日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
33 巻, 1-3 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
学会賞受賞報告
  • 川越 厚良
    原稿種別: 学会賞受賞報告
    2024 年33 巻1-3 号 p. 1-5
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において,生存率といった予後に関与する身体活動量(PA)についての報告は,この十数年で数多く確認されている.健常者よりも減少しているPAに対し,近年,歩数計を利用したフィードバック介入を行う事で増加が見込めるとされている.しかし,低体重を呈した比較的高齢のCOPD患者においては,PAの増加を実現しにくい現状がある.また,筋肉量が減少している臨床像を呈する患者の高い活動性は,炎症性サイトカインの高さと関連することも伺える.超高齢化社会にある本邦の患者の臨床像を勘案し,PAの増加には低体重や低運動耐容能を改善するアプローチを優先する道筋が重要であることを提示した.機能面の制限が強い重症例にとっては低強度の活動を中心とした適切,かつ実現可能な活動性向上のアプローチを確立することも課題である.

  • 力富 直人, 出川 聡, 井上 準之助, 北川 知佳, 角野 直, 森山 圭子, 熊本 弥生
    原稿種別: 学会賞受賞報告
    2024 年33 巻1-3 号 p. 6-11
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    平成9年(1997年)5月に開院した長崎呼吸器リハビリクリニックは19床の有床診療所で入院,外来,通所リハビリ,訪問にて呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)を提供している.当時は呼吸リハの概念さえ一般に普及していなかった時代で,薬物療法や酸素療法だけでは慢性呼吸器疾患患者の廃用性筋萎縮,activities of daily livingやquality of lifeの低下は改善できず,呼吸リハを市中でいわば気軽に受けられる医療機関は存在しなかった.開院当初からの問題として呼吸リハについて,医療関係者や患者・家族の認識不足や無関心,保険診療報酬点数の低さなどに直面した.ただユニークな施設であったためマスコミに取り上げられ,呼吸リハを標榜した当院への関心が高まり,県内外から患者が集まったことで,種々の疾患に対して呼吸リハを実践しその効果を実感できた.診療報酬点数も関係学会の努力により徐々に改定され呼吸リハの環境は整いつつある.しかし全国的には呼吸リハを実施できる医療機関の数や認知度など十分でないため,患者にとってアクセスが悪く,今後改善すべき課題である.

学会奨励賞受賞報告
  • ―新たな動的肺過膨張の評価とメンテナンスプログラムに着目して―
    古川 大
    原稿種別: 学会奨励賞受賞報告
    2024 年33 巻1-3 号 p. 12-17
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    COPD患者において身体活動量(physical activity: PA)は死亡率のみならず増悪,健康関連QOL,呼吸困難,運動耐容能など多岐に影響を及ぼしていることが示され,その維持向上は重要な管理目標とされている.我々はPAを低下させる要因の一つである動的肺過膨張の測定を,従来よりも簡易的な方法(metronome-paced incremental hyperventilation: MPIH)を用いて測定し,PAが低下している群は,維持群と比較して動的肺過膨張が重度であったことを明らかにした.さらに,PAの維持改善のために呼吸リハビリテーション終了後の効果の持続に対する取り組みとして,PAカウンセリングと在宅トレーニングからなるメンテナンスプログラムを2年間行ったCOPD患者ではPAが維持されることを明らかにした.今回用いたそれぞれの方法において,安価かつ簡便に実施できる点から実際の臨床場面においても導入が期待される.今後の効果的な呼吸リハビリテーションプログラムの評価,立案および普及の一助になると考えられる.

シンポジウム
  • 戸部 一隆, 片岡 竹弘, 安藤 守秀
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 18-22
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    集中治療領域のリハビリテーションは,重症患者に関わることが多く,様々な専門職種の協力が必要である.2018年度の診療報酬改定によって,ICUのリハビリテーションを推進すべく「早期離床・リハビリテーション加算」が新設された.この加算は多職種連携を前提としたものであるが,この連携にはリハビリテーション専門職としての深い関わりが求められる.しかし,リハビリテーションスタッフによる関わりの深度には,施設間によりバラツキがあり,未だ充実しているとは言いがたい現状にある.

    当院では2007年よりICUに専属理学療法士を配置し早期離床や呼吸理学療法を実施している.また,専属理学療法士の役割は,単にリハビリテーションの実施のみに限らず,抜管前の各種評価の実施等多岐にわたることが可能である.本稿では,当院で実施しているリハビリテーション手法や注意点などについて紹介すると共に,当院ICU内での理学療法士の関わりについて紹介する.

  • 今戸 美奈子
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 23-25
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    慢性呼吸器疾患を持ちながら暮らす人を支えるために,筆者は慢性疾患看護専門看護師として病院の看護外来で継続的な在宅療養支援を行っている.その支援の中で,外来通院中はもちろんのこと,急性増悪等により入院した際は,患者にとって必要な支援を整えるために多職種との連携,コラボレーション(協働)を行いながら医療ケアに携わっている.多職種との連携や協働においては,対象となる患者の「これから」をそれぞれの専門性の立場から思い描くために,「これまで」の病状の経過や生活,患者の価値観,希望などを時間軸で統合し,つなぐことを意図的に行っている.効果的な協働を促進する要素には,各メンバーが互いの専門性や責任を理解し信頼すること,共通の目標を持つこと,効果的なコミュニケーション,互いの尊重と補完,ユーモアなどがあると言われ,これらの要素を意図的に日々の実践に取り込んでいくことでより良い協働が進むと考える.

  • 藤田 幸男, 吉川 雅則, 室 繁郎
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 26-30
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    様々な呼吸器疾患において,高率に栄養障害の合併を認め,病態との関連が認められる.なかでも慢性閉塞性肺疾患(COPD)は体重減少の頻度が高く,栄養障害は生活の質や予後と関連する.また,COPD患者では運動耐容能の低下や身体活動性の低下を認め,これらは栄養障害と密接に関連し,結果的にサルコペニアに繋がる.サルコペニア対策の重要な要素として,身体活動性の向上,全身性炎症の抑制,蛋白同化促進の3点が考えられ,栄養療法と運動療法のコンビネーションセラピーを構築する必要がある.また,特発性間質性肺炎も体重や脊柱起立筋は予後と関連している.非結核性抗酸菌症においても,体重,骨格筋量,脂肪量は病変の進展に関連しており,呼吸器診療においては,栄養評価を適切に行う必要がある.

  • 宮崎 慎二郎
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 31-33
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    全身の骨格筋と同様に,呼吸筋にも筋量や筋力の低下といった呼吸サルコペニア(respiratory sarcopenia)が生じる.しかし,呼吸サルコペニアの概念や診断基準は明確にされていないため,日本リハビリテーション栄養学会呼吸サルコペニアワーキンググループでは,呼吸サルコペニアとサルコペニア性呼吸障害の定義,診断基準を作成した.我々は,呼吸サルコペニアを「全身のサルコペニアと呼吸筋量低下に加えて呼吸筋力低下および/または呼吸機能低下を認める状態」と定義した.呼吸サルコペニアの診断基準には,全身のサルコペニア,呼吸筋力の低下,呼吸機能の低下,呼吸機能障害の原因となる疾患の有無,呼吸筋量の低下を用いた.また,サルコペニア性呼吸障害は「呼吸サルコペニアによる呼吸機能低下に伴う生活機能障害」と定義した.今後は有病率や予後,呼吸サルコペニアおよびサルコペニア性呼吸障害に対する治療介入効果に関する臨床研究が必要である.

  • 茂木 孝
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 34-37
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    セルフマネジメント(SM)支援のエビデンスについて近年のメタ解析では,エビデンスレベルは低いが入院減少とQOL改善が示されている.アクションプラン使用による入院減少,QOLの改善効果,あるいはコーチングによる同様の効果なども報告はある.しかしSMプログラム毎の内容や介入期間のばらつきが大きく,最も有効な介入が何であるのかは依然として不明である.現状のSMプログラムの問題として,介入内容が標準化されていないことが指摘されている.これに対し行動科学の視点から介入内容を標準化・構造化し分類する試みがある.さらに解析内容を入院や死亡,QOLなど最終的アウトカムだけで評価するのではなく,その過程に発生する中間的アウトカム(自己効力感,変容ステージ,アドヒアランスなど)の評価も必要である.これらを踏まえ一定の分類法に沿ったSMプログラム内容の標準化,さらに中間的プロセスの評価が今後のエビデンス作りのカギである.

  • ~災害対策とセルフマネジメント~
    利部 なつみ
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 38-44
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    我が国は地理的,地形的,気象的状況から,自然災害が多発する地域である.2011年の東日本大震災の教訓を踏まえて,災害対策基本法において,慢性呼吸器疾患患者は“要配慮者”となった.在宅酸素療法患者のみならず,慢性呼吸器疾患患者は,被災による劣悪な環境や,安定期治療の中断などにより,原疾患の増悪が起こりやすい.災害時には医療者などの支援が,迅速かつ十分に患者へ届けられない場合も想定されるため,患者が自らの身を守るための行動がとれるように,セルフマネジメント教育を行う必要がある.災害時における患者の備えや,適切なセルフマネジメント行動は,災害の種類・程度,発生地域の特性などにより異なる.それぞれの疾患の特徴や,増悪のリスクファクターを理解して,それらを排除するためのセルフマネジメント教育を行うことが,災害時における適切なセルフマネジメント行動の実践につながる.

  • 金子 弘美, 山中 悠紀, 大平 峰子, 石川 朗
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 45-47
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    本邦では人口構造の変化に伴う新たな課題へ対応するためエビデンスに基づいて自立支援・重度化防止等を推進する循環を創出する仕組みの形成が進められている.我々は長野県北信地方において在宅呼吸リハビリテーションを実践するなかで多施設連携体制を活かして基幹病院で定期的な呼吸機能,運動能力,ADL,健康関連QOLの測定からエビデンスの構築に取り組んできた.近年ではプログラムに継続に欠かせないデイサービスやホームヘルパーとの連携にも注力しており,非医療職を含む多職種を対象とした講習会の開催やICTの活用を通じて医療・介護連携による効果的な患者への関わりを模索している.高齢患者では長期経過のなかで運動機能やADLの低下が避けられないが,地域連携体制のもと多職種が連携して関わることで健康関連QOLを維持できる可能性があり,すべての人が共通認識をもって患者を支える体制の構築が求められる.

  • 沖 侑大郎, 山田 早紀
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 48-51
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    COPD患者における身体活動レベル低下が,死亡率や増悪入院のリスクを高めることが明らかになっているが,呼吸リハビリテーションにより,身体活動量増加の長期的効果を示すエビデンスは乏しいのが現状である.訪問リハビリテーション場面においても,身体活動量の増大と活動範囲を広げることが非常に重要だと認識していながらも,特に高齢で重度のCOPD患者に対する介入について,運動療法を中心としたプログラムのみでは,難渋する場面が多い.この課題解決に向け,運動に対する不安や恐怖心を解消できるよう工夫し,成功体験を増やしていくことが重要である.また,家族指導や環境設定も活動範囲を広げていくためのポイントとなる.そして,病態に応じた呼吸リハビリテーションのシームスレスな介入を実現させていくためにも,呼吸器疾患に対する要介護認定調査の認定基準などの課題を解決していくことも重要である.

  • 末松 利加, 廣石 美穂, 池内 智之, 津田 真実, 中山 初美, 一木 克之, 自見 勇郎, 河野 哲也, 津田 徹
    原稿種別: シンポジウム
    2024 年33 巻1-3 号 p. 52-57
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    医療ソーシャルワーカー(medical social worker: MSW)は個人をとりまく社会環境の改善を図るために,多職種との連携や医療と介護の連携,地域連携により,利用できる社会資源の活用などの情報提供を行い,自宅内から近隣,そして地域社会へと安心して活動範囲が広がるよう支援する.活動範囲を広げるには,患者自身の「こころの健康」や「セルフマネジメント」も重要と思われる.心理的・精神的に不安定となれば当然,身体活動性も低下する.呼吸困難感の訴えに耳を傾け,共感することで信頼や安心感を築き,運動を促すこともできる.また,多面的なセルフマネジメント教育を行うことで行動変容を来し,活動範囲が広がることにも繋がる.そこで当院では,MSWも身体活動性を高めるべく,リラクセーション,音楽療法,アロマセラピーなどの代替療法を利用し,こころの支援を続けているが,MSWの立場でも活動範囲を広げるための一翼を担えると考えている.

ランチョンセミナー
  • 南方 良章
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2024 年33 巻1-3 号 p. 58-64
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    健康日本21第三次でCOPD死亡率改善が目標として掲げられ,身体活動性の向上は目標達成ための重要なターゲットとされている.非薬物的介入法として,我々はCOPD患者の歩数予測式を作成し,算出された標準値に基づいた患者個々の歩数目標値設定方法を開発した.患者個々の目標値提供は,歩数の少ない患者において2か月後の歩数増加効果が確認できている.一方,覚醒時の1.5 METs以下の強度の行動であるセデンタリー行動の短縮も重要な視点であり,テレビ視聴時のCM中の起立や足踏みの推奨が有用である可能性が推察される.薬物療法に関しては,気管支拡張薬投与により,あるいは単剤に比べ配合剤投与により,有意な身体活動時間延長およびセデンタリー時間短縮をもたらしうる.これら非薬物的介入ならびに薬物療法を組み合わせることで,COPDの身体活動性向上ひいては死亡率改善を目指すことが重要になると考えられる.

コーヒーブレイクセミナー
  • 桑平 一郎, 服部 沙耶, 新井 理乃, 青山 眞弓
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2024 年33 巻1-3 号 p. 65-70
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が神経節に潜伏し,再活性化することで発症する.VZVの再活性には細胞性免疫の低下が関与しており,高齢者ほど帯状疱疹の発症リスクが増大する.一般的な慢性疾患や免疫抑制剤によっても発症リスクは上昇し,肺がん,COPD,喘息やステロイド使用などがリスク因子となる.海外では既に,アジュバント添加組換え帯状疱疹ワクチン(RZV)を推奨する国もあり,GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では50歳以上のCOPD患者に帯状疱疹ワクチンを推奨している.一方,本邦では未だ任意接種扱いである.超高齢化社会を支える為にはフレイルを予防し,健康寿命を延ばすことが課題であり,予防できる感染症はワクチンで予防することが求められる.帯状疱疹予防の重要性とそのワクチンについて解説を行う.

原著
  • 八木田 裕治, 杉野 圭史, 馬上 修一, 須藤 美和, 小野 紘貴, 坪井 永保
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 71-75
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    新型コロナウィルス感染(COVID-19)後遺症として呼吸器症状の継続や倦怠感などがある.そこで,今回我々は重症COVID-19肺炎後に肺障害を遺した患者6名に対して呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)を実施し効果を後方視的に検討した.対象6名ADLは全例全介助レベルであり,人工呼吸器管理あるいは高流量カニュラ酸素療法管理下での当院へ転院であった.転院後の治療は全例にステロイドが投与され,呼吸リハはベッドサイドより介入し退院まで継続した.結果,ADLはBarthel Index: 5±3.2点から82.5±36.0点,6分間歩行距離は,315±114.0 mから424±181.0 mと向上した.全症例に低酸素血症が残存し,在宅酸素療法の導入となったが,自宅退院を可能とした.以上より重症COVID-19肺炎後の肺障害に対し,薬物療法に加えて呼吸リハの介入・継続が重要であり,有効性が示唆された.

  • 高岸 弘美, 乙黒 恵子
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 76-80
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
    [早期公開] 公開日: 2024/01/23
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    【目的・方法】在宅酸素療法患者への災害時支援体制を構築するために,全国の保健所に調査を実施した.

    【結果】469か所に配布し,158枚の回答を得た.小児慢性特定疾患と特定難病のみ把握しているという回答が42%であった.支援計画があると答えたのは26%で,人工呼吸器を使用している患者のみが多かった.HOTセンターを設置する計画がないと答えたのは89%であった.HOT患者が避難したことがあると答えたのは10%であった.行政独自の取り組みがあるのは24%で,名簿の作成や停電時の安否確認,関係機関との連携の確認などであった.関係機関と連携した取り組みは5%があると答えた.酸素業者との取り組みの有無は,12%があると答え,災害時の協定や酸素供給体制の構築をしていた.

    【考察】今後の課題は,HOT患者全体の把握ができていないこと,安否確認方法,避難所までの移動手段がないこと,災害時の電源の確保,関係機関との事前の連携体制の構築などが明らかになった.

  • 村川 勇一, 玉木 彰, 松沢 良太, 宮崎 慎二郎, 堀 竜馬, 名出 美紀, 坂井 健一郎
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 81-88
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    高齢肺炎患者における早期栄養療法を含む早期呼吸リハビリテーションが在宅復帰に及ぼす影響について傾向スコアマッチングを用いて検討した.65歳以上で肺炎にて入院となり,選択基準を満たした149名を対象とした.入院後2日以内に呼吸リハビリテーションおよび経口摂取または経腸栄養の栄養療法を開始できた早期介入群と対照群の2群を傾向スコアマッチングにより交絡因子を調整した.結果,早期介入群46名と対照群46名に分類された.対照群と比較して早期介入群では,在宅復帰率が有意に高かった(早期介入群100.0% vs 対照群84.8%,p=0.018).高齢肺炎患者における早期からの非薬物療法介入は,在宅復帰率を高める可能性がある.今後,高齢肺炎患者における早期からの非薬物療法介入の有効性だけでなく安全性も含めて多施設共同で前向きに検証していく必要がある.

  • 原 千春, 中井 聡紀, 銀杏 猛, 寺西 敬
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 89-94
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    当院は人工呼吸器を装着すると如何なる症例でも集中治療室(ICU)に在室し続ける傾向があり,ICUへの長期滞在が顕在化している.気管切開施行後の状態が安定している人工呼吸器装着患者であっても,一般病棟の看護師から管理困難と言われるケースが少なくない.結果として,特定集中治療室管理料の算定期間を越えてICUのベッドを長期間占拠し,新たに集中治療が必要な患者が入室困難になることがある.そこで,呼吸サポートチームが一般病棟で人工呼吸管理を行える体制作りができないかと考え,一般病棟,ICUの看護師を対象に人工呼吸管理に関する現状調査を行なった.一般病棟では,特に不安や知識不足に関連する回答が多く占めていたため,ニーズに応じた勉強会やOn The Job Trainingの実施と,24時間一般病棟の看護師が相談できる体制(スキーム)を整えた.その結果,一般病棟看護師の人工呼吸管理に関する不安緩和に繋がった.

  • 秋山 歩夢, 有薗 信一, 辻村 康彦, 俵 祐一, 柳田 頼英, 後藤 圭子, 酒井 美登子, 伊藤 光, 平松 哲夫
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 95-99
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    【目的】外来COPD患者の摂食嚥下機能の現状を調査し,摂食嚥下機能と身体運動機能との関係性を明らかにすること.

    【方法】対象はCOPD患者34例.評価項目は反復唾液嚥下テスト(RSST),摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票(EAT-10),舌圧,6分間歩行距離,膝伸展筋力,握力,呼吸筋力,体組成とした.検討内容は①摂食嚥下機能が低下している患者割合,②摂食嚥下機能と身体運動機能との相関関係とした.

    【結果】スクリーニングテストにおいてRSSTは17.6%,EAT-10は26.5%が陽性を認め,摂食嚥下機能が低下している症例を認めた.RSST回数は握力,体重,骨格筋量,四肢骨格筋量指数と有意な相関関係を認め,舌圧は吸気筋力,握力,膝伸展筋力と有意な相関関係を認めた.

    【結論】外来COPD患者において,摂食嚥下機能が低下している者が認められ,摂食嚥下機能は骨格筋力や呼吸筋力,体組成と関係性を認めた.

  • 松木 美貴, 植木 純, 野村 菜摘, 黒澤 一, 須田 茂明
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 100-105
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
    [早期公開] 公開日: 2024/02/12
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    スパイロメトリーは呼吸機能のスクリーニング,呼吸器・呼吸器関連疾患の診断,治療,管理において必須の検査である.一方で,被験者の最大努力を得るための様々なスキルや検査中の妥当性,再現性の評価が検査者に求められ,環境面では掛け声が大きな騒音となる.施設規模や対面検査者のスキルに依存せずにサイレントに実施可能なフローセンサを接続したノートPCを遠隔から操作するモバイル検査システムを開発し実行可能性を検討した.検査者(n=5)のSystem Usability Scaleは平均65.0,ユーザーインターフェース評価 4.2±0.6(SD),検査者,被験者と同席するファシリテータの検査環境評価は全体で4.6±0.4とそれぞれ良好で,騒音レベルも日常会話レベルに止まった.測定結果(肺活量・努力性肺活量)の妥当性,再現性も良好であった.検査中のタイムラグの指摘もなく,遠隔医療や防音設備のない施設,COVID-19病棟等,様々な臨床の場で活用できる可能性が示唆された.

  • 佐々木 烈, 新貝 和也, 池内 智之, 松尾 聡, 河野 哲也, 一木 克之, 神津 玲, 津田 徹
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 106-111
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    【目的】慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;以下,COPD)患者における在宅酸素療法(home oxygen therapy;以下,HOT)の導入が,疾患特異的および包括的健康関連QOLに異なる反応性を示す可能性について検討した.

    【方法】HOT導入となった安定期のCOPD患者を対象に,後方視にてHOT導入前後のSGRQおよびSF-36を比較検討した.

    【結果】16例のCOPD患者が対象となった.HOT導入前と比較して,導入後はSGRQ Symptom(p=0.04),SF-36 精神的側面のQOLサマリースコア(p=0.02),SF-36 活力(p=0.02)の有意な改善を認めたが,SF-36 日常役割機能(身体,p=0.03)に有意な悪化を認めた.またSF-36 身体的側面のQOLサマリースコアはHOT導入後に悪化する傾向を認めた(p=0.07).

    【結論】COPD患者におけるHOT導入は,疾患特異的健康関連QOLの改善を認める一方で,包括的健康関連QOLの身体面に悪化傾向を示した.HOT導入時にはそのメリット・デメリットを適切に評価し,対応していくことが重要である.

  • 倉田 和範, 児島 範明, 小幡 賢吾, 松嶋 真哉, 松尾 知洋, 高橋 正浩, 藤田 雅子, 森脇 元希, 本庄 智代, 横山 仁志
    原稿種別: 原著
    2024 年33 巻1-3 号 p. 112-117
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    2022年度診療報酬改定にて早期離床・リハビリテーション(リハ)加算(早期離床加算)の対象病床が拡大されたため,現状および問題点を把握する目的でアンケート調査を実施した.

    【方法】日本集中治療教育研究会リハ部会で協議し31問の設問を設定,Google Formsにてアンケート作成し,メーリングリスト等を通じ2023年8月の2週間実施.

    【結果】全回答122件,改定後に算定可能な病床を有する108施設のうち53.7%の施設が新たな病床で算定を開始していた.本調査時の早期離床加算算定状況はICU 76.5%,EICU 40.5%,SCU 8.3%,PICU 7.1%,HCU 36.1%.算定を開始した施設の65.5%で多職種連携が改善したものの,93.1%で業務量が増加したと回答.68.9%が「加算点数の増大」を要望していた.

    【結論】早期離床加算の算定開始に伴い一定の効果が認められた一方,業務量の軽減や,加算点数の増大が今後の課題と考えられた.

症例報告
  • 鳥井 亮, 山口 雄大, 松永 崇史, 畑 亮輔, 吉井 千春, 矢寺 和博
    原稿種別: 症例報告
    2024 年33 巻1-3 号 p. 118-120
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    高二酸化炭素血症を伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する在宅ハイフローセラピーが2022年4月より保険適用となり,徐々に広まりつつある.症例は73歳男性.基礎疾患にCOPD・塵肺症があり,CO2 ナルコーシスに伴う意識障害・体動困難のため短期間で再入院となった.既往に3回の気胸歴があること,また,本人の同意が得られなかったことから,非侵襲的陽圧換気(NPPV)の導入はできなかった.このため,在宅ハイフローセラピーを提案し,導入したところ,速やかに自覚症状は改善し,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は 75.9 mmHgから 58.2 mmHgと低下した.今回,我々は在宅ハイフローセラピーを導入し,CO2 ナルコーシスに伴う意識障害・体動困難,PaCO2 が著明に改善し,自宅退院に至った症例を経験したので報告する.

研究報告
  • 礪波 利圭, 佐藤 美由紀, 小林 恵子
    原稿種別: 研究報告
    2024 年33 巻1-3 号 p. 121-126
    発行日: 2024/11/22
    公開日: 2024/11/22
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    本研究では,慢性呼吸器疾患患者の家族5名に対し在宅酸素療法を受ける患者と共に生活を送る中での思いを明らかにすることを目的に,半構成的面接法による調査を行った.調査の結果,慢性呼吸器疾患患者の家族は,これまでの生活や職業から病気の診断に対して「自業自得」「仕方がない」という思いを持っていた.また,患者が在宅酸素療法を行っているにも関わらず呼吸苦が悪化していくことに対して,戸惑い模索しながらも呼吸苦を持つ患者を受け止めていた.医療者は患者が慢性呼吸器疾患と診断がされた時から,今後,患者に起こりうる症状の変化や終末期ケアに対しての患者の意思を患者だけでなく家族に対しても日頃の関わりの中で確認していく必要性が示唆された.

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