正常ラットおよび実験的ネフローゼ症候群ラットから糸球体基底膜 (GBM) をとり出し, 化学組成の変化について検討した. 実験的ネフローゼ症候群の作製は, Wister系雄ラットにダウノマイシンの静注および抗ラット家兎血清静注の2つの方法によった. GBMは種々のふるいで糸球体をとり出した後, 超音波処理で分離精製した. その純度は位相差顕微鏡で検し98-100%であった. GBMのimmune complexは, 0.02Mクエン酸緩衝液 (pH3.2) で除去した.
アミノ酸分析は酸加水分解後JLC-5AHを用いて自動分析した. アミノ糖は酸加水分解後溶出液に8%メタノールを含んだ0.5Mクエン酸ナトリウム (pH6.09) を用い, KLA-5型で自動分析した. 糖は1Nメタノール塩酸でメタノリーシス後TMS化し, Perkin Elmer Model 900BとShimazu GC
-4 BM PFEを用いて自動分析した.
Daunomycin nephrotic rat (DMNラット) 腎は光顕上微少変化群を呈し, nephrotoxic nephritic rat (NTNラット) 腎は, 部分的に軽度の毛細管係蹄壁の肥厚を伴った増生性変化を呈した.
正常ラットGBMのアミノ酸組成ではbovine tendon collagenと比べて, ヒドロキシプロリン, プロリン, グリシン, アラニン, リジン, アルギニンが少なく, アスパラギン酸, スレオニン, セリン, グルタミン酸, バリン, メチオニン, イソロイシン, ロイシン, チロジン, フェニールアラニン, ヒドロキシリジン, ヒスチジン, シスチンが多く含まれていた. しかし, ヒドロキシプロリン/プロリン比およびヒドロキシリジン/リジン比はGBMで高く, GBMではプロリンとリジンの水酸化が活発に行なわれていることを示唆していた. 総糖量はGBMに多く約8%であった. 以上よりGBMはコラーゲン類似の物質である. DMNラットGBMでは, 4-ヒドロキシプロリン, グリシン, メチオニン, ヒドロキシリジンの減少, セリン, グルタミン酸, バリン, ロイシン, アルギニンの増加, 糖ではN-アセチルグルコサミンが増加したが, 総糖量には変化はなかった. NTNラットでは, 4-ヒドロキシプロリン, グリシン, イソロイシン, シスチンが有意に減少し, アスパラギン酸, スレオニン, セリン, グルタミン酸, アラニン, ロイシン, チロジン, ヒドロキシリジン, リジンが有意に増加していた. 糖組成では, フコース, N-アセチルグルコサミン, N-アセチルガラクトサミンが減少, N-アセチルノイラミン酸が増加していたが, 総糖量にはほとんど変化はなかった.
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