前報で報告したソルガム幼植物の低温障害を軽減する効果のあるコレステロールに類似して, 生体膜を安定化する効果があると考えられる非ステロイド性消炎剤, 抗ヒスタミン剤, 局所麻酔剤の低温障害軽減効果について検討した。非ステロイド性消炎剤アセチルサリチル酸メチル, エトキシベンズアミド, イソブチルフェニル酢酸あるいは抗ヒスタミン剤ヂフェンヒドラミン塩酸の2.6×10
-4M~8.6×10
-3M水溶液を土壌に灌注すると, ソルガム幼植物の低温障害が軽減されることが認められた。10
-2以上の比較的高濃度では, 低温障害軽減効果は著しいが, 常温下で薬害を生じた。局所麻酔剤P-アミノ安息香酸エチルの2.9×10
-3M ~8.6×10
-3Mで処理した場合は, 低温障害軽減効果はある程度認められるが, 常温下で薬害を生じた。オーキシンがmembrane stabilizerとして作用することは知られていないが, オーキシンによって増加する3', 5'-cyclic AMPがmembrane stabilizerとして作用する可能性が考えられる。バーミキュラィト培地に育てたソルガム幼植物に, IAA, NAA, MCPのそれぞれ10
-4~10
-5M, 10
-5~10
-6M, 10
-6~10
-7M の水溶液を培地に灌注して与えると, 低温障害が軽減することが認められた。3', 5'-cyclic AMPを分解するフォスフォヂエステラーゼの阻害剤であるテオフィリンでも低温障害軽減効果が認められた。つぎに, グリセロールがソルガム幼植物の低温障害を軽減する効果があることが前報で認められたので, 本報では二, 三のグリセロール誘導体および多価アルコールについて検討した。グリセロリン酸, ヂヒドキシアセトン(2量体), キシリトール, イノシトール, マニトールなどの5.4×10
-3M~2.0×10
-2M水溶液の土壌処理で, 低温障害が軽減されることが認められた。なかでもヂヒドロキシアセセトン(2量体)の効果は顕著で, 常温下でも薬害を生じなかった。さらに, 蛋白質分子の側鎖間に架橋して, 蛋白質の変性に対する安定性を増大することが知られているグリオキサールとその同族体である数種の2価カルボニル化合物について実験したところ, やはり低温障害軽減効果が認められた。したがってヂヒドロキシアセトンの低温障害軽減効果が著しい理由には, 蛋白質の疎水結合の安定性に対する影響のほかに, 架橋作用も関係していると推測した。
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