日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
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18 巻, 2 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
特別講演Ⅲ
教育講演Ⅸ
教育講演Ⅹ
シンポジウムⅣ
  • ─なぜ全身病として扱う必要があるのか─
    寺本 信嗣, 玉木 彰
    原稿種別: シンポジウム
    2008 年 18 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    われわれが治療対象とするCOPDは,多くの場合痩せており,疲労感が強く,全身的に衰弱したイメージがある.したがって,入院治療で点滴などをしても回復するわけではなく,全身状態の改善に寄与する呼吸リハビリテーションが最大の治療戦略となっている.近年,その理論的根拠が解明されてきており,COPDの炎症は気道のみならず,全身に波及し,慢性全身炎症症候群であると提唱されている.安定期であっても酸化ストレス,接着分子,高感度CRP,TNF,IL-6などが上昇しており,これらは,動脈硬化を促進し,虚血性心疾患,骨粗鬆症,筋障害,肺感染症,肺癌,脳梗塞,糖尿病の危険因子となる.したがって,COPD患者の病態の改善には,肺や気道系の治療とともに全身合併症の管理が必須であり,それらの理解を深める必要性が高い.

  • 山本 寛
    原稿種別: シンポジウム
    2008 年 18 巻 2 号 p. 100-103
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    慢性閉塞性肺疾患(COPD)は紛れもなく肺疾患である.しかし,さまざまな循環器疾患を合併し,これが直接的な死因となることも多い.その原因として低酸素の関与や慢性的な全身性炎症の存在があげられる.COPDをみるにあたっては,心血管疾患と共通するリスク因子の管理を徹底することと,循環器合併症の存在を念頭においた管理を行うことが今後重要性を増してくると考えられる.

  • ─骨粗鬆症─
    桂 秀樹
    原稿種別: シンポジウム
    2008 年 18 巻 2 号 p. 104-107
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の破綻により生じる病態であり,骨の脆弱性亢進と骨折危険率増大に結びつく疾患と定義されている.COPDでは従来ステロイド投与による骨粗鬆症が問題になっていたが,最近の成績では,ステロイド非投与例においても骨粗鬆症を高率に合併することが明らかになった.COPDに骨粗鬆症をきたしやすい原因として,喫煙,カルシウムやビタミンDの摂取不足,運動量の低下などの生活習慣に伴う因子に加え,低栄養,低酸素血症が関与するとされるが,近年,COPDに伴う全身性炎症性変化の関与が注目されている.骨粗鬆症に伴う骨折は急性増悪の原因になったり,生命予後を悪化させることが指摘されており,病初期からその対策が重要である.

  • 吉川 雅則, 友田 恒一, 福岡 篤彦, 玉置 伸二, 木村 弘
    原稿種別: シンポジウム
    2008 年 18 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    COPD患者に合併する栄養障害は予後や病態と密接に関連する重要な“systemic effect”である.代謝亢進や全身性炎症,内分泌ホルモンの分泌動態の変化など栄養障害のメカニズムに基づいた栄養管理が必要となる.特に除脂肪量(lean body mass)の維持や増大を主眼としたストラテジーが求められている.グレリンの投与は摂食促進作用に加えて蛋白同化作用と抗炎症作用を有する治療法として期待される.

  • 室 繁郎, 寺田 邦彦, 三嶋 理晃
    原稿種別: シンポジウム
    2008 年 18 巻 2 号 p. 114-116
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,全身性疾患と捉えられるようになり,併存症が多い疾患であることが認識されている.消化性潰瘍・胃食道逆流症はCOPDに合併する頻度が高いことが知られている.今回の検討では,胃食道逆流症がCOPD増悪の関連因子であることが示され,今後のCOPD管理の一つの指標になると考えられる.

  • 石井 健男
    原稿種別: シンポジウム
    2008 年 18 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    慢性閉塞性肺疾患(COPD)ではうつ傾向がよくみられ,重要な合併症の一つである.うつ症状は呼吸リハビリテーションにおけるセルフマネジメント能力を妨げ,COPDの治療の効率やQOLおよび生存率の低下,入院期間の延長につながる.禁煙の成功率にも悪影響を及ぼす.

    既報告の論文をもとに,COPD の病態,診断,治療という見地からうつに対する診断,治療として薬物,非薬物療法の現状と問題点について総括した.

ワークショップⅡ
  • 塩谷 隆信, 高橋 哲也
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 18 巻 2 号 p. 122-124
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー
  • ─専門医の意見を中心に─
    茂木 孝, 木田 厚瑞
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 18 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    慢性呼吸器疾患の長期管理における地域連携は一部の地域で進行し成果を上げているが,呼吸器学会認定施設の専門医に対するアンケート結果でみるかぎり,まだ満足な体制がつくられているとはいえない.連携の輪となるべき専門医,かかりつけ医,患者・家族,コメディカルのそれぞれについての問題が指摘されている.本稿では慢性呼吸管理を取り巻く医療連携の現状報告とともに,今後の改善すべき点を探っていく.

  • 今村 聡
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 18 巻 2 号 p. 130-131
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    かかりつけの医師が医療連携において果たす重要な役割は,1)早期発見,専門医への紹介,症状改善後の受入れ,2)重症化や急性増悪の予防,急性増悪時の対応,3)在宅療養における多職種との連携の3点である.

    呼吸器ケアにおいても,かかりつけの医師は疾病の予防や早期発見・治療を担うとともに,専門医への紹介等医療連携の要となる.特に,COPDでは,「4疾病5事業」ごとの医療連携体制に倣った連携が必要である.

  • ─市立秋田総合病院における取り組みと成果─
    菅原 慶勇, 高橋 仁美, 清川 憲孝, 笠井 千景, 渡邊 暢, 藤井 清佳, 柏倉 剛, 本間 光信, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 18 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    包括的呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は継続して実施することで効果が上がることが実証されており,病院あるいは地域における医療チームの指導を受けた後,在宅でいかに患者に継続させるかが課題となる.継続のためには,呼吸リハの必要性と方法を患者や家族によく理解させることが第一前提で,そのために継続可能なプログラム構成に配慮し,わかりやすく繰り返し指導できる学際的医療チームの役割は大きい.呼吸リハにより獲得した効果を維持するには,定期的なフォローアップにより在宅でいかにモチベーションを維持させ,呼吸リハを継続させることができるかが鍵となる.患者教育は,COPDの予防や管理すべてのプロセスにおいて重要な位置を占めることから,学際的医療チームが患者教育の一環として包括的にアプローチできる呼吸教室の果たす役割は大きいと考える.

  • ─地域で支えるかけがえのないいのち─
    武知 由佳子, 丸山 ゆかり, 遠藤 直子, 布施 美千代, 中舘 涼子
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 18 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    在宅呼吸ケア白書で,90日以上の長期入院の気切人工呼吸器患者のいる103施設で,患者数は598人であった.紹介先での治療が心配だったり,また患者・家族が希望せず20%しか外部に紹介していない現実がある.在宅呼吸ケアを担える24時間の在宅療養支援診療所に対する強いニーズを感じ,その役割は今後さらに大きくなると考える.院内と同じように在宅においても患者様ごとに在宅呼吸ケアチームが必要であり,在宅呼吸ケアに関する啓発や質の向上のための教育指導を,地域を巻き込んで行う必要がある.

  • 浅香 満, 中澤 次夫, 江原 洋一
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 18 巻 2 号 p. 144-146
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    呼吸リハビリテーションの地域連携を理学療法士の立場から考えたときに,そのニーズに応えられる資源(人材)の不足を感じる.現状では,多くの理学療法士が知識・技術に不安をもっているが,学習意欲は高いことがうかがえる.呼吸リハビリテーションの地域連携ができていると思っている理学療法士はほとんどいない.生涯学習の充実や関連職種への啓発活動を続けなくてはならないと考える.

  • 長濱 あかし
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 18 巻 2 号 p. 147-149
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    訪問看護を依頼される呼吸管理の必要な患者は,重度呼吸不全や在宅療養に不安のある方,病状の不安定な方,療養生活に問題のある方で,病院だけでなくかかりつけ医との連携も必要である.地域では,HMVの管理ができる医師が少なく地域医療連携は十分とはいえないのが現状である.しかし,呼吸器専門医でなくても,病院医師,訪問看護ステーション,機器業者等との連携で地域でのサポートは可能であると考える.

サテライトセミナーⅢ
原著
  • 杉野 圭史, 山崎 陽子, 後町 杏子, 鏑木 教平, 岩田 基秀, 石田 文昭, 宮崎 泰斗, 佐藤 大輔, 阪口 真之, 佐野 剛, 草 ...
    原稿種別: 原著
    2008 年 18 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    目的:肺高血圧症(PH)を合併した特発性肺線維症(IPF)の臨床的特徴を明らかにする.

    対象および方法:過去4年間に当科に入院したIPF患者33例を対象に,心臓超音波検査にて推定収縮期肺動脈圧(ePAP)が35 mmHgを超えるものをPH合併例,それ以下を非合併例とし,2群間でその臨床的特徴を比較検討した.

    結果:PH合併例は14例,非合併例は19例で,IPFの重症度はPH合併例で有意に高かった.

    臨床症状では,労作時呼吸困難がPH合併例で有意に強く,呼吸機能検査では,VC,%VCおよび%DLcoともにPH合併例で有意に低下していた.胸部CTでは,PH合併例で有意にhoneycombingスコアが高かった.6分間歩行試験では,PH合併例で最低SpO2値が有意に低く,Borg scaleも高かった.さらにePAPと%VC,%DLco,6MWD,最低SpO2値,honeycombingスコアとの間に有意な相関を認めた.予後は,PH合併例で有意に不良であった.

    考察:PHを合併したIPFでは,非合併例に比べて予後が悪く,積極的に長期酸素療法および肺高血圧に対する薬物療法を考慮すべきである.

  • 有薗 信一, 小川 智也, 渡辺 文子, 寶門 玲美, 平澤 純, 近藤 康博, 木村 智樹, 西山 理, 加藤 景介, 千住 秀明, 谷口 ...
    原稿種別: 原著
    2008 年 18 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,6分間歩行テスト(6MWT)と漸増シャトルウォーキングテスト(ISWT)による慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の最高酸素摂取量(peak )の予測式を作成することである.検討1では,COPD患者100例に心肺運動負荷試験と6MWT,ISWT,肺機能などを評価し,peak の予測式を作成した.6MWTによる予測式は,peak =0.014×6MWTの歩行距離-0.127×年齢+0.049×%一秒量+12.477(R2=0.700)であり,ISWTによる予測式は,peak =0.012×ISWTの歩行距離-0.091×年齢+0.036×%一秒量+12.589(R2=0.704)であった.検討2では,別のCOPD患者60例に対して,作成した予測式による予測値と実測値を比較した.6MWTとISWTによるpeak の予測値は,実測値と差を認めなかった.われわれは,6MWTまたは,ISWTの歩行距離と年齢,一秒量を測定することにより,peak を予測できる式を作成した.

  • 辻村 康彦, 荻原 圭三, 平松 哲夫, 松本 修一
    原稿種別: 原著
    2008 年 18 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    COPD患者に対し,18週間で卒業する外来呼吸リハビリテーション教室と,以後,月2回通院の維持プログラムを実施し,その継続率と長期効果につき検討した.継続に関しては,卒業率94.7%,2年完遂率49.1%と良好であった.これは,少人数のグループ制であることや,トレーニング後にコミュニケーションの時間を設けるなどの特徴が仲間意識を高め,トレーニング継続に対する意欲の維持に効を奏したと考えられた.また,教室の効果に関しては,臨床症状や運動耐容能,健康関連QOLを有意に改善し,その効果を長期的に維持していた.これは教室の内容が効果を得るに十分な内容であったこと,また,在宅療養日誌や歩数計の活用による自己管理の徹底が,在宅トレーニングの継続を確実としたことがその理由と考えられた.

  • 青田 絵里, 間瀬 教史, 和田 智弘, 野添 匡史, 岡前 暁生, 村上 茂史
    原稿種別: 原著
    2008 年 18 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    今回,われわれは慢性呼吸不全患者7例に対し,酸素ボンベを手引きカートで引く歩行(手引き歩行)と歩行車に搭載する歩行(歩行車歩行)との2条件において,運動耐容能および呼吸器系反応を比較しその効果を検討した.その結果,歩行車歩行による6分間歩行距離(6-minute walking distance;6MWD)が,手引き歩行171.7±69.4 mに対し,280.0±80.9 mと有意(p<0.01)に増加した.また,SpO2,心拍数,呼吸数といった呼吸器系反応についても負担が軽減され,ボルグスケールで示される主観的な息切れ感についても全例で改善が認められた.

    これらの結果から,歩行車の使用は,慢性呼吸不全患者の運動耐容能低下や歩行時息切れ感の改善に有効と考えられた.

  • 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 清川 憲孝, 笠井 千景, 渡邊 暢, 藤井 清佳, 柏倉 剛, 本間 光信, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
    原稿種別: 原著
    2008 年 18 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    当院において呼吸リハを行っている安定期COPD患者を対象に栄養状態を調査し,身体組成,筋力,運動耐容能,炎症性サイトカインとの関連を検討した.呼吸リハを行っている半数以上が%IBW<90%で,REE/REE predictは1.37倍,エネルギー充足率は83%であった.%IBW分類では,低体重群が他2群と比較し,FMI,FFMI,REE,Leptin,FVC,PImaxが有意に低値で,Ghrelin,TNF-aは有意に高値であった.%IBWとTNF-aおよびIL-6において,弱い逆相関が認められた.COPDの体重減少には,REE/REE predict亢進,エネルギー充足率低下および炎症性サイトカインの上昇がかかわっているであろうと推察された.

  • 一和多 俊男, 内山 健二, 佐藤 英幸, 菊池 清和, 相馬 亮介, 高山 賢哉, 阿部 篤郎, 藤原 寛樹, 長尾 光修
    原稿種別: 原著
    2008 年 18 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    慢性呼吸器疾患患者を対象にして,携帯用酸素濃縮器AIRWALK AW-1®と病院設置されている酸素と2種類(電池式と空圧式)の呼吸同調酸素供給装置付き携帯用小型酸素ボンベの歩行時の酸素供給効果を比較検討した.3分間の歩行終了時のSpO2は,連続流,AIRWALK AW-1®,ライトテックDS20®,サイプレス®において,それぞれ3.9±3.0%,5.7±3.2%,5.1±3.1%,6.9±4.1%低下し,各酸素供給法間において有意差を認めなかった.呼吸数,心拍数と組織酸素化指数(TOI)も,SpO2と同様に有意な変化を認めなかった.AIRWALK AW-1®は,一般臨床で使用されている携帯用酸素供給装置と同様の酸素吸入効果を認めた.

  • 髙井 雄二郎, 佐藤 大輔, 山城 義広, 小林 美奈穂, 本間 栄
    原稿種別: 原著
    2008 年 18 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 2008/10/29
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル フリー

    閉塞型睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)とインスリン抵抗性(IR),メタボリックシンドロームの関連性について検討した.OSAHS患者でのIR合併率は58.1%と高率であった.

    IRの有無とBMI,肝酵素,中性脂肪,HDL-Cなどとの関連性が認められた.IRはOSAHSの重症度との関連は認められなかったが,経鼻的持続気道陽圧呼吸療法により有意に改善した.

    OSAHS患者でのIRの評価はメタボリックシンドロームの病態把握に有用と思われた.

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