また二ッ岳伊香保テフラからはいずれも1480 yr BP の年代値が得られた.これらの結果は,二ッ岳渋川噴火は5世紀末~6世紀初頭にかけて,伊香保噴火は6世紀後半から7世紀初頭にかけて発生したことを示す.
資料・解説
  • 小泉 尚嗣, 松本 則夫, 頼 文基
    2011 年 62 巻 3-4 号 p. 185-190
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    Geological Survey of Japan, AIST has been carrying out the cooperative research entitled "Hydrological and geochemical research for earthquake prediction in Taiwan" with Disaster Prevention Research Center, National Cheng-Kung University, Taiwan since 2002. We made much contribution to clarifying the mechanism of groundwater changes and their recoveries related to the 1999 Chichi earthquake, constructing a groundwater observation network composed of 16 wells in Taiwan and understanding the earthquake-related groundwater changes observed by the new groundwater observation network through this cooperative research. In Taiwan seismicity is more active and crustal deformation is more rapid than in Japan. Therefore observation and analysis of groundwater changes related to earthquake and crustal deformation in Taiwan will enable us to make rapid progress in hydrological and geochemical research for earthquake prediction. This cooperative research will also give important information for evaluation of long-term groundwater changes in tectonically active areas like Japan and Taiwan.
  • 内野 隆之, 堀 利栄
    2011 年 62 巻 3-4 号 p. 191-196
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
        Late Triassic radiolarian fossils were extracted from siliceous mudstone in an accretionary complex of the Ashio Terrane in the Kamo district (Quadrangle series 1:50,000 of the Geological Survey of Japan), Niigata Prefecture, Japan. The siliceous mudstone occurs as a block within a muddy matrix. The siliceous mudstone also belongs to the upper unit of the Senmi Complex, which is distributed widely in the Kanbara Mountains within the Kamo district. The fauna in the siliceous mudstone consists mainly of species of the genera Canoptum, Betraccium, Cantalum and Fontinella, including Canoptum sp. cf. C. rhaeticum, Fontinella sp. cf. F. clara, Fontinella sp. cf. F. primitiva etc. Based on radiolarian biostratigraphy of these taxa previously documented elsewhere, the radiolarian fauna studied was dated to the Late Triassic (Rhaetian). This is a first report of Triassic radiolarian fossils from clastic rocks of the Ashio Terrane in the Kanbara Mountains; thus, this find contributes to reconstructions of oceanic plate stratigraphy of the Ashio Terrane in this region.
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