日本細菌学雑誌
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31 巻, 6 号
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  • 西田 尚紀
    1976 年 31 巻 6 号 p. 663-680
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1. Clostridiaの分類の困難さはその同定の難しさによるが, 何故困難かを解明することが分類学の踏み台となる。この困難は二つの主理由に基づく。その一つは, 従来から知られたものでclostridia分類の中に医学的立場-毒性に関係するものを重視する-に帰因するが, もう一つは, 私達が主張してきたことでclostridiaが胞子をつくる生理をもつ微生物群であるのに, sporulation生物学の重要さの認識が欠けていることによると思われる。
    2. 上認の二つは実は, 離れたものでなく, 胞子をつくる能力の変化に応じて, 毒素原性, 培養ならびに生化学性状, さらに免疫学性状が著しく変ることが判り, 有毒種の無毒株とは何かについて手がかりを与えた。又, 無毒株同定について色々の工夫について述べた。
    3. DNA-DNA homologyは分類学の上に新局面を調き, コンピューターによるnumerical taxonomyの助けを借りC. paraperfringens, C. absonumなどのSpec. nov.を確立するのみでなくC. plagammnC. perfringensのlecithinase-negative株としC. putrificumC. sporogmsのlipase-negative株と同定した。
    4. さらにまたC. botulimmとDNA-DNA-homology上一致するC. sporogenesの1群の性状を明らかにしつつ分類学の立場からtoxigenesis研究がC. botulinumとこれらのC. sporogenesの間の関係に一層解明の努力がなされることが望ましい。
  • 川口 陽一郎
    1976 年 31 巻 6 号 p. 681-694
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
  • 井内 史郎, 田中 修二
    1976 年 31 巻 6 号 p. 695-704
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    L-Arabinose isomerase はEscherichia coliなどでは五炭糖アラビノースの代謝の第1段階に関与する酵素として知られている. この酵素はVibrio parahaemolyticusにおいても見いだされ, 培地にアラビノースが存在する時にのみ特異的に誘導される一種の誘導酵素である. この酵素の誘導的合成は, 先に報告したこの菌の変異株, 2001株および2126株では著しく障害され, これらの変異株におけるこの酵素の比活性は野生株の約30%程度である. すでに報告したように, 2001株はその性状から判断しておそらくE. coliで知られているcrp変異株 (cyclic AMP receptor protein欠失株) に相当する変異株と考えられる. 一方, 2126株は表現型の上からはE. coliなどで分離されているcya変異株 (adenylate cyclase欠失株) に類似しているので, adenylate cyclaseに欠失があるかどうかは不明ながら, これに類する一種の“cyclic AMP-deficient mutant”であろうと考えられる. 2126株におけるL-arabinose isomerase合成は, 培地にcyclic AMPを添加することにより野生株と同等またはそれ以上に回復する. このような所見は, この菌におけるL-arabinose isomeraseの合成には少なくとも2つの調節要因, すなわち誘導因子 (inducer) およびcyclic AMPがともに必要であることを強く示唆している. このような調節様式は, E.coliなどで各種の分解代謝酵素に共通とされるものと基本的には同一であると考えられるので, その意味でこの酵素はV.parahaemolyticusで見いだされた“典型的”な分解代謝酵素の一例と見なすことができよう. なお, 野生株におけるこの酵素の合成は培地に加えられたグルコースおよびガラクトースによりそれぞれ90%および55%程度抑制される. ただし, E.coliなどで知られている事実とは異なり, この抑制は培地にcyclic AMPを添加してもほとんど解除されない. その理由は今のところ不明である.
  • 藤沢 麻子, 久保田 米夫, 田中 修二
    1976 年 31 巻 6 号 p. 705-712
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    Vibrio parahaemolyticus (腸炎ビブリオ) のphosphoenolpyruvate: sugar phosphotransferase system (PTS) に欠失のある一変異株1050株は, グルコース, トレハロース, マンニトール, ガラクトース, マルトース, アラビノース, リボース, グリセリン, およびピルビン酸を炭素源として利用できないのみならず, マンノースおよびコハク酸の利用も不完全ながら障害されているPleiotropic (多面発現的) な変異株である. ところが, このうちグルコースとトレハロースを除いた9種の炭素源の利用障害は, 培地にcyclic AMP (cyclic adenosine 3', 5'-monophosphate) を添加することにより解消されるので, このような炭素源についての利用障害とグルコースおよびトレハロースの利用障害とは互いに異なつた機構により生じていると考えられる. これに似た現象はEscherichia coli (大腸菌) のPTS変異株についても報告されている. 変異株1050に見られる各種炭素源の利用欠失は, この変異株よりspontaneous (自然) に生じた復帰変異株1050R株ではグルコースおよびトレハロースの利用欠失を含めてすべて正常に復帰する. また, この復帰変異株の粗抽出液中には野生株とほぼ同じ程度のPTS活性が証明される. 1050株より生じる自然復帰変異株 (spontaneous revertant) にはもう1つ別のタイプのものが存在し, その代表株は1050A株と名付けられた. 1050A株は元来ガラクトース利用の回復を指標にして分離されたが, その表現型はcyclic AMPを添加した時に見られる1050株の表現型に酷似し, グルコースとトレハロースの利用欠失のみが残存している. また, 1050A株の粗抽出液中にはmethyl-α-D-glucosideを基質として測定する限りPTS活性の回復は認められない. したがつて, 1050A株ではもとの変異株1050におけるPTS欠失とは無関係な独立の変異が生じ, その結果としてグルコースとトレハロースを除く9種の炭素源がcyclic AMPの添加がなくても正常に利用され得るようになつたものと推測される.
  • 安藤 芳明
    1976 年 31 巻 6 号 p. 713-717
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    Clostridim perfringens NCTC 8238株の芽胞におけるイオン性発芽とイオン交換性との関係を明らかにするため, 生芽胞 (N型) よりH, Ca, Kなどのイオン型芽胞を調製し, それらのイオンによる発芽性および形態などを比較検討した. H型を除いて他のイオン型はいずれもKC1またはCaCl2単独水溶液中で発芽を示すが, Ca2+はK+に対して発芽阻害的に作用した. これに反して, H型では発芽速度はきわめて遅いが, Ca2+はK+に対して発芽促進的に作用した. 芽胞の表面構造を走査電顕により観察した結果, とくにイオン種による相違は認められなかつた. さらに, 各イオン型芽胞についてX線微小分析 (点分析) を実施した結果, 非交換型Caはおもにcoreの部分に相当する芽胞中心部に分布し, 一方, 交換型CaはP, S, C1などとともに芽胞全体に分布することが判明した.
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