日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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32 巻, 1 号
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シンポジウム
  • 冨岡 洋海
    原稿種別: シンポジウム
    2023 年 32 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    間質性肺疾患の治療に関しては,特発性間質性肺炎の中でも最も難治性で予後不良な特発性肺線維症(IPF)に対する治療の変遷を理解することが重要である.はじめてのIPF国際診療指針である2000年のガイドラインでは,経験的に行われてきたステロイドと免疫抑制剤の併用療法が暫定的に推奨されていたが,その後,その有効性は否定され,安定期にはむしろ有害であるとされ,2015年のガイドラインでは,「使用しないことを強く推奨」となった.代わりに2つの抗線維化薬(ピルフェニドン,ニンテダニブ)が推奨となり,呼吸機能の低下抑制効果から,IPFの予後改善が報告されている.さらに,IPF以外の間質性肺疾患の中にも,IPFと同様に進行性の線維化をきたすフェノタイプがあり,抗線維化薬の有効性が報告された.今後,細胞性/炎症性病態と線維化性病態に応じた治療戦略について,エビデンスの蓄積が望まれる.

  • 有薗 信一, 俵 祐一, 金原 一宏
    原稿種別: シンポジウム
    2023 年 32 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    間質性肺疾患の運動療法の短期効果(6-12週間)は6分間歩行距離や呼吸困難,健康関連QOLの改善に有効である.6か月以上の長期効果を検討した報告は少なく,維持プログラムを含めた長期効果も検討されてきている.本論文では間質性肺疾患患者の理学療法の内容や効果,理学療法評価と生命予後,理学療法における酸素療法の視点から論述する.

  • 猪飼 やす子
    原稿種別: シンポジウム
    2023 年 32 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    心身の苦痛は尊厳の脅かしに関連するとされ,特発性肺線維症(IPF; idiopathic pulmonary fibrosis)療養者の生活の質は,低い傾向にあると国内外の研究で報告されている.各国の呼吸器学会のIPF合同ガイドラインでは,生活の質の向上を目標とする緩和ケアに言及しているが,有効なケアは未確立である.IPF療養者への緩和ケアは未だ享受し難く,尊厳の脅かしが考えられる.

    IPF療養者と家族への看護実践のエビデンスは限られている.いずれも国外の研究であるが,療養者と家族への疾病管理への集団教育は,介入後に生活の質の低下を認め,ケア提供者,療養者,ならびに家族とのカンファレンスに基づく援助は,4週間後の症状緩和に有効であった.Lindellらは質的調査にて,IPF療養者らのアドバンス・ケア・プランニングへの抵抗感を報告している.

    筆者はIPF療養者の尊厳に着目した緩和ケアプログラム,ならびに看護実践の基盤となる理論ディグニティ・センタード・ケア(Dignity-Centered Care)の開発研究を続けている.本稿では,活動の一部を紹介する.

Pros and Cons
  • ―Proの立場から―
    大島 洋平
    原稿種別: Pros and Cons
    2023 年 32 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    呼吸リハビリテーションにおいて呼吸練習はコンディショニングに位置づけられ,運動療法を効率的に遂行するために行われる.周術期においては,呼吸器合併症の予防を目的に行われることが多いが,呼吸練習単独での介入を全例に行うことに関しては否定的な報告が多い.しかしながら,呼吸練習の効果を検証した報告の多くは,呼吸練習の実施状況についての評価が不十分であり,十分に実施できていたかどうかは不明である.実際に,専門職種の間では呼吸練習に対するアドヒアランスは最も改善すべき事項として認識されている.その点を考慮し,アドヒアランスに留意した介入を行うことで呼吸器合併症の発症頻度や死亡率が有意に低下することが確認されている.したがって,現状においては呼吸練習の適応やアドヒアランスに留意しつつ,術前患者に呼吸練習を積極的に適用していくことを推奨する.

  • Conの立場から:「術前患者にルーチンに呼吸練習をする必要はない」
    及川 真人, 花田 匡利, 名倉 弘樹, 竹内 里奈, 永安 武, 神津 玲
    原稿種別: Pros and Cons
    2023 年 32 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    外科周術期のリハビリテーションは,術後呼吸器合併症予防とADL早期獲得を目的に,早期離床を主な手段とし,排痰や呼吸練習などのコンディショニングを付加する術後の介入が主体となる.これに対して,インセンティブ・スパイロメトリーを含めた呼吸練習は,術前のリハビリテーションの一環として慣習的に行われてきた.術前のリハビリテーションは,がんのリハビリテーション診療ガイドラインにおいて実施が推奨されているが,そのプログラムは運動療法を中心とした包括的な内容であり,呼吸練習単独の効果は示されていない.加えて昨今,在院日数の短縮化によって,十分な期間を確保しにくいため,その効果はより乏しくなる可能性がある.これらを踏まえると術前患者に対するリハビリテーションでは,エビデンスの乏しい呼吸練習に時間を割くべきではない.

  • Proの立場から
    俵 祐一, 有薗 信一, 金原 一宏
    原稿種別: Pros and Cons
    2023 年 32 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    慢性閉塞性肺疾患の治療ガイドラインや特発性間質性肺炎の診断と治療の手引きでは,呼吸リハビリテーションを行うことが推奨されている.呼吸筋トレーニングは呼吸練習や持久力トレーニングと同様に,呼吸リハビリテーションプログラムの一つに位置付けられている.呼吸器疾患患者に対する呼吸筋トレーニングの効果をPros&Consのシンポジウムにおいて議論した.Pros&Consの議論するテーマを3つのquestionを中心に,Prosの立場で,Q1.慢性閉塞性肺疾患に対する呼吸筋トレーニングの効果は十分か? Q2.間質性肺疾患に対する呼吸筋トレーニングの効果は十分か? Q3.その他の呼吸器疾患に対する呼吸筋トレーニングの効果は十分か?についてポジティブなエビデンスを紹介した.

  • Prosの立場から
    野々山 忠芳
    原稿種別: Pros and Cons
    2023 年 32 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    挿管・人工呼吸管理中における早期離床は活発に行われているが,歩行練習に限定した効果は明らかではなく,安全性への懸念や医療者側・患者側の様々な障壁により実施できていないことも多い.しかし,挿管中の歩行練習は安全に実施可能であり,障壁に対する対策を行えば実現可能性は高い.また,集中治療室在室中の動作能力は自宅退院の関連因子であることが報告され,離床以外の付加的なリハビリテーションの効果が明らかになっていないことから,歩行を含めた離床を基本とすることが重要であると考えられる.歩行練習は動作能力の獲得だけでなく活動能力低下に対する不安の解消,達成感の獲得による現治療に対するモチベーションの維持・向上など,精神心理面へのメリットは大きく,家族ケアの一助となる.挿管・人工呼吸管理中の歩行練習は,様々な障壁や不明点はあるものの同時に多くのメリットも存在するため,実施を推奨したい.

  • Conの立場から
    渡邉 陽介
    原稿種別: Pros and Cons
    2023 年 32 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    近年,集中治療領域において,早期離床加算の新設やエキスパートコンセンサスの策定,PADISガイドラインの発表等の影響を受けて,早期離床の実施が注目されている.その中でも,挿管・人工呼吸患者に対する歩行練習は,歩行能力の改善や基本的な日常生活動作(activities of daily living: ADL)再獲得に寄与する可能性があると言われている.一方で,安全面や教育システム不足,マンパワー不足を始めとする環境面の問題もあり,その実施率は十分に高くない現状もある.加えて,本邦における早期離床の対象は高齢・低ADL患者が多くを占めるため,海外の歩行練習を含む早期離床に関する報告をそのまま適応することも難しい背景を有する.本稿では,挿管・人工呼吸患者に対する歩行練習の現状と課題を確認した上で,歩行練習を実施しないという立場から歩行練習が抱える問題を提示し,代替的な運動介入方法の可能性や今後の展望について概説する.

コーヒーブレイクセミナー
  • ―当センターでの診療の実際―
    杉野 圭史
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2023 年 32 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    間質性肺炎診療において,薬物療法に加えて非薬物療法である酸素療法や呼吸リハビリテーション,栄養療法,口腔ケア,緩和ケア,医療ソーシャルワーカーなどの介入が求められる.これらを包括的にまとめていくためには,多職種連携が必要不可欠であり,定期的なミーティングを行うことにより様々な情報を共有し,急性期から慢性期(緩和期)まで時期を問わず,個々の患者に最適な診療介入を行うことが可能になる.このような多職種連携を成功させるためには,1)情報共有,2)タスクシフト・シェアリング,3)包括的ケアシステムの構築,などがあげられる.

    そこで今回,間質性肺炎診療における多職種連携の意義と無駄のない円滑な医療提供について述べたい.

原著
  • 小幡 賢吾, 松嶋 真哉, 松尾 知洋, 倉田 和範, 児島 範明, 森脇 元希, 髙田 順子, 横山 仁志
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    【目的】重症COVID-19患者に対する理学療法の実情を明らかにすること.

    【方法】対象は重症COVID-19患者に対し理学療法を直接介入で実施している理学療法士とした.方法はインターネットによるアンケートサイトを用いたアンケート調査とし,直接介入の詳細,リハビリテーション他職種の実情,転帰,精神的ストレスなどを調査した.

    【結果】74.4%の施設が理学療法を直接介入で実施しており,最も多くの施設で実施されているのは腹臥位療法を含む体位管理・ポジショニングであった.また最も多い転帰先は53.6%で自宅退院であった.直接介入している理学療法士は57.1%で何らかの精神的ストレスを感じていた.

    【結論】COVID-19が国内で発症し1年以上が経過し,多くの施設で直接介入による理学療法を実施していた.

  • 田村 陽, 牛島 明子, 小林 真菜, 濵﨑 麻佑, 宮古 裕樹, 長松 裕史, 濵 知明, 南谷 晶, 古川 俊明, 小林 義典
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 1 号 p. 58-66
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    [早期公開] 公開日: 2023/06/14
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    【目的】吸気筋力低下(IMW)を有する心疾患患者の特徴を明らかにすること.

    【方法】対象は外来心臓リハビリテーション開始時に呼吸機能検査と心肺運動負荷試験を行った99例.最大吸気圧が予測値の70%未満をIMWと定義し,全症例および心不全(HF)合併別に比較した.

    【結果】全症例では,IMW群でHF合併率が高く,左室駆出率(LVEF)と最高酸素摂取量が低値,左室拡張末期径(LVDd)が高値であった.HF合併症例では,IMW群でLVEF低値,LVDd高値,controlling nutritional status(CONUT)scoreで中等度障害の割合が高く,HF非合併症例では,IMW群で身体活動量(PA)が低値であった.

    【結論】IMWを有する心疾患患者はHFを高率に合併し運動耐容能が低かった.また,HF合併症例におけるIMWの特徴は左室機能低下と栄養状態不良,HF非合併症例におけるIMWの特徴はPA低下であった.

  • 猪飼 やす子
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    【目的】本研究の目的は,慢性呼吸器疾患看護認定看護師および慢性疾患看護専門看護師を対象に特発性肺線維症療養者への看護援助の実態と教育的ニーズを調査し課題を明示することである.

    【方法】272人を対象に(1)属性,(2)看護実践(34項目)の有無,(3)看護実践の自由記載,(4)プログラムの必要性の程度28問,(5)教育上の課題8問,(6)看護師教育の自由記載を問う無記名自記式質問紙調査を2020年9~12月に実施した.

    【結果】134件を分析し,看護実践は21.4±7.4項目(実践率62.9%)であった.在宅酸素療法では全項目で8割以上実践され,診断時では6割以下であった.実践には対象者の配置場所,呼吸器看護外来,関わった機会の程度が関与していた.教育プログラムの必要性の程度では9問で「大いに必要」と6割以上が答え,教育上の課題では教育できる人材がいないと答えた.

    【結論】看護実践率は,在宅酸素療法で高く診断時で低い.看護体制の構築と看護師の育成が必要である.

  • 林野 収成, 田中 聡, 十河 郁弥, 宮崎 慎二郎, 片岡 弘明, 松元 一郎, 高木 雄一郎, 市川 裕久, 荒川 裕佳子, 森 由弘
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
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    【目的】高齢男性虚血性心疾患(CAD)における慢性閉塞性肺疾患(COPD)併存とフレイルの関連について検討する.

    【方法】心臓リハビリテーション外来を受診した65歳以上の男性CAD患者99例を対象とした.対象をプレフレイル・フレイル群とロバスト群の2群に分類し,2群間の臨床的背景因子を比較した.また,プレフレイル・フレイルの有無を従属変数,2群間で有意差を認めた項目を独立変数とし多重ロジスティック回帰分析を行った.

    【結果】多変量解析の結果,年齢(OR: 1.12,p<0.05),運動習慣(OR: 0.14,p<0.01),COPD併存(OR: 3.31,p<0.05)が独立して抽出された.

    【結語】高齢男性CAD患者におけるCOPD併存は,フレイルの独立した関連因子であり,COPD併存例は積極的にフレイルの評価を実施すべきである.

  • 篠原 史都, 飯田 有輝, 森沢 知之, 山内 康太, 小幡 賢吾, 神津 玲, 河合 佑亮, 井上 茂亮, 西田 修
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 1 号 p. 84-90
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    [早期公開] 公開日: 2023/07/05
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    【目的】重症患者における入院関連能力障害(HAD)と退院後の介護予防の必要性との関連を調査することである.

    【対象と方法】2021年9月から2022年3月にICUにて48時間以上の人工呼吸管理を施行した20歳以上の患者を対象とする前向き観察研究である.HADの有無の2群で背景因子,退院3ヵ月後の転帰と生活状況等について比較した.生活状況の調査は基本チェックリストを用いて郵送にて行った.また,多重ロジスティック回帰分析を用いてHAD発生に関与する因子を抽出した.

    【結果】65例が解析対象者となった.HADは21例に発生した.HAD群で退院3ヵ月後の運動機能低下とフレイルの割合が有意に高かった.また,HAD発生の関連因子としてICU退室時の握力とFunctional Status Score for the ICU合計が抽出された.

    【結論】HAD群で退院3ヵ月後にフレイルを呈した症例が多かった.

症例報告
研究報告
  • ―家族の体験と家族への看護―
    山本 未央
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 32 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    [早期公開] 公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー HTML

    本研究は,わが国におけるCOPD患者の家族の体験と家族への看護ケアについて文献的考察から明らかにして,研究課題と研究の方向性を検討することを目的とした.

    「慢性閉塞性肺疾患」or「COPD」,「家族」or「介護者」,「看護」のキーワードと「原著」「抄録あり」「会議録を除く」,2000年から20年間の条件で文献検索した.対象文献12件から,家族に関する記述を抽出し,【家族が体験していること】と【家族への看護】に分類して,その記述内容を分析した.

    家族を対象とした文献はわずか1件で,他は目的や対象が異なる研究結果や考察の一部で述べられており,家族の体験や家族への看護は十分に明らかにされていない現状であった.看護師は,家族を,患者の療養に必要な存在と捉えて協力依頼していると考えられた.

    今後は,家族に焦点を当てた研究を進めて家族の体験や家族そのものへの看護について,具体的な内容を明らかにしていく必要があると考えられた.

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