地震調査研究推進本部地震調査委員会により公表されている「全国地震動予測地図」のうち確率論的地震動予測地図は,2009年に公表された後,地震活動モデルの改良を続けている.本稿では,最初の2009年版,大幅に改良された2014年版,最新版の2020年版を対象に,地震活動モデルから算出される地震数の変動を分析した.また,確率論的地震動予測地図の妥当性検証の1つとして,地震カタログから算出される地震数と比較した.その結果,2020年版の地震活動モデルの妥当性がある程度確認された.一方で,規模の大きい地震のモデル化については改良の余地があることを指摘した.
K-NET,KiK-netのデータを整理したフラットファイル(森川・他,2023)を用い,非エルゴード的GMPEの構築を目指して,本稿では異常震域項の非エルゴード化と距離減衰特性のモデルの検討を行う.回帰式には,震源が30 km以深の地震に寄与する異常震域項を観測点固有の項として与え,非エルゴード化を行った.異常震域項は既往研究と同様に日本海側が負になる傾向が見られるが,その値には地域性が見られた.一般的な距離減衰項のモデルでは,観測値と予測値の残差に,短距離では過小評価するバイアスが見られ,距離減衰項のモデルの見直しを行った.
鉄道では一般に,沿線に設置された地震計が予め定めた基準値を超過する揺れを観測した場合などにおいて,予め定めた区間の施設を点検し安全を確認する.2018年6月18日の大阪府北部の地震(Mj 6.1)では,比較的広範囲に点検が発令され,駅間に停止した列車は点検が終了するまで移動できない状態となった.このような場面において,駅間に停止した列車を次駅まで動かすことができれば安全性や利便性を改善できるが,移動可否判断が課題となっており,その決定を支援する情報の提供が望まれている.これを受け,地震が発生する都度,蓄積される推定沿線地震動データと被害有無データを利用し,ベイズ手法を用いて,新たに発生した地震に対して施設の安全性をスコア化する手法を開発した.ここでは,安全スコアの算出方法とその試算,および情報の活用方法について述べる.
現在の耐震設計では高さ60 m以下の高層建物において時刻歴応答解析は要求されておらず,保有水平耐力計算もしくは限界耐力計算での安全性の検証が実践されている.特に保有水平耐力計算が普及しているが,同計算では想定される極稀地震相当の設計用スペクトルに対する建物の応答変形は陽に評価されない.そこで,本研究では大阪平野のOS1・OS2地域で保有水平耐力計算に基づき設計された高さ60 m以下の複数の高層RC建物に対して時刻歴応答解析を行い,主に最大応答層間変形角を評価した.本稿では主に建物諸元及び保有水平耐力と変位応答の関係の分析を通して,対象地域の保有水平耐力計算に基づき設計された高層RC建物の地震応答性状の分析結果を報告する.
過去の地震災害において,室内における非構造部材,家具什器による被害が施設の機能の低下とともに人的被害や経済的被害を引き起こしている.そのため構造物の耐震性についてだけでなく,室内空間の機能維持性能に対しても十分な検討が必要である.そこで,建築構造要素以外の室内の非構造部材,家具什器が引き起こす地震被害に主眼をおいた研究を推進してきた.本稿では,その研究のうち,E-ディフェンス(防災科学技術研究所所有の大型振動台)を用い,博物館と住居・オフィス等の2つの別の用途を,短い期間で再現した室内空間の振動台実験を行い,多くのデータの取得を行ったので報告する.これらの振動台実験から得られた室内空間の被害再現映像等を利用し,被害を定量的に評価することをめざす.
磐城無線電信局は,逓信省が1921年に日米間公衆専用の無線電信局として初めて開局した.巨大な設備は原町送信所に設置され,30 km南の富岡受信所で操作が行われた.通称原町無線塔は高さ200 mの鉄筋コンクリートの空中線の主塔をさすが,本稿は局や一連の施設の象徴として「原町無線塔」とする.開局から概ね2年後に関東大震災が起き,横浜港から銚子海岸局を経由し,横浜の被災状況は,「原町無線塔」からアメリカ西海岸の無線電信局に即日のうちに伝えられた.これにより海外から多数の支援が日本に届いたが,その偉業は今日忘れられつつある.そこで,「原町無線塔」が関東大震災で果たした役割について実像を明らかにし再評価を行なった.
建物の地震応答データによって描かれる復元力-層間変形角関係曲線(履歴ループ)は,建物の健全度合いによって形状が変化する.本研究では構造ヘルスモニタリングにこの性質を活用し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて履歴ループ画像をもとに将来の地震動による倒壊の危険性を判別する方法を提案した.提案手法において座標軸の範囲や解像度の設定を検討し,各ケースにおける正解率及び危険モデルの再現率を比較した.入力地震波の最大入力加速度の下限値を設定し,これを調節することで危険モデルの再現率を90%程度とすることができた.よってこの最大入力加速度の下限値はCNNによる損傷判別において影響力のあるパラメータの一つであるということができる.
地震防災を考える場合,その地域の精度が高い地下構造を把握することは重要となる.一般に,精度が高い地下構造の推定には高密度なボーリングデータが必要となる.しかし,地方都市ではボーリングデータの密度が低いため,精度が高い地下構造モデルの作成は難しい.近年,常時微動観測を用いた地下構造の推定手法の技術進展が進んでいる.そこで,ここではボーリングデータと常時微動データを組合せて,精度が高い三次元地下構造の推定を試みた.また推定した地下構造に対し,地形や増幅特性の観点から妥当性を確認した.
断層変位対策のためには,地表断層の発生位置を予測することが重要である.しかし,主断層の活動に伴って副次的に形成される副断層の発生位置を推定することは難しい.副断層は浅部岩盤の破壊に起因するため,浅部岩盤の応力を評価することでその発生位置を評価できると考えられる.本論文では,食い違い弾性論により岩盤の応力を評価し,応力と強度の比で定義される局所安全係数により副断層の発生領域を評価した.
筆者らの既往研究ではRC方立壁を有する高層RC建物を模擬した下部2.5層架構の構造性能にRC方立壁が与える影響を明らかにするため静的載荷実験を実施した.とくに,非構造壁であるRC方立壁はRC架構のせん断耐力の増大に寄与することを実験的に確認した.本稿ではRC方立壁と主体架構の相互作用を検討するため数値解析を計画し,上記実験の試験体の挙動を再現することを試みた.解析の結果,二次元有限要素法解析を用いた数値解析により荷重-変形関係や破壊性状など概ね再現でき,解析モデルの妥当性を検証した.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら