地質調査研究報告
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62 巻, 9-10 号
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論文
  • 坂田 健太郎, 中澤 努, 中里 裕臣
    2011 年 62 巻 9-10 号 p. 329-345
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
        Sedimentary facies and tephrochronology of the Pleistocene Shimosa Group in the GS-YS-2 core recovered from Yashio, Saitama Prefecture, central Japan are examined. Our detailed examination reveals that the depth range of 37.02-94.40 m which corresponds to the Shimosa Group is divided into 10 lithofacies units, A to J. Of them, Units G and J are composed mainly of humic mud interpreted as marsh facies. Units A, D, E, and H are characterized by bioturbated sandy mud and/or muddy sands indicating bay facies, and Units B, F, and I consist of well-sorted sands interpreted as shoreface to beach facies. We recognize four depositional cycles corresponding to the formations in the standard division of the Shimosa Group. Each of them comprises the marsh, bay, and shoreface to beach facies in ascending order. Consequently, the examined interval in the core section is divided into four formations; they are Formation I (Units A and B), Formation II (Units C, D, E, and F), Formation III (Units G, H, and I), and Formation IV (Unit J).     The core section intercalates some tephra layers. The lowermost tephra layer in the core section is A1Pm (TE-5a) of the Omachi APm series, known as a marker tephra indicating MIS 11. It is intercalated in Formation II. A tephra layer which is similar to BT-72 considered to have falled at MIS 10, is recognized in the lowermost part of Formation III. Therefore, Formations I to IV are correlative with the Kasamori Formation of the Kazusa Group, the Jizodo Formation, the Yabu Formation, and the Kamiizumi Formation of the Shimosa Group, respectively.     The correlation between the GS-YS-2 and the other cores in the central Kanto Plain makes it clear that each formation of the Shimosa Group becomes thicker and represents deeper distribution northeastward from the GS-YS-2 drill site. These characteristics are distinctive particularly in the lower formations. These indicate that the area northeast of the GS-YS-2 drill site was continuously subsiding during the deposition of the Shimosa Group.
  • 太田 充恒, 鍵 裕之, 津野 宏, 野村 昌治, 岡井 貴司, 柳澤 教雄
    2011 年 62 巻 9-10 号 p. 347-355
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
     土壌中の腐植物質による六価クロムの還元反応をよりよく理解するために,フミン酸を六価及び三価クロムと反応させ,それらを赤外分光法およびX 線吸収端近傍構造( XANES) を用いて特性解析を行った.六価クロムによって酸化されることで,腐植酸中のアルデヒド基,ケトン基,カルボキシル基が増加することが期待される.しかし,これらの官能基に該当する赤外吸収スペクトルバンドに有意な強度の増加は認められなかった.六価クロムによって酸化された腐植酸の赤外吸収スペクトルは,三価クロムと反応させた腐植酸のスペクトルに類似していた.つまり,今回の実験条件下では,酸化還元反応の前後でクロムの結合に関与する官能基の種類または量に大きな変化がない事を示している.六価・三価クロムと反応させた腐植酸の赤外吸収スペクトルには,3,400 cm-1,1,608 cm-1,1,384 cm-1 の吸収強度が増加し,1,707 cm-1 や1,236–1,250 cm-1 の吸収強度が減少する傾向が認められた.これらの特徴から,クロムは2 つの異なる結合形態を持っていると考えられる.すなわち,水和したクロムが腐植酸に外圏錯体として結合しているものと,腐植酸のカルボキシル基と内圏錯体として存在しているものである.
     次に,クロムのK 吸収端XANES スペクトルを測定したところ,六価から三価に還元されたクロムが腐植酸と結合することが明らかになった.実験溶液中の六価クロム濃度の変化の違いによるXANESスペクトルの変化は認められなかった.これらの結果は赤外スペクトルの特徴と一致する.赤外スペクトルによって示唆された2 種類の結合形態の割合は,XANES スペクトルを用いることで定量的に見積もることができ,水和したクロムイオンが静電的に腐植酸に吸着した割合が50 %,腐植酸中のカルボキシル基と結合したクロムの割合が50%であった.しかし,実験溶液中のpH が高くなるにつれ,一部のクロムが水酸化物として沈殿することも明らかになった.そのため,水酸化クロムの沈殿を避けるためには,pH をより低くする,クロムの濃度を下げるなど注意が必要である.
  • −地質調査総合センターに設置されたシステムを例に−
    金井 豊, 齋藤 文紀
    2011 年 62 巻 9-10 号 p. 357-369
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
     地質調査総合センターにおいて低レベル測定を目指した新たなガンマ線測定システムを立ち上げ,更新機器と従来の機器の特性の違いを種々検討し,以下のことを明らかにした.
     デュワー瓶と検出器との配置はJ 型のクライオスタットとし,不純物の少ない無酸素銅などを検出器素材に使用し,さらに測定室空間を小さくすることなどは,バックグラウンドの低減に有効であった.
     検出器と試料とのジオメトリーの関係は,試料容器において1 mmの高さ変化に伴い,最大でも約1 %程度のピーク強度の変動が見られ,試料高さ補正をmm単位で行うか,高さをそろえる必要がある.点線源を用いた実 験や井戸内の点線源位置だけを考慮したモデル計算では,実際の計数率の変化を表すことはできず,試料自体が厚 みを持つことによって生じる自己吸収による検出効率の影響因子の方がはるかに大きいことが判明した.
     本システムにおいては,バックグラウンドにPb-210が検出されないため定量下限が低く,低濃度の堆積物中のPb-210 測定において良好な測定が可能である.しかし,原発事故によって生じた検出器汚染は,繰り返し洗浄によって低減したものの,Cs-137の汚染に関しては堆積年代算出の利用において注意が必要である.
概報
  • (コロイド特性把握の研究その3)
    金井 豊
    2011 年 62 巻 9-10 号 p. 371-388
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
     環境中におけるコロイドの特性把握の研究の一環として,限外ろ過法による試料の濃縮・分離に関してモデル実験−シミュレーション計算によりその手法の適用性・妥当性を検討した.クロスフローろ過法(CFF)では,溶存粒子の濃縮が可能であるが,粒子濃度の定量においては,濃縮係数の補正だけでは不十分であり,フィルターの孔径に近い粒子(保持係数Rc が0<Rc<1 のもの)では十分な分離が困難であるため,時系列に沿った濃度変化から粒子濃度が求められる.モデル実験計算の結果では,ある成分のいろいろな粒径の混合した試料を分離する際には,0<Rc<1 に該当する粒子の割合によって粒径分離の良否が決まることが明らかとなった.厳密な定量には時系列解析が必要であるが,簡便・迅速さから見た場合には適度な濃縮係数での分離でも粒径の大きなコロイド粒子の過大評価とはなるものの,地層処分においてより安全側に評価できる.
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