日本小児アレルギー学会誌
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29 巻, 3 号
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原著
  • 清水 麻由, 阿部 祥英, 渡邊 佳孝, 中村 俊紀, 森田 孝次, 今井 孝成, 板橋 家頭夫
    2015 年 29 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
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    食物アレルギー反応が急性膵炎の原因になることはまれである.今回,ピーナッツアレルギーが関与したと考えられた急性膵炎の3歳男児例を経験した.過去にピーナッツの摂取歴はない.家族歴に関して膵疾患はなかったが,兄にピーナッツアレルギーがあった.ピーナッツせんべいを摂取した約1時間後に顔面が紅潮し,急速に全身性の皮膚の発赤を認め,その後に咳嗽と喘鳴,腹痛が出現したため当院を受診した.アナフィラキシーと診断し,アドレナリン筋肉注射を含む治療を行った.速やかに症状は軽快したが,血清アミラーゼ値とP型アミラーゼ値の上昇,腹部造影CT検査で膵腫大の所見をもとに軽症急性膵炎と診断した.入院のうえ,保存的加療を行い,3日目には膵酵素値が改善した.臨床経過とピーナッツ特異的IgE値(37.1UA/mL)から,急性膵炎はピーナッツアレルギーが関与したと判断した.食物アレルギーによる急性膵炎発症の小児例の報告は少ないが,食物アレルギー症状に腹痛を伴う場合は急性膵炎が関与していることがあり,注意が必要である.
  • 野村 孝泰, 神田 康司, 加藤 泰輔, 側島 健宏, 森下 雄大, 杉浦 至郎, 須田 裕一郎, 近藤 慕子, 神岡 直美, 田中 秀典, ...
    2015 年 29 巻 3 号 p. 260-269
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
    ジャーナル 認証あり
    【背景】本邦の食物アレルギー診療は『食物アレルギー診療ガイドライン2005』の発刊を契機に大きく発展した.しかし,最近でも学校給食によるアナフィラキシーの死亡事故が報告され,取り組みが不十分であることを再認識させられた.経口負荷試験による食物アレルギーの正しい診断が社会に求められるが,その医療体制は十分でない.本研究は,施設間の違いがある経口負荷試験に対して,共通プロトコルを採用したデータベースを使用し,多施設の経口負荷試験ネットワークを構築することを目的とした.【方法】負荷プロトコルを共通化した上で,経口負荷試験の詳細な情報を漏れなく順序立てて入力できるデータベースをFileMaker®で作成し,これをもとに経口負荷試験ネットワークを構築した.【結果】2012年10月から2014年4月の間に,12施設がネットワークに参加し,1,044件の負荷試験が登録された.【結語】共通プロトコルは経口負荷試験ネットワークの構築に重要な役割を果たし,食物アレルギー診療体制の充実に貢献すると考えられる.
  • 伊藤 靖典, 森下 英明, 下村 真毅, 徳永 郁香, 目黒 敬章, 瀬戸 嗣郎, 木村 光明
    2015 年 29 巻 3 号 p. 270-277
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
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    【研究目的】鶏卵アレルギーの即時型症状は,多臓器にわたり,臨床症状も多彩であるが,フェノタイプの分析はほとんどなされていない.【方法】鶏卵負荷試験を施行し,陽性反応が見られた65名の誘発症状を皮膚(①じんましん,②紅斑),③口腔内,④鼻・眼粘膜,⑤咽頭,⑥呼吸器,⑦消化器,⑧神経症状,および⑨アナフィラキシーの9項目に分類し,階層的クラスター解析(ward法)を施行した.【結果】誘発症状は4つのクラスターに分類された.クラスター1:消化器症状が主体でじんましんを認めないタイプ,クラスター2:じんましんが主体で不機嫌を呈するタイプ,クラスター3:呼吸器症状を主体とするタイプ,クラスター4:アナフィラキシータイプ.更にクラスター1には消化管症状のみのタイプAと,口腔内症状を随伴するタイプBのサブクラスが存在し,1-Aは1-2歳に多く耐性を獲得しやすいが,一方で1-Bは年長児に多く耐性を獲得しにくいという差がみられた.【結論】即時型鶏卵アレルギーには,消化管症状のみを呈するフェノタイプが存在することが明らかになった.
  • 米田 真紀子, 野々村 和男
    2015 年 29 巻 3 号 p. 278-283
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
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    新生児-乳児消化管アレルギーは,生後早期の主に人工乳開始後に食物抗原が原因で血便や嘔吐,下痢などの症状を呈する疾患である.IgE非依存性アレルギーと考えられているが,発症機序は明らかではない.症例は34週2日1,740gで出生した男児.日齢0より低出生体重児用ミルクと母乳を開始したところ,日齢2に発熱と粘血便を認めた.絶食により1日で症状は改善し,以後は母乳栄養で明らかな症状は認められなかった.しかし日齢17に母乳添加用粉末を使用したところ,血便が再燃した.2日間絶食とし症状が改善した後,アミノ酸乳の投与を行ったところ,再燃は認められなかった.アレルゲン特異的リンパ球刺激試験で牛乳抗原が陽性であり,新生児-乳児消化管アレルギーと診断した.その後,母親が乳製品を除去して母乳を開始したが症状は認められなかった.母乳とアミノ酸乳の併用で体重増加良好となり日齢68に退院した.早産低出生体重児に使用される母乳添加用粉末には乳蛋白質が含まれており,アレルギー症状を惹起する可能性があり注意が必要である.
  • 渋谷 紀子, 斉藤 恵美子
    2015 年 29 巻 3 号 p. 284-293
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
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    【背景】感作データを含む出生コホート研究は非常に少ない.【方法】我々が以前報告した出生コホート研究の乳児を追跡し,2歳・3歳時にプリックテストを,4歳時に郵送によるアンケート調査を実施し,アレルギー疾患の経過につき検討した.【結果】4歳まで180名をフォローできた.うち136名で2歳以降に少なくとも1回の感作データが得られた.4歳時の食物アレルギー(FA)児は全員,生後早期に湿疹を,1歳までに感作を認めていた.FAを伴わないアトピー性皮膚炎(AD)児のほとんどは4歳までに軽快していた.4歳時の喘息(BA)は乳児期のFAやADと関連がなく,乳児期の保育園入園,発熱,抗菌薬,解熱剤投与がリスク因子であり,多くが吸入抗原への感作を認めていた.【結論】4歳時のFAに生後早期の経皮感作が影響する可能性があること,FAのないADは予後良好であることが示唆された.4歳時のBAは感染に伴う喘息が主体で,アレルギーマーチとは異なる位置づけにあると考えられたが,アトピー喘息の側面も有していた.
  • 渡邊 庸平, 林 千代, 黒河内 明子, 阿部 弘, 三浦 克志
    2015 年 29 巻 3 号 p. 294-302
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
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    (背景)小児のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は,年齢毎の身体的・社会的背景の違いが発症や臨床経過に影響を与えるとされている.さらに,アレルゲン,細菌,ストレスなどの悪化因子,スキンケアやステロイド外用不足などが複雑に絡み合い重症化を来し,入院治療を必要とする場合がある.(目的)当院で入院に至った小児ADを検討することにより,各年齢層での臨床像や悪化因子の特徴を知ることを目的とした.(方法)2003年11月から2012年11月までの10年間において,当院にて入院治療を行った重症小児AD82症例について,後方視的に検討を行った.(結果)82例のうち,乳児例が最も多く27名(33.0%)を占めていた.乳児例は,他の年齢層に較べて電解質異常や低蛋白血症の頻度が有意に多かった.乳児例では出生月が秋季で,入院月が冬季になる症例が多かった.年齢が上がるにつれてその傾向はなくなっていった.悪化を来した臨床的な要因としては,全年齢に共通してスキンケア不足やステロイド外用の処方もしくは塗布量の不足があると考えられた.医師,または保護者のステロイド外用への拒否は乳児例で多く,年齢が上がるにつれてアドヒアランスの低下により重症化した症例が多かった.(結語)適切なスキンケア指導や十分なステロイド外用による治療は,標準的な治療方針の一つであるが,小児ADの重症化を予防するためにも必須であると思われた.特に,乳児期のADは重症化することが多いため注意して治療することが重要であると思われた.
総説
  • 丸山 伸之
    2015 年 29 巻 3 号 p. 303-311
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
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    ナッツ類は食物アレルギーの重要な原因食品の一つである.小児期から発症することが多く,耐性を獲得しにくい.そして,そのアレルギー症状は重篤なことが多い.近年,食物アレルギーについて,粗抗原に含まれる個々のアレルゲン(アレルゲンコンポーネント)と臨床症状との関係について解析が進んできている.ナッツ類についても,臨床症状や交差反応性についてコンポーネントレベルで理解していくことが,これからの臨床診断や治療のために必須となるであろう.本稿では,ナッツ類のアレルゲンコンポーネントとして重要な種子貯蔵タンパク質について概説するとともに,それらの分子構造および類似性について解説したい.
臨床研究の進め方
  • 佐藤 泰憲, 長島 健悟, 高橋 翔
    2015 年 29 巻 3 号 p. 312-317
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2015/10/23
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    今日の医療にEvidence based medicine(EBM)という考えが導入され,ランダム化比較試験やメタアナリシスなどの臨床試験成績が重視される傾向にある.しかしながら,臨床試験の計画や結果の解釈の背景には疫学研究があり,それに基づいて疾患の実態がわかっていなければ,薬効評価及び治療以外のさまざまな要因の影響を考慮することができない.したがって,疫学研究は,いまやEBMを支える両輪の一つとして,臨床試験の評価と適応に欠くことのできない重要な役割を担っている.本稿では,疫学研究の計画と結果の解釈に重点を置き,疫学研究のデザイン及びデータ解析について概説する.
日韓招待講演報告
疫学委員会報告
知っておきたい最新のアレルギー・免疫学用語
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