日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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25 巻, 3 号
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  • 水島 恒和, 打越 史洋, 北川 透, 西田 俊朗, 伊藤 壽記, 松田 暉
    2005 年 25 巻 3 号 p. 487-491
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    1996年~2002年の当科における腹部大動脈手術症例165例中, 腸管虚血症を合併し腸切除術を要した症例は8例 (4.8%) であった。腸管虚血症発症時期は術中2例, 術後6例であった。8例中6例 (75%) は下腸管膜動脈領域の大腸のみならず, 上腸間膜動脈領域の小腸にも虚血を認めた。術後に発症した6例中腹部症状を示した例は3例 (50%) に過ぎず, アシドーシスなどの非特異的な所見を呈する症例が多く認められた。小腸虚血症6例の内上腸間膜動脈本幹に閉塞を認めた症例が3例, 上腸間膜動静脈に明らかな閉塞を認めなかった症例が3例であった。術後合併症として残存腸管虚血6例, 縫合不全・腹腔内感染3例, 出血1例を認め, 8症例中7例が死亡した。虚血性大腸炎が克服されつつある現在, 腹部大動脈手術後の腸管虚血症としては虚血性大腸炎より, むしろ小腸虚血症の頻度が相対的に増加しており, 診断・治療の工夫が望まれる。
  • 橋爪 正, 木村 昭利, 宮本 慶一, 小野 裕明, 吉田 淳, 西 隆, 柴崎 至, 遠藤 正章
    2005 年 25 巻 3 号 p. 495-498
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌はoncological emergencyとされ, 高齢者, 高度進行癌に頻度が高い。外科治療にあたっては手術のタイミングと安全性, 根治性および術後QOL保持のバランスからみた術式選択が重要である。近年, 経肛門的減圧法の普及に伴い, 左側癌についても緊急手術やストーマ関連手術を回避し, 一期的切除吻合が比較的安全に施行されるようになった。
  • 田中 豊彦, 古川 顕, 新田 哲久, 山崎 道夫, 高橋 雅士, 村田 喜代史, 井本 勝治, 坂本 力
    2005 年 25 巻 3 号 p. 499-504
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌は, 緊急処置を必要とするoncologic emergencyである。この疾患の治療では癌切除術を行う前に癌によって引き起こされた腸閉塞状態を早急に解除することが必要になる。われわれの施設では経肛門専用イレウスチューブ (Dennis Colorectal Tube) を開発し, 過去5年間にこれを用いた緊急腸管減圧洗浄術を計69症例に施行した。69例中63例 (91.3%) において経肛門イレウスチューブの適切な位置への留置に成功した。留置不成功であった6例 (8.7%) はいずれも二期的手術 (人工肛門造設+腫瘍摘出) が施行された。留置成功例63例のうち5例 (8%) に留置中のイレウスチューブによる腸管壁の圧迫穿孔が認められた。この穿孔例すべてに緊急の腫瘍切除術が施行されている。イレウスチューブ留置中の穿孔例, 非穿孔例にかかわらずイレウスチューブ留置可能であった63例において術後の縫合不全, 腹膜炎などの治療を要する大きな合併症は経験していない。
  • 閉塞性左側大腸癌治療における経肛門的イレウスチューブと術中腸洗浄併用の有用性について
    堀江 久永, 岡田 真樹, 永井 秀雄
    2005 年 25 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    閉塞性左側大腸癌治療における経肛門的イレウス管と術中腸洗浄の有用性を比較するため, 1990年から2003年までに一期的切除吻合された25例の閉塞性左側大腸癌症例を3群 (緊急または準緊急手術で術中腸洗浄を施行して一期的切除吻合されたA群, 経肛門的イレウス管挿入後待機的に一期的切除吻合されたB群, 経肛門的イレウス管挿入後待機的に術中腸管洗浄施行して一期的切除吻合されたC群) に分け, 入院期間や術後合併症などを比較した。B群の術前入院期間がほかの群に比較し有意に長くまた合併症も多い傾向がみられた。これは経肛門的イレウス管挿入のみではpreparationが十分でないことを反映していると考えられた。現在われわれは, 経肛門的イレウス管はあくまでもイレウス解除および緊急手術回避目的の手段として, 術中腸洗浄は一期的切除吻合を安全に行うための腸準備の手段として位置づけている。根治性の高い一期的切除吻合を安全に, 少ない入院期間で施行するために両者の併用は有用と考えられた。
  • 梅木 雅彦, 栗栖 茂, 小山 隆司, 北出 貴嗣, 大石 達郎, 高橋 英幸, 森 大樹, 近清 素也, 大村 篤史, 田中 亜希子, 杉 ...
    2005 年 25 巻 3 号 p. 509-512
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸癌に対し, (準) 緊急一期的切除再建術を原則とした治療を行ってきたのでその成績について報告する。閉塞性大腸癌は過去17年間で215例経験し, 初回大腸癌手術例の16.2%を占めていた。うち一期的再建は158例73.5%に行われ, 縫合不全の発生は5例3.2%のみであった。癌腫の高度進行, 全身状態などからハルトマン手術が選択されたのは42例, 人工肛門のみが9例でうち後日根治術を行ったものが5例, 直腸切断術は6例でうち2例はチューブ減圧後に施行された。手術直接成績は, 術後30日以内の手術死亡が2例, 入院死亡が2例の4例 (1.9%) が術後在院死亡となったが, 211例 (98.1%) は軽快退院し得た。
  • 前田 清, 井上 透, 西原 承浩, 八代 正和, 野田 英児, 西口 幸雄, 平川 弘聖
    2005 年 25 巻 3 号 p. 513-515
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    従来, 閉塞性大腸癌によるイレウスに対しては緊急手術が施行されることが多かった。しかし, 近年では狭窄部に経肛門的にイレウス管を挿入したり, 金属ステントを留置することにより緊急手術を避け, 待期的に手術を行う報告も散見される。また, 癌の高度進展による切除不能症例では従来では永久的人工肛門が造設されていたが, われわれはかかる症例に対し, 金属ステントを留置することにより, 人工肛門を造設することなく, 良好な減圧効果が得られている。大腸狭窄に対するステント治療は人工肛門造設術と比べると低侵襲で, QOL向上に寄与する手技と考えられる。
  • 一期的切除吻合と経肛門的イレウスチューブ留置後待機手術の比較検討
    渡部 通章, 鳥海 弥寿雄, 川野 勧, 田中 知行, 穴澤 貞夫, 矢永 勝彦
    2005 年 25 巻 3 号 p. 517-520
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    大腸癌イレウスに対する術中洗腸プラスー期的切除吻合 (A群) と経肛門的イレウスチューブによる減圧待機的手術 (B群) を医療費の面から比較検討した。理論的にはA群が総保険点数が低いと考えられた。しかし, 1997年から2003年の左側大腸癌イレウス症例に関して当院と関連1施設をあわせ, 両群を比較検討したところ, 術後退院までの平均日数, 手術時間, 出血量において両群問で差はなく, 総保険点数も両群問に差は認めなかった。B群ではイレウス管挿入から手術までの平均日数は13.8±7.1日であった。一般的予測として, 医療経済的側面では術中洗腸プラスー期的吻合が優れていると思われるが, 各患者が必ずしも期待される順調な経過をたどるとは限らない。安全性も含め, 個々の症例ごとに治療法を検討する必要がある。経肛門的イレウスチューブ挿入例では減圧率の向上と挿入から手術までの日数の短縮が今後の課題である。
  • 原 敬志, 子野日 政昭, 沼田 昭彦, 加藤 紘之
    2005 年 25 巻 3 号 p. 521-523
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    非閉塞性腸間膜虚血症は, 動脈の攣縮により起こる虚血性疾患である。非可逆性であれば手術が必要となるが, 広範囲の腸管が壊死した症例でも下部直腸と肛門管が虚血に陥ることはまれなため肛門は温存可能な例が多数を占める。今回, われわれは広範な虚血性変化をきたした本症の2例を経験した。腹部CTでは2例とも両側内腸骨動脈に明らかな石灰化が起こっていた。術前の大腸内視鏡検査で肛門管に高度の虚血性変化があったため, 2例とも広範囲小腸切除とともに大腸全摘除術を選択した。肛門管が虚血に陥った背景には動脈硬化による内腸骨動脈系の血流量低下があると考えられるが, とくに内腸骨動脈に高度の病変がある例には術前内視鏡検査が必須である。
  • 石井 要, 西村 元一, 宮下 知治, 清水 康一, 太田 哲生, 三輪 晃一
    2005 年 25 巻 3 号 p. 525-528
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    示唆に富む腹部CT所見を呈した大網裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する。症例は83歳, 男性。1991年にS状結腸癌にてS状結腸切除術を受けている。2002年2月昼頃より下腹部痛を認めるようになり近医を受診した。腹部に強い筋性防御が認められ, 腹部X線検査ではイレウスの所見を認めたため, 同日当科紹介入院となった。腹部CT検査で, 腹水および小腸の拡張とループ形成を認めたため, 紋扼性イレウスと診断され緊急手術が施行された。腹腔内には血性腹水を認め, 回盲弁から口側80cmより40cmにわたり小腸が大網裂孔をヘルニア門として嵌頓し紋扼されていたため, 大網裂孔ヘルニアと診断した。紋扼を解除しても嵌頓小腸の色調が戻らなかったため同部位を切除した。裂孔を含めた大網も部分切除した。今回, 本病態の特徴について, 文献的考察を加えて報告する。
  • 多賀谷 信美, 山崎 理絵, 橘 昌嗣, 濱田 清誠, 民上 英俊, 窪田 敬一
    2005 年 25 巻 3 号 p. 529-533
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    虫垂S状結腸瘻は比較的まれな病態と思われ, 若干の文献的考察を加え報告する。症例は53歳の男性。下腹部痛, 発熱を主訴に近医に入院し, 諸検査にて腹腔内膿瘍が疑われ, 当科紹介入院となった。腹部CTでは, 骨盤内に外縁に造影効果のある5cm大の内部にガスを伴った腫瘤を認め, 腹部USでは, S状結腸に連続した5cm大の形状不整な腫瘤および瘻孔が認められた。注腸造影では, S状結腸に約5cmの壁外性圧排像が認められ, 大腸内視鏡検査では, S状結腸に発赤と1/3周性の圧排が認められた。以上より, 大腸憩室穿孔による腹腔内膿瘍の診断にて手術が施行された。開腹所見では, 虫垂の先端が膿瘍を形成し, 小腸間膜およびS状結腸に囲まれる形で存在した。膿瘍を含むS状結腸部分切除, 虫垂切除を施行した。病理所見では, 虫垂炎の穿孔による膿瘍形成およびS状結腸への瘻孔が確認された。術後経過は良好で, 第14病日に退院した。
  • 稲垣 伸洋, 石川 雅健, 武田 宗和, 角山 泰一朗, 鈴木 忠
    2005 年 25 巻 3 号 p. 535-538
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は21歳の男性。既往歴, 家族歴に特記事項なし, 精神科通院歴なし。排便は学童期より7~10日に1回であった。左上腹部の激痛のため近医受診, 消化管穿孔の診断にて当院搬入となった。左上中腹部は板状硬で腹膜刺激症状を認め, 単純X線写真ならびCT写真にて腹腔内遊離ガスと横行結腸内の糞便と同部の拡張像を認めた。大腸穿孔および腹膜炎の診断にて同日緊急開腹手術となった。横行結腸左半分に異常拡張を認め同部漿膜は全長約20cmにわたり裂けていたが肉眼的に穿孔部を確認することはできなかった。病理検査では粘膜面の炎症は軽度でびらんを認める程度であり, むしろ漿膜面に強い炎症所見を認め, 漿膜ならびに筋層の断裂とmicro perforationを認めた。血管炎やアミロイドーシスはなく神経節細胞も正常に認められ, この結果をふまえて特発性大腸穿孔と診断した。経過は良好で第16病日に退院した。若年者の特発性大腸穿孔というまれな症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
  • 江藤 高陽, 黒田 慎太郎, 先本 秀人, 小出 圭, 佐々木 翠, 土肥 雪彦
    2005 年 25 巻 3 号 p. 539-542
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    IIIb型肝損傷は深在性, 複雑型であり損傷部から多量な出血をきたし, ショックに陥る例が多い。従来は手術的な止血例が多かったが, 近年の画像診断とIVRの進歩に伴いTAEによる止血例が増加している。しかし小児肝損傷に対するTAEの報告例は少ない。われわれはIIIb型小児肝損傷に対し最終的にTAEを施行し救命できた2例を経験したので, 若干の文献学的考察を加え報告する。1例目は5歳男児で開腹下の肝縫合術後, 肝仮性動脈瘤破裂をきたしTAEにて止血を行った。2例目は11歳男児, 入院後ショックに陥るも輸液で回復したため血管造影を施行。引き続きA5からの出血に対しTAEを行い止血した。2例ともTAEによる合併症を起こすことなく退院した。TAEは低侵襲でかつ動脈性出血に対する止血効果は大きく, 小児といえども適応さえ守れば極めて有効な方法である。今後さらに小児肝損傷に対するTAE施行例が増加すると考えられる。
  • 小鹿 雅博, 佐藤 信博, 八重樫 泰法, 鈴木 泰, 小野寺 誠, 藤野 靖久, 井上 義博, 斎藤 和好, 遠藤 重厚
    2005 年 25 巻 3 号 p. 543-547
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈解離の1例を経験した。症例は55歳男性で, 上腹部痛にて搬送された。腹部超音波検査にて上腸間膜動脈内の血流に偏りを認めた。腹部造影CT検査にて腎静脈分岐部レベル, 起始部より約2cmの上腸間膜動脈内の解離を約4cmにわたり認め, それより末梢は造影されなかった。小開腹による直視下腸管観察の方針とした。一部回腸に蠕動運動低下を認めた。虫垂切除術にて血流を確認すると, 低下を認めたが血流は保たれていた。経時的に腸間膜虚血の可能性があるため閉腹せず開腹にてICU入室とし, 腸管観察下に翌日再度確認とした。18時間後の再確認で腸間膜虚血は認めず閉腹とした。術後にmultidetector-CT, 血管撮影検査施行。上腸間膜動脈 (SMA) より空腸が2枝分枝した後より完全閉塞していた。空腸枝の発達と副側路によりSMA支配領域に血流を認めた。上腸間膜動脈解離の報告は, 本症例を含め21例とまれである。過去の報告例の診断および治療を含め, 若干の文献的考察を加え報告する。
  • 飯塚 亮二, 柿原 直樹, 北村 誠, 檜垣 聡, 横野 諭, 井川 理, 大同 毅, 中川 達哉
    2005 年 25 巻 3 号 p. 549-553
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    最近4年間に経験した外傷性十二指腸損傷3例を報告する。症例1は35歳, 男性。CTで, 後腹膜血腫および腹腔内出血を認め緊急手術施行, 十二指腸水平脚に2/3周の破裂を認めたため, 十二指腸水平脚を離断後, EEAにて十二指腸空腸機i械吻合施行した。症例2は24歳, 女性。受傷後3日目にCTで後腹膜膿瘍を認め当院転院。手術にて十二指腸に3カ所損傷を認め損傷部閉鎖後胃痩および腸痩を造設した。症例3は38歳, 女性。腎外傷による出血性ショックにて血管塞栓術施行後4日目にCTで後腹膜膿瘍を認め水溶性造影剤による十二指腸造影検査施行, 十二指腸損傷を認めた。開腹にて十二指腸水平脚に損傷を認めたが周囲浮腫が著明なため, 損傷部は処置せず周囲にドレナージチューブを留置し, 胃痩および腸痩を造設した。それぞれ入院期間に差があったが救命できた。十二指腸損傷は治療開始が遅れると死亡率が高率であるが受傷時期に応じた適切な手術術式の選択にて救命が可能かと思われた。
  • 森 義之, 細村 直弘, 飯野 善一郎, 三浦 和夫
    2005 年 25 巻 3 号 p. 555-561
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は19歳の女性。自殺目的に次亜塩素酸ナトリウム (洗濯槽用洗剤, アルカリ剤, pH12以上) を100ml 飲用して近医を受診した。上部消化管内視鏡検査にて食道, 胃のびらんを認めた。自殺企図が強く当院精神科閉鎖病棟転院となった。胸部下部食道および胃幽門輪の狭窄が強く, 6ヵ月間に5回内視鏡的拡張術を施行したが改善しなかった。手術を勧めたが統合失調症があり家族の希望で経過観察しており, 飲用から9ヵ月後に退院した。退院時はきざみ食であったが, 飲用11ヵ月後より常食を摂取するようになった。飲用13ヵ月後の上部消化管造影検査では食道, 胃の狭窄は認めなかった。本邦文献報告例では, アルカリ剤による瘢痕狭窄症例では飲用7ヵ月以内に手術が施行されており, 8ヵ月以上経過を観察した報告は認めなかった。腐食性食道炎, 胃炎による瘢痕性狭窄に対し保存的に改善し得た1例を経験したので報告する。
  • 猪瀬 悟史, 光定 誠, 中島 康, 塩入 貞明, 新井 浩士, 若山 達郎, 小川 健治
    2005 年 25 巻 3 号 p. 563-566
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は39歳, 男性。右下腹部痛を主訴に当科を受診した。腹部超音波, 腹部CT検査で右腸腰筋腹側に9×4×4cm大の嚢胞性病変を認めた。下腹部嚢胞性病変および限局性腹膜炎と診断し, 緊急手術を施行した。手術所見は, 虫垂は約11.5×4.5×4.5cm大の腸詰様に腫大し, 時計方向に約360度捻転していた。捻転を解除し, 虫垂切除術を施行した。摘出標本の内腔は淡黄色のゼリー状物質で満たされていた。病理組織学的所見は, 虫垂壁は全層性に高度の出血, うっ血, 炎症細胞の浸潤を認めた。粘膜はほとんど脱落していたが, わずかな残存粘膜に腫瘍性変化は認めず, 虫垂粘液嚢腫 (非腫瘍性貯留嚢胞) と診断した。
  • 和田 滋夫, 阿部 孝, 尾下 正秀, 目連 晴哉, 田邊 淳, 林 保, 久保 光彦, 岡田 則子, 笠原 彰紀
    2005 年 25 巻 3 号 p. 567-570
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性。約20年前よりクローン病 (Crohn's disease: 以下, CD) の加療中であり, プレドニンの内服を行っていたが, 活動性は持続していた。発熱, 右腰背部痛を主訴に受診した。血液生化学検査ではCRP30.72mg/dlと著明な炎症所見を認めた。腹部超音波, CT検査にて肝右葉に孤立性の膿瘍を認めた。当初経皮経肝膿瘍ドレナージ術施行を考慮したが, 抗生物質投与により炎症所見は徐々に軽減し画像検査上も肝膿瘍の縮小を認めたため, ドレナージ術は施行しなかった。CDに肝膿瘍を合併することは非常にまれであるが, 本症例ではCDの活動性の持続, および, ステロイド投与による易感染性が起因になったものと思われる。CDにステロイド長期投与を行っている際, 腹部症状・発熱が持続する場合には, ほかの腹部膿瘍などとともに肝膿瘍の併発も考慮しなければならない。
  • Crush Syndromeにおちいった 1 例
    鈴木 紀男, 笠間 和典, 竹束 正二郎, 堀江 健司, 多賀谷 信美
    2005 年 25 巻 3 号 p. 571-574
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    Crush syndromeの1例を経験したので報告する。症例は, 60歳の男性。土木機械に挟まれ, 来院した。胸, 腹, 腰部の痛みと呼吸苦を訴えた。意識清明, 腹部は自発痛, 圧痛を認めたが, 筋性防御は認めなかった。胸部単純X線とCTで, 肋骨骨折, 両側血気胸を認めた。腹部CTでは, 肝損傷 (Ia), 腎損傷 (Ib), 脾損傷 (II) を認めた。気管挿管とし, 両側に胸腔ドレーンを挿入した。肝腎脾については, 保存的に加療することとした。症状は改善傾向を示したが, 左腰部から大腿にかけての腫脹があり, ミオグロビン色の尿が出現, 血清creatine phoshokinase, blood urea nitrogen, creatinine, K値が上昇し, crush syndromeと診断した。血液濾過透析を合計9回施行した。症状は改善し, リハビリテーションの後退院した。Crush syndromeは, 腎不全などの多臓器不全やdisseminated intravascular coagulationが進行するので, 大量輸液や血液透析などの治療の時期を逃さず施行することが必要と思われた。
  • 工藤 克昌, 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 高橋 賢一, 上野 達也, 橋本 明彦, 長尾 宗紀, 羽根田 祥, 渡辺 和宏, 神 ...
    2005 年 25 巻 3 号 p. 575-577
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性で, 左第1指原発悪性黒色腫の診断にて左第1指切断術, 左腋窩リンパ節郭清術を施行し, さらに, 左上腕皮下・左腕擁骨筋筋膜下転移を認めたためそれぞれ転移巣摘出術を施行した。また, インターフェロンなどによる化学療法施行中であった。初発より約3年後, 腹痛・嘔吐が出現し, CT所見より腫瘍を先進部とする腸重積と診断され, 開腹手術を施行した。空腸に腫瘍を先進部とする腸重積を認め, 用手的整復後小腸部分切除術を施行した。術後, 病理組織学的検索にて悪性黒色腫の小腸転移と診断された。悪性黒色腫にて手術歴のある患者が消化器症状を訴えている場合, 消化管転移の可能性も念頭に置き診療に当たることが重要であると思われた。
  • 本田 真広, 戸谷 昌樹, 藤田 基, 鶴田 良介, 笠岡 俊志, 岡林 清司, 前川 剛志
    2005 年 25 巻 3 号 p. 579-583
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    われわれは, 外傷性脾臓損傷に対し脾摘・自家移植術を施行し, 脾臓シンチグラフィーで生着を確認した症例を経験したので報告する。症例は14歳, 男性。バスケットの試合中にほかの選手と衝突し, 膝が腹部を直撃した。腹部超音波検査, 腹部CT検査の結果, 日本外傷学会分類IIIc型脾損傷と診断し緊急手術を施行した。脾門部および上極に複雑型の実質損傷を認め, 脾摘出術・自家移植術を施行した。術後経過良好で13日目に退院となった。術直後と3ヵ月後の脾臓シンチグラフィーを比較し集積の増加を認めた。シンチグラムの集積像は, 異所脾または外傷種まきの存在で, 自家移植を施行しなくても出現することが報告されており, IgG, IgMの正常化も生着度をみる指標として重要と考えられる。
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