Chronic Obstructive Pulmonary Disease(以下COPD)に対するNoninvasive Positive Pressure Ventilation(以下NPPV)呼吸ケアは,胸郭運動だけでなく肺の内部障害が高度であり,病態生理に基づいた至適設定が必須である.さらにNoninvasiveとInvasiveの違いは,挿管するかしないか? つまり,自前の気道か,人工気道かの違いである.そこで,この自前の気道をいかにうまく用い,至適設定ができるか? ここにNPPVのコツと落とし穴があると思われる.
導入にあたっては,症例ごとに最適な機器・インターフェースを選択することが重要である.また閉塞性障害合併の有無によって,機器の設定が異なるので注意が必要である.さらに睡眠時のPaCO2の評価が重要であるが,モニター機器が普及していないこと,信頼性評価が十分でないことなどの問題がある.導入と在宅での継続のためには,チーム医療・地域医療ネットワークの形成が不可欠であるが,現状は不十分であり改善が望まれる.
神経筋疾患の非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)におけるコツは,終日までのNPPVの生活環境整備と気道クリアランス維持の工夫である.咳の最大流量(cough peak flow:CPF)を測定し,徒手や器械による咳介助を行う.また,終日NPPVに向けて,鼻プラグやマウスピースなどのインターフェイスの変更や電動車イス上への携帯型人工呼吸器の搭載も行う.落とし穴は,喉咽頭機能障害の進行に伴い,気道確保が困難になると,誤嚥や呼吸器感染の際に排痰困難や窒息を起こす危険がある.終日NPPV患者の移動時や活動の拡大に応じた気道クリアランス維持や人工呼吸器使用のための人的物的環境整備が課題である.
間質性肺炎の急性増悪4例,間質性肺炎の慢性期Ⅱ型呼吸不全2例でNPPVを使用した.急性増悪,慢性期それぞれ1例が救命できたが,4例は入院中に死亡した.縦隔気腫,皮下気腫を2例で認めたが,他の合併症は認めなかった.急性増悪期や慢性進行期の間質性肺炎は予後不良であるが,一部の症例はNPPVによる管理で救命でき,比較的安全に使用できた.今後さらに検討されるべき治療法と考えられた.
呼吸器領域のクリニカルパス(CP)のなかで治療を目的とするパスは少ない.そのなかで慢性呼吸不全患者に対する慢性期NPPV導入CPはチーム医療に支えられ,患者のQOL(Quality of Life)改善やコンプライアンスの維持に一定の成果を上げている.クリニカルパス使用後のデータの二次利用によるさらなる医療の質の向上や新たなパスの出現により,今後も発展が見込まれる.
入院により在宅酸素療法(HOT)を導入する際に,呼吸リハビリテーションの考え方による患者教育を多職種により実施するクリニカルパス(パス)を作成,施行し,その有用性について検討した.パスの使用の主体は安定期の導入であった.パス導入後,安定期のHOT導入,急性増悪後の導入いずれも全入院期間・HOT導入期間の有意の短縮,救急受診回数の有意の減少,緊急入院回数の減少傾向を認めた.以上の成績から,HOTを導入する際の患者教育にクリニカルパスを用いることにより導入の際の患者教育はより効率的に実施できると推定された.
当院において呼吸リハビリテーション目的で初回入院した慢性呼吸器疾患患者505名の疾患名,実施期間などを調査し,クリニカルパスについて検討した.対象疾患は慢性閉塞性肺疾患だけでなく肺結核後遺症,間質性肺炎,気管支拡張症などさまざまで,疾患や重症度により実施日数にも差が認められた.呼吸リハは患者ニーズに応え,個々に細やかなケアを提供する必要があり,クリニカルパスによる画一的な対応が困難な場合が多いと思われた.
「患者状態適応型パス」は飯塚らが中心となった「患者状態適応型パスシステム研究会」で開発されたもので,患者の状態により,時間軸も診療ケア内容も対応できるパスシステムであり,現在計画系すなわち診療プロセスの標準化を目指して活動が行われている.作成した標準プロセスの妥当性の検証が多施設で行われ,また,臨床データの集積により施設間での診療プロセスの比較が可能で,改善のツールとしても有用と考えられている.
慢性閉塞性肺疾患(COPD)をスクリーニングする質問票である11-Qを一部改変し,一般住民を対象とした際も,有用であるか検討した.11-Qの合計点は,COPDと疑われるものが有意に高値であり,質問票の感度と特異度は,79.2%と58.2%であった.この成績より,11-Qは一般住民においてもCOPDを早期発見するための手段として有効であると考えられた.
新しいタイプの経皮的PCO2(PtcCO2)/SpO2モニタリングシステム(TOSCA®)は非侵襲的・長時間にPtcCO2からPaCO2をモニタリングできる.われわれはNPPVを導入した急性および慢性Ⅱ型呼吸不全の肺結核後遺症患者3名に本装置を使用し,PaCO2の変化を迅速に把握し,NPPVの導入,設定調整を的確に施行できた.本装置はPaCO2モニタリングのほかNPPV装着の判断材料としても有用である.
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者29例の咳嗽時最大呼気流速(peak cough flow:PCF)と肺機能や運動耐容能との基準関連妥当性を検討した.また,PCFを増量させるために,Mechanical In-Exsufflation(MI-E)の呼気陰圧はどの程度必要であるかを検討した.肺機能や骨格筋,運動耐容能などのCOPDの重症度が強くなるほどPCFは低値であった.PCFはMI-Eの呼気陰圧は30 cmH2O以上で増加し,COPDの重症度が強い患者ほど,MI-EによるPCFの増大は大きかった.
SASの治療法としてCPAPが広く用いられているが,中程度以下の症例ではアドヒーランスは必ずしも高くなく,新しい治療法が望まれている.閉塞型無呼吸はオトガイ舌筋の緊張を増加させることで防ぎうる.今回,健常男子10名を対象に,インパルスオシレーションを用いオトガイ下電気刺激時における呼吸抵抗の変化を測定した.一部のケースで呼吸抵抗が減少した.呼吸抵抗の低下は,オトガイ下電気刺激による上気道の開大によるものと推察された.
長時間作用型気管支拡張薬にて加療中のCOPDに対する塩酸プロカテロール20μgの吸入は,1秒量の増加,低周波数依存性の呼吸抵抗の上昇および末梢容量性リアクタンスの低下を軽減させるとともに,過呼吸に伴う動的肺過膨張を有意に軽減させ,運動耐容能を改善させた.運動耐容能の改善は動的肺過膨張の改善と有意に相関し,短時間作用型β2刺激薬のassist useとしての有用性が確認された.
高齢者肺炎患者に対して,呼吸理学療法早期開始が日常生活動作および在院期間へ及ぼす影響を調査した.早期開始群11例(平均年齢81.6歳,理学療法処方までの日数1.9日),従来開始群10例(78.7歳,12.6日)で,入院前と比較したFIM達成度は早期開始群で有意にFIMの改善がみられ,在院日数も短縮していた.呼吸理学療法の早期開始は廃用症候群の予防と在院期間の短縮に効果があることが示された.
NPPVのマスク装着に伴う皮膚の発赤やびらんの発生率を低下させる目的でケアの再検討を行い,マスクフィッティングの統一,泡洗顔,保護剤としてアズノール®ガーゼの使用を考案した.24例に試みたところ発赤については従来のケアとの有意差はみられなかったがびらんについては発生率が41%から4.2%(p<0.01)の有意な減少を認めた.また,この方法はコスト削減も期待でき,臨床において有用と考えられる.
地震発生において,ライフラインが途絶された被災者住民の多くは学校,公民館等の施設に避難するが,車中生活をしている住民も少なくない.避難所生活の住民は,被災した家屋の整理や仮設住宅の準備のため,昼中の避難所は不在状態が多い.避難所に残る住民の多くは,高齢者が多く,長期の狭い環境生活のため,精神面ともに,筋力,ADLはきわめて低下し,廃用症候群,静脈血栓塞栓症の併発が高いと考えられる.避難所内での災害発生早期からの適切な運動療法が必要と考えられる.
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