地質調査総合センター(旧地質調査所を含む)による2000年から2010年の第2白嶺丸の航海に対して1分間隔の均質な重力異常データを整備した.1秒(以下s)間隔の生データにカットオフ周波数1/480 Hz(周期8 分)の8次Butterworthローパスフィルターを施すことにより高精度のフリーエア重力異常データを作成した.北海道沖オホーツク海で取得されたGH00・GH01航海,北海道南方で取得されたGH02・GH03・GH04・GH06航海,そして沖縄島周辺で取得されたGH08・GH09・GH10航海それぞれの重力異常データの互いに交差する測線間の二乗平均平方根交点誤差(RMS COD; root mean square crossover difference)は0.86 mGal,1.02 mGal,1.30 mGalである.航海データと衛星アルチメトリデータの差が3~ 5 mGalと大きくなっているのは,(1)水深が浅い海域の第2白嶺丸のフリーエア異常データに見られる短波長の異常が衛星アルチメトリでは見られないこと,(2)衛星アルチメトリデータは陸の近傍で精度が低下すること,これら2 つが要因とみられる.航海毎のフリーエア重力異常を計算した重力データファイルを地質調査総合センター研究資料集として公開予定である.
東京都世田谷区の武蔵野台地で掘削された上用賀GSSE-1及び駒沢GS-SE-3コアの更新統下総層群東京層の有孔虫・貝形虫化石分析を行った.38試料を処理し18試料から有孔虫化石が産出した.底生有孔虫は18 属40 種が認められた.浮遊性有孔虫は認められなかった.14試料から貝形虫化石が産出した.貝形虫化石は21属41種が認められた.産出した有孔虫と貝形虫化石群集に基づき,東京層下部をⅠ– Ⅵ帯に,東京層上部をⅦ・Ⅷ帯に区分した.その結果,東京層下部のI帯は湾奥部,Ⅱ– Ⅳ帯は湾央部,Ⅴ帯で湾域が縮小し湾央部から湾奥部,Ⅵ帯で湾口部の環境が推定された.東京層上部のⅦ・Ⅷ帯は,海進が進み開放的な湾の湾口部で海岸付近の環境が推定された.
盛岡市薮川地域,外山川沿いの谷底低地を埋める第四紀堆積物から80 cm厚の降下火砕堆積物を発見し,薮川テフラと命名した.本テフラは発泡した軽石を多く含み,中性~珪長質火山岩,トーナル岩,チャートなどの石質岩片を少量伴う.また,テフラ中には高温型石英・長石・普通角閃石・直方輝石・チタン鉄鉱・黒雲母が含まれる.テフラに含まれる火山ガラスの組成は比較的高いSiO2・K2Oと低いCaO・MgO・TiO2で特徴づけられ,またその屈折率は1.495 – 1.498である.軽石中のジルコンからは0.24 ± 0.04 Maのフィッション・トラック年代が得られ,本テフラはチバニアン期後半に堆積したと判断される.そして,記載岩石学的特徴,火山ガラスの屈折率,ジルコン年代などから,岩手山東麓に分布する大台白色火山灰に対比できる可能性がある.
産業技術総合研究所では,これまで水道水中の非メタン炭化水素(NMHC)濃度の経時変化や,脱NMHC水の作成の研究を行ってきた.これらの研究では濃度測定に水流法を用いてきた.水流法では,水中NMHCの一部のみを検出している.そのため,水試料間の比較や経時変化の観測には使用可能であるが,全濃度の評価は不可能であった.今回,水試料中のNMHC濃度を水流法で測定するとともに,パージアンドトラップ法でその全濃度を評価した結果,水流法で得られた濃度の7倍が全濃度の概算値であることが明らかになった.