日本作物学会紀事
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64 巻, 4 号
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  • 玉置 雅彦, 吉松 敬祐, 堀野 俊郎
    1995 年64 巻4 号 p. 677-681
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲有機農法(無化学肥料, 稲わら還元)実施後1年目から16年目までの米のアミログラム特性値と, 窒素およびミネラル含量を測定した. 米粉の最高粘度とブレークダウン値は, 有機農法実施年数の増加にともない増加した. 窒素およびミネラル含量は, 有機農法実施後1年目では慣行農法の結果と大差なかった. しかしながら, 実施年数の増加にともないN, P, K含量は減少しMg含量は微増した. これら成分含量の増減傾向は, 実施後5年目頃までの変化が大きかった. 食味指標としてふさわしいと考えられたMg/K比と最高粘度およびブレークダウン値との間には, 有意な相関が得られた. 以上のことから有機農法実施年数の増加にともない, 物性面ではデンプンの粘りの向上により, 成分面からみると, Mg含量の微増とK含量の減少とが関与するMg/K比の増加により, 食味は向上することが示唆された.
  • 冨森 聡子, 長屋 祐一, 田代 豊, 谷山 鉄郎
    1995 年64 巻4 号 p. 682-691
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ゴルフ場で使用される肥料について1993年6月から1994年5月末までの1年間, 4日間隔8日間隔で採水し, 肥料成分の流出特性を把握し, その負荷量を算出した. 結果は次の通りであった. 全窒素は施肥後2~3日で無施肥時に比し高濃度に検出され始め, 施肥量の多い5月に最高濃度を示した. 全リンも同様, 施肥後1~2日で無施肥時に比し検出濃度の上昇がみられ, 春期に高濃度を記録した. 7種類の肥料が使用され, 散布量は年間, 約28トンであった. グリーンに最も多量の肥料が散布された. ゴルフ場の流出負荷量は森林の負荷量に比し, 全窒素は4倍, 全リン43倍と, 特に全リンの負荷量が多かった. ゴルフ場の芝草管理と水稲栽培における施肥量を比較すると前者は窒素11.2kg/10a, リン14.2kg/10a, カリウム10.0kg/10aで, 後者は窒素8~15kg/10a, リン10~20kg/10a, カリウム10~20kg/10aであるので, 肥料の使用量については類似していた. 以上のことから, 全国のゴルフ場は砂主体で, しかも排水第一に造成されており, かつ芝草管理も類似していることから, ごく一般的な中堅クラスのゴルフ場においても, 排水は農業用水や河川, 飲料水源, 地下水等, 周辺環境の水系に負荷をおよぼしていることが示唆された.
  • 湯川 智行, 渡辺 好昭
    1995 年64 巻4 号 p. 692-697
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    越冬前のコムギ茎基部に含有されるフルクタンの分子量分布について, 品種育成の系譜上の29品種を用いて調査した. その結果, 多くの品種で低分子のフルクタンを多く蓄積する傾向がみられ, その蓄積量の品種間差が顕著であった. 分子量分布の品種間差を明確にするために, 高分子と低分子のフルクタン, さらに単少糖類に分けてクラスター分析を行なった. その結果, フルクタンの多い品種群と少ない品種群, さらにこれらのクラスターから独立したVelvetと本育49号の4つのクラスターに分類できた. Velvetと本育49号は高分子のフルクタンが多い特異的な分子量分布を示し, 今後フルクタン含有率を高めるうえで有用な遺伝資源と考えられた.
  • 吉田 智彦
    1995 年64 巻4 号 p. 698-702
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    北部九州での水稲早期栽培の後作を想定し, 6種類の穀類を8月10日~30日に播種して子実収量をみた. 比較として5月播種も行った. 子実として固定された太陽エネルギーの割合は最大0.2%前後で, キビ, アワ, ソバは5月播種より高かった. 最大葉面積指数は5月播種より小さかった. CGRや乾物生産における太陽エネルギー利用効率は生育前半で5月播種より大きく, 後半で小さくなった. 収量はソルガム, キビ, アワは8月10日播種で151~131 gm-2であり, 20日播種は低下した. 一方ソバ, オオムギは30日播種でも130, 119gm-2の収量が得られた. ヒエは低収であった. アワは登熟期間の有効積算気温の減少による収量低下程度がソルガム, ヒエに比べて著しく, 一方ソバは収量の変動が少なかった. 8月播種に向く品種改良の可能性は大きいと思われる.
  • 山口 武視, 津野 幸人, 中野 淳一, 真野 玲子
    1995 年64 巻4 号 p. 703-708
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲茎基部からの出液は, 根の呼吸に関連する生理活性と関係していると考えられるが, 同一の齢でも出液速度が大きくばらつくことが指摘されている. そこで, 出液の測定条件を検討し, 出液に関与する要因を明らかにして, 出液速度で生理活性を把握できるかどうかを検討した. 同一個体内で出液を採取する茎以外の茎に葉が着生していると, それの蒸散のために出液量が減少した. したがって, 出液を採取する際には, 測定個体のすべての茎を切除する必要を認めた. 切断部の茎断面積と1茎当たり出液速度とは高い正の相関関係があり, 断面積の大きい茎, すなわち太い茎は茎断面積当たりの出液速度も高い値であった. 地温が7℃から29℃までの範囲では, 出液速度は地温に伴って指数関数的に増加し, その温度係数(Q10)は2.2で, 根の呼吸速度の温度係数とほぼ同じ値であった. 上記の測定条件を考慮したうえで, 穂ばらみ期以降の根の呼吸速度と出液速度との関係を検討した結果, 両者の間には高い正の相関関係が認められた. これより, 根の生理活性が重要な問題となる登熟期では, 出液速度から根の生理活性を推定することができ, 出液速度の測定は, 根の診断のうえで有効で簡便な手法のひとつとしてあげることができる.
  • 松江 勇次
    1995 年64 巻4 号 p. 709-713
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1993年の低温, 寡照条件下における米の食味と理化学的特性について検討した. 1993年産米には食味の低下が認められた. 1993年産米の理化学的特性は1992年産米に比べて, タンパク質含有率, アミロース含有率は高く, 最高粘度は低く, ブレークダウンは小さかった. 食味低下の要因は登熟期間中の低温, 寡照条件によるタンパク質含有率とアミロース含有率の増加および最高粘度とブレークダウンの低下によるもので, なかでも最高粘度が大きく関与していた.
  • 松江 勇次
    1995 年64 巻4 号 p. 714-716
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1993年の低温, 寡照条件下における米の食味および理化学的特性に対する苗の種類の効果について検討した. 中苗の食味総合評価は稚苗に比べて優れた. このことは中苗の方がタンパク質含有率, アミロース含有率は低く, 最高粘度は高く, ブレークダウンが大きかったことと大きく関与していた. 苗の種類の違いによる食味および理化学的特性の差は出穂期の早晩による登熟温度と穂揃性の良否による米粒の充実度の差に由来すると考えられた.
  • 柏葉 晃一, 松田 智明, 長南 信雄
    1995 年64 巻4 号 p. 717-725
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    マメ科作物の種子における貯蔵物質蓄積の微細構造的特徴を明らかにするため, 登熟中のソラマメ子葉柔細胞における貯蔵タンパク質の蓄積について, 走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡による観察を行った. 登熟初期には大型の液胞中に顆粒状態のタンパク質が蓄積された. その後, 大型の液胞は中~小型の液胞へと分割し, 急速にタンパク質の蓄積量を増加させたのちにタンパク顆粒を形成した. 小型化した液胞の周囲には発達した粗面小胞体(RER)が認められ, RERの発達様相は種子の登熟後期まで維持されていた. 透過電子顕微鏡の観察によると, タンパク質の蓄積が盛んな液胞の周囲には, RERと電子密度の高い物質を含む小胞が多数認められた. これらの小胞はタンパク質蓄積の進行にともなって数量を増すことから, タンパク質輸送への関与が推定された. また, タンパク顆粒の形成が盛んな時期には, RERの一部にタンパク質を蓄積する袋状に拡張した構造が認められた. この袋状構造も液胞と同様にタンパク顆粒の形成に関与していた. タンパク顆粒の形成は登熟の中期以降, 後期にかけて最も盛んであった. デンプンの蓄積も登熟の中期以降急速に高まったが, アミロプラストはタンパク顆粒に先行して肥大を完了した. 以上の観察結果から, 登熟中のソラマメ子葉柔細胞におけるタンパク質の蓄積には, 液胞とRERが密接に関与することが明らかになった. タンパク顆粒の形成には液胞の分割による経路と, RERの袋状構造に由来する経路の2経路が認められた.
  • 三本 弘乗, 今井 清之, 大門 弘幸, 大江 真道
    1995 年64 巻4 号 p. 726-733
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉緑素計を用いて葉色を測定する場合には, その値が最も安定している最上位展開葉の下の第2葉の葉身の中央で, 中肋をはずした部位が適切とされている. その際に, 左・右葉半における葉色の差異を考慮にいれて測定しているという報告は極めて少ない. 左・右葉半における葉色の差異はミノルタ葉緑素計SPAD-502による測定値で1.3~5.4(窒素含有率で約0.1~0.5%)と意外に大きく, 無視できないことを日米の6品種を供試して明らかにした. また, この葉半間における葉色の差異をみると, その葉の葉鞘の葉縁が外側になっている葉半側(外葉半)で葉色が濃く, 葉幅が狭いことを明らかにした. 各葉を葉位ごとに葉の表の側からみた場合に, 葉色の濃い葉半側(または葉色の淡い葉半側)は, 従来葉の巻性の葉位において認められている交互性と同じように左右交互に規則正しく配列していることを認めた. 第n葉は前の葉の第n-1葉に同調して外(または内)葉半が決まるが, 従来の報告と同様に第3葉以上から同調傾向が現れ, 同調率は下位葉で低く, 上位葉になるにつれて高くなり, 本実験では第6~第7葉以上で約100%の同調率となった. また第3葉の左(または右)が外(または内)葉半になる確率は約50%で, 全く偶発的に決まるとみられるが, 発芽の際に遠心力等の外的なカを加えると, カのかかった側が外葉半になる確率が高くなることを明らかにした.
  • 斎藤 満保, 後藤 雄佐, 松森 一浩, 山本 由徳
    1995 年64 巻4 号 p. 734-739
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    乳苗の育苗を出芽器内だけで完結させる育苗法に, 緑化過程を取り入れる方法を開発し, その緑化苗の特質と, 水田に機械移植した時の植え付け姿勢を調べた. 水稲ササニシキを2種類の培地(I, II区)を用い, 31℃の出芽器で4日間育苗した. 育苗は, 積み重ね方式で出芽させ, 播種後約30時間で棚(間隔14cm)に積みなおした. 棚積み後に, 光を通さない保温カバーのままの暗区と, 透明エアーキャップシートで作った保温カバーに替えて補光した光区とを設けた. 光区の保温カバーは, 真横から補光すると光が散乱し, 出芽器内全体が明るくなった. 光区では第1葉と第2葉葉鞘(LS2)は淡緑色, 第2葉葉身(LB2)が濃緑色の「緑化苗」を得ることができた. 光区の苗の草丈は, LS2長の影響を受け暗区の苗と同じかやや短くなった. しかし, LB2は同じか長く, 光による伸長抑制は認められなかった. 光区の苗は硬く弾力があるのに対し, 暗区ではやや折れやすい感触であった. また, 培地が異なることで, 草丈など苗形質に差が現れた. II区の草丈は, 機械移植に必要とされる6cm以上を確保できたが, I区では5cmほどであった. このように全面的に胚乳養分に依存していると考えられる初期の4日間の育苗でも, 肥料だけでなく培地の素材も影響を与えることが推察され, 乳苗育苗において移植に必要なマット強度以外でも培地素材の重要性を指摘した. 水田での植え付け姿勢は, 草丈が短いにもかかわらず光区の方が暗区より良かった. これは, 緑化により苗の弾力性等の物理的形質が向上するためと考えた.
  • 山下 正隆, 武弓 利雄, 佐波 哲次
    1995 年64 巻4 号 p. 740-746
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    樹齢18年の茶園において, 断根が根群の再生に及ぼす影響を検討した. 断根処理翌年の秋季までに, うね間部における深さ20cmまでの土層内の白色根量は9月下旬強断根+窒素施用区が対照区の約2倍に達したが, 8月下旬弱断根区は対照区とほぼ同等であった. さらに, せん枝区での白色根量は8月下旬強断根区, 9月下旬強断根+窒素施用区とも対照区に比べてかなり少なかった. 放射化分析法を用いて推定した根の活力は, 9月下旬強断根+窒素施用区が株元部, うね間部の深さ20cmまでの比較的浅い土層で対照区に比べ明らかに高まった. しかし, 8月下旬弱断根区では株元部, うね間部ともに深さ40cmまでの土層で活力の向上は小さかった. さらに, せん枝を伴った8月下旬強断根区では株元部, うね間部のいずれの土層でも活カは大きく低下していた. これらの根の活力の強さは同一土層内の白色根量とよく一致した. 一方, 断根処理当年の秋芽生育は抑制され, 特に, 断根時のせん枝は生育を顕著に遅らせた. 以上のように, 断根処理後の地上後, 地下部の生育は, 成木茶樹においても幼茶樹と同様の反応を示すことが明らかとなり, 断根処理は樹齢を問わず茶樹の樹勢更新に有効であると結論された. 茶樹における放射線化分析法は, 精度的な問題はあるが, ほ場での根の活力を大まかにとらえる手段として利用可能と考えられた.
  • ウデイン S.M.モスレム, 村山 盛一, 石嶺 行男, 続 栄治, 原田 二郎
    1995 年64 巻4 号 p. 747-753
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    木酢液・木炭混合物(サンネカE)が夏植サトウキビの乾物生産および根の生育に及ぼす影響を明らかにするために, サトウキビ品種NCo310を供試し, サンネッカE施用量を0(対照区), 200, 400および800kg/10aの4水準設定して5反復で実験を実施した. その結果, サンネッカE施肥により茎重, 茎長, 茎径, 糖含量等のサトウキビの収量構成要素が増大した. サンネッカE施用区におけるCGR, NARおよびLAIは対照区より高い値を示し, CGRとNARおよびLAIの相関は有意であった. 原料茎収量, 葉糖収量および全乾物重もサンネッカE区が対照区よりそれぞれ13-24%, 19-31%および14-20%増加した. また, 原料茎収量, 蔗糖収量および全乾物重の最高値は400kg/10aサンネッカE区で得られた. サンネッカE区の根系の分布は水平方向, 垂直方向とも各分布域における根重密度はサンネッカE区が高かった.
  • 白岩 立彦, 橋川 潮
    1995 年64 巻4 号 p. 754-759
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田転換畑(細粒グライ土)において, 新旧ダイズ4品種を栽培し, 子実肥大開始期から成熟期にかけて地上部の器官別乾物重と窒素含量の推移を1週間毎に調査した. 子実肥大期間中の地上部乾物重と全窒素含量(Ntop)の増加量および子実収量は, いずれも新品種の'エンレイ'および'タチナガハ'が旧品種の'赤莢'および'みずくぐり'よりも優れていた. 子実の窒素含量が地上部窒素含量に占める割合(Nseed/Ntop)は, 子実肥大開始後の日数経過とともに直線的に増加し, 一方葉身窒素含量の地上部窒素含量に占める割合(Nleaf/Ntop)は直線的に減少した. これらの面での品種間差異は小さかった. 子実肥大期間中の葉身保有窒素量は主に個体の全窒素蓄積量に依存しており, 成熟期におけるNseed/Ntopが窒素収量や子実収量におよぼす影響も小さかった. 以上のように, 本実験でみとめられた子実生産力の新旧品種間差異には, 子実肥大期間における窒素蓄積活性がその分配様式よりも強く関与していた.
  • 斎藤 和幸, 縣 和一, 河原畑 勇, 山本 優子, 窪田 文武
    1995 年64 巻4 号 p. 760-766
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    CAM型光合成を行っているMesembryanthemum crystallinum L.の葉身よりNAD-リンゴ酸脱水素酵素(EC 1.1.1.37) (NAD-MDH)を抽出し, DEAE-セルロース陰イオン交換カラムによりクロマトグラフィーを行ったところ, 三つの異なったNAD-MDHが分離された. 陰イオン交換クロマトグラフィーにより最後に溶出したNAD-MDHをBlue Sepharose CL-6 Bを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって1,096ユニッ卜/mgタンパク質の比活性まで精製した. クエン酸及びアデノシン3燐酸はNAD-MDH活性を効果的に阻害した. pH7.0でのクエン酸によるNAD-MDHの活性阻害は無機燐酸により解除され, 解除の程度は基質であるオキザロ酢酸の濃度の増加とともに大きくなった. NAD-MDH活性の最適pHは約7.5であった. クエン酸は広い範囲のpHでNAD-MDH活性を阻害し, NAD-MDH活性の最適pHのシフトを引き起こした. pH7.5以下でクエン酸存在下のNAD-MDH活性は無機燐酸の添加によって活性が高まった. しかし, pH7.5以上では, クエン酸存在下でのNAD-MDH活性は無機燐酸の添加によってさらに阻害された.
  • 桃木 芳枝, 三好 好午, 上村 英雄
    1995 年64 巻4 号 p. 767-776
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ハマボウフウ(Glehnia littoralis)は, 香りの良い野生野菜として人気があり, 生薬としても有用である. しかし, 栽培ハマボウフウの収穫期が短期間であるため値段が非常に高い. ここでは, 植物の種々の器宮と成熟胚からの植物体増殖を試みた. 植物の器宮では, 腋芽のみがBA1~5μM+NAA5μMを含むMS固体培地で10週間培養すると1個当たり約30本の不定芽を形成し, それからの不定根も良く形成された. 成熟胚の場合は, BA1μM+NAA5μMを含むMS固体培地に10週間置床すると成熟胚1個当たり約40本の不定芽が得られ, また, それらの80%が根を形成した. 一方, 成熟胚を2, 4-D1μMまたはNAA5μMを含む培地に置床すると, 成熟胚の90%がカルスを形成した. 2, 4-D1μMを含む培地から形成されたカルス塊を4週間振とう培養すると, カルス塊1個当たり45個体の胚状体が得られ, さらに, これらの胚状体1個体当たり約30本の不定芽が形成された. これらの不定芽は, 発根後健全な小植物体に生長し, よく馴化した. これらの結果から, ハマボウフウの増殖には, 成熟胚1個から得られたカルスを振とう培養し, 誘導した胚状体から不定芽を形成させる方法が, 腋芽や成熟胚から不定芽を形成させるより有効であると考えられる.
  • 王 培武, 礒田 昭弘, 魏 国治
    1995 年64 巻4 号 p. 777-783
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中国新疆の乾燥地域において, 珍珠塔2号と黒農33号を用い, 登熟期に4水準のかん水処理を設け, 水分ストレス条件下における乾物生産の品種間差異について検討した. 生育期間は, 珍珠塔2号が黒農33号より長かった. 部位別乾物重は, 黒農33号に比べ珍珠塔2号が大きく, 特に根乾物重が大きかった. かん水処理期間中, 両品種とも全乾物重はかん水量が多いほど大きくなった. 乾物重割合は, 全般的に黒農33号に比べ珍珠塔2号は葉, 根乾物重割合が大きく, 莢乾物割合が小さかった. 個体群生長速度(CGR), 葉面積指数(LAI), 純同化率(NAR)は, 両品種とも全般的にかん水量の多い区ほど高い値をとった. 莢乾物重増加速度(PGR)は, 珍珠塔2号に比べ黒農33号が莢形成期が早いため大きくなり, 両品種ともかん水量が多いほど高い値となった. 生長パラメータ間の関係は, 処理期間中, CGRとLAI, PGRとNARの間に有意な正の相関関係があった. 両品種とも莢数, 粒数は, かん水量が多いほど大きな値となった. 子実収量は両品種ともかん水量が多いほど高く, 珍珠塔2号のかん水IV区では5400kg ha-1と高収量を示した. 珍珠塔2号の高収性の要因の1つは, 高い葉面積展開能力によるLAIの増大がCGRを高めたことによると考えられた.
  • 野村 幹雄, 今井 勝, 松田 智明
    1995 年64 巻4 号 p. 784-793
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ葉緑体の構造に及ぼす空気中CO2分圧(35 vs. 70 Pa)とリン栄養(3 vs. 300μM)の組み合わせの影響を検討するために, 水稲を人工光グロースキャビネット内で栽培した. 完全展開3日後の第9葉および止葉を採取し, 透過型電子顕微鏡用の超薄切片を作成した. 一般に, 葉肉細胞および維管束鞘細胞の両葉緑体でデンプンの蓄積が認められたが, 前者の方がより多かった. 第9葉においては, 標準CO2(35 Pa)下で発育した葉緑体は, 低リン(3μM)下でデンプン蓄積が認められ, 高リン(300μM)下では蓄積が少なかった. 一方, 高CO2(70 Pa)下で発育した葉緑体では, 低リン下でのデンプン蓄積はほとんど見られなかったが, 高リン下ではそれが増加した. 止葉において, デンプン蓄積はCO2とリンの水準が高いほど増加した. 特に高CO2・高リン下では, 大きな球形のデンプンが蓄積し, チコライド膜とグラナが変形した. 以上の観察は, 第9葉においては高CO2が光合成を促進し, 高リン下に拘わらず転流能力を越える過剰の炭水化物を生産すること, また止葉ではデンプン蓄積が炭素還元のフィードバック阻害に加えて, 電子伝達系の能力を減ずることを示唆するものであった.
  • 西沢 武明, 菅 洋
    1995 年64 巻4 号 p. 794-800
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    エチレンは赤色光下で, 卜ウモロコシ芽生えの中茎の伸長を促進した. 最大伸長は, エチレンの1μl1-1で得られた. 中茎の長さは, エチレン濃度が, 10, 100又は1,000μl1-1まで増大してもまだ, エチレンを除去した気中のそれよりは長かった. エチレンは, 0.1μl1-1より高い濃度で中茎の, 横方向への伸展を引き起こした. 二酸化炭素は, テストした1-4%の範囲内で同様に中茎の, 縦方向への伸長と, 横方向への伸展を引き起こした. 中茎の最大生長は, エチレンと二酸化炭素の共存下で得られた. 内生エチレン, あるいは二酸化炭素, 又はその両者の除去は, 伸長の低下をもたらした. 赤色光下の影響と対照的に, エチレンは暗黒下で中茎の生長を阻害し, 一方, ニ酸化炭素は, エチレンのこの効果を抑制した. このように, エチレンと二酸化炭素は, 赤色光下では協同的に働き, 暗黒下では拮抗的に働いた.
  • 湯川 智行, 小林 真, 渡辺 好昭, 山本 紳朗
    1995 年64 巻4 号 p. 801-806
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    秋季におけるフルクタン蓄積量が異なるコムギ2品種(農林61号, ユキチャボ)を用いて, 低温処理下(2, 6℃)におけるフルクタン合成酵素(スクローススクロースフルクトシルトランスフェラーゼ; EC 2.4.1.99)と分解酵素(フルクタンエキソハイドロラーゼ; EC3.2.1.80)の変化を調査し, フルクタンの蓄積機構と品種間差の発現機構について検討した. フルクタン含有率は, 低温処理による合成酵素活性の増加と分解酵素活性の低下のもとで増加した. 特に処理温度の低い2℃条件下でフルクタン含有率が高く, このときに合成酵素活性も高いことから, 高濃度のフルクタンの蓄積には高い合成酵素活性が必要と考えられた. また, 6℃条件下において, フルクタン含有率の低い農林61号はユキチャボに比較して分解酵素活性が高く, また処理10日目以降のフルクタン含有率の低下と分解酵素活性の増加とが関連することから, 品種間差の発現には分解酵素が強く関与していると考えられた. さらに, フルクタンの蓄積と品種の生育特性との関連について論議した.
  • 片山 忠夫, 角 明夫
    1995 年64 巻4 号 p. 807-814
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アフリカイネ(Oryza glaberrima)の籾の形態的特徴を, アジアイネ(O.sativa), 並びにアフリカとアジアに生育するそれぞれ3種ずつの野生稲, O.breviligulata, O.longistaminata, O.punctataとO.perennis, O.sativa var. spontanea, O.officinalisと比較しながら検討した. 両栽培種は, 籾の形態的特徴において互いに重なりあったが, Series Glaberrimaに属するO.glaberrimaとO.breviligulataはSeries Sativaに属する4種, すなわちO.sativa, O.sativa var. spontanea, O.perennisおよびO.longistaminataよりも扁平な籾の形状を示し, さらに幅/厚比(W/T), 長/厚比(L/T), 長/幅比(L/W)において, W/T>1.45, L/T>3.75, L/W>-4.88×W/T+9.95の3条件を満たす範囲内に分布した. 栽培種は, 野生種よりも著しく一籾容量が大きく, さらに両野生祖先種, すなわちO.perennisおよびO.breviligulataは, 他の野生種と比較して大きな一籾容量をもっていることによって特徴づけられた. 同じO.sarivaであってもアフリカ産品種群はインド産のものと比較して大きな一籾容量をもつものが多かった. 両栽培種の間に平均一籾容量における種間差は認められなかったが, 栽培種として栽培されていないweedy glaberrimaの中には明らかに一籾容量の小さなものが多かった. これらの結果は, O.glaberrimaの漸減が小粒系統を中心になされてきたこと, さらに大粒系統に向けての選択圧がアフリカにおいて特に著しかったことを示している.
  • 山本 晴彦, 早川 誠而, 鈴木 義則
    1995 年64 巻4 号 p. 815-821
    発行日: 1995/12/05
    公開日: 2008/02/14
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