音声言語医学
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最新号
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総説
  • 田中 学
    2020 年 61 巻 4 号 p. 299-302
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル 認証あり

    発達障害(神経発達症群)は脳機能の障害であり,その症状が通常低年齢で発現するものといわれている.発達障害の個々のカテゴリーの診断は客観的な評価に基づくといわれるが,実際には主観的判断が入ることが多い.ASDやADHDには本来の一次障害たる根本的な神経発達的問題があり,診断基準に挙げられている症状は顕在化したものが多くを占める.適切な支援のためには,個々の症状が生じた理由・背景を併せた理解が必要である.

  • 外山 稔, 能登谷 晶子
    2020 年 61 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル 認証あり

    成人領域の高次脳機能障害で見られる頭頂葉機能障害と推察された小児2症例を提示した.2症例の音声言語の発達はほぼ正常範囲にあったが,読み書きにおいてさまざまな症状を呈していた.これらの症例の症状の分析には,成人高次脳機能障害領域の検査バッテリーが有用であった.言語聴覚士の養成校では,しばしば成人領域,小児領域という2分割の講義・演習が進められる傾向にあるが,言語聴覚臨床には小児や成人の垣根はないと考える.お互いの得意分野の知恵を持ち寄り,評価・訓練に有用な情報はすべて活用して,さまざまな高次脳機能・発達の課題を併せ持つ子どもたちをどう支援するのか,という議論を進めることが重要である.

  • 緒方 祐子
    2020 年 61 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル 認証あり

    口唇口蓋裂に関する治療は,多彩な側面からのアプローチが必要なため,多職種による包括的治療が必要である.その評価は患者ごとにそれぞれの専門職で行い,その結果を基に職種間で協議しながら,治療を行う.そのため,治療成績は職種間で共通理解する必要がある.近年,海外では,個々の患者別に行う臨床評価のほかに,施設間や評価者間で治療成績を比較するため,標準化された評価方法が開発され,臨床面や研究面に活用されている.一方,QOLの視点から,医療者側の評価に治療を受ける側からの報告(patient reported outcome)を追加して,さらに包括的な評価を試みる動きも見られている.
    本邦ではこれらの標準的口蓋裂言語評価や口蓋裂に関するQOLに関する評価は未確立である.これらの視点を加えた評価を行うことで,さらなる口蓋裂の治療の質の向上や患者家族のQOLを視野に入れた支援を充実化することが希求される.

原著
  • ―健常若年成人話者における検討―
    城本 修, 宮地 隆世, 奥田 あずさ, 阿部 千佳
    2020 年 61 巻 4 号 p. 315-330
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル 認証あり

    【目的】ケプストラム分析に適していると思われる日本語課題文を試作し,健常若年成人話者の音読音声について,ケプストラム分析とスペクトラム分析を行い,分析の検者内・間信頼性と課題文の再現性から,試作した日本語課題文の有用性を検証する.
    【研究協力者】話者:健常若年成人男女各30例(平均年齢22.7歳,SD 4.5歳)
    検者:ケプストラム分析とスペクトラム分析の経験がない学生3名
    【手続き】上記の話者を対象に,2日間で計4回,持続母音/a/,/i/と試作した種類の異なる日本語課題文6文をランダム順に音読してもらい,デジタル録音した.録音された音声をADSVプログラム(Analysis of Dysphonia in Speech and Voice program)を用いて,cepstral peak prominence(CPP),Cepstral/Spectral Index of Dysphonia(CSID),L/H spectral ratio(L/H ratio)について3名の検者がそれぞれ分析した.
    【結果】持続母音,各課題文におけるCPP,CSID,L/H ratio測定値は,高い検者内および検者間信頼性(ICC=0.65–0.999,0.872-0.998)を示した.また,各測定値は全4試行間でも同一検者による高い再現性(ICC=0.763-0.948)を示した.さらに,持続母音と各課題文における各測定値平均は,母音の種類や課題文の種類によって有意差が認められ,さらに発話者の性差による差異も認められた.
    【結論】健常若年成人話者のケプストラム分析とスペクトラム分析の高い検者内・間信頼性と課題の高い再現性から,試作した日本語課題文の有用性が高いことが示された.さらに課題文の種類や発話者の性差による各スペクトラム指標およびケプストラム指標の差異が認められた.今後は,これらの課題文の種類や発話者の性差による差異が,高齢健常者や音声障害者においても同様に認められるか検討することが望まれる.

  • ―使用時および非使用時の効果検証―
    志村 栄二
    2020 年 61 巻 4 号 p. 331-341
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル 認証あり

    dysarthria 3例を対象に携帯型DAFを用いた訓練を日常生活場面で約3ヵ月間実施し,携帯型DAFの使いやすさや操作方法の問題点を調べ,実用性や臨床応用への課題を検討した.なお,DAFの使用方法は症例がDAFによって遅延された音声に自身の音声を重ね合わせる母音を延ばす方法を用いた.
    効果を検討するために訓練前後に評価を実施し,DAF使用時と非使用時に分けて分析した.その結果,携帯型DAF使用時では操作方法などに問題が見られたものの,非使用時に比べ全例で会話時の明瞭度が改善した.また,訓練終了後も母音を延ばす方法を用いてDAFを使用できていたことから,携帯型DAFは日常生活場面で発話明瞭度を高めるための有用な手段になる可能性が示された.DAF非使用時では,訓練終了後に会話時の明瞭度が3例中1例で改善し,単語音読時の発話速度は全例で有意な低下が認められた.このことから,日常生活場面における携帯型DAFを用いた継続訓練の効果は般化する可能性が示唆された.

  • 小山 正
    2020 年 61 巻 4 号 p. 342-350
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル 認証あり

    132名の18ヵ月から48ヵ月の子どもを対象に家庭での子どもの遊びと認知発達に関する養育者記入による質問紙への回答を因子分析の結果,第Ⅰ因子「他者理解・好奇心」,第Ⅱ因子「人の行為・経験の表象化とその計画性」,第Ⅲ因子「物での構成遊び」,第Ⅳ因子「空間理解」,第Ⅴ因子「ふり」の5因子が抽出された.次に,生後24ヵ月に注目し,2群に分け,信頼性が高いと考えられた第I因子から第Ⅳ因子の加算平均得点と「日本語版CDI・語と文法」からの言語変数との月齢を統制した偏相関分析の結果,18ヵ月から24ヵ月群では,第II因子と「文の複雑さ」を除く他のすべての言語変数との間に比較的強い相関が見られた.25ヵ月から36ヵ月群においては第II因子と「助詞」「助動詞」「文の複雑さ」との間に比較的強い相関が見られ,家庭での遊びや認知発達のなかでも人の行為・経験や役割の表象化と遊びでのその計画性が初期言語学習と関連していることが示唆された.

  • ―随意咳嗽と咳反射テストを用いた検討―
    吉永 明史, 爲数 哲司, 深浦 順一
    2020 年 61 巻 4 号 p. 351-359
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル 認証あり

    誤嚥性肺炎は高齢になるほど発症率,死亡率が高く,医療,介護,福祉の現場,さらには日常生活の場における予防の取り組みが急務となっている.高齢になっても誤嚥を回避し,安全な経口摂取を継続していくためには正常な嚥下機能と咳嗽機能の維持が求められる.今回われわれは「加齢による呼吸機能低下に伴い,随意咳嗽と咳反射テストの成績が低下する」という仮説を立て,誤嚥性肺炎による死亡率が増加する50〜80歳代の健康な女性を対象として研究を行った.
    結果として,呼吸機能,随意咳嗽と咳反射テストの咳の最大流量に年齢による差はなかった.80歳以降では咳反射テストの潜在時間延長,咳の回数減少が顕著であった.
    以上より加齢による影響が出やすいのは咳反射テストの潜在時間と咳の回数であり,随意咳嗽,咳反射テストの最大流量や聴覚的印象である咳の強さ,弱さの指標では加齢による気道防御機能の変化を捉えにくいことが示唆された.

症例
  • ―知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害児のコミュニケーション発達―
    北川 可恵
    2020 年 61 巻 4 号 p. 360-368
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/11
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    4歳5ヵ月時に人工内耳(CI)埋め込み術を受けた知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害(ASD)の症例を報告する.ASD特有の感覚の過敏さを認め,CIの調整を変更した後や感冒の罹患後にしばしばCIの装用が困難になった.CIの微調整と場面装用指導を繰り返し,推奨される装用閾値よりも児の受け入れられる範囲を優先した.CIの装用時間が延び,呼名への反応が確実になると,文字表出が増加した.11歳時にはみずからCIを装用したがり常時装用が定着したため,音声言語と文字単語の理解力が向上した.音声言語の表出は困難であったが,文字をコミュニケーション手段として使い,筆談でやりとりが行えるようになった.ASDの診断を受けてからCI埋め込み術を行ったため,児に対する保護者の理解や満足度は良好であった.ASDに知的障害を伴うCI装用児においてもCIにより聴覚活用を積み重ねることが外界に対する興味を広げ,コミュニケーション発達の基盤となることが示唆された.

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