日本泌尿器科学会雑誌
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103 巻, 4 号
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原著
  • 矢木 康人, 波止 亮, 香野 友帆, 西山 徹, 戸矢 和仁, 萬 篤憲, 斉藤 史郎
    2012 年 103 巻 4 号 p. 599-603
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌永久挿入密封小線源療法(BT)の性機能(SF)への影響を検討. (対象と方法) 2003年9月より2005年7月まで,BTを施行した症例で,術後内分泌治療を受けていない353例(術前内分泌治療なし48例:BT NHT-群,あり305例:BT NHT+群)を対象に,同時期の根治的前立腺全摘除術(RRP)で術前後に内分泌治療を受けていない56例と比較.方法はUCLA Prostate Cancer Index(UCLA-PCI)を用いて,治療前後のSFの変化とSFに影響する因子を検討した.また,UCLA-PCIの問26(普段の勃起機能)で3点未満を勃起能なし,3点以上を勃起能ありとした場合の勃起能温存率を算出した. (結果) BT NHT-群の治療前SFスコアは50.9で,治療後6カ月にて38.9と低下を認めるが,その後はほぼ横ばいであった.BT NHT+群の治療前SFスコアは13.4と低値だが,治療後徐々に上昇し,治療後3年でBT NHT-群と有意差を認めなくなった.BT NHT-群において,年齢のみが治療後のSFに影響する因子であった.治療前より勃起能ありと評価されたBT NHT-群34例およびRRP群23例における5年勃起能温存率は,73.6%と4.3%であった. (結論) 小線源治療後の5年勃起能温存率は73.6%であり,小線源治療は性機能が維持されやすい治療法であった.
  • 清水 崇, 高橋 敦, 市原 浩司, 新海 信雄, 池田 健, 野島 正寛, 高木 良雄
    2012 年 103 巻 4 号 p. 604-609
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    (目的) 根治的前立腺全摘除術後の吻合部狭窄は0.5%~32%の頻度と報告されているが,原因については十分に解明されていない.吻合部狭窄の頻度,治療法について検討しその原因を探索した. (対象と方法) 当院で根治的前立腺全摘除術を施行した129例を対象とした.吻合部狭窄の治療法と狭窄診断までの期間の関係について調べた.合併疾患(高血圧,糖尿病,心血管疾患,脳梗塞,喫煙歴)と吻合部狭窄の関係について検討した.危険因子として,年齢,BMI,術前PSA,前立腺容積,手術時間,出血量,術後カテーテル留置期間,術後1日当たりの尿失禁量,ドレーンからの排液量,pTステージ,Gleason sum,切除断端についても検討した. (結果) 吻合部狭窄の発生頻度は10.9%(14/129例)であった.そのうち10例は術後3カ月以内に診断され,2例は1年以内,2例は1年以上経ってから診断された.単変量および多変量解析で吻合部狭窄の危険因子は1,800 ml以上の出血であった.治療としてブジー(2例),直視下内尿道切開(11例),TUR(1例)が行われていた.術後3カ月以内に吻合部狭窄と診断され内尿道切開を受けた症例8例中6例で狭窄が再発した. (結論) 術中出血量が吻合部狭窄の発生に関係していた.根治的前立腺全摘除術後の吻合部狭窄は稀な合併症ではないので,患者に対して十分なインフォームドコンセントが必要である.
  • 栃木 達夫, 櫻田 祐, 青木 大志, 川村 貞文, 伊藤 しげみ, 佐藤 郁郎, 立野 紘雄
    2012 年 103 巻 4 号 p. 610-616
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    (目的) 筋層非浸潤性膀胱癌と診断され,TURBT後塩酸ピラルビシン(THP)の膀胱内注入を術当日から3日間連続施行した症例を対象として,膀胱内非再発率,再発関連因子などを後ろ向きに分析し今後の治療に役立てることを目的とした. (対象と方法) 1995年3月から2009年4月の間に,膀胱CISの併発がなくかつ上部尿路上皮癌の合併や既往歴のない初発未治療筋層非浸潤性膀胱癌と診断され,TURBT後塩酸ピラルビシン(THP)30 mg/注射用水40 mlの膀胱内注入を術当日,翌日,翌々日の3日間連続施行した184症例を対象とした.腫瘍の数,腫瘍サイズ,異型度,T因子と再発との関係を単変量および多変量解析で検討した.経過観察期間中央値は55.1カ月である. (結果) 症例の大部分がEAUガイドラインによる再発リスク分類の中リスク例に相当した.非再発率は2相性に変化し,治療後1年半から2年間は急峻に低下し,その後はなだらかな低下を示した.1, 2, 3, 5年非再発率は,82.7%,75.3%,72.3%,67.4%であった.日本版再発リスク分類の中リスク群から,Taかつlow gradeかつ腫瘍数2~4個を低中リスク群として3年非再発率を求めると85.1%であった.同様に,EAUガイドラインを参考とした分類で,中リスク群を再発スコア1~3と4~9の2群に分けると,再発スコア1~3の3年非再発率は,85.3%であった.腫瘍の数,腫瘍サイズ,異型度,T因子と再発との関係を調べると,単変量解析では腫瘍の数,異型度,T因子が再発と関連していた(p<0.05).多変量解析では腫瘍の数とT因子が再発と関連していた(p<0.05). (結論) 筋層非浸潤性膀胱癌に対する治療においては,再発スコア値の低い中リスク非G3例やCIS非併発例に対するTURBT後THP30 mg 3日間連続膀注療法は,アジュバント療法の一つとして考慮してもよい意味のある方法と思われた.しかし,再発スコア値の高い中リスク例に対しては,リスクに応じた抗癌剤の維持膀注療法ないしBCG膀注療法等の追加治療を考慮するのが良いと思われた.
  • 高比 優子, 上阪 裕香, 木内 寛, 山口 晶子, 加藤 稚佳子, 木村 敏夫, 竹山 政美, 市丸 直嗣
    2012 年 103 巻 4 号 p. 617-622
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    (目的) 女性泌尿器科疾患は中高年においてその有病率が高いにもかかわらず,疾患に関する一般的な知識や情報が乏しい.そこで女性泌尿器科患者が疾患に関する情報をどのような情報ツールを利用して,収集しているのかについて検討を行った. (対象と方法) 対象は2005年1月から2008年12月までに健保連大阪中央病院泌尿器科の女性外来初診患者3,480人.初診時にどのような情報ツールを利用したかについてのアンケートを行った. (結果) 受診前に利用した情報ツールは,新聞が39.9%と最も多く,次いで他院からの紹介(17.8%),インターネット(15.7%),TV(14.8%),家族や知人からの紹介(6.0%),著書・雑誌(3.2%),講演活動(0.6%)の順であった.4年間の変化をみると,新聞,TVを利用した患者は掲載数や放送数により増減が認められる一方で,インターネットを利用した新規患者は年々増加し(p trend=0.041),2008年では他院からの紹介に並ぶ最も利用されるツールのひとつになった. (結論) 女性泌尿器科疾患に関する情報ツールとして,新聞が最も利用されていた.近年ではインターネットからの収集が顕著に増加しており,今後インターネットが最も重要な情報ツールとして利用される可能性が示唆された.
症例報告
  • 千葉 博基, 広瀬 貴行, 下田 直彦, 金川 匡一
    2012 年 103 巻 4 号 p. 623-626
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は70才女性.下腿浮腫に対する検査で下大静脈内を占拠し右心房に達する腫瘍塞栓を有する右腎腫瘍と診断され当科紹介された.ネオアジュバント療法としてスニチニブ50 mg/日投与開始.Grade 3の血小板減少を認め投与日数を短縮せざるを得なかったが,投与後2カ月でCT上腫瘍塞栓は著明に縮小し,先端が横隔膜レベルまで退縮した.手術直前に,2週間の休薬期間を経て投与開始後3カ月で手術を施行した.手術は開胸・開腹にて肝脱転し,人工心肺装置での体外循環を併用して行い,右腎および下大静脈内腫瘍塞栓を一塊として摘出した.病理はRCC, clear cell carcinoma, G2, pT3bであり,腎から下大静脈内に腫瘍塞栓はあるものの遠位端にはviableな腫瘍は認めなかった.現在再発なく経過観察中である.本症例ではgrade 3の血小板減少が出現し頻回の休薬を余儀なくされたがスニチニブの内服は継続可能であり,腫瘍縮小効果も得られ手術まで到達した.分子標的薬にてネオアジュバント療法を行うことで手術侵襲が低減する可能性が示唆された.
  • 坪内 和女, 入江 慎一郎, 御厨 学, 吉田 一博, 田中 正利
    2012 年 103 巻 4 号 p. 627-630
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    気腫性膀胱炎による膀胱破裂を来たした症例を報告する.症例は77歳,女性.脳梗塞と糖尿病のため入院中であった.発熱の精査で気腫性膀胱炎を認め,尿道カテーテル留置,抗菌薬投与による保存的治療を行うも発熱は3週間持続した.その後,尿量減少の精査でCT検査を行ったところ,膀胱壁が一部欠損し,腸管との境界が不明であった.膀胱直腸瘻が疑われ,膀胱直腸瘻疑いにて当院へ転送された.手術時に膀胱壁の後腹膜腔への穿破を認め,膀胱破裂と診断した.膀胱内の洗浄ドレナージ,尿管皮膚瘻による尿路変向術,適切な抗菌薬投与,血糖コントロールにより治癒した.気腫性膀胱炎は通常保存的治療で軽快するが,本症例のように膀胱破裂を来たす場合もあるため早期に診断し適切な治療を行うことが重要である.
  • 石毛 麻祐子, 内海 孝信, 吉田 一樹, 中町 裕, 細木 茂, 大木 健正, 青墳 信之, 岸 宏久
    2012 年 103 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.急性骨髄性白血病(以下AML)にて同胞間造血幹細胞移植(mini移植)を受け,3年間寛解を得られていた.右鼠径部腫瘤を主訴に当科受診.超音波検査,CT, MRIにて精索に約3 cmの腫瘤を認めたため右精索腫瘍と診断し,右高位精巣摘除術を施行した.術前検査では白血病再発を疑わせる所見はなかった.術後の病理検査で腫瘍はAML細胞の精索での増殖と判明した.血液腫瘍科にコンサルトし骨髄生検を施行したが,骨髄像,骨髄生検ではAMLの骨髄再発は否定的であり,本症例はAMLが孤立性に髄外再発した例と考えられた.現在も骨髄再発はなく,経過観察を行っている.精索に髄外再発したAMLという報告は調べ得た限りではなく,本症例が本邦第1例目と考えられた.
  • 高橋 正博, 堀口 明男, 濱田 真輔, 神原 太樹, 辻田 裕二郎, 住友 誠, 浅野 友彦, 新本 弘
    2012 年 103 巻 4 号 p. 636-639
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性.右陰囊痛にて近医を受診し,精巣上体炎の診断にて抗生物質の投与を受けた.その後,症状増悪する為に,紹介受診となった.超音波検査では,右精巣上極に血流が認められない径4 cm大の低エコー領域を認めた.MRIでは右精巣上極にT2強調画像で高信号,T1強調画像で淡い高信号を呈する病変を認めた.造影にて同部位に局所的な血流障害を認め,区域性精巣梗塞と診断されたため,保存的に経過観察した.陰囊痛は保存的に軽快し,発症3カ月後のMRIでは梗塞巣の縮小を認めた.精巣区域梗塞は稀であり,精巣腫瘍や精巣捻転との鑑別が困難なため,外科的摘除後に診断が確定する例が多い.急性陰囊症におけるMRI検査は不要な外科的治療を回避するのに重要な検査と思われた.
  • 王 聡, 宮後 直樹, 原田 泰規, 安永 豊, 岡 聖次
    2012 年 103 巻 4 号 p. 640-643
    発行日: 2012/07/20
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.血液PSA高値に対する骨盤MRI検査時に,膀胱三角部に径8.5 mm大の腫瘤が偶然に発見された.膀胱鏡検査で同部に粘膜下腫瘍を認め,経尿道的腫瘍切除を施行した.病理組織検査の結果:紡錘形細胞が膠原線維を伴って不規則に増殖し,小血管も豊富に見られた.免疫染色上CD 34に陽性,Bcl-2染色は一部陽性,MIB-1 indexは3%以下で組織学的に悪性所見を認めず孤立性線維性腫瘍(Solitary fibrous tumor:SFT)と診断した.現在術後1年4カ月を経て再発転移を認めていない.SFTは間葉系腫瘍の1種であり,多くは胸膜発生とされている.胸膜外発生は少なく,特に膀胱に発生したSFTは本邦初であった.海外での報告11例と合わせて集計し考察を加える.
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