日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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30 巻, 2 号
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学会賞受賞報告
  • 利部 なつみ, 千葉 史, 両角 和恵, 小林 誠一, 矢内 勝
    原稿種別: 学会賞受賞報告
    2022 年 30 巻 2 号 p. 145-153
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    宮城県石巻市は,沿岸漁業地域で喫煙に対して非常に寛容的な地域性があった.2006年の市民を対象とした調査では,40歳以上のCOPD罹患率がNICE Studyで示された有病率より1.5倍高いことがわかった.しかし,COPD診療の医療体制は全く整備されていなかった.このような背景から,2009年に石巻地域COPDネットワーク(略称ICON)が設立された.宮城県北東部における,地域完結型・循環型の医療連携システムである.COPDの診断・治療の標準化と役割分担を効率的かつシームレスに行うだけでなく,多職種が連携してCOPD患者を包括的に評価し,個別的に介入する患者教育プログラムの展開に重点を置いている.2021年8月現在,登録医療機関は79件,登録患者数は累計833名,継続中の患者は645名となっている.これまで,医療連携及び,多職種連携による患者教育の検証を行い,得られた成果・課題を連携に反映させてきた.今後も,COPD医療連携と患者教育の実践・検証を継続し,本学会の発展に貢献していきたい.

教育講演
  • 竹之内 沙弥香
    原稿種別: 教育講演
    2022 年 30 巻 2 号 p. 154-158
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    アドバンス・ケア・プランニング(以下,ACP)は,健康な人や病をもつ人が,自分の価値観や希望を明確にし,家族や医療者と人生の最終段階に望む医療やケアについて話し合うプロセスである.ここでは,重い病を持つ人を対象としたACP支援のポイントについて述べる.

    医療者がACPの話し合いを実施するとき,患者の望む最期の療養の場所や,生命維持治療の方針など事前指示等の話題に焦点が置かれがちである.しかし,それらの話題を持ち出す前に,ぜひ患者に尋ねてほしい事がある.それは,本人が大切にしていること(価値観)や気がかり,やっておきたいこと等,患者の価値観や優先事項についてである.本稿では,医療者によるACP支援の手順と要点を解説し,病やその苦難と闘う人(患者)が,病と共に生きることの意味を見出し,自分の力や価値観,周囲の支えがあることを再認識する機会を得て,残された時間をその人らしく過ごすための支援ができることを目指す.

  • 長谷川 智子, 礪波 利圭
    原稿種別: 教育講演
    2022 年 30 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    医学領域では以前より国際化が進んでいるが,看護の領域でも国際化がますますすすんでいる.例えば,国際看護師協会(International Council of Nurses: ICN)には日本看護協会(Japanese Nursing Association: JNA)も加盟しているため,日本看護協会の会員であれば自動的にICNのメンバーということになり,もちろん国際学会で発表することもできる.過去には横浜でICN国際学会が開催され,世界各国の看護師が日本に集まったが,日本の看護師も多く参加し,皆で浴衣を着て意見交換を行い大いに盛り上がった.

    2020年はCOVID-19の関係で国際学会も延期かWEB開催に切り替わり,残念ながら海外旅行を兼ねての学会参加が難しい状況となってしまったが,今後,COVID-19の感染状況が沈静化した際には,世界中で様々な国際学会が開催され,国際学会での発表に対するモチベーションの上昇に繋がるのではないかと考える.

特別シンポジウム
  • 和田 治, 飛山 義憲
    原稿種別: 特別シンポジウム
    2022 年 30 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    人工膝関節全置換術のリハビリテーションは術前期,急性期,回復期,維持期に分けることが出来る.これまで諸外国を中心に各々の時期のリハビリテーションに関するエビデンスが蓄積されてきている.具体的には術前からの患者教育を含めたリハビリテーションが術後の期待値調整や不安の軽減に有効であることが示唆されている.急性期から回復期では低周波刺激装置を用いた筋力トレーニングが術後の筋力回復に効果的であることが報告されている.一方,回復期から維持期では,身体活動量の向上が目標の1つとなるが,身体活動量向上のための介入方法に関するエビデンスは極めて少ない.当院ではこれらのエビデンスを元に,術前患者教育を含めた介入,術後翌日からの低周波刺激を併用した筋力トレーニング,回復期から維持期での身体活動量向上を目的としたウォーキングプログラムを実施してきた.本論文ではシンポジウムにて発表した内容をまとめることとする.

特別ワークショップ
  • 長谷川 智子
    原稿種別: 特別ワークショップ
    2022 年 30 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    日本における看護師の資格認定制度は,1987年厚生省の「看護制度検討会報告書(21世紀に向けての看護制度のあり方)」において,専門看護師,看護管理者の育成が提言されたことを契機に始まった.そこでようやく誕生したのが1994年に専門看護師制度,1995年に認定看護師制度,1998年に認定看護管理者制度で,日本看護協会がその核となった.認定看護師(Certified Nurse: CN)の役割としては,実践・指導・相談があり,高度実践看護師と同等レベル,あるいはそれ以上の能力を有する者が多数存在している.

    2020年度からは新たな認定看護師教育課程が開講され,呼吸器看護でも2021年「呼吸器看護認定看護師」としての教育が開講されるようになった.新カリキュラムでは特定の医療行為ができるようになる教育が組み込まれ,臨床推論力と病態判断力に基づいた高度な実践を展開できるようになることを期待されている.

共同企画
  • 越久 仁敬
    原稿種別: 共同企画
    2022 年 30 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    呼吸困難(息苦しさ)とは,呼吸に伴う違和感,不快感または苦痛感である.呼吸困難感の大きさは,基本的には呼吸努力の大きさによって決まる.くわえて,努力に見合う換気量が得られているか否かも関係し,さらには,低酸素血症や高炭酸ガス血症も呼吸努力の大きさとは独立して呼吸困難感を生じさせる.呼吸努力の大きさ,低酸素血症,高炭酸ガス血症といった情報は,脳幹において統合され,上行覚醒系を通って大脳辺縁系や大脳皮質に伝えられ,それらの刺激の大きさをどのくらい大きいと感じるかという感度(息苦しさの感度)により,最終的な呼吸困難感の大きさが決まる.したがって,呼吸困難に対処するためには,呼吸困難の知覚や日常生活への影響だけでなく,精神的な苦痛を考慮する必要がある.

  • ―がんと非がん疾患の呼吸困難へのオピオイドの役割―
    山口 崇
    原稿種別: 共同企画
    2022 年 30 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    呼吸困難は,がん・非がんに関わらず,緩和ケア対象患者において頻度の高い重要な症状である.国内外の各種診療ガイドラインにおいて,モルヒネをはじめとするオピオイドはがん患者・非がん患者の呼吸困難に対する症状緩和薬物療法の第一選択として推奨されている.しかしながら,これらのガイドライン推奨の根拠とされている臨床研究は試験デザイン上いくつかの懸念があり,堅牢なエビデンスとは言えない現状がある.またモルヒネ以外のオピオイドについては,臨床研究自体がかなり不足しており,モルヒネの代替薬となりうるのかに関する知見は不足している.また重要な課題として,背景疾患によるオピオイドの効果差に関しても十分な知見は積み上げられていない.このような背景から,呼吸困難に対するオピオイドに関する臨床研究を今後もより一層進めていき,臨床現場の道しるべとなるようなエビデンスを創出していくことが重要である.

  • 一門 和哉
    原稿種別: 共同企画
    2022 年 30 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    ARDS診療におけるステロイド療法について,ステロイドを投与すべきでない対象疾患,ステロイドの投与量,投与時期,投与期間など,現在までの知見で判明している問題点を概説した.インフルエンザウイルス感染,ARDS発症から14日目以降はステロイドを投与すべきでない.我が国の呼吸器内科専門医施設で用いられることの多いステロイドパルス療法は,ARDSに対しては,近年否定的なデータが報告されている事を認識する必要がある.疾患や病態によって,ステロイドが負の効果を示すため,呼吸器内科医として,“とりあえずパルス療法”の考え方を改める事を強調したい.

コーヒーブレイクセミナー
  • 長谷川 高志
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2022 年 30 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    1990年代半ばから遠隔医療の実用化が進み,専門医が他の医師を支援する遠隔画像診断,遠隔から患者を診察するオンライン診療や遠隔モニタリングなどが発展した.Doctor to Doctor(DtoD)形態の遠隔画像診断では診療画像等の共有により専門医の指導を行い,医師偏在地域でも高度な診療が可能になる.オンライン診療などのDoctor to Patient(DtoP)形態で,テレビ電話による診察や心臓ペースメーカー等のデバイスの遠隔モニタリングで慢性疾患患者の診療を行う.継続すべき診療からの脱落の抑制,予後改善等の効果がある.医師法や医療法下での適正な診療の実施,診療報酬制度による安定した運営などは整備途上である.ICTならではの新形態の診療手法の出現も考えられ,制度整備の課題は広がっている.呼吸ケアのリハビリテーションには,オンライン診療など遠隔医療のみ可能な「持続のための診療手法」が有効であり,推進には医療技術の定量的な評価の確立が重要である.

ランチョンセミナー
  • 杉野 圭史
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2022 年 30 巻 2 号 p. 190-194
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    間質性肺炎診療において,適切な診断と重症度や予後リスク評価を考慮した早期治療介入は臨床上,最も重要なポイントである.

    坪井病院は,2018年1月より福島県初の間質性肺炎・肺線維症センターを開設した.最終診断は,間質性肺炎を専門とする臨床医,病理医,放射線科医による合議が重要で,当センターでも定期的に実施している.

    特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)の薬物治療に関しては,日本の重症度分類で最軽症のIPF患者のうち,6分間歩行試験時の最低SpO2 90%未満の存在や海外の重症度分類でGAP stage II以上の患者は,明らかに予後不良であり,早期から抗線維化薬を導入することにより,努力性肺活量の低下抑制効果を得ている.

    最近では,全身性強皮症や進行性線維化型間質性肺疾患の患者においても,ニンテダニブの有効性と安全性が証明された.但し,どのタイミングでニンテダニブを導入するべきかについては,今後も議論を要する.

原著
  • 田中 康友, 田中 貴子, 新貝 和也, 北川 知佳, 陶山 和晃, 城石 涼太, 力富 直人, 津田 徹, 宇都宮 嘉明, 神津 玲
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    【背景と目的】慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:以下COPD)患者の入院原因を調査するとともに,併存疾患による入院と健康関連生活の質との関連を検討すること.

    【対象と方法】安定期のCOPD患者を対象に過去1年間の入院の有無・回数・原因とCOPD assessment test(以下CAT),を評価した.

    【結果】解析対象者は103例で,入院回数は全原因を含めて63回であった.そのうち併存疾患による入院は28回(44%)で,内訳は心血管疾患が10回(16%)と最も多く,運動器疾患など他の疾患は5%程度であった.また,重回帰分析の結果,併存疾患による入院とCATとの関連は認められなかった(P=0.607).

    【結語】COPDの増悪に加えて,心血管疾患を含めた併存疾患にも配慮した全身管理やセルフマネジメント指導の必要性が示唆された.

  • 柏木 智一
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    【目的】胃癌術後早期の運動耐容能の回復に及ぼす因子について検討した.

    【方法】胃癌患者で胃切除が施行された胃癌患者24例を対象とした.評価項目は術前を100とした術後7日目の6分間歩行距離(6MWD)の回復率,創部痛(NRS),血液データとしてアルブミン値,BMI,喫煙指数,肺機能,手術時間と出血量,術後の歩行開始日数,歩行自立日数,理学療法日数,入院日数,合併症の有無とした.統計解析は6MWD回復率に関連する因子をSpearmanの相関係数を用い,6MWDの回復率を中央値85%で良好群と不良群の2群に分け比較した.

    【結果】良好群と不良群の比較では,不良群の手術時間が有意に延長していた.また,6MWD回復率と手術時間において有意な相関が認められた.

    【結論】胃癌術後早期の運動耐容能の回復には手術時間が有意に関連するが,術後合併症の増加や入院期間の延長までには影響を及ぼさない可能性が示唆された.

  • 伊田 瞳, 須賀 達夫, 逸見 和範, 原 史郎, 青木 康弘
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    【背景と目的】吸入療法は薬剤師による指導を始めとした吸入指導介入が重要である.指導介入は複数回に渡り同様の内容で行われることが望ましいが,薬剤師による指導介入の回数と内容を検討した報告はこれまでにないため,本研究ではこれを報告する.

    【対象と方法】埼玉県北部を中心とした薬剤師会を通し保険調剤薬局薬剤師にアンケートを送付した.

    【結果】75名から有効な回答が得られ,内21名は1患者当たりの吸入指導回数を1回以下,54名は2回以上と回答した.両群を比較すると2回以上と回答した群は有意に吸入デバイスの扱いに自信を有していた.また2回の吸入指導内容を比較すると,2回目指導時は1回目指導時に比べ有意に指導時間が短く,指導項目数が少なく,デバイスや説明書を用いた説明を行わず,指導者や患者による実演を行っていなかった.

    【結語】本研究結果を機に,同地域では定期的な勉強会やより密な医薬連携を図るべく研究会が設立された.

  • 有薗 信一, 近藤 康博, 木村 智樹, 片岡 健介, 小川 智也, 渡邉 文子, 平澤 純, 俵 祐一
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    本研究では,特発性肺線維症(IPF)患者の運動耐容能の諸因子を,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者と比較し,最高酸素摂取量(peak O2)に影響する因子を明らかにすることである.対象は,IPF患者72例と,IPF患者のpeak O2をマッチングさせたCOPD患者72例であった.IPF患者とCOPD患者は心肺運動負荷試験,筋力測定,肺機能検査などを実施し,両患者間で比較した.peak O2と測定項目との相関関係を検討し,peak O2を従属変数とした多変量解析を検討した.IPF患者の換気性作業閾値と大腿四頭筋筋力はCOPD患者と同様に低値を示し,骨格筋機能低下を示した.IPF患者は運動耐容能が同じCOPD患者と比べて,運動終了時は非常に浅くて速い呼吸パターンで,骨格筋機能低下はCOPD患者と同様な低下を認めた.IPFのpeak O2には大腿四頭筋筋力の他に,FVCとDLcoの肺機能と運動中の換気血流不均等分布を表すE/CO2 slopeが影響していた.

  • 武田 広道, 山科 吉弘, 田平 一行
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 217-222
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    【目的】要支援・要介護後期高齢者の咳嗽力と呼吸機能,身体機能の関連を明らかにすること.

    【方法】要支援・要介護後期高齢者33名を対象とし,咳嗽時最大呼気流量(以下,CPF),肺機能,呼吸筋力,胸郭拡張差,最長発声持続時間,5 m歩行時間,握力,膝関節伸展筋力,片脚立位時間,Timed up & go test(以下,TUG)を測定した.統計解析ではCPFと呼吸・身体機能との相関分析を行った.また,CPFを従属変数,呼吸・身体機能を独立変数として重回帰分析を行った.

    【結果】CPFと肺活量,吸気筋力,胸郭拡張差,最長発声持続時間,5 m歩行時間,握力,TUGで有意な相関がみられた.重回帰分析では,吸気筋力,胸郭拡張差が有意な関連因子として抽出された.

    【結論】要支援・要介護後期高齢者の咳嗽力には胸郭可動性,吸気筋力との関連が認められた.

  • 垣内 優芳, 筧 哲也, 田中 利明, 海老名 葵, 桜井 稔泰
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 223-227
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】高齢の肺炎入院患者のCPFに影響を及ぼす要因を検討した.

    【方法】対象は65歳以上の肺炎入院患者44名である.基本情報の調査とともにCough Peak Flow(CPF),Life-Space Assessment(LSA),Functional Independence Measure(FIM),Food Intake LEVEL Scale(FILS)をリハビリテーション開始後に評価した.CPFとの関係や影響度を検討するために相関分析,重回帰分析を行った.

    【結果】CPFは200 L/minで低値を示した.CPFと年齢,性別,BMI,誤嚥性肺炎有無,LSA,FIM,FILSは有意な相関を示し,CPFに影響する要因にはLSA,FILS,年齢が選択された.

    【結論】LSAが高いほど入院時のCPFが高く保持され,LSAの影響度は入院時のFILSや年齢よりも大きいことが明らかとなった.

  • 田代 大祐, 中原 雅美, 中川 昭夫
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 228-232
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
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    【目的】本研究は,椅子座位と便器座位の姿勢の違いおよびその身体的負担を検証し,便器座位姿勢の特徴を明らかにすることを目的とした.

    【対象と方法】健常若年成人男性19名を対象とし,椅子座位と便器座位の2つの姿勢において3次元動作解析装置を用いた姿勢計測(脊柱角度,体幹角度,骨盤角度,大腿角度,臀部の高さ)と胸壁計測(胸部・腹部における呼吸変化量),床反力計を用いた臀部荷重率,表面筋電計を用いた体幹筋活動量(腹直筋・腰部脊柱起立筋)を計測し比較した.

    【結果】上部脊柱角度,体幹角度,臀部荷重率,上部胸郭の胸壁体積変化量において便器座位が椅子座位に比べて有意に高値を示した.また,骨盤角度,大腿角度,臀部の高さにおいて便器座位が椅子座位に比べて有意に低値を示した.

    【結語】便器座位は,姿勢を脊柱後弯位に変え,呼吸努力を増加させるため身体的負担が大きい姿勢であることが示唆された.

  • 小林 千穂, 清水 詩子, 大澤 拓, 結城 ちかこ, 大方 葉子, 坂井 邦彦, 小山 千加代, 内山 美枝子, 小山 諭
    原稿種別: 原著
    2022 年 30 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】在宅酸素療法を導入していない高齢慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の,身体活動量(PA)に影響を及ぼす要因を検討する.

    【方法】呼吸器内科外来に通院する高齢COPD患者を対象に,対象者の特性と呼吸困難(mMRC),PA,呼吸困難マネジメントを調査し分析した.

    【結果】対象者49名,PAは5896(3500-9167)歩で,mMRCと負の相関,仕事の有に対して相関を認めた.重回帰分析では,mMRCが低値,1秒率が高値,呼吸困難マネジメント実行の合計点が高く,仕事ありは,高いPAと関連があった.

    【考察】PAに影響を及ぼす要因として,mMRC,呼吸困難マネジメント,仕事が示された.在宅酸素療法を導入していない高齢COPD患者においては,活動につながる習慣を持ち,活動に応じた呼吸困難マネジメントの実行が,PAの向上と維持に重要であることが示唆された.

症例報告
レター
  • ―理学療法士の“トリセツ”―
    中島 活弥
    原稿種別: レター
    2022 年 30 巻 2 号 p. 247-250
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー HTML

    理学療法士・作業療法士法が1965年に公布,施行されてから56年が経過し,施行当時における理学療法の通念と現在とでは,法の解釈を考慮する場面を多く経験する.理学療法士の活動範囲も拡大してきており,各々の業務には多職種で互いの知識技術を補完,共有しなければならない.地域においても“顔が見える連携”を目指す研究会などが多く活動し自己研鑽の場が散見される.理学療法士も時代のニーズに合う対応を迅速に実践することで,適宜適切な患者教育を実施できると考える.

    本稿では理学療法士の“取扱説明書(トリセツ)”として著者が行っている業務を通して呼吸に携わる理学療法士が行う業務や他職種との協働方法について論じていく.

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