音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
58 巻 , 4 号
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総説
  • 佐藤 公則, 栗田 卓, 佐藤 公宣, 千年 俊一, 梅野 博仁
    2017 年 58 巻 4 号 p. 301-309
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    1)ヒト声帯の黄斑は,声帯振動のために必須である声帯粘膜の細胞外マトリックスの代謝に関与し,ヒト固有の声帯粘膜の層構造を維持していることが示唆されている.
    2)ヒト声帯の黄斑は,ヒト声帯の成長・発達・老化に関与していることが示唆されている.
    3)ヒト声帯の黄斑には,声帯の線維芽細胞とは異なった間質細胞,すなわち細胞突起をもち,ビタミンAを貯蔵した脂肪滴を細胞質にもつ声帯星細胞が密に分布している.
    4)ヒト声帯黄斑は幹細胞ニッチであり,黄斑内の細胞は組織幹細胞であることが示唆されている.
    5)ヒト声帯の細胞と細胞外マトリックスの研究は,喉頭,特に声帯の生理学・病理学・病態生理学の基礎的研究になるばかりでなく,組織工学,再生医療の基礎的研究として臨床に寄与する.

  • 宇高 二良, 笠井 新一郎
    2017 年 58 巻 4 号 p. 310-316
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル 認証あり

    聴覚や発声発語器官を主な診療領域とする耳鼻咽喉科は,音声言語医学と最も密接に関連している.当院では従来より言語聴覚士とともに主として小児のコミュニケーション障害の診療に取り組んできた.その経験から,耳鼻咽喉科領域における言語聴覚士とのコラボレーションの現状と今度の課題について検討したので報告する.
    言語聴覚士が耳鼻咽喉科診療に加わることの最も大きなメリットは一般診療のクオリティが格段に向上することである.そのほかに,乳幼児健診に参画することなどでさまざまな障害をもつ児の早期発見早期対応に寄与できている.
    今後の課題としては,言語聴覚士を雇用している一般診療所が非常に少ないため,当院に言語聴覚療法を求めて来院する小児が多く,十分な対応ができていないことである.多くの耳鼻咽喉科医師や言語聴覚士が小児のコミュニケーション障害について理解を深めていただき,この分野で活躍されることを望むものである.

原著
  • 喜屋武 睦, 濵田 豊彦, 澤 隆史
    2017 年 58 巻 4 号 p. 317-325
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル 認証あり

    本研究では聴覚障害児の韻律情報の活用について発話と聴取の両面から検討を行った.対象児は関東地方の聴覚特別支援学校および難聴通級指導教室に通う聴覚障害児31名(平均聴力レベルの平均86.2 dBHL(SD=23.4))である.各対象児に対し2通りの意味解釈が可能な統語的曖昧文をそれぞれの意味で発話させた.その発話についての聴者による韻律情報の活用の程度に関する聴覚印象評価(韻律明瞭度)に影響を与える音響成分(F0やポーズなど),韻律明瞭度と聴力レベルとの関係について,そして発話および聴取による韻律活用との関係について検討を行った.その結果,統語的曖昧文の言い分けにはF0とポーズの変化が関係していること,韻律の言い分けには低周波数帯(250 Hz)の聴力レベルが関係すること,また,平均聴力レベル90 dBHLが境界値となることが示された.聴取可能な音響成分によって聴覚障害児なりにF0やポーズを駆使して統語境界を発話のなかで明示していることが示された.

  • 髙原 由衣, 佐藤 公美, 竹山 孝明, 坂本 幸, 青木 俊仁, 伊藤 美幸, 池田 美穂, 田上 真希, 吉田 充嬉, 岡田 規秀, 宇 ...
    2017 年 58 巻 4 号 p. 326-332
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル 認証あり

    小中学校の耳鼻咽喉科定期健康診断を受診した1384名について,嗄声の出現率とスポーツ活動との関連を検討した.嗄声の出現率は,女児(5.2%)に比べて男児(17.7%)が高く,男児は小学校3年生まで高く4年生以降に減少し,女児は小学校2年生まで高く以降減少したが中学校2,3年生では高かった.小学校の高学年ではスポーツ活動を行っていない児童(男児4.9%,女児0.6%)に比べて,スポーツ活動を行っている児童(男児21.2%,女児5.8%)は嗄声の出現率が有意に高かった.スポーツの種類と嗄声とのオッズ比は,男児の小学校低学年の野球が2.88,小学校高学年でサッカー2.29,野球2.92で高く,強い声門閉鎖を伴う屋外の団体スポーツであることが要因と考えられた.小学校の男児に野球やサッカーを行わせる場合には,声の衛生を行い嗄声の予防が必要である.中学生は,対象者を増やして再検討が必要である.

  • 楠山 敏行, 池田 俊也, 中川 秀樹, 沢田 亜弓, 木村 晋太
    2017 年 58 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    音声障害を訴える歌唱者のなかで急性上気道炎症状を伴わない慢性上咽頭炎(以下上咽頭炎)が原因と思われる症例に対して1%塩化亜鉛による上咽頭処置(Bスポット療法)を行い,その治療効果を検討した.過去1年7ヵ月間にBスポット療法前後に内視鏡検査,音声検査,Voice Handicap Index-10(VHI-10)およびSinging Voice Handicap Index-10(SVHI-10)による評価が可能であった歌唱者53例を対象とした.内視鏡所見,VHI-10,SVHI-10,および最長発声持続時間における有意な改善を認めた.SVHI-10減少幅が5以上の症例は41例で78%の改善率であった.以上より上咽頭炎は音声障害の原因疾患の一つと考えられ,Bスポット療法は上咽頭炎による音声障害に対し有効であることが示唆された.また,その病態は自律神経系に関連する喉頭潤滑障害と上咽頭の共鳴障害であると考察した.

  • 常島 杏菜, 吐師 道子
    2017 年 58 巻 4 号 p. 339-345
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル 認証あり

    若年女性の発話における助詞や語尾のF0変化が「STとしての専門職らしさ」の印象に影響を与えるのかを印象評定により検討した.本研究での「STとしての専門職らしさ」は「経験が豊富である」「説得力がある」「自信がある」「勤勉である」「専門家らしい」「知的である」との印象と定義した.10名の若年女性の発話の助詞および語尾のF0を加工し,「語尾上げ・助詞上げ発話」と「語尾下げ・助詞下げ発話」を作成し,若年齢および高年齢評定者に提示して「STとしての専門職らしさ」の印象評定を行った.その結果,聴取者の性別や年齢にかかわらず,助詞や語尾のF0を下降させた発話がより「STとしての専門職らしさ」が高いと評定された.

症例
  • 白井 裕美子, 土師 知行, 末廣 篤, 前川 圭子, 雲井 一夫
    2017 年 58 巻 4 号 p. 346-349
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル 認証あり

    自己免疫疾患の一つである強直性脊椎炎(AS: ankylosing spondylitis)を基礎疾患とする竹節状声帯症例を経験した.症例は既往にASのある40歳女性.喫煙,音声酷使あり.初診時,両側声帯に白色の隆起性病変を認めた.既往歴から竹節状声帯の可能性も考慮したが,音声酷使があり,声帯結節と考え,まず音声治療を行った.初診から6ヵ月間,音声治療のみ行い,音響分析の値が改善した.6ヵ月目にASが増悪すると嗄声も増悪し,7ヵ月目の喉頭内視鏡検査で竹節状声帯と診断した.8-11ヵ月目まで原疾患に対する薬物治療を行い,ASは寛解,声帯病変と嗄声も改善した.ASに竹節状声帯が発症したとする報告は渉猟しえた範囲では見られなかった.本症例は声帯結節を併発し,音声治療と原疾患に対する薬物治療で嗄声が改善した.原疾患の寛解・増悪に連動し,声帯病変と嗄声も改善・増悪した.竹節状声帯は,基礎疾患に自己免疫疾患がある場合には常に念頭におくべき疾患であると考えられた.

  • 永積 渉, 三枝 英人, 門園 修, 山口 智, 小町 太郎, 伊藤 裕之
    2017 年 58 巻 4 号 p. 350-356
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    誤嚥に伴う頻回の肺炎発症や,吸引回数の過多などの問題は,患者や家族,介護者の負担となる一方,音声言語によるコミュニケーションは,たとえ重度の感覚性失語となって有意味語が使用できない状態に陥ったとしても,感情に伴う発声,咄嗟時の発声などの心情の表出が行えるものであれば,重要な機能として回復,もしくは保存すべきものであるといえる.したがって,音声を永続的に奪う誤嚥防止術を施行することは,たとえその結果,経口摂取が可能となるとしても,嚥下障害に対する治療を徹底的に行っても改善が得られない場合以外には,まず目指すべき望ましい方向性とはいえない.今回,わたしたちは,重度の嚥下障害を伴う感覚性失語症の患者に対して,音声表出および経口摂取の回復を行いえた症例を経験したので,その治療経過を報告したい.
    症例は48歳女性.1年前,左側中大脳動脈領域の動脈瘤破裂に対してクリッピングを受けるも,その2ヵ月後に施行された頭蓋形成術中に未破裂の小脳動脈瘤が破裂した.これに対して後頭蓋窩開放・減圧術が施行されるも重度の嚥下障害が発症・遷延したため気管切開,胃瘻造設が施行された.その後在宅療養中であったが,終日にわたり頻回な気管内吸引が必要な状態であったため,誤嚥防止術の適応として当科紹介.これに対して,本症例の嚥下障害の病態を解明し,それに対するアプローチを徹底的に行ったところ,気管孔閉鎖が可能となり,さらに経口摂取,音声表出の回復が得られた.

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