前報において,摘心による生長部(sink)の除去が,葉のタンパク分解および葉からのチッソの流出をともに抑制する事実を明らかにしたが,このことは,葉の全タンパグ質のターンオーバーが,sinkの大きさによって規制されているという可能性を示している. そこで本実験では,大豆の各本葉について,葉面の1/3,1/2,2/3を段階的に除去し, sink(生長部)とsource(成熟葉)の比率を異にする材料を用いて,sinkの相対的な大きさと,葉のタンバク質のターンオーバーの関係を調査した. 各摘葉区の植物にまず24時間
15Nをパルス供与し,葉のタンパクおよび全チッソ部分にとりこまれた
15Nの,その後の変化を8日間追跡調査して次の結果をえた. 成熟葉では,摘葉の程度が増加するにしたがい,葉のタンパク分解速度も増大した. 言いかえれば,一定葉量に対してsinkが相対的に増大すると,葉のタンバク分解は急速となる. したがってsinkの大きさは,葉のタンパクのターンオーバーをかなり規制するものと思われる. また摘葉処理は,その程度に応じて,葉からのチッソの転流速度をも増加せしめた. sinkとしての生長部分には,いったん成熟葉その他の器官にとりこまれた
15Nが,再分布の過程を通じて配分され,かなりの量に達したが,処理区間に大きな差は認められなかった. なお摘葉処理の2次的影響として,各摘葉区の葉のタンパク態チッソ含量が著しく増加したが, このことは,摘葉区の成熟葉において,タンパクの分解のみならず,合成も増加したことを示すもので,大豆の葉のチッソ代謝機能を考えるうえで,注目すべきことのように思われる.
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