(目的) 表在性膀胱癌の再発と, 浸潤癌や転移癌への進展の危険因子を検討するため種々の臨床的病理学的因子について再発率と進展率を検討した.
(方法) 1972年より1993年の22年間にTUR-Btを施行した初発表在性膀胱移行上皮癌 (pTa, pT1) 150例について, 初発腫瘍の grade, pT, 大きさ, 数, 形態の各因子と, 表在性再発および, 浸潤癌や転移癌への進展との関連につき検討を加えた.
(結果) 症例の内訳は, 男性122例, 女性28例で, 年齢は25より98歳, 平均67.0歳であった. 観察期間は最短3ヵ月より最長184ヵ月で, 平均50.3ヵ月 (中央値39.4ヵ月) であった. 各因子の内訳はG1が52例, G2が64例, G3が33例で, pTaが99例, pT1が51例で, 1cm未満が37例, 1~3cm が89例, 3cm以上が21例で, 単発が79例, 多発が65例で, 有茎性が101例, 広基性が45例であった. 72例に再発を認め, 全体の5年非再発率は41.6%であった. 1cm以上と多発が有意に再発しやすかった (p<0.01). 15例に進展を認め, うち14例は再発の既住を有した. 進展様式は局所浸潤8例, リンパ節転移2例, 遠隔転移5例であった. 進展例の12例は癌死した. 全体の5年非進展率は87.0%であった.
G3, pT1, 広基性が有意に進展しやすかった (p<0.01). 後療法として, UFT内服および各種抗癌剤膀胱内注入を実施したが無治療群との再発率に有意差はなかった.
(結論) 1cm以上と多発が再発の危険因子であり, G3, pT1, 広基性が進展の危険因子であった.
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