日本泌尿器科学会雑誌
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86 巻, 9 号
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  • 酒本 護
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1407-1415
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 骨塩の定量法に使用されている二重エネルギーX線吸収法を用い, 腎結石のミネラル含有量 (以下MCと略す) とミネラル密度 (以下MDと略す) を測定し, MC, MDと in vitro における腎結石標本の破砕実験結果および臨床患者でのESWL治療結果との関係を検討した.
    (方法および結果) MC, MDと総衝撃波エネルギーとの相関をみると, in vitro における破砕実験 (n=46) では相関係数はMCでは0.814, MDでは0.706 (ともにp<0.0001) であり, 臨床患者のESWL治療成功群 (n=14) でのMCと総衝撃波エネルギーとの相関係数は0.843 (p<0.001) であった. また臨床患者での治療成功群 (n=14) での腎結石のMCでは0.521±0.387g, MDでは0.317±0.121g/cm2であり, 治療不成功群 (n=6) でのMCは4.27±6.19g, MDは0.626±0.302g/cm2で, 治療成功群, 不成功群の間に, MC, MDともに有意差を認めた (MCではp<0.05, MDではp<0.01). また線型判別分析を用い, ESWL治療の成功, 不成功を予測してみた. するとMC, MDおよび結石面積の組み合せた場合最も良く治療成績を予測し得た (誤判別率の推定値17%, 判別率85%).
    (結論) 以上の結果から, ESWL治療前に二重エネルギーX線吸収法を用い腎結石のMCおよびMDを測定すれば, ESWLによる治療結果を予測し得ると考えられた.
  • 武井 一城, 浜野 公明, 伊藤 晴夫, 正井 基之, 水上 宏俊, 三上 和男, 三浦 尚人, 鈴木 文夫, 李 瑞仁, 小竹 忠, 長尾 ...
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1416-1423
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 表在性膀胱癌の再発と, 浸潤癌や転移癌への進展の危険因子を検討するため種々の臨床的病理学的因子について再発率と進展率を検討した.
    (方法) 1972年より1993年の22年間にTUR-Btを施行した初発表在性膀胱移行上皮癌 (pTa, pT1) 150例について, 初発腫瘍の grade, pT, 大きさ, 数, 形態の各因子と, 表在性再発および, 浸潤癌や転移癌への進展との関連につき検討を加えた.
    (結果) 症例の内訳は, 男性122例, 女性28例で, 年齢は25より98歳, 平均67.0歳であった. 観察期間は最短3ヵ月より最長184ヵ月で, 平均50.3ヵ月 (中央値39.4ヵ月) であった. 各因子の内訳はG1が52例, G2が64例, G3が33例で, pTaが99例, pT1が51例で, 1cm未満が37例, 1~3cm が89例, 3cm以上が21例で, 単発が79例, 多発が65例で, 有茎性が101例, 広基性が45例であった. 72例に再発を認め, 全体の5年非再発率は41.6%であった. 1cm以上と多発が有意に再発しやすかった (p<0.01). 15例に進展を認め, うち14例は再発の既住を有した. 進展様式は局所浸潤8例, リンパ節転移2例, 遠隔転移5例であった. 進展例の12例は癌死した. 全体の5年非進展率は87.0%であった.
    G3, pT1, 広基性が有意に進展しやすかった (p<0.01). 後療法として, UFT内服および各種抗癌剤膀胱内注入を実施したが無治療群との再発率に有意差はなかった.
    (結論) 1cm以上と多発が再発の危険因子であり, G3, pT1, 広基性が進展の危険因子であった.
  • 木村 文宏, 清水 俊次, 辻 明, 中島 史雄, 早川 正道, 中村 宏
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1424-1428
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景) IFN-α療法は腎細胞癌患者の約15%で効果が認められるが, IFN-αに対する感受性を予測することは今のところできない. 最近の腎細胞癌株を用いた実験で, GP160陰性細胞株では in vivo, in vitro ともにIFN-αによって増殖が抑制されるが, GP160陽性細胞株では増殖が抑制されないことが示された.
    (対象と方法) 今回我々は26名の腎細胞癌患者においてGP160の発現を逆転写―PCR法を用いてmRNAレベルで検討した.
    (結果, 結論) 腎癌組織では26名中23名でGP160 mRNAが強く発現していたが, 2名 (7.7%) では発現が明らかに低下し, 1名 (3.8%) ではその発現がほとんど見られなかった. GP160 mRNAの発現がほとんど見られなかった患者は, 腎摘除後IFN-α療法により多発肺転移及び縦隔転移の寛解を得た.
  • 上田 光孝
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1429-1434
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    非癌腎組織, 腎癌組織および尿路上皮癌組織から cathepsin B様物質を抽出精製し, その特性について比較した. 組織抽出液からの精製は Sephadex G-25カラムクロマトグラフィーおよびDEAE-Sephacel, CM Bio-Gelを用いたイオン交換クロマトグラフィーで行い, 定性は benzyloxy-carbonyl-L-arginine-4-methyl-7-coumarylamide (Z-Arg-Arg-MCA) を基質として用いた cathepsin B様活性値の測定と共に, 10% sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis (10%SDS-PAGE), 抗ヒト肝 cathepsin B抗体を用いた western blot で行った.
    非癌腎組織から抽出精製された cathepsin B様物質は分子量約28,000であったのに対し, 腎癌組織および腎盂癌組織から抽出精製された cathepsin B様物質は分子量約28,000と約35,000の2種のものがみられた. 膀胱癌組織から抽出精製された cathepsin B様物質は high stage の腫瘍では分子量約28,000と約35,000の2種のものがみられたが, low stage の腫瘍では約28,000のもののみであった.
    尿路癌組織では cathepsin B様プロテアーゼが産生されており, より分子量の大きい cathepsin B様プロテアーゼは癌の浸潤過程に重要な役割を果たすものと考えられた.
  • リンパ節転移症例の検討
    豊田 健一, 永森 聡, 柏木 明, 野々村 克也, 小柳 知彦
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1435-1439
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) リンパ節転移を有する膀胱原発巣とリンパ節転移巣において, DNA ploidy を検討し, ploidy が一致するか否か, どんな細胞が転移しているか, 検討した.
    (方法) Flow cytometry (FCM) を用いて, 根治的膀胱全摘術を施行した膀胱癌63症例中, リンパ節転移を有する16例の膀胱癌組織と転移リンパ節の核DNA量を解析し, DI値 (DNA index) にて評価した.
    (結果) 1) リンパ節転移を有する膀胱癌原発巣は, G3が多く, stage (pT) はpT2以上であった. 2) 原発巣と転移巣のDNA ploidy の関係は, DNA diploid (以下 diploid) のみの原発巣からのリンパ節転移は diploid のみで, DNA aneuploid (以下 aneuploid) 原発巣からのリンパ節転移では, diploid と aneuploid の混在腫瘍4例からは4例とも diploid で, aneuploid のみの7例からは, 5例が aneuploid で, 残る2例は diploid の転移であった. 3) DI値 (DNA index) を比較してみると, 原発巣と転移巣のDI値はほぼ一致し (16例中14例, 88%), 多くの場合, 転移巣の cell clone と同じDNA量を持つ cell clone が原発巣にも存在することが示された. 4) diploid 原発巣39例中5例, 13%がリンパ節転移を起こし, aneuploid 原発巣は24例中11例, 46%に転移を認め, 有意に高率であった (p<0.01).
    (結論) 原発巣と転移巣のDI値はほぼ一致し, 原発巣中のひとつの cell clone が転移したと考えられた.
  • 小野 憲昭
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1440-1449
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 細菌バイオフィルムの各エレメントの解析法として, トルイジンブルーを用いる glycocalyx の簡易定量法, ならびに, bioactivity 測定法としてのATP測定法を新たに考案ないし改良して, その有用性に検討を加えた.
    (結果) 基礎的検討において, 既知量の glycocalyx として gellan gum を用いた場合, トルイジンブルー反応量を示す吸光度は gellan gum 量4.0×10-6~1.0×10-4gの範囲で直線性を示した. また, 改良を加えたATP測定法では, ATP量で1×10-4mol/l, 浮遊菌数で103cfuまでの測定が可能であった. また, modified Robbins device を使用する in vitro 実験系において, 緑膿菌バイオフィルムの経時的形成過程ならびに各種抗菌性物質作用後の変化の解析において, 両測定法による glycocalyx 量と bioactivity に関する成績は, 論理的に矛盾がなく走査型電子顕微鏡所見とも極めてよく一致していた.
    (結論) したがって, 両測定法は細菌バイオフィルムの新しい解析法として有用であると考えられた.
  • 佐久間 孝雄, 小川 修, 川村 猛, 長谷川 昭, 守殿 貞夫
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1450-1459
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 移植腎の予後を左右すると考えられる急性拒絶反応 (AR) に注目し, シクロスポリン (CyA) の血中濃度 (trough level: TL) とARの出現, 移植腎の予後との関係について検討した.
    (対象) CyAを使用した小児第一次親子間生体腎移植症例46例を対象とした.
    (結果) 臨床的にARを46例中24例 (52%) に認めた.
    最終的に臨床的, 病理組織学的ともに良好と判断された症例の割合は, ARを認めなかった群 (15/22; 68%), ARを認めたが治療に完全に反応した群 (6/12; 50%), 部分的にしか反応しなかった群 (0/12; 0%) であった.
    CyAの血中濃度とARの関連性の検討では以下の両群の比較で明らかな差を認めた. 1) ARを認めた週のTL/AR (+)vs(-); 1週/166vs204, 2週/125vs242, 3週/101vs218, 5週以降/149vs201ng/ml. 2) 8, 12週のTL/100日目腎生検AR (+)vs(-); 123vs172, 115vs163ng/ml.
    (結論) 以上の結果から,A Rを認めたか否か, また, ARに対する治療に完全に反応したか否かが移植腎の予後を大きく左右すると考えられ, ARの出現頻度を低下させるためには, 移植後早期 (5週目まで) はCyAのTLを200~300ng/mlに, また, その後3ヵ月までは150~200ng/mlに維持すべきと考えられた.
  • 藤浪 潔, 里見 佳昭, 菅原 敏道, 池田 伊知郎, 大古 美治, 原田 昌興
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1460-1465
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 1984年から1992年までに横須賀共済病院にて針生検ないしTUR-Pにて前立腺癌と診断された術前ホルモン療法未施行で前立腺全摘術を施行した前立腺癌29例においてその生検時と前立腺全摘時の組織異型度の相違について検討した.
    (方法) 組織学的分類は前立腺癌取り扱い規約による分化度分類と Gleason 分類を適用した.
    (結果) 規約分化度分類では, 生検組織と全摘組織の判定一致例は29例中24例 (83%), 生検組織判定が low grade であったものが1例 (3%), high grade であったものが4例 (14%) であった. Gleason score では生検組織と全摘組織の判定一致例は52%のみで, 生検組織の grade の overestimate 31% (9/29), underestimate は17% (5/29) であった. Gleason score を2~5, 6, 7, 8~10の4群に分けた Gleason score 複合群では一致率72%, grade の underestimate 10%, overestimate 17%であった.
    (結論) 以上より, 生検組織と全摘組織における異型度判定不一致例のうち, 生検時 underestimate の症例は3~10%に過ぎず, 生検組織における異型度判定は予後ないし治療指標として十分評価しうる結果と考えられる.
  • 岡島 英二郎, 大園 誠一郎, 太田 匡彦, 田中 雅博, 谷 満, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1466-1474
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景) 前立腺肥大症は高齢化社会を迎えた本邦においても関心がもたれてきている疾患である. 最近, 従来の外科的な治療法のほかに, より侵襲の少ない種々の治療法が開発され適応されてきている. しかし, これらの治療法の適否や治療効果を的確に評価しうる基準がないのが現状である. 世界保健機構の後援による国際前立腺肥大症取り扱い委員会は国際前立腺症状スコア (I-PSS) を提案したが, この症状の出現頻度についてのI-PSSの評価法では生活の質を十分に評価しきれない可能性があると考えられた.
    (対象と方法) TUR-P施行症例を対象に, 前立腺肥大症の重症度と治療効果の判定をI-PSSとわれわれがI-PSSを修飾して作成した Symptom Score を比較し, I-PSSの有用性につき検討した.
    (結果) I-PSSを用いることによりTUR-Pの治療効果は評価できることが確認された. I-PSSの改善度は術前の他覚所見と相関し, 術前の他覚所見からTUR-Pの適応を決定しうる可能性が示唆され, I-PSSの症状項目を用いた前立腺肥大症の治療効果判定にある程度の妥当性があると考えられる. しかし, I-PSSの評価方法は自覚的な患者のQOLに対する評価基準としては不十分であると思われた.
    (結論) 前立腺肥大症に対する治療法の目的が, 従来から前立腺体積の減少あるいは下部尿路通過障害の改善にあることを考えれば, 他覚所見とQOLを別々に評価し, それらを総合して判定を下す評価方法が必要であると考えられた.
  • 関 晴夫, 永森 聡, 小柳 知彦
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1475-1482
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎細胞癌におけるPCNA陽性率と病理学的所見, 核DNA量, 予後との関係を検討した.
    (方法) 腎細胞癌40例より総計151検体のホルマリン固定パラフィンブロックを選択し, 抗PCNA抗体による免疫組織化学染色を行った. PCNA陽性細胞の割合を Labeling Index (LI; %) として算定した. 同一検体に対し flowcytometry を用いて核DNA量解析を行った.
    (結果) 1) LIと異型度の関係; G1 (n=16) のLIは2.79±3.33 (mean±SD) であり, G2(n=20) では5.63±4.08, G3 (n=4) では9.95±4.59であり, G1とG3の間に有意差を認めた (p<0.05).
    2) LIと進展度の関係; pT2 (n=22) のLIは3.22±3.05であり, pT3以上 (n=18) では7.01±4.99とpT2より有意に高値を示した (p<0.05).
    3) リンパ節転移, 遠隔転移の有無に関してはLIに有意差は無かった.
    4) LIと核DNA量; DNA diploid (n=17) のLIは2.41±3.14であり, DNA aneuploid (n=23) のLIは6.80±4.29とDNA diploid より有意に高値を示した (p<0.05).
    5) 核DNA量に clonal heterogeneity が存在するのに平行してLIにも腫瘍内の部位により値のばらつきが存在することが示唆された.
    6) LIと予後の関係; Liが5.0%以上 (n=15) の5年生存率は40%であり, LIが5.0%未満 (n=25) では74%であり有意差を認めた (p<0.05).
    (結論) 抗PCNA抗体により算定した腎細胞癌のLIは増殖能を示すと共に悪性度の評価に有効な指標になりうると思われた.
  • 中田 誠司, 増田 広, 佐藤 仁, 清水 信明, 鈴木 和浩, 今井 強一, 山中 英壽, 斉藤 浩樹, 中村 敏之, 加藤 宣雄, 高橋 ...
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1483-1487
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 同一家系内に発生した前立腺癌患者の臨床病理学的特徴について検討した.
    (対象と方法) 親子または兄弟に発生した7組 (14例, 親子2組, 兄弟5組) の前立腺癌患者 (F群) と, 1987~1993年の間に群馬県およびその近郊の病院で, 未治療の状態で発見された前立腺癌患者1,741例 (G群) を比較検討した. 両群の平均年齢が異なるため, 生存率は相対生存率を求めた.
    (結果) 診断時年齢は, F群が54~86歳まで分布し, 平均68.1±8.5 (S. D.)歳, G群が47~97歳まで分布し, 平均74.2±8.3歳で, F群で平均年齢が低い傾向であった. 臨床病期, 組織学的分化度は, F群で早期癌の占める割合が高く, 低分化癌の占める割合が低い傾向であった. 予後は, 3年および5年相対生存率はF群で82.4%, 57.6%, G群で84.3%, 73.9%で, 5年の時点ではF群の生存率が低い傾向であったが, 全体的には両群の間にほとんど差はみられなかった. F群では死因の明らかな6例のうち4例 (66.7%) が前立腺癌死であるのに対し, G群では死因の明かな398例のうち前立腺癌死は224例 (56.3%) であった.家系の病歴に関しては, F群で前立腺癌の2人を除いた他の癌患者がいたのは6家系中3家系であった.
    (結論) 家族性前立腺癌は, 診断時年齢が若く, 早期癌が多く, 低分化癌が少ない傾向であった.
  • 丸岡 正幸, 西川 泰世, 宮内 武彦, 長山 忠雄
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1488-1492
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    骨転移を有する13例の腎細胞癌に天然型 interferon-α(IFN) の持続皮下注射による免疫療法を主体とし外科切除, 放射線併用などの集学的治療を実施しCRを含む長期生存を得たので報告する.
    IFN持続皮下注射投与方法は, 天然型IFN2,500万単位を蒸留水60mlに溶解した持続皮下注射 (0.5ml/hr) を1コースとし手術前に, 2コース行い, 手術後も毎週合計15コース行った. その後症例に応じて毎週か2週ごとに繰り返すのを原則とした. またIFN持続皮下注射した4例の血中濃度の推移を計測したところ注射開始から血中濃度は上昇を始め24時間後に平均血中濃度は40.5IU/mlとなり高値のまま注射終了後も24時間までは測定可能な血中濃度を維持し全体として6~8日間は測定可能で最高値は167IU/mlに達した.
    IFN施行例は外科切除や放射線併用を施行したが生存は9例あり内訳はCR生存2例, NC生存2例, PD生存5例, 死亡は4例で, 投与中止となった副作用はなかった. 5年生存率は53%と高く, IFN持続皮下注射と外科切除や放射線併用を施行する治療法法は腎細胞癌骨転移に対する有効な治療手段となると考えた.
  • 杉多 良文, 長久 裕史, 後藤 章暢, 前田 浩志, 梅津 敬一, 中野 康治
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1493-1496
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    BCG膀胱内注入療法後の結核性脊椎炎の本邦第1例目を報告する. 患者は71歳男性で膀胱癌の再発予防を目的にBCG80mg/週×8週の膀胱内注入療法を受けた. 治療中は膀胱刺激症状や発熱が生じ, 終了後2ヵ月で背部痛が出現した. 精査にて第7胸椎の膀胱癌の転移と診断し, 第7胸椎椎弓切除術を施行した. その際の病理診断にて結核性脊椎炎であることが判明し, 抗結核療法を開始しし, 第7胸椎前方固定術を行った. 現在膀胱癌の再発および結核感染は認めない. BCG膀胱内注入療法は表在性膀胱癌に対する再発予防効果および抗腫瘍効果に優れた治療法であるが, 重篤な合併症を生じる可能性もあるので, 積極的な抗結核療法を要する症例もある.
  • 木村 文宏, 渡邊 紳一郎, 清水 俊次, 中島 史雄, 早川 正道, 中村 宏
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1497-1500
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    27歳の男性. 肉眼的血尿及び右側腹部痛を主訴に来院し, IVPで右尿管結石と診断された. 結石は自然排石したが肉眼的血尿は持続し, 尿線が弱くなった. 前立腺は中等度に腫大し前立腺生検で前立腺横紋筋肉腫と診断された. 患者は骨盤内臓器全摘除術及びダカルバジンとアドリアマイシンの化学療法を受けた. 骨盤内臓器全摘除術後3年経過後, 胸部エックス線撮影でコインリージョンを指摘された. 検査の結果肺転移を伴った左精巣 embryonal cell carcinoma と診断され, 3コースのPVB療法を受けた. この時点で前回の前立腺腫瘍の診断は, 胎盤ALP染色が陽性だったので前立腺 seminoma と訂正された. この患者にはそれぞれ異なる前立腺及び左精巣の germinal cell tumor が異時性に発生した. 患者はPVB療法後20ヵ月現在腫瘍の再発を認めずに生存している.
  • 入江 啓, 李 漢栄, 門脇 和臣, 半田 誠
    1995 年 86 巻 9 号 p. 1501-1503
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    血友病Bの前立腺癌患者 (66歳) に対し, 根治的前立腺全摘除術を施行した. 術前の部分トロンボプラスチン時間は55.9秒, 血液凝固第IX因子活性は7%であった. 乾燥人血液凝固第IX因子複合体 (PCC) は, 術前より術後2週間目まで計43,000単位を投与した. 術後軽度のPTの延長, AT-IIIの低下, そしてFDPの増加を認めたが, 術中術後に異常出血は見られなかった.
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