順天堂医学
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56 巻, 4 号
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目次
Contents
特集 第322回順天堂医学学術集会
  • 宮崎 哲朗
    2010 年 56 巻 4 号 p. 306-313
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    ノッチシグナリングは発生の段階において細胞の分化, 増殖, アポトーシスなどに重要な役割を果たしている. 近年, このノッチシグナリングが炎症の病態に関与していることが報告されている. われわれは慢性炎症疾患である肥満, 動脈硬化症とノッチシグナリングの関連について, マクロファージ選択的Notch3シグナリングトランスジェニックマウス (N3Tg) を用いて検討した. N3Tgマウスより分離された腹腔マクロファージはコントロールに比べ, 炎症性物質 (IL-1b, iNOS), スカベンジャーレセプター (CD36, SR-A) の発現が亢進, 脂質の取り込みが上昇していた. N3TgマウスをLDLレセプターKOマウスと交配し24週間高脂肪食を負荷した結果, 有意な動脈硬化巣の増加, 動脈の石灰化, 内臓脂肪の蓄積を認めた. 動脈硬化巣, 精巣周囲脂肪両者で, マクロファージの浸潤, 炎症性物質 (MCP-1, PAI-1) の発現増加を認めた. マクロファージ選択的ノッチシグナリングの活性化は, マクロファージの泡沫化, 炎症の増悪に関与し, 動脈硬化症, 動脈石灰化, 内臓脂肪蓄積を引き起こす可能性が示唆された.
  • -免疫寛容への挑戦-
    川原 敏靖
    2010 年 56 巻 4 号 p. 314-320
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    免疫抑制剤の進歩により移植医療は世界に普及し, その成績は飛躍的に向上した. その発展に伴い, 次に問題になるのは免疫抑制剤の非特異的な免疫抑制による感染, 発癌, そして薬剤そのものの副作用である. したがって, 免疫抑制剤投与なしに移植臓器が生着し, さらに感染などに対しての通常の免疫機構が保たれている状態「免疫寛容」の誘導が移植後免疫抑制の最終目標である. 免疫寛容誘導の方法として, 骨髄移植によって誘導する中心性免疫寛容. そしてT細胞の副刺激抑制, あるいは制御性T細胞の誘導により引き起こす末梢性免疫寛容があり, 現在これらの研究が急速に進み, 臨床試験も行われている. 本項では, 筆者の今までの研究成果を交えながら, 臓器移植における免疫寛容の概要と今後の臨床応用の可能性について解説する.
  • 折茂 彰
    2010 年 56 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    過去30年間の癌研究は, 癌細胞における遺伝子変異や, シグナル伝達の異常のメカニズムの解析を中心に行われてきた. しかしながら, 実際のヒトの癌塊は, 癌細胞のみならず多数の間質細胞が含まれた集合体として形成されている. この数年, 癌細胞とこれらの間質細胞との相互作用が, 癌の進展に深くかかわっているという知見が多数報告されてきており, 癌内環境が及ぼす癌化および癌の進展のメカニズムが注目されている. 言い換えれば, 癌の増殖や進展の能力は, 癌細胞自身の能力に加えて, 間質細胞よりほどこされる援助に依存している. 癌細胞は, 従来正常の周囲の間質細胞を毒化し悪玉の間質細胞に変えることにより, この悪玉細胞より援助を受けて, さらなる増殖や, 周囲の組織への浸潤や, 遠隔臓器への転移を容易にしているのかもしれない. この総説では, 癌細胞の進展における癌間質の重要性について考えてみたい.
  • 粕田 晴之, 三宅 智, 尾澤 芳子, 高野 類, 斎藤 渓, 原田 弥生
    2010 年 56 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    1. 緩和ケア, 最近の考え方 西欧とは異なり, 日本の緩和ケアは病院から始まった. 現在までに約200のホスピス・緩和ケア病棟が誕生しているが, 西欧のようなホスピス・マインドの文化・歴史がなく, 在宅ホスピスも生まれにくい状況で, 日本の緩和ケアは病院で始まったまま病院に留まる傾向が強かった. 高齢化社会でがん死が増加し続ける現況では, いずれ病院の収容能力が限界に達し, 「終末期がん難民」が生まれる. そのような状況下, 平成19年4月「がん対策基本法」が施行され, 「がん患者の療養生活の質の向上に向けて, 「がん早期から必要に応じ疼痛などに対する緩和ケア, 在宅でがん医療を提供できる連携体制の確保, 医療従事者に対する緩和ケア研修の機会の確保」等が定められた. 平成21年度から, 各都道府県のがん診療連携拠点病院は, 「がん診療に携わるすべての医師が緩和ケアついての基本的知識を習得すること」を目標に, 2日間12時間以上にわたる「緩和ケア研修会」を開催することが義務づけられたが, がん診療に携わるすべての医師が受講し終わるには5-10年を要しそうである. 在宅緩和ケアと地域連携への先進的な取り組みは, 宮城県名取市, 広島県尾道市, 長崎市などで, 主に診療所医師, 医師会が中心となって実施されている. 栃木県でも, 2年前に「在宅緩和ケアとちぎ」を立ち上げ, 地域連携のネットワーク作りをめざしている. 2. スピリチュアルペイン, そして「喪失の疑似体験」 死にゆく過程で人はどのような心的体験をするのでしょう?もはや治療法もなく, 余命が限られていることを悟ってしまった患者の心理的な苦痛はいかばかりか. 当事者でなければわからない, 他人には理解できないものでありましょう. 大切なものを失って行き, できることができなくなり, 否応なく日常を変えざるを得ない状況になっていく, その過程で, 「本当に大切なものは何だったのか, 何のために生きてきたのか」, といった問いを自らに突きつけ, その答えを求めて苦悩することになるのです. これが, 自分という存在の根底を揺るがす「スピリチュアルペイン」です.
総説
  • 川崎 志保理, 射場 敏明
    2010 年 56 巻 4 号 p. 334-338
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    国際標準化がすすめられつつあるセプシス治療において, 本邦から発信されているエビデンスは比較的少ない.また諸外国におけるセプシス研究が活性化している中で, 本邦からの論文報告数は頭打ちとなっている.本邦からの報告の特徴としては臨床系研究の割合が少ないことが挙げられ, 特に無作為比較試験の数が少ないことが課題である.しかし掲載される雑誌から評価する研究の質には向上の兆しがみられており, 今後は多施設間検討などの良質な臨床研究を実施できる基盤整備を行うことによって, 一層の国際貢献が可能になるものと考える.
原著
  • 冨永 英司, 伊藤 輝代, Christof von EIFF, 平松 啓一
    2010 年 56 巻 4 号 p. 339-349
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    目的: Staphylococcus aureus (S. aureus) におけるアルベカシン (ABK) を作用時のsmall colony variants (SCVs) の出現の有無およびスルバクタム/アンピシリン (SBT/ABPC) との併用によるSCVsの出現抑制効果を検討する. 方法: S. aureus 6株 (MSSA 1株, MRSA 1株およびVISA 4株) を用いて, ABK単剤処理およびABKとSBT/ABPC併用処理の間で, SCVsの出現頻度と出現時の薬剤濃度を比較し, SBT/ABPCの併用による殺菌効果およびSCVs出現に対する抑制効果について検討した. またSCVsを多量に含む菌液を用いて, SBT/ABPC併用時の殺菌および出現抑制効果について検討した. 結果: ABK存在下ではSCVs出現がみられたが, SBT/ABPCの併用により, 残存生菌数およびその中のSCVsの割合ともに減少した. SCVsは, ABKの殺菌効果に抵抗性を示すが, SBT/ABPCとの併用により, SCVsに対する殺菌効果が高まることが確認された. 結論: 従来から指摘されていたABKとSBT/ABPCの併用は, ABKによるSCVs出現とそれによる薬剤の有効性の低下を防ぐ有用な方法であることが確認された.
  • 23G3 ポート硝子体手術との比較
    飛見 桃子, 工藤 大介, 藤巻 敏郎, 横山 利幸
    2010 年 56 巻 4 号 p. 350-353
    発行日: 2010/08/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    シャンデリア眼内照明を用いた4ポート23G硝子体手術は症例によっては双手法で効率的に手術を行うことができる. 今回われわれは当院におけるシャンデリア眼内照明を用いた4ポート23G硝子体手術の手術時間・術中合併症・術後合併症について診療録より後ろ向きに3ポート23G硝子体手術と比較しシャンデリア眼内照明を用いることでの特別な合併症の有無について考察した. 4ポート23G硝子体手術は3ポート23G硝子体手術と比べて特有の合併症などなく難治症例に対し有用な手術手段と考えられた.
4病院めぐり
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
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