日本細菌学雑誌
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61 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 櫻井 純
    2006 年 61 巻 4 号 p. 367-379
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    ウエルシュ菌が産生する多くの毒素の中で主要毒素と言われているα, β, εそして, L毒素は, いずれもユニークなタンパク毒素で, 本菌の感染症と密接に関係していると考えられている. そこで, ウエルシュ菌感染症の解明のため, 主要毒素の構造と機能を解析し, さらに, それぞれの毒素の作用機構について, 1) α毒素は, 毒素自身が有する酵素活性で組織を破壊するのでなく, 標的細胞の細胞内情報伝達系を活性化して恒常性の維持に混乱を与え, 細胞破壊, 致死活性を引き起こすこと, 2) β毒素は, 特異的に血球系細胞に結合し, ラフト上でオリゴマーを形成後, 細胞内情報伝達系に混乱を与え, 致死活性と細胞毒性を示すこと, 3) ε 毒素は, 脳細胞や腎細胞など標的細胞の膜上でオリゴマーを形成して膜障害作用を与えること, そして, 4) 酵素成分と膜結合成分からなる二成分毒素であるし毒素は, 膜結合成分が細胞膜に結合してオリゴマーを形成後, ラフトに集積し, これに酵素成分が結合してエンドサイトーシスで細胞内に侵入し, その後, 初期エンドソームから酵素成分が細胞質に遊離してアクチンをADPリボシル化して細胞毒性を示すことを証明した.
  • 橋野 聡
    2006 年 61 巻 4 号 p. 381-389
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (にTP) 治療に関する最近のトピックスとしては, 新規薬剤による免疫抑制療法の他に, Helicobacter pylori (H. pylon) 除菌治療が挙げられる. これまでの多施設からの報告を参考にすると, 本邦のH. pylori陽性ITP患者の約半数で, 除菌治療後速やかに有意の血小板増加が認められ, 血液学的寛解状態となることが判明した. 最長観察でもまだ8年であるが, この血小板増加効果は長期間持続することより, 本邦のH. pylori陽性ITP患者の約半数はその血小板減少を来す病態にH. pylori感染が関わっていたことが明らかとなった. 少なくても現時点では以H. pylori除菌治療は, その有効性・安全性・即効性・経済性から, これまでの標準的治療である副腎皮質ステロイドに代わり, H. pylori陽性ITP患者治療の第一選択薬と言って良い. H. pylori感染と自己免疫疾患であるlTP発症との詳細な因果関係は解明されていないが, H. pylori感染により惹起される全身性免疫反応が, 血小板破壊に繋がっているとする報告が多い. 今後は, 除菌効果を事前に予測できる患者側及び菌体側因子を抽出し, H. pylori-related thrombocytopenic purpura を独立した疾患として確立する必要がある. また, 除菌治療終了患者をできるだけ長期間フォローアップし, H. pylori再感染の有無やQOLの向上に果たす役割を確認する必要があ.
  • Porphyromonas gingivalis LPS研究を中心に
    小川 知彦
    2006 年 61 巻 4 号 p. 391-404
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1933年Boivinらは初めてネズミチフス菌から内毒素を抽出して以来, 内毒素の化学的, 生物学的な研究が多方面にわたり進められた. 1952年Westphalらの温フェノールー水により抽出された内毒素性リボ多糖 (LPS) の構造学的, 機能学的性状が明らかにされるとともに, 今日, これらグラム陰性菌の感染防御機構に関する研究が国内外で盛んに行われ大きな進歩がみられる. これまでのPS研究のなかで, 1960年代からBacteroides類縁菌LPSの特徴的な化学構造やその生物活性に注目が集まりこれまでの長い研究の歴史がある. また, 口腔内に棲息する歯周病の原因菌として注目される菌種もかつてはバクテロイデス属に分類されていたものが多くみられ, なかでも黒色色素産生性偏性嫌気性菌であるPorphyromonas gingivalis (旧Bacteroides gingivalis) LPSについてもビルレンス因子としての可能性が探究されてきた. これらBacteroides類縁菌LPSの活性中心であるリピドA分子は, その特徴的な化学構造の故に内毒素作用や種々の生物活性が弱く, しばしばLPSのアンタゴニストとして作用することが知られている. 他方, これらしPSは, LPSに不応答であるC3H/HeJマウスの細胞を活性化することが多数報告されている. 我々はP.gingivalisリピドAの化学構造を最初に明らかにしたが, 当初, P.gingivalisLPSやリピドAがC3H/HeJマウスに作用することを多くの研究者と同様に報告した. その後近年のToll-likereceptor研究の隆盛に応じて, P.gingivalisLPSやリピドAがTLR2に作用するリガンドであるとの知見が多くみられた. 我々は, P.gingivalisリピドA種の不均質性ならびに生物学的に活性な成分の混入などの問題点を解決するためにリピドAの化学合成対応物を作出し, TLR4アゴニストであるとの結果を得ている. さらにP.gingivalisLPSやリピドAがTLR2リガンドであるとの通説を払拭するためにP.gingivalisLPS画分に混入するTLR2アゴニストを分離・精製し, その化学構造が3残基の脂肪酸からなるリポタンパク質であることを明らかにし, 長年のBacteroides類縁菌LPSにまつわる問題を解決した. 歯科領域ばかりでなく, 自然免疫分野では今なお, “TLR2活性LPS1リピドA”との誤認に基づく研究が跡を絶たない. これまでの歴史的経緯を踏まえて, 腸内細菌科由来LPSやリピドAと同様に, TLR4に作用するリガンドであるBactem/des類縁菌PSについて, P.gingivalisLPSやリピドAに関する研究を中心に概説した.
  • 杉田 昌彦
    2006 年 61 巻 4 号 p. 405-413
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    結核菌の細胞壁には, 菌の生存や病原性の発揮に必須の脂質が存在する. これらの脂質を結合してT細胞に抗原提示する新しいタイプの抗原提示分子として, CD1分子 (CD1a, CD1b, CD1c) が同定された. 結核菌脂質を特異的に認識するCD1拘束性T細胞は, 結核菌感染細胞を直接傷害し, インターフェロンガンマを産生することから, 感染制御に重要な役割を果たしていると考えられる. 実際結核菌脂質ワクチンの投与を受けたモルモットにおいて, 結核防御免疫が賦与されることが明らかとなった. これらの事実は, 結核に対する獲得免疫機構が, 従来のMHC分子に依存した蛋白質抗原特異的免疫経路だけでなく, CD1分子に依存した脂質抗原特異的経路との総和によって成立していることを意味している. この新しい免疫システムの解明は, 結核や非定型抗酸菌症の新たな診断法や予防法の確立へと結実することが期待されている.
  • 2006 年 61 巻 4 号 p. 415-416
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 2006 年 61 巻 4 号 p. 417-418
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 2006 年 61 巻 4 号 p. 419-420
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 2006 年 61 巻 4 号 p. 421-422
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 2006 年 61 巻 4 号 p. 423-427
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 2006 年 61 巻 4 号 p. 428-429
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
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