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菊池 弘恵, 長谷川 悠子, 三宅 裕子, 大野 典子, 山根 正也, 細井 慶太, 閔 庚燁
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
176-181
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
フィルム材の鼻根部への貼付,熱吸収シートの鼻根部への貼付と白色ワセリンの非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive Positive Pressure Ventilation: NPPV)マスク面への塗布の3つの方法によるNPPVマスク接触部の皮膚の発赤発生率の低減効果を41例の患者を対象として一部前向き介入研究を含む観察研究で比較検討した.鼻根部の発赤発生はフィルムを貼付した20例では11例(55%),熱吸収シートを貼付した7例では4例(57%),白色ワセリンを塗布した例14例では1例(8%)であり,白色ワセリンが他の2法より有意に少なかった(p<0.05).また白色ワセリンのもつ,ずれ応力の低減性や保湿性は褥瘡予防ケアに基づいており,皮膚の脆弱な高齢者でも安全に使用できるだけでなく管理が簡便で経済的な方法であることが示された.白色ワセリンをマスクの皮膚接触面に塗布する方法はNPPVマスクによる皮膚障害を予防する方法として広く利用されることを推奨したい.
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星野 美香, 安藤 守秀, 早川美和子 , 岡澤 光芝, 榊原 博樹, 才藤 栄一
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
182-187
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
外来呼吸リハビリテーションに参加した慢性呼吸器疾患患者22例を対象に日本語版Seattle Obstructive Lung Disease Questionnaire(SOLQ)を用いてQuality of Life(QOL)評価し,特性を検討した.対象患者のSOLQの得点分布は平均値を中心にほぼ正規分布し,その得点は肺機能やChronic Respiratory Questionnaireの結果と相関を示した.これより慢性呼吸器疾患患者のQOLテストとしてSOLQは妥当性をもつことが示唆された.
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吉澤 孝之, 溝口 真美, 岩城 基, 吉澤 明孝, 赤星 俊樹, 橋本 修
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
188-192
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
禁煙治療におけるバレニクリンとニコチンパッチの効果について114名で検討した.禁煙プログラム継続率はバレニクリン群で有意に高かったが,禁煙プログラム終了時点での禁煙成功率には有意差を認めなかった.禁煙失敗にかかわる因子の解析ではバレニクリンでオッズ比(OR)が0.399(
p=0.0337)と失敗する率が低く,年齢が低いほど,初診時の呼気CO濃度が高いほど失敗する率が高かった.
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──人間ドックデータより──
小松 佳道, 藤本 圭作, 小松 道俊, 蜂谷 勤, 花岡 正幸, 久保 惠嗣
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
193-197
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
長野県諏訪地区の某職場において,40歳以上の職員で5年以上毎年人間ドックを受けている全職員を対象とし,スパイロメトリーを解析し経年的変化について調査した.対象者は62名(年齢:44~54歳,平均49歳,男性44名,女性18名)で,1年間の平均1秒量の減少量は,非喫煙者(n=41)で48±7.4 m
l(平均±SEM),喫煙者(n=21)で81±9.1 m
lであり,有意に喫煙者では経年的呼吸機能の低下が大きかった(
p<0.01).また,非喫煙者では閉塞性換気障害を認めなかったが,喫煙者においては5名(23.8%)に認められた.肺年齢を計算したところ,実年齢と肺年齢の差の平均は非喫煙者で-1歳に対して喫煙者では+15歳であった.
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──シャトルウォーキングテストによる運動耐容能の評価──
雪田 洋介, 安藤 守秀, 進藤 丈, 安部 崇, 白木 晶, 中島 治典, 加藤 俊夫, 伊藤 元, 日比 美智子, 武藤 義和, 狩野 ...
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
198-203
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
外科的肺切除術を予定されたCOPD合併肺癌患者に対する術前評価としてのシャトルウォーキングテスト(Shuttle Walking Test; SWT)の有用性をレトロスペクティブに検討した. 2003年から2012年までの51例(男性47例,女性4例,年齢72±5歳,FEV
1 1547±360m
l)を対象とした.SWTの結果から算出されたpeak

を用いて低リスク,中リスク,高リスクの3群に分類し,医師の裁量も考慮に入れ手術適応を判断した.肺葉切除術を予定された45例中33例,肺全摘術を予定された6例中4例に対して手術を実施した.合併症は2例認め低リスク群の1例が術後HOTを要し,中リスク群の1例が術後急性右心不全,致死的不整脈にて死亡したが,いずれも術前の予測範囲内の経過であった.COPD合併肺癌に対する外科的肺切除術の術前リスク評価にSWTは有用であり,しかも広いスペースや特別な道具を必要とせず広く一般施設で実施可能であり今後さらなる普及が望まれる.
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──包括的支援チームの結成と専門外来の開設──
岸 雅人, 佐内 文, 尾熊 洋子, 石月 亜由美, 石田 英恵, 石井 俊夫, 寺田 千代美, 小松 友子, 杉山 清子, 稲瀬 直彦
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
204-209
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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三島社会保険病院は静岡県三島市の中核病院である.2009年度より呼吸器内科医師と理学療法士,看護師,管理栄養士等で構成される包括的呼吸リハビリテーション支援チームを結成し,同時に呼吸リハビリテーション専門外来を開設した.呼吸リハビリテーションプログラムは,評価,運動療法,教育・指導(病態,日常生活の注意点,栄養,服薬)を中心とし,多職種共有のパスを用いて行った.4年間の累積患者数は109名であり,COPDと間質性肺炎の患者が8割以上を占め,在宅酸素療法患者や,栄養状態不良の患者が約半数を占めた.COPD患者9名の呼吸リハビリテーション開始前後の比較では,6分間歩行時の息切れが有意に改善していた.在宅生活支援を目的として,訪問リハビリテーションや,年2回の患者会を行った.急性期から生活期までトータルでサポートする地域密着型医療を展開するために,チーム医療が必要と考えられる.
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西口 博憲, 後藤 英介, 坂田 典史
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
210-213
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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高齢者の急性呼吸不全の管理におけるNPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation)の有用性,成否の予測因子を検討するため,NPPVを行った80歳以上の31症例を後ろ向きに検討した.高齢者においても,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)急性増悪や心原性肺水腫では高い成功率を示し,基礎疾患の重要性が示唆された.臨床的な数値パラメーターの検討では,P/F ratio,SAPS (Simplified Acute Physiology Score)-Ⅱなどの一般的指標は有用性が低かったのに対し,血清アルブミン値がNPPV成功例で失敗群に比較して有意に高値であり,高齢者でのNPPVの成否および予後予測に重要である可能性が示唆された.
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中山 雅之, 坂東 政司, 関根 利江, 菊池 貴明, 黒崎 史朗, 澤田 哲郎, 中澤 晶子, 鈴木 恵理, 間藤 尚子, 山沢 英明, ...
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
214-217
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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GOLD 2011のカテゴリー分類では,気流閉塞と増悪頻度,症状(修正MRC[mMRC]質問票あるいはCAT)を用いてCOPDを4群に分類し,多面的に評価することが求められている.症状の評価では,mMRCグレード0-1またはCATスコア≦9がLess symptoms群,mMRCグレード≧2またはCATスコア≧10がMore symptoms群に分類される.しかし実地診療では,mMRCグレードが0-1であるにもかかわらずCATスコアが≧10となり,両スコアが乖離する症例をしばしば経験する.今回著者らは,それらが乖離を認めたCOPD症例の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.mMRCグレード≦1かつCATスコア≧10をDis(discrepancy)群として,mMRCグレード≦1かつCATスコア≦9のL群,mMRCグレード≧2かつCATスコア≧10のM群との比較検討を行った.Dis群は全体の約30%にみられ,咳嗽・喀痰の症状が強く,%FEV
1はL群とM群の中間に位置し,BMI,過去の増悪頻度,運動耐容能はM群よりL群に近い特徴を示した.
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篠田 千恵, 長澤 千和, 和田 攻
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
218-222
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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血管内皮機能が心血管イベントの発症と密接な関係があり,喫煙は血管内皮機能を障害することがこれまでにも報告されている.今回われわれは前腕の阻血前後における,上腕動脈の血管径の変化を測定するFMD(flow mediated dilatation)検査で血管内皮機能を評価し,禁煙による可逆性について検討した.禁煙外来を受診した健常成人男性を対象に,禁煙外来初診時と禁煙達成3ヵ月後に%FMDを測定し,比較検討した.禁煙前の%FMDが4.6±1.7%であったのに対し禁煙後は6.6±2.7%(
p<0.01)と有意な改善を認め,%FMDの改善度とpack year,喫煙年数に逆相関がみられた.禁煙により血管内皮機能の有意な改善が期待でき,喫煙歴が短いほど,その改善効果は高いことから,早期の禁煙が心血管イベント発症を予防すると考えられる.
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加藤 聡之, 酒井 元生, 河野 純子, 堀江 陽子, 杉浦 幸恵, 樋渡 貴晴, 榊原 隆志, 川越 千佳
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
223-227
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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ケアマネジャー(ケアマネ)は介護保険利用の在宅酸素療法(HOT)患者のケアプランを作成し,在宅呼吸ケアの統括的役割を担う.呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)もケアプランに取り組まれるべきだが,ケアマネの呼吸リハへの認識が十分ではない現状がある.そのため呼吸リハのサービスが十分になされていない可能性もある.そこで,当院主催の在宅呼吸ケアの勉強会である「在宅呼吸ケア地域連携の会」の参加ケアマネを対象に,HOT患者の呼吸リハに関するアンケート調査を行った.その結果,ケアプランに呼吸リハを入れていたのは54.8%と約半数にすぎず,呼吸リハの知識・技量に58.3%が自信がないと回答し,69.5%は実施に不安を感じていた.呼吸リハがケアプランにて組み込まれ,適正に実施されるには,ケアマネの呼吸リハの知識獲得の機会を増やすとともに,呼吸リハにかかわる多職種連携が機能する環境作りを進める必要がある.
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和田 麻依子, 柏崎 純子, 須山 智子, 大西 司
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
228-233
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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呼吸器教室で歩行時のSpO
2や息苦しさの変化を知り,歩行のペース,休息の取り方や運動前の短時間作用型気管支拡張薬(SABA: short acting bete2-agonist)の吸入のタイミングを学ぶことを目的に歩行体験を導入した.講義後に1周50 mの廊下を最大努力で歩行し,前後のSpO
2と脈拍,Borgスケールを比較した.COPDアセスメントテスト(CAT: COPD Assessment Test)と歩行に対する思いを質問紙で調査し,患者教育における歩行体験の効果を分析した.歩行前後でSpO
2が3.8%低下,Borgスケールは歩行前が平均0.5点で歩行後が平均2点であった.質問紙では「歩行後に苦しくなった」「酸素が考えていたより下がって驚いた」等の回答があり,SpO
2が低下しても自覚症状が乏しいことやSpO
2の低下や脈拍の上昇からgradeⅢ以上では運動前のSABAの使用や酸素投与の必要性が示唆された.限られた時間内での歩行体験や参加者の要望に沿った講義を実施し,自己管理能力が向上できるような教室を開催していくことが今後の課題となった.
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──分類方法の特性──
森野 陽, 高橋 弘毅, 石合 純夫
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
234-240
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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【目的】特発性肺線維症(IPF)について,生命予後をアウトカムにしたさまざまな分類が報告されているが,その多くはADL,健康関連QOL(HRQOL)について比較していない.本研究はIPFの分類方法ごとに,運動機能,ADL,HRQOLを比較することを目的とした.【方法】外来通院中の安定したIPF患者を対象とし,厚生労働省特定疾患認定基準における重症度分類,mMRC,GAP stage,それぞれにおいて2群に分け,大腿四頭筋筋力,6MWT,ADL,HRQOLを比較した.【結果】いずれの分類方法で比較しても,大腿四頭筋筋力には有意な差を認めず,6MWDには有意な差を認めた.ADLは,mMRCおよびGAP stageで比較した場合に,HRQOLは,mMRCで比較した場合に有意な差を認めた.【結論】検査値より自覚症状で分類し比較したほうが,ADL,HRQOLに差が出ることが明らかになった.
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──Netter pink pufferの重要性──
塩谷 隆信, 佐竹 將宏, 進藤 勉, 佐藤 一洋, 佐野 正明, 齊藤 元, 川越 厚良, 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 平野 義則, 伊藤 ...
原稿種別: 原著
2013 年 23 巻 2 号 p.
241-248
発行日: 2013/08/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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目的:COPDにおける胸部CTによる気腫性病変評価と,気腫性病変と身体組成,運動耐容能および健康関連QOLとの関連を明らかにすることを目的とした.
対象および方法:市立秋田総合病院呼吸器内科通院中の安定期COPD患者32例(男性30例,女性2例,平均年齢76.6歳,body mass index(BMI)21.4,FEV
1/FVC 46.0%)を対象とした.胸部CT上の低吸収領域(LAA)をGoddard法およびThurlbeckスタンダードパネルを用いスコア化し,身体組成,運動耐容能,健康関連QOL(CRQ)の各指標と対比した.
結果:パネルCTスコアと%ideal body weight(%IBW)には,偏相関係数が-0.505で有意な負の相関がみられた.パネルCTスコアは,低体重,標準体重,過体重に3群間で有意差が認められ,低体重群でパネルCTスコアが最も大きかった.パネルCTスコアと大腿四頭筋力,健康関連QOLの各スコアには有意な相関が認められた.
結論:安定期COPD患者では,気腫性病変の広がりと体重には有意の負の相関関係があり,体重が低いほど気腫性病変が多く,Netter pink pufferの臨床的な重要性が改めて示唆された.
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