水稲農林25号を水耕栽培し, P
32あるいはCa
45を含む培養液を与えてこれらの同位元素を根から吸収させ植物体内における無機養分の移行・分布に関し実験を行った. 主要な結果は次の通りである. (1) 栄養生長期においては, 吸収されたP
<32>は葉鞘, 根に多く集積する(Fig. 1, 2, 3). 出穂以後は穂にもっとも高濃度に蓄積される(Fig. 5). これに対し, Ca
45は全生育期を通じ主として葉身に集積される(Fig. 4, 6). (2) P
<32>は盛んに成長しつつある若い部分並びに細胞分裂の活発に行われている組織に高濃度で集積される(Fig. 1, 2, 3). (3) 栄養生長期において植物体にP
<32>を吸収させた後, 燐を欠除した培養液で栽培した場合には, 吸収後におけるP
<32>の行動が, 燐を含む培養液で栽培した場合とは異なる. すなわち, 燐欠除下では一旦植物体各部に分配されたP
<32>がやがて再移動を始め, その大部分が新しい組織へと移行し, ここに集積される. 燐の供給が行われている場合にも新しい組織への再移動はみられるが移動の程度は少なく, もとの組織への残留が多い. このことから, 植物体内に燐が欠乏するときは, 老化しつつある既成器官中の燐が新器官の成長の上により高度に再利用されることがわかる. (4) 出穂期および登熟中期に稈を人為的に折りまげたところ, この処理によつて根から吸収されたP
<32>およびCa
45の上部への移行が阻害されることが認められた(Table 8, Fig. 5, 6). P
<32>の集積状況を調査したところ, 胚は胚以外の部分に比べP
<32>の集積濃度がかなり低いことが認められた.
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