各種血清型を含むA群溶レン菌10株についてL-form誘導条件を検討するとともに,誘導されたL-form株のうち2株についてそれらの細菌学的性状を検討した。
A群溶レン菌L-formの誘導に,誘導培地へのグリシン添加および嫌気培養法が著明な促進効果を現わした。また血清型の相違によりL-form誘導に難易があり,type 1, 6などの菌株は比較的容易であつたが,type 4は困難であつた。
誘導されたL-formのうち2株(type 1およびtype 6)を選び寒天培地での長期間にわたる継代を続けた。これらの株はペニシリン非添加寒天培地での継代も可能となり,その後Crowfordらの方法により親株復帰試験を試みたところ,1株が親株(type 1)に復帰した。
寒天培地で5代,10代,20代および30代の継代を経た各時点で上記2株のL-formの液体培養を試みたところ,30代継代の時点で培養が成功し,継代も可能だつた。これらのL-form株はペニシリン非添加液体培地での継代も可能で,親株への復帰は認められなかつた。また培養液をポアサイズ0.2μのメンブランフィルターで〓過したところ,両株ともそれらの最小増殖単位はこれを通過した。
これら2株のL-formはペニシリン-Gに対して極度の耐性を示し,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,エリスロマイシンおよびジョサマイシンに対してはそれぞれの親株より高い感受性を示した。とくにテトラサイクリンに対するL-form株と親株の感受性差が大きかつた。L-formより復帰した菌株と親株溶レン菌との間に薬剤感受性の差異は認められなかつた。
2株のL-formのうち1株は液体培地中にストレプトリジン-Sを産生したが,酵母RNAを含む液体培地におけるRNA効果は認められなかつた。
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