日本細菌学雑誌
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総説
  • 石川 文洋, 本間 道夫, 田邉 元三, 内橋 貴之
    2024 年 79 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    細胞内のタンパク質は生まれ(合成され),働いて,死んで(分解されて)いく。タンパク質の一生の中で,生まれることも重要であるが,どのように死んでいくかもまた等しく重要な生物の営みである。細胞外に分泌されるプロテアーゼは,外のタンパク質を分解することによって栄養物として取り込むために利用される。細胞内の不要になった,あるいは害になるようなタンパク質を分解するプロテアーゼも存在する。真核生物では,プロテアソームと呼ばれる巨大酵素複合体がそのタンパク質の分解を主に行う。原核生物である細菌も類似のシステムをもつ。細菌の細胞の中で,そのタンパク質の死に関与するATP依存的なプロテアーゼClpの複雑な分解系の制御と作動機構について,特に,ClpXPを中心に,また,細菌に対する抗生物質のターゲットとしての側面について解説したい。

  • 髙井 伸二, 水野 泰孝, 鈴木 康規, 佐々木 由香子, 角田 勤, 切替 照雄
    2024 年 79 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)は子馬に細菌性肺炎・腸炎を引き起こす細胞内寄生性のグラム陽性球桿菌で,獣医学領域ではよく知られているが,ヒトでは1968年の初発以来これまでに300を越える症例報告がある。その多くはHIV感染,臓器移植,腫瘍などの基礎疾患を持つが,健常人における感染症例も認められる。R. equiの毒力はプラスミドにコードされた毒力関連抗原(Virulence-associated protein antigens: Vap)に規定される。これまでに,宿主特異性を示す3種類の病原性プラスミド;馬と豚の病変部分離株から1991年と1995年に環状プラスミドpVAPAとpVAPBが,牛と山羊病変部分離株から2015年に第三の新規線状プラスミドpVAPNが発見された。そこで,著者らが1994年と2003年に報告したヒト由来株を再検査したところ,3種類の病原性プラスミドは既に1980–90年代の患者分離株に存在していた。馬のみならず,豚,牛,山羊などの家畜と飼育環境がヒトの本菌感染症における感染源として重要であり,新興人獣共通感染症であることが再確認された。本稿ではRhodococcus属菌によるヒトの感染症の概要と,最新の知見を解説する。

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