ミャンマーの主要な高収量品種Manaw Thu Kha(MTK)の移植後の初期から中期における生育と乾物生産特性の解明を目的として, 比較品種に日本のコシヒカリ(KH)と日本晴(NB)を用い, 2002年~2004年に春季と夏季の年2回ずつポット栽培を行った. MTKの生育はKH, NBに比べて出葉が早く, 茎数が多く, 葉面積が大きい傾向が見られた. 出葉速度の差は夏季よりも春季に顕著で, 移植後30日目にはMTKの主稈葉数はKH, NBよりも1枚以上多くなった. 茎数は2004年には春季, 夏季とも日本品種のおよそ2倍に達した. MTKの乾物重はKH, NBに比べると春季は同程度か小さい傾向にあったが, 夏季では大きく, 特に高温の2004年は春季, 夏季とも大きかった. また, MTKはKH, NBに比べて葉面積当り窒素含有量(NCLA)が常に低く, その差も大きかった. 生長パラメータについて見ると, MTKの相対生長率(RGR)は春季ではKH, NBと同程度かやや小さく, 夏季では同程度かやや大きかった. 純同化率(NAR)は春季, 夏季ともKH, NBより小さい傾向が見られた. 一方, 葉面積比(LAR), 比葉面積(SLA)は年, 春季, 夏季を通してMTKが常に大きかった. また, NARとNCLAの間には正の, NCLAとSLAには負の相関関係が認められたが, MTKはKH, NBに比べてNARが小さい夏季でもRGRが比較的大きかったことから, MTKは葉身が薄化してNARが低くてもLARがそれを補うほどに拡大して乾物生産を維持していた. 以上から, 移植後初期から中期にかけてのMTKの生育は日本品種に比べて出葉が早く, 分げつの発生が旺盛で, 葉身の薄化によって葉面積の拡大を図り, 乾物生産をLARに依存していることが特徴であった.
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