日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
57 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 鈴木 敏彦
    2002 年 57 巻 2 号 p. 443-452
    発行日: 2002/05/10
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    赤痢菌が引き起こす細菌性赤痢は, 発展途上国において乳幼児の死亡原因の1つとなっており, 今なお国際的視野から重要な感染症の1つである。本菌はヒトの結腸粘膜上皮へ侵入し, さらに周囲の上皮細胞へ再感染を繰り返しながら, 粘膜上皮に激しい炎症を引き起こして, 粘血性下痢を惹起する。本菌が周囲の細胞へ拡散するために, 細胞内の菌の一極において宿主のアクチンの重合を誘起してコメット状の凝集束を形成しこれを細胞内運動の原動力としている。このアクチン重合に必須な赤痢菌の因子が外膜蛋白 VirG である。本研究では VirG によるアクチン重合機構の解明を目的としてまず VirG の菌体外分泌機構および VirG 分子内機能領域の解析を行い, その結果, 本蛋白はC-末端側の領域が外膜に貫通することによってN-末端側の領域を菌体外に輸送するという自己分泌能を持つことがわかった。また菌体外露出領域のうちN-末端側2/3の領域にアクチン重合に必要なドメインが存在し, 残る1/3の領域は菌体-極発現に必要であることが明らかになった。さらに VirG に結合する宿主細胞側因子の同定を行い, VirG のアクチン重合に必要な領域にビンキュリンと neural-Wiskott Aldrich syndrome protein (N-WASP) が直接結合することが示された。後者のN-WASPは VirG によるアクチン重合に必須な宿主因子であり, VirG にN-WASPが結合することによりアクチン重合開始因子 actin-related protein (Arp) 2/3複合体が活性化されアクチン重合が開始される。これによりアクチンコメットが形成され菌の細胞内運動の原動力となっていることが明らかになった。
  • 西野 邦彦, 山口 明人
    2002 年 57 巻 2 号 p. 453-464
    発行日: 2002/05/10
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    人類と感染症との戦いは抗生物質の発見以来, 耐性菌の出現とその克服というサイクルを繰り返してきた。しかし, 感染菌の全ゲノム配列が次々と決定されるようになり, まるで輪廻のように永遠に続くかに見えた耐性菌サイクルにおいて, 全く新しい展望が開かれようとしている。それは, 感染菌の薬剤耐性を生み出す遺伝子資源の全容を把握し, 解析することによって, 未来において発現するであろう薬剤耐性にあらかじめ備えておく可能性が見えてきたということである。
  • 齊藤 志保子, 八柳 潤, 佐藤 宏康, 白石 廣行, 天野 憲一
    2002 年 57 巻 2 号 p. 465-472
    発行日: 2002/05/10
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    我々は Campylobacter jejuni による2事例の集団下痢症患者より分離した複数の臨床株について血清型別 (Lior 法および Penner 法), restriction fragment length polymorphism-flaA (fla-RFLP), パルスフィールド電気泳動 (PFGE) を行い, 比較した。fla-RFLPはflaA遺伝子の5'末端近傍の410bpを増幅し, 制限酵素Mbolで切断する方法を用いた。この方法で標準株29株及び散発事例株58株を型別すると, 6タイプに分類できることが示された。集団食中毒の第1事例分離株4株は Lior 型別で全て同一株を示したが, Penner 型別では2種の型を示した。fla-RFLPとPFGEによる遺伝子型別では両法の結果がこの分離株が同一であることを示している。一方, 第2事例からは10分離株が得られており, そのうちの5株はどの型別でも同一型を示した。次の4株は Penner とfla-RFLPでは同一であったが, Lior では2種, またPFGEでは4株に微妙な違いがみられた。残りの1株は他の9株とは全ての型別において, 異なっていた。以上の結果より, 第1事例は同一株による集団感染, 第2事例は少なくとも3種のC. jejuni による集団感染であることが強く推定された。
feedback
Top