人工臓器
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12 巻, 1 号
選択された号の論文の106件中51~100を表示しています
  • 笹嶋 唯博, 久保 良彦, 稲葉 雅史, 和泉 裕一, 境 普子, 鮫島 夏樹
    1983 年 12 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑犬の別出動脈及び種々の代用血管のComplianceを測定し以下の結果を得た。胸部大動脈0.749(平均)、腹部大動脈0.491、頸動脈0.356、Biograft®0.107、Double Velour Dacron 0.058、EPTFE 0.028、Wbven Dacron 0.021で代用血管と生体動脈のComplianceの隔りは極めて大きかつた。これを脈圧100mmHgに伴う半径の変化としてみると胸部大動脈(8mm)1.29mm、腹部大動脈0.63mm、頸動脈0.28mmなどであつたが、代用血管はBiograftでも0.16mmで他はいずれも生物物理的には剛管とみなされた。生体動脈のComplianceに近似した代用血管としてSiliconのComplianceを生体動脈に近づけた場合、降伏現象による耐圧性に問題を生じ単一材料構造では不可能と考えられた。しかし、微小粗糖構造を得るためサンドブラスト処理アルミ管鋳型方式によるgraft内面加工がイヌ移植実験から血液適合性向上のため有効であることが示された。
  • 寺松 孝
    1983 年 12 巻 1 号 p. 183
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 大越 隆文, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 小柳 仁
    1983 年 12 巻 1 号 p. 184-187
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    4症例の急性期解離性大動脈瘤I型, IIId型, I型(AR4度), IIIa型に対し, リング付きグラフトを用いた外科治療を行なった。全例男性であり, 年令は35歳から62歳,平均52歳であった。手術は発症直後から発症4ケ月半後までに施行された。術後6ケ月から15ケ月, 平均10ケ. 月のfollow-upを行なっているが, 全例生存している。リング付きグラフト挿入術に於ける大動脈遮断時間は50分から122分, 平均72分であったが, 122分を要した症例は左冠動脈口形成術と大動脈弁置換術を同時に施行したものであった。真腔の術前計測をangiogram, CT, UCGの各種方法で行なったが, 実際には挿入されたリング付きグラフトの径は, いずれも, 各種方法での計測値よりかなり小さなものであった。
  • 小出 司郎策, 稲村 俊一, 金 渕一雄, 鈴木 一郎, 福田 崇典, 小川 純一, 井上 宏司, 川田 志, 明正 津晃
    1983 年 12 巻 1 号 p. 188-190
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    下肢動脈血行再建法として, 主にGore-Texグラフトによるバイパス術を行なって来た。
    しかし, 膝関節以下へのバイパス例では, 膝関節屈曲位の動脈造影で, グラフトの限局性屈曲がみられるため, 退院後も膝関節の過度屈曲を避けるように生活指導してきた。
    本年3月より, グラフト外面がフッ素ポリマーのリングで捕強され, 外圧や屈曲に対しても変形・狭窄しないリング付きグラフトが開発され, 手に入るようになったので, 最近の膝関節以下の血行再建5例, 5肢に使用した。
    その結果, i) 5本のグラフトはすべて開存し, 現在の足首動脈圧比は0.9~1.1である。
    また, ii) リング無しグラフトと比べ, 術後症状や合併症に差はなく, 膝関節屈曲位での動脈造影でも. グラフトの屈曲がみられず, 関節部使用に適したグラフトと思われた。
  • プロスタサイクリンの効果
    浦山 博, 吉田 知弘, 辻口 大, 渡辺 洋宇, 岩 喬
    1983 年 12 巻 1 号 p. 191-194
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    プロスタサイクリン(PGI2)の細い人工血管に与える影響を検討した。プロスタサイクリンの投与量の増加と共に血圧は低下し, 160ng/kg/mではショック状態となった。大腿血流量は20ng/kg/mで最大値となり, コントロールの1.25倍であった。血小板凝集能は20ng/kg/mの投与でADP30μg凝集にて12%と著名に抑制された。プロスタサイクリン20ng/kg/m投与にてGore-Tex人工血管内面に付着する血小板数や凝血赤色血栓の減少を確認できた。血流量の増加と血小板凝集能抑制は早期血栓付着を防止する。また血小板より放出される平滑筋細胞増殖因子を少なくする事により, 仮性内膜の肥厚を防止する。プロスタサイクリンにより, 人工血管閉塞の原因である早期血栓付着と仮性内膜の肥厚を防止でき, 開存率を高め得る。
  • ヘパリン化親水性材料(H-PSD)の臨床応用
    島津 和彦, 青見 茂之, 平山 統一, 土田 弘毅, 黒沢 博身, 橋本 明政, 森 有一
    1983 年 12 巻 1 号 p. 195-198
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリン化親水性材料(H-PSD)をポリ塩化ビニル(PVC)製チューブにコーティングし, 大動脈外科用一時的体外バイパスチューブを開発し, 3例の臨床応用と実施した。1例はDe Bakey III型解離性大動脈瘤, 2例は大動脈縮窄症であった。バイパス時間は3例とも約60分であった。バイパス中のヘマトクリット値, 血小板数, フイブリノーゲン量には外科的出血によるものと考えられる若干の減少が認められたが, バイパスチューブに起因するものではなかった。一方, ACT値診よびリー・ホワイト時間は一定であった。これはバイパスチューブから溶出するヘパリン量は全血凝固時間に影響を与えない量であることを示している。遊離血栓形成の目安であるフイブリン分解物量(FDP)はバイパス中10倍以下(一)であった。臨床に使用したバイパスチューブの内面を走査電顕により観察した結果, 若干の白血球の付着は認められたがフイブリン網, 血小板の付着は認められなかった。これに対してコントロール試料として用いたTDMAC-Heparinチューブの場合には血小板, フイブリン網の付着が認められた。
  • 峯村 善保, 永岡 喜久夫, 中川 康次, 奥井 勝二
    1983 年 12 巻 1 号 p. 199-202
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    内径5mm以下の細小動脈移植用に, 豚の尿管をethy-ether及びglutaraldehydeで処理して作製したModified Ureter Graftを用いて. 雑種成犬9頭の大腿動脈に移植し. 長期の経過観察を行うとともに, Gore-texを対照として5頭に同様の実験を行って. 移植成績の比較をした。Modified Ureter GraftはGore-texに比して. 開存率(1年)において56%対0%, 閉塞例のうち早期血栓形成例で16例中3例18.8%対8例中6例75%. 感染率は18例中1例5.6%対10例中3例30%と明らかに秀れた成績を示した5組織学的にはModified Ureter Graftは. 線維の断裂や石灰化. 細胞浸潤等の著明な変性を示しておらず, また吻合部のパンヌスも増生が著明でなかったが. 4ケ月から8ケ月にかけてパンヌス肥厚による閉塞が見られ. この点はまだ検討の余地があると思われる。
  • 大内 博
    1983 年 12 巻 1 号 p. 203
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 安田 慶秀, 本間 浩樹, 佐久間 まこと, 渡辺 不二夫, 合田 俊宏, 樫村 暢一, 俣野 順, 松倉 裕美, 松波 己, 酒井 圭輔, ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 204-207
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    昭和50年以降、double velourダクロン管による血行再建症例は101例である。現時点における開存率は、腹部大動脈瘤で97%、大動脈、腸骨動脈閉塞性疾患90%であり、少くとも直径8mm以上、あるいは腸骨動脈より中枢の動脈に対する血行再建ではほぼ満足すべき成績が得られている。
    犬を用いて、直径3mm、長さ5cmのvelourダクロングラフト移植実験を行い、大動脈―肺動脈シャントで80%の開存成績が得られ、小口径代用血管応用への可能性が示された。
    velour型人工血管はその特異な表面の羽毛構造によって、内面では移植初期の血漿蛋白沈着、血栓内膜形成がうすく制限され、外面の線維組織形成、移植片内への細胞侵入も良好であり、速やかな器質化が行われる。現段階では直径8mm以上の動再建には第一選択グラフトと用いられ、更に、小口径動脈再建への応用にも期待がもてるものと思われる。
  • 氏家 久, 赤羽 紀武, 川口 良人, 梅沢 和正, 尾田 芳隆, 宮原 正, 桜井 健司
    1983 年 12 巻 1 号 p. 208-210
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工透析のためのシャント手術方法には多くの方法があるが, 現在では内シャントが主流をしめている。我々は原則的に利き腕反対側の手関節やや中枢寄りに, 橈骨動脈一橈側皮静脈側々吻合を第一選択と考え施行している。しかし症例によっては, 自己の静脈では透析に充分な血流を得られぬ細さであったり, 造設後, 頻回な穿刺により静脈瘤の形成や閉塞に至る例がある。この様な症例に対し我々は人工血管を使用してきたが, 新しく開発された4-6 taper型Gore Tex血管を用いたA-V fistula造設の経験を得た。その造設方法は, 4mm径を動脈側に, 6mm径を静脈側に吻合する。その結果吻合に無理が生じず, 良好なrun offとなり開存率の向上を示し, 悪条件下でのA-V fistula作成に有用であると思われた。
  • ―組紐人工血管の試作―
    古元 嘉昭, 河本 知二
    1983 年 12 巻 1 号 p. 211-214
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    編織人工血管植込み後の病態生理上, Biological porosityの維持が重要であり, 編織組織上, バイアス概念の導入によりporosityは維持され, 薄層内被が保たれる。バイアス概念に合致するものとして組紐人工血管を最も均一な管が作れる条件を採用して製作した。アルカリ減量処理により編織組織間隙を拡げてporosityを設定した。雑種成犬を用い胸腔内で, 左鎖骨下動脈より腹腔動脈まで12~18cm, 端々吻合でバイパスを行った。植込み時の緊張状態ではporosityは最少で洩血は抑制され, 植込みが長期にわたると, 人工血管の短縮に伴いporosityは増加する。植込み前の伸縮では3.5~5mmの口径の変化があり, porosityは最高8,000ml/cm2/min, 120mmHgにおよぶ。減量率65%のものでは, 対照人工血管と同等の開存率(40%)をえた。開存率の向上には, 生体血管と人工血管のコンプライアンスを近似させる方向に, 繊維の太さ, 編織法, および減量処理法の検討を加えて, Screening testを行う必要がある。
  • 松田 光彦, 伴 敏彦, 曽根田 純一, 平田 和男, 西村 和修, 花田 正治
    1983 年 12 巻 1 号 p. 215-216
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管による大血管置換術を行う際には, 抗凝固剤を用いない新鮮血液によるpreclottingを必要とする。しかし, 上行大動脈置換術や, 弁付ConduitによるRastelli手術の様に体外循環を併用する場合には, ヘパリンを使用するため, 体外循環時間が長くなるとpreclottingの効果が減少し, 人工血管壁からのoozingによる出血で難渋することがある。我々は, フィブリノーゲン, トロンビン, カルシウムを用いて人工血管を処理し, これを血液によるpreclottingの代用として基礎実験及び臨床使用を試みた。
  • 和泉 裕一, 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 稲葉 雅史, 西岡 洋, 鮫島 夏樹
    1983 年 12 巻 1 号 p. 217-220
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管が生体に移植された後におこる現象の中で、移植早期に人工血管内面に沈着するfibrinの量及び性状は、その人工血管の開存性と組織治癒に大きく影響する因子の1つとされている。fibrinの親水性、抗凝血性、生体適合性などに着目し、この特性を人工血管の処理に有効に利用する目的で、fibrin生成の至適条件と最も有効なfibrin coatingの方法を検討し、次の結果を得た。1) fibrinの抗凝血性とfibrin clot生成時間を考慮すると、thrombinの至適量はfibrinogen 20mgに対し6~10単位と考えられた。2) fibrinは20~30℃の温度条件下で安定している。3) fibrin生成に抗プラスミン剤の添加は有効であつた。4) fibrinogen溶液を人工血管の内腔から圧をかけて注入すれば内面は密にfibrin netで覆われる。5) fibrin coatingした人工血管の内面は血液適合性に優れていると考えられた。
  • 笹嶋 唯博, 久保 良彦, 和泉 裕一, 稲葉 雅史, 境 普子, 鮫島 夏樹
    1983 年 12 巻 1 号 p. 221-224
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Biograft移植2年以後の閉塞例3例(30ヵ月、39カ月及び5年)について、再手術時の所見及び剔出標本から閉塞原因及びBiograft長期移植後の変化について検討した。3例の閉塞は、いずれも中枢及び末梢吻合部のPannus Hyperplasiaが直接、間接の閉塞原因となつており、病変の進行によるものではなかつた。Biograftの長期移植後の変化として、Dacron Meshの器質化と膀帯静脈壁の圧縮所見が認められたが、その基本構造には著変をみとめなかつた。
  • 原田 英之, 数井 暉久, 星野 豊, 竹田 晴男, 佐々木 孝, 金子 正光, 小松 作蔵
    1983 年 12 巻 1 号 p. 225-228
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬を用いて、非体外循環下にApico-aortic bypassを施行し, 大動脈弁上部および弁下部狭窄を作成して, bypass開通前後における心機能, 冠血流量および心筋酸素消費量について比較検討した。また上行大動脈絞扼による求心性左室肥大犬においても同様の検索を行った。bypass開通により, 弁上部狭窄, 弁下部狭窄ともに, 左室圧, LVEDPおよび左室仕事量は有意に減少し, 左室負荷の軽減が明らかに認められた。冠血流量に関しては, bypass開通により弁上部狭窄では有意に減少し, 一方, 弁下部狭窄では有意に増加した。心筋酸素消費量は, bypass開通により弁上部狭窄では有意に低下し, 弁下部狭窄では有意の増加が認められた。なお肥大犬においては, 左室負荷は軽減し, 心筋酸素消費量も有意に低下した。
  • 田辺 達三
    1983 年 12 巻 1 号 p. 229
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 滝戸 直人, 藤正 巌, 井街 宏, 宮本 晃, 中島 正治, 満渕 邦彦, 本村 喜代二, 稲生 紀夫, 塚越 茂, 河野 明正, 小野 ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 230-233
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    バイパス型完全人工心臓に比べ完全置換型人工心臓では、術中、術後急性期で死亡するものが多く、術中、術後急性期の管理法に未解決な問題が残されていると考えられた。推定された問題点を解決する改良を行なった群と非改良群を比較評価することにより、改良の効果の評価および、解決すべき問題点の解析を行なった。血行動態、血液ガス動態、血中乳酸値を主に評価を行なったところ、浅麻酔、低体温、高浸透圧無血充填液使用体外循環、片側開胸、自己血肺血管内充填などの改良により問題がほぼ解決されることが明らかとなり、改良実施後の実験で生存成績が向上した。これにより、完全置換型人工心臓での術中、術後急性期の管理法が確立され、今後の長期生存の成績が向上するものと考えられる。
  • 岩谷 文夫, 星野 俊一, 本多 正知, 猪狩 次雄, 井上 仁, 安藤 正樹, 高野 光太郎, 阿部 俊文, 菅野 恵, 萩原 賢一, 丹 ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 234-236
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全置換型人工心臓の手術方法の簡便化, 手術時間の短縮, 出血量の減少を目的として, 従来のクイックコネクター付人工血管に更にリング付人工血管を接続, 大動脈及び肺動脈との吻合は, それぞれ無縫合法にて行なった。当教室における完全置換型人工心臓実験は現在までに25頭の仔牛について行われ19頭に国産トーマス型を応用し, 最近の4頭にリング付人工血管を応用した。最長生存日数は34日でこれはリング付人工血管を用いた例であった。リング付人工血管を使用した4頭の体外循環時間は, 従来の縫合法に比し, 約1時間の短縮が得られ, いずれも良好な術後回復を示した。剖検にてリング付人工血管を固定した動脈壁をみると, いずれも肉眼的には正常所見で, 血栓形成も認めなかった。組織学的にも中膜の弾性線維の圧縮像が認められるのみであり, 本法は極めて有用な方法と考えられた。
  • 中島 正治, 藤正 巌, 井街 宏, 宮本 晃, 滝戸 直人, 満渕 邦彦, 本村 喜代二, 稲生 紀夫, 塚越 茂, 渥美 和彦
    1983 年 12 巻 1 号 p. 237-240
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全人工心臓置換動物においてしばしば経験される中心静脈圧の上昇という現象についてその成因を静脈系の諸因子から正常動物との比較において検討した。山羊を用いて行った実験では, AH山羊では正常山羊に比較して術后, 中心静脈圧, 平均充満圧, 静脈還流抵抗などが上昇し, 静脈コンプライアンスの増大が観察されたが循環血液量には著しい差はみられなかった。これらのことからAH山羊では術后静脈系が過緊張状態にあることが推測された。また, 正常動物について中心静脈圧と心拍出量の関係をみると安静定常状態では両者の間にいわゆるスターリングの法則とは逆の相関々係が観察され中心静脈圧が心拍出量の示標とはなっていないことを示した。
    これらの結果は心拍出量のみによっては生体制御, 特に静脈系の制御が充分行い得ないことを示すものと考えられ, 今后その制御因子の検討の必要性が指摘された。
  • ―流線可視化による解析―
    仁田 新一, 田中 元直, 仁田 桂子, 武田 久尚, 丸山 満也, 大川井 宏明, 高橋 明則, 片平 美明, 香川 謙, 本郷 忠敬, ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 241-244
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓拍出量の測定は, その駆動制御上最も基本的なものであるが, とくに臨床応用を前提とした場合, 直接血液と接触しない非侵襲的な方法が切望される。われわれは, その方法として近年著るしい進歩を遂げつつある超音波ドプラー法を導入し, その有用性を報告した。今回は, 人工弁(Björk-Shiley)通過後の血流の乱れを可視化し, その乱れと本法による計測値につき解析した。その結果人工心臓流出弁通過後は, とくに小開口部での渦流がはげしく, 本法での計測値も過少評価したが, 8~10cmをすぎると層流状となり実測値と良い相関(r=0.96)となることがわかった。また人工心臓の流入弁の上流は, 層流状態であり, 本法と実測値はかなり良い相関を示した。超音波ドプラー法は, 人工心臓拍出量測定法として, 直接血液と接触せず, 安価であること, プローブの装着加工が容易であること, 経年変化が少いことなど臨床応用上極めて優れた方法であると結論された。
  • 橋本 成広, 伊藤 忠弘, 守屋 斗人, 柳沢 秀明, 石原 昭, 森田 真史, 馬淵 清資, 安久井 伸章, 笹田 直
    1983 年 12 巻 1 号 p. 245-248
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    静脈系へのカニューレーションにより血液を拍動流ポンプへと導く場合に、血管壁がカニューレの入口端面に吸い付くために、十分な流量を脱血できないことがある。この問題を解決するため、入口端面に血管壁が吸い付いても側面で十分な流入断面積を確保できるように、ステンレス鋼線によって構成される円筒カゴ状の入口形状をもつカニューレを試作した。試作したカニューレをピストン・ベローズ型人工心臓への流入側チューブとして用い、イヌを用いた両心100%バイパス実験を行って、従来の静脈カニューレ(PORTEX社製)を用いた場合と比較した。その結果、「挿入方向に左右されずに、側面開口部でもチューブ最小流路断面積以上の流路断面積を確保でき、体表面積1m2当り2.2l・min-1以上の流量を、拍動数と人工心室容積変化量の調節に従って拍出できる」という点で試作したカニューレを用いた場合の方が有利であることを確かめることができた。
  • 藤正 巌
    1983 年 12 巻 1 号 p. 249
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 宮本 晃, 藤正 巌, 井街 宏, 滝戸 直人, 中島 正治, 満渕 邦彦, 本村 喜代二, 稲生 紀夫, 塚越 茂, 渥美 和彦
    1983 年 12 巻 1 号 p. 250-253
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    サック型ポンプをヤギに装着し人工心臓ヤギを作成した。術後安定した期間(1~2週間)後に左心ポンプのみを遠心ポンプと交換し, 体循環を非拍動流循環として血行力学的なパラメーター測定と, 血液生化学的な検査を施行する事により, 拍動流と非拍動流循環の末梢に対する影響を比較検討した。主たる観察臓器は腎臓とした。非拍動流循環中の右心拍出量を拍動流と同様な値に保つと, 全身状態は悪化し起立摂食不可能となった。このため拍出量を拍動流循環時よりも約22%増加させた例では51時間の非拍動流循環が可能であり, 腎機能については尿量, クレアチニンクリアランス等においても正常範囲に保たれていた。しかし非動流循環中全末梢血管抵抗は徐々に増加し, 再び拍動流循環に戻すと減少した。腎血流については, 非拍動流循環時に減少するが, 心拍出量の増加につれて増加し, 約22%増加時に拍動流循環と同様な心拍出量に対する血流分布を示した。
  • S. TAKATANI, L. GOLDING, H. HARASAKI, I. YADA, S. KOIKE, R. YOZU, L. F ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 254-257
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体の重要臓器の機能を維持するには拍動流が必要であるか否かは議論の多い所である。著者らは、1979年から定常流ポンプ(MEDTRONIC社製)を用い、生体心は心室細動下に左右両心バイパス法による補助人工心臓の動物実験を行い、4頭の長期(30日以上)生存例を得ることができた。これら4頭は手術後の回復は順調で、全例最高1.5M. P. H. の運動負荷に耐えられ、また脳、肝および腎などの重要臓器の機能は全て正常に維持され、体血圧および肺動脈圧も正常範囲に維持でき、無拍動流による悪影響は全く認められなかった。ポンプ流量は左側ポンプで80~130ml/kg/minで、右側ポンプ流量に比べ10~20%の高値を示した。これは気管支動脈系などを介する左-右短絡の存在を意味し、人工心臓の流量決定などに際し興味深い所見である。そこで今回は、その血行動態および腎機能およびポンプ流量とその流量差について詳細るに告した。
  • 村上 泰治, 薦田 烈, 納所 実, 野村 修一, 前田 直後, 大森 義一, 三好 敬徳, 吉田 英生, 川上 俊爾, 名和 清人, 妹尾 ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 258-261
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    定常流を発生する遠心ポンプ(Bio-Pump)を用いて左心バイパス, 両心バイパスを行い心補助効果, 体循環補助効果を血行動態, 心筋代謝より検討し, 次の結論を得た。1) 左心バイパスはバイパス流量, 心筋酸素消費量, TTI減少率, LV Max. dp/dtより見て満足できる左心補助効果が得られた。不全心を用いてバイパスを行うとMax. dp/dtが減少し心拍出量の有意の増加がみられ体循環補助効果があった。2) 両心バイパスは左心補助効果と共に右室TTI減少率より見て右室の減圧効果が著明であった。不全心に両心バイパスを行うと右室の減圧効果が見られたが左心補助を示すパラメーターは得られなかった。心室細動にすると充分なバイパス流量が得られず心臓及び全身の循環を維持するのが困難であった。
  • 寺嶋 康夫, 阿久根 淳, 広瀬 豊, 小川 裕, 関 章, 宮崎 正治, 市村 格, 和田 英喜
    1983 年 12 巻 1 号 p. 262-265
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々はIABP施行中の大動脈内balloonの作動状態をmonitorするために, IABP MONITOR MODEL-1についでMODEL-2を開発した。この装置はECG, 大動脈圧, impedanceの3種の情報からIABP施行による大動脈圧, impedanceの変化分ΔP(t), ΔZB(t)を即座に演算することができる。そして実測可能な数値をinputすることによって, 大動脈compliance(1/K=C)及び大動脈内balloon容積VB(t)を経時的に作図できた。動物実験によりこのMONITORの有用性を確認できた。IABP施行中の血圧変化は, 大動脈compliance, 大動脈内balloonの容積, balloonの拡張に基づくrun-off増加分の3者によって決まり, 血圧変化からだけでは大動脈内balloonの作動状態はわからない。我々の開発したIABP MONITOR MODEL-2により初めて, IABP施行中の大動脈内balloonの作動状態を正確に把握できる。またこの装置は, 大動脈complianceの測定にも応用できる。
  • 納所 実, 薦田 烈, 吉田 英生, 野村 修一, 前場 隆志, 前田 直俊, 村上 泰治, 川上 俊爾, 名和 清人, 妹尾 嘉昌, 寺本 ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 266-269
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    エンドトキシンにより作製した心肺不全モデル犬に, IABP, 酸素加回路を有すV-Aバイパス, および両者の併用を行った。V-Aバイパスの送血部位は, 頸動脈または大腿動脈とし, 流量は正常時の心拍出量の60%とした。血行動態の面からは, IABPも効果的であったが, 最も効果的なものはIABPに, 頸動脈送血のV-Aバイパスを併用した群であり, V-Aバイパス単独群, IABPとの併用群共に左室仕事量を増加ささなかった。血液ガスの面からは, IABPにより心筋酸素摂取率の減少が認められたが, V-Aバイパス併用により更に減少しており, 又, 全身特に冠動脈への酸素加血の供給等を考えると, IABPは全く無効であり, V-Aバイパスが必要であった。血行動態, 血液ガスの両方からIABPと, 頸動脈送血のV-Aバイパス併用群が最も有効であった。
  • 香川 謙
    1983 年 12 巻 1 号 p. 270
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 葛西 浩美, 阿岸 鉄三, 早坂 勇太郎, 斉藤 茂樹, 金子 岩和, 江良 和雄, 太田 和夫, 中島 俊秀, 谷原 正夫
    1983 年 12 巻 1 号 p. 271-274
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    多孔質ガラス吸着剤は, ヒト血漿の体外循環を行なったとしてもγ-グロブリンに対する強い吸着性を発揮する。反面, アルブミンに対する吸着性が弱いことを示す。
    また, 多孔質ガラスのγ-グロブリンに対する吸着能力は, 灌流60分間前後で飽和に達する。このため, 吸着能力の回復を目的として生理食塩水による洗浄を試みた結果, 吸着能力の回復が実験結果より認められる。われわれは, 多孔質ガラスの吸着効率の増加が洗浄工程を加えることにより可能であることから, 2本の吸着剤カラムで吸着と洗浄を交互に行なわせるため, 連続血漿吸着再生装置を試作した。本装置の試作により, 多孔質ガラスの免疫吸着体として臨床への実用化が比較的容易に施行できるようになったと思われる。
  • M. UMEDA, M. ASAKAWA, T. TERADA, Y. TATSUMI, N. KASHIWARA, J. KAWAKITA ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 275-278
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    How polymyxin-B binds to and inactivates endotoxin was studied. Antibacterial property of 30μg of PX was inactivated by 500μg of ET (extracted from S. min R. 595), while the biological activity of 4μg of ET was inactivated completely by 40μg of PX. Then, PX was immobilized on CNBr activated Sepharose by covalent bond. (PX-Seph). 680μg of stabilized PX could remove 40μg of ET by adsorption. Such effect was found also in plasma. Affinity constant (Ka) in this binding showed a high value of 4.06 x 108.
  • 川口 博昌, 内間 高夫, 渡辺 俊文, 福井 清, 大坪 修
    1983 年 12 巻 1 号 p. 279-282
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    膜分離によって血漿交換を行う装置としては, 容量制御方式, 重量制御方式, 圧力制御方式と種々あるものの, そのいずれもが, 少なくとも2ケ以上の, 各々が独立して動作する血液ポンプが必要で, 血液回路および補液回路も複雑である。今回, 我々は, ローラーポンプの流量がポンプの入口圧力に依存することに着目し, 2連ポンプ1台で精度良く血漿交換を行う装置を考案試作した。装置は, 2連ポンプを, 脱血用および返血用として用い, 両ポンプの入口圧力を, オートクレンメによって同一に保つことにより, 等量の交換を行う。これにより, 血液および補液の回路が簡素になり, 操作性も向上した。2連ポンプは, ヘッド部を改良し従来のものに比べ, 小型軽量なものとした。従って, 装置自体もコンパクトになり, 持ち運びが容易である。また, 使用の際の専有スペースも小さい。この装置のin vitro試験, in vivo試験を行い良好な結果を得たので, 報告する。
  • 西 紀, 仲野 孝, 平野 尚, 橋本 武則, 松浦 寛, 松本 隆文
    1983 年 12 巻 1 号 p. 283-285
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回我々は, ステロイド療法及び免疫抑制剤併用療法にもかかわらず症状の増悪が見られたSLE患者3例にPlasmapheresis(以下P. P.)を試みた。2例の患者は, SLEによる腎不全にて透析療法を併用しており, 他の1例は腎障害は認められないが活動性SLE患者である。免疫複合体(以下CIC)陽性の患者は, P. P. により明らかな尿量の増加と血清クレアチニンの低下が認められ, 現在透析回数の減少を図っている。他の1例は, CIC陰性患者で, わずかの尿量の増加を認めたのみで透析離脱はできなかった。腎障害を認めなかった活動性SLE患者は, 顔面蝶形紅斑が減少しRaynaud現象は, 消失した。以上の結果より, 症例数はいまだ少ないが, SLE患者のP. P. の適応としてCIC陽性であり, 急性増悪した腎不全に有効と思われる。またステロイドの併用療法も必要であった。
  • 佐中 孜
    1983 年 12 巻 1 号 p. 286
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 東 仲宣, 延藤 卓生, 鈴木 満, 品川 茂, 松金 隆夫, 下邦 明, 鈴田 達男, 高橋 雅俊, 能勢 之彦
    1983 年 12 巻 1 号 p. 287-292
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Continuous cryofiltration (CCF) was performed a total of 821 sessions on 26 rheumatoid arthritis patients. The clinical effectiveness of CCF was defined according to the criteria described by Wallece et al. By these criteria, patients were evaluated as follows: Excellent 9 patients (34.6%), Good 4 patients (15.7%), Fair 7 patients (30.0%), Poor 5 patients (19.2%), Undefined 1 patients (3.8%). 20 out of 26 patients showed clinical improvement. A study of clinical response in relation to the number of treatment of CCF performed showed that favorable responses tended to be observed more than 25 sessions. In the examination of immunological data, no significant differences were observed in the course of CCF treatmentt for all patients. In cases of A-V fistula occlusion, the superficialization of brachial artery is recomended for blood access. We have not a fatal complication in the 821 sessions of CCF therapy. CCF is a safe, inexpensive and effective for the treatment of the rheumatoid arthritis therapy.
  • 雨宮 秀博, 佐藤 博司
    1983 年 12 巻 1 号 p. 293-296
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    種々の膠原病20例(SLE14, PSS4, MCTD1, DM1)にPlasma Exchange(PEx)を行なった。SLEでは発熱, 皮疹, 関節痛, 筋力低下, 漿膜炎などの速やかな改善が得られた。さらに, ループス腎炎による重度腎機能障害を有する8例中6例に腎機能の改善が認められたが, ネフローゼ症候群を呈する5例では尿蛋白排泄量に変化をみなかった。PEx有効例はIC陽性例に多く, ICの存在をPEx適応条件の1つにしてよいものと考えられた。PSS, MCTDでは指尖部難治性潰瘍を伴うRaynaud症状に対してPExを行ない, 潰瘍・疼痛の軽減, Raynaud症状出現頻度の低下が認められた。効果の認められた症例ではいずれも高r-Globulin血症, 血漿粘度の増加を有しており, これらの測定が良い指標になるものと思われた。PExを遠心分離法とDouble filtration plasmapheresis法にて行なったが, 両方法間には臨床的にも, 検査所見の上でも差はなく, 後者では補充液としてのAlbuminを前者の1/2以下に減らすことが可能であった。
  • 大竹 喜雄, 小高 通夫, 平澤 博之, 小林 弘忠, 織田 成人, 小林 進, 佐藤 博, 中島 燿子, 伊藤 道博
    1983 年 12 巻 1 号 p. 297-300
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Haemonetics Model 30を用いて24症例に対して計71回の血漿交換を施行した。そのうち術後高ビリルビン血症は13例で41回の血漿交換を施行した。術後高ビリルビン血症のうち肝切除後critical stageにおける高ビリルビン血症に対する血漿交換は有効であるが、術後multiple organ failure時の高ビリルビン血症に対しては血症交換はビリルビンの急激な増加を抑制するが救命には至らない。体重に対する血漿交換率とビリルビン値低下率の間に正の相関Cr=0.739)がある。体重に対する血漿交換率5%でビリルビン値低下率は50%であった。血漿交換の意識レベルの改善に及ぼす影響については、体重に対する血漿交換率が7%以下ではほとんど改善は認めなかった。高ビリルビン血症を伴った肝不全に対する血漿交換は病態によっては著効は認められず、単なるbilirubin removerにすぎない場合もある。血漿交換は大量の新鮮凍結血漿を用いるのでcost-benefit ratioから適応を十分考慮する必要がある。
  • 河野 博光, 矢島 啓二, 中西 幸造, 峠 哲哉, 服部 孝雄
    1983 年 12 巻 1 号 p. 301-304
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    担がん生体の血清中には, 病期の進行とともに増加する種々の免疫抑制物質が存在し, これが効果的に免疫化学療法を行う上での大きな問題点となっている。そこで我々は, この血清中の免疫抑制物質を除去する目的で血漿交換療法を導入し, 補充液として, 実験的に化学療法との相乗的な抗腫瘍性を認めた新鮮凍結血漿を用いて, その臨床効果, 免疫学的パラメーターの検討を行った。9例の進行がん患者に化学療法を併用しながら本法を施行し, 5例の症例に腫瘍の縮小を認めた。免疫学的パラメーターにおいては, 患者リンパ球PHA幼若化反応は改善し, 患者血清添加によるPHA反応の抑制率は減少した。又, 患者リンパ球のサプレッサー細胞活性は低下し, さらに患者血清によるサプレッサー細胞活性の誘導も低下した。本法により患者血清中の免疫抑制物質, サプレッサー細胞誘導に関与する因子を効果的に除去する可能性が示唆された。
  • 品川 茂, 東 仲宣, 鈴木 満, 延藤 卓生, 平木 場洋, 伊丹 文男, P. S. MALCHESKY, 能勢 之彦
    1983 年 12 巻 1 号 p. 305-310
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Cascad membrane technologyの進歩にともない高分子除去filterが数多く試作されている。今回、我々は、高分子filterが分離血漿の温度や膜孔および濾過方法を変えることにより、高分子物質の除去能がどのように影響されるかを検討し、以下のような結論を得た。
    1) 免疫グロブリンの除去性能の良い高分子filterはT. P. albuminをも又除去してしまう。
    2) 0.2μの孔径を有する高分子filterは4℃に冷却する必要がある。
    3) AS-08-08は、fiher内のT. M. Pを増加させるに従い除去能の低下を認めた。
    4) 0.1μ及び0.08μの孔径を有する高分子filterは15~25℃で使用する事が可能であるが30℃では不適当である。
    5) 0.2μの高分子filterはtwo way法を用い4℃以下で、0.1、0.08μのfilterはRecirculation法を用いると高い除去性能が得られる。
  • 山崎 善弥, 藤森 義蔵, 高浜 龍彦, 和田 達雄, 宮本 昭正, 風間 睦美, 吉沢 久嘉, 高橋 幸喜, 荻田 忠厚, 井上 昇, 山 ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 311-314
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    選択的に免疫病的因子(リウマチ因子, 免疫複合体など)を吸着する, 物理化学的アフィニティを用いた新しい免疫吸着材(I-02)を開発した。I-02はポリビニルアルコールゲルにトリプトフアンをリガンドとして固定化した白色, 多孔性, 直径74~210μの球型ゲルである。
    バッチ法による吸着性能テストでは, I-02は既存の免疫吸着材Protein A-Sepharose CL 4Bより, リウマチ因子および免疫複合体の吸着性能に優れていた。Ex Vivo I-02カラムへの血漿灌流実験において, フィブリノーゲンの減少以外, 凝固線溶系因子は殆ど変動せず, 血球, 血小板もほゞ一定し, 血液生化学的パラメータも著変なく正常範囲内にあり, 血小板減集能は不変であった。
    慢性関節リウマチ患者4症例に5回I-02血漿灌流の臨床応用を試み, 満足すべき成績が得られた。
  • 早坂 勇太郎, 水口 潤, 斎藤 茂樹, 新井 浩之, 佐中 孜, 高橋 公太, 東間 紘, 阿岸 鉄三, 太田 和夫
    1983 年 12 巻 1 号 p. 315-318
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    The purpose of plasmapheresis is to remove antigens, antibodies, immune complexes, complement and coagulation factors in the treatment of renal transplant rejection. However, unnecessary removal of immune regulatory factors may simultaneously occur and stimulate immune reaction to result in rebound after plasmapheresis.
    Suppressor and growth soluble factors (kinds of lymphokins), well known as regulators in immune responses. In vitro study demonstrates adsorbability of 65 materials to suppressor and growth soluble factors. Of these, Amberlite XAD-2 shows large capacity of adsorbability to growth soluble factors, but not plasma proteins. Adsorbability of Amberlite XAD-2 to growth soluble factors which is contained in suppressor soluble factors is confirmed by the experimental result that suppressive effect is sharply incresased from 19.2 to 59.0% after 10 minutes incubation and to 73.0% after 30 minutes incubation. Irradiation to lymphocytes by Ultraviolet (UV) ray has strong capacity of immune suppression, and we studied suppressive effect of UV with irradiation time, wave length and its intensity.
  • 井上 昇, 阿岸 鉄三
    1983 年 12 巻 1 号 p. 319
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 勇田 敏夫, 三田村 好矩
    1983 年 12 巻 1 号 p. 320-322
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究は人工臓器に使用されている金属材料の中で, 抗血栓性に優れた材料を開発するために, スパツタ蒸着法により作製されたチタン膜上に他の金属をスパツタ蒸着させ, 電気化学的効果と表面物理的な効果による抗血栓性に夢よぼす影響をin vitro法で評価した結果, つぎの事柄があきらかになつた。
    材料の標準電極電位が増大すると, 抗血栓性がよくなり, チタンを基本材料として, 各種金属を組合わせると, チタン単独の場合よh抗血栓性がよくなる。つぎに材料の濡れに関して抗血栓性との相関について調べたが, 材料との接触角と抗血栓性については相関が得られなかつた。したがって表面物理的な効果よりも電気化学的な効果が血栓形成に対してより支配的なことがあきらかになつた。
  • 今井 庸二, 渡辺 昭彦
    1983 年 12 巻 1 号 p. 323-326
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ガラスおよび組織培養用プラスチックシートを素材として, それにポリ(2ーヒドロキシエチルメタクリラート)・ボリメチルメタクリラート・(ポリスチレン)ー(エチレン/1ーブテン共重合体)ブロックポリマーをいろいろな厚さにコーティングした試料を作製した。これら試料につき, 水に対する接触角の測定, 上皮性細胞の培養, 血小板の粘着を検討した。接触角はコーティングの厚さによって影響を受け, その程度はポリマーの種類によって異っていた。400nm以上の厚さではs細胞はポリマー本来の性質に従った付着・増殖の挙動を示したが, 40nm以下では未処理の対照試料とほとんど同様となった。血小板との反応でも40nmでは下地の素材の影響が示唆された。従って, コーティングにょってポリマーの本来の性質を発揮させるためには400nm以上の厚さにすることが望ましいと思われる。
  • 笠井 俊二, 赤池 敏宏, 国元 武彦, 新田 和男, 宮田 暉夫
    1983 年 12 巻 1 号 p. 327-330
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    コラーゲンは生体親和性に優れており、一方、ムコ多糖は陰性荷電、高含水率を有するヒドロゲルの性質から抗血栓素材として期待される。そこで今回我々はコラーゲンームコ多糖からなるhybrid matrixをin vitroで作製し、血小板粘着抑制活性、生体親和性に優れた素材の開発を目ざした。コラーゲンービアルロン酸からなるmatrixは血小板の粘着を強く抑制し、またこのmatrix上では線維芽細胞の増殖が良好であった。これらの結果から、コラーゲンームコ多糖からなるhybrid matrixは生医学材料として有用であると思われる。
  • 野一色 泰晴
    1983 年 12 巻 1 号 p. 331-333
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    医用材料を新たに設計するにあたり, あるいはその評価を下す場合の目標として, 生体機能を無理なく引き出すことが優れた材料である, という考え方を示した。生体には幅広い順応性や修復性があるため, 特に毒性のある材料以外はなんとかその生体機能のお陰でカバーされ受け入れられてきたのが現状である。しかしながら, 生体はそれなりに無理を強いられているため, 長期間使用していたり, あるいはひとたび生体が衰弱して順応性の範囲が狭くなると, 人工臓器一生体間の関係が破綻し, 人工臓器は機能を発揮しなくなる。そこで医用材料側としては, 同じように生体に受け入れられるにしても, いかに無理なく受け入れられるかを考えてゆくことが生体機能を充分に発揮させるもととなると考えられる。
  • 大城 孟, 城戸 良和, 小川 嘉誉, 岡川 和弘, 神前 五郎, 高木 邦彦
    1983 年 12 巻 1 号 p. 334-337
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開胸術および開腹術施行症例に対し, 塩化ビニル製ウロキナーゼ固定化ドレーン計50本を留置し, 出血性滲出液の排液を試みたところ, 従来の無処理ドレーンに較べ明らかに抗血栓性を有し排液ドレーンとして有用であった。すなわち食道癌, 肺癌, 胸腺腫, 直腸癌などの症例に対し術後胸腔内, 腹腔内および後腹膜腔に排液ドレーンを6.1日間留置したところ血栓形成有りは8/50, うち内腔閉塞は僅か2/50に過ぎなかった。ただし血栓形成をみたドレーンの抜去後の残存活性率は最高53.0%, 最低2.4%と広範囲にわたり, ドレーン表面の線溶活性と血栓形成とは必ずしも相関しなかった。ウロキナーゼ固定化は抗血栓性医療材料を開発するための勝れた方法の1つであり, 今後さらに広い用途があるものと考える。
  • 今井 庸二
    1983 年 12 巻 1 号 p. 338-341
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ポリ(2ーヒドロキシエチルメタクリラート)ゲル, 架橋型ポリウレタン, ボリサルホン, ポリスチレンーエチレン/1ーブテン共重合体ブロックボリマーをラット, ハムスター, モルモットの皮下組織に埋植し, 組織反応が動物種によってどのように変化するかを検討した。組織反応の種差は, 材料周囲に形成される線維性被膜の厚さ, 腫瘍形成性に顕著に表われた。被膜の厚さは, 材料によって多少差はあるものの, ハムスター・モルモットでは0.1mm以下であるのに対し, ラットでは0.2mm以上となった。腫瘍形成性もラットで最も顕著となり, 8ヵ月以上生存した動物について比較すると, ラットでは43匹中15例に肉腫が発生したのに対し, ハムスターでは14匹中1例に, モルモットでは10匹中1例も発生しなかった。安全性を含めて特に埋植用材料の生体適合性を評価しようとする場合には, ハムスターやモルモットよりも, ラットを使用するのがよいように思われる。
  • 桜井 靖久, 中林 宣男
    1983 年 12 巻 1 号 p. 342
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 高橋 英嗣, 清水 滋, 山本 克之, 三上 智久
    1983 年 12 巻 1 号 p. 343-346
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ECMOの施行には, バイパス血流量の変化や静脈側血液性状の変化に関わらず人工肺流出側の血液ガス値を適正な値に保持する人工肺ガス交換制御が不可欠である。しかし, 単純なfeedback制御では系が不安定となり過剰あるいは過少な換気が起こり易い。ここでは速応性を保ちながらも安定な制御を行うためにfeedback制御とfeedforward制御を結合した新しい制御方式を考案した。制御を実現するために先ず使用する人工肺のガス交換特性をin vitroで同定した。次に, 制御法を計算機シミュレーションにより評価した。人工肺ガス交換制御は人工肺吹送ガスの酸素分圧, 炭酸ガス分圧を変化させ行ったが, そのために任意の組成を持った混合ガスを任意流量で供給できるマイコン内臓の混合ガス供給装置を試作した。制御法, 制御システムの評価を犬を用いたV-Aバイパス実験で行ったが, 本制御法は従来ゐfeedback法やfeedforward法に比べ安定性に優れ, その有効性が確認された。
  • 渡辺 新吉, 新田 澄郎, 大久田 和弘, 石木 幹人, 谷田 達男, 新谷 哲一, 岡田 信一郎, 小野 貞文, 斉藤 秀行, 小池 加保 ...
    1983 年 12 巻 1 号 p. 347-353
    発行日: 1983/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    呼吸不全に対する膜型肺補助循環の治療成績が低い原因の1つに, 肺を含め生体に及ぼす影響に関する知見の不足がある。そこで, 成犬に閉鎖回路を用いたV-Aバイパスによるシャント率0.3の補助循環を3時間(I群), 6時間(II群)及び28時間以上(III群)施行し, 生体肺に及ぼす影響を検討した。動脈血酸素分圧及び炭酸ガス分圧は補助循環の前後で3群共有意差なかった。空気吸収下肺胞動脈血酸素較差及び肺内シャント率はI群及びIII群の前後で差がなく, 純酸素呼吸下で肺胞動脈血酸素較差は両群共に軽度開大し, 肺内シャント率はIII群で軽度増加した。I群において, 静肺コンプライアンスは術後7日まで漸減, 以後回復傾向を示し, 一酸化炭素肺拡散能は術後全例低下し, 7日以後回復した。全群で, 平均肺動脈圧, 心拍出量及び全肺血管抵抗は前後で差がなかった。組織学的には軽度の動脈周囲浮腫を認めるのみであった。これらを考慮して臨床における適応を決めねばならない。
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