口腔衛生学会雑誌
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48 巻, 2 号
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原著
  • 磯部 豊
    1998 年 48 巻 2 号 p. 170-182
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    "Streptococcus milleri"はヒト粘膜部の常在細菌の1つであり,全身の化膿性病変の主要な原因菌の1つである。本研究では,口腔および身体各部の化膿病巣から分離された"S. milleri"の3菌種,すなわちS.anginosus, S.constellatusおよびS.intermediusを含む13菌種131株のビリダンスレンサ球菌のアナフィラキシー様反応惹起能と炎症性サイトカイン誘導能をin vivo系で調べた。ムラミルジペプチド前投与C3H/HeNマウスに各菌株の全菌体(500μg)を静脈注射したところ,"S.milleri"の3菌種では供試109株のうち106株がアナフィラキシー様反応を,その74株がマウスの急性死を惹き起こした。アナフィラキシー様反応の惹起能は3菌種の間では有意の差がみられなかったが,いずれも他の10レンサ菌種(22株中17株)に比べては高かった。S.anginosusとS.Constellatusの感染巣由来株は口腔由来株よりもアナフィラキシー様反応惹起能が高く,口腔由来株ではS.intermediusが他の2菌種よりもいずれの惹起能とも高い傾向がみられた。生残したマウスの血清中には,アナフィラキシー様反応の有無にかかわらず,TNF-α,IL-6およびIL-1活性が検出された。アナフィラキシー様反応惹起能とサイトカイン誘導レベルとの間には必ずしも相関は認められなかった。
  • 林田 秀明, 高木 興氏
    1998 年 48 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    Aclinobacillus actinomycetemcomitans 8菌株の染色体DNAを鋳型DNAとして,挿入配列IS Aalの読み枠を標的配列として作成したプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。増幅産物のサイズによって,3つの型に分けられた。本研究で標的配列として増幅を試みたIS Aalの読み枠領域は,多様性のあることが示唆された。
  • 尾崎 哲則, 安井 利一, 青山 旬, 長田 斉, 上條 英之, 高久 悟, 福田 雅臣, 丹羽 源男, 宮武 光吉, 中尾 俊一
    1998 年 48 巻 2 号 p. 188-200
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    全国の市区町村を対象とし,今後の地域歯科保健事業を推進していくための効率的な歯科保健サービスの供給システムについて検討することを目的として,母子歯科保健事業の実施状況を平成6年秋に調査し,自治体の類型別すなわち保健所政令市・特別区,それ以外の市ならびに町村に区分し,さらに人口規模別に再区分し,あわせて歯科衛生士の配置の有無により解析し検討を加えた。その結果,1歳6ヵ月児を対象とする歯科保健事業の実施率では,自治体の類型別にあまり差はみられなかったが,乳幼児歯科保健事業では,高いほうから順に政令市・特別区,町村,その他の市であった。また,妊産婦に対する歯科保健事業では,政令市・特別区が高い実施率であり,以下その他の市,町村の順であった。1歳6ヵ月児の母親に対する歯科保健事業は,全体として実施率は低いものの,政令市・特別区を除くと,人口規模の小さい自治体ほど高い傾向があった。母子歯科保健事業は,政令市・特別区において各事業ともに高い実施率を示したが,その他の市および町村においては,事業内容と人口規模により各事業の実施率に差を認めた。歯科衛生士の配置率については,人口規模の大きい自治体ほど高い傾向がみられ,さらに歯科衛生士の配置されている自治体ほど,歯科保健事業の実施率が高い傾向が示された。
  • 大橋 たみえ, 岩田 幸子, 廣瀬 晃子, 可児 徳子, 可児 瑞夫
    1998 年 48 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    NaF溶液およびNH_4F溶液の濃度の差によるエナメル質への作用メカニズムの違いを検索する目的で,intact enamelにフッ素濃度100ppm,および900ppmの各溶液を作用させた。エナメル質表面の形態観察は走査型電子顕微鏡(SEM),物質同定は電子線マイクロアナライザ(EPMA)による元素分析ならびに状態分析により行った。その結果,SEMにより両溶液群の900ppm作用のエナメル質表面に顆粒状物質の沈着が観察された。EPMAによる元素分析から,顆粒状物質はフッ素およびカルシウム濃度が高く,リン濃度が低いことが認められ,濃度比から考えてCaF_2であることが示唆された。顆粒状物質はNaF群よりNH_4F群のほうが径が大きく,フッ素濃度,カルシウム濃度も高く,NH_4F群のほうがCaF_2生成量が多いことが認められた。EPMAによるエナメル質の表面の状態分析では,両溶液群ともに100ppm作用でFA,900ppm作用ではフルオロアパタイト(FA)とCaF_2が確認された。状態分析から見積もったフッ素取り込みは,100ppm作用ではNaF群のほうが,900ppm作用ではNH_4F群のほうが高い値を示し,作用溶液および濃度により取り込みの傾向が異なることが認められた。以上のことから,フッ素濃度100ppmおよび900ppmのNaF溶液ならびにNH_4F溶液のエナメル質への作用メカニズムは異なることが確認された。また,NH_4Fはフッ化物洗口液あるいはフッ化物配合歯磨剤に応用して,NaFと同程度の効果が期待できることが示唆された。
  • 小野澤 裕彦, 松本 勝, 田中 裕希子, 安井 利一
    1998 年 48 巻 2 号 p. 209-216
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    う蝕予防における口腔内環境の重要性を明らかにする目的から,DMF歯数,D歯数,安静および刺激全唾液のpH,緩衝能,流出量,シュナイダーテスト・OHI,DI,およびCIについて調査した。本研究からわれわれは,以下の結果を得た。1)DMF歯数で分類された高う蝕経験者では,刺激全唾液のpHおよび流出量が有意に低かった。2)シュナイダーテストの判定結果はDMF歯数の増加と関連性を示した。3)シュナイダーテストの判定結果とOHIの結果は,低う蝕経験群で有意に低かった。4)高D歯数群では無D歯数群に比べて安静全唾液時のpHおよび緩衝能が有意に低かった。5)シュナイダーテスト,OHI,DI,およびCIの平均値はD歯数が上昇するとともに,増加した。6)主成分分析の結果からDMF歯数で示された高う蝕経験者では刺激全唾液の性質が特徴的であった。さらに,D歯数で示された高う蝕危険群は,安静唾液の性質と歯口清掃水準で特徴づけられた。以上の結果から,高う蝕危険群では安静全唾液の評価が重要であることが示唆された。
  • 染谷 美子, 稲葉 大輔, 米満 正美, Joop ARENDS
    1998 年 48 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    生理的な髄腔と根面の間の圧力格差により歯髄から根面へ髄腔内液が流れていることが観察されている。それゆえ,髄腔内圧は根面齲蝕病巣の形成に影響を及ぼす機構が推察されるが,その根面齲蝕の病因としての役割は明らかではない。本研究では,髄腔内圧と根面齲蝕の形成の関連を知るためin vitroでの検討を試みた。髄腔内圧を-560,-20,+20または±OmmHgに調節したヒト歯根試料を0.1M乳酸ゲル(pH=5)に2週間浸漬した(n=6/群)。ミネラル濃度(vol%)の分布は,マイクロラジオグラフ撮影後,画像定量法(CAV)およびパラメータ解析プログラム(MDA)を用いて評価した。-560,-20,+20,±OmmHg,それぞれにおける脱灰深度(l_d)は,73±19,54±15,33±10,57±13μm(mean±SD)で,一方,ミネラル喪失量(ΔZ)は順に1,953±569, 1,505±411, 918±227, 1,545±88 vol%・μmであった。コントロール群の±OmmHgと比較して,生理的レベルの+20mmHgでは脱灰深度とミネラル喪失量は約40%低く(p<0.05),また極端な減圧を行った-560mmHgでは約26%高い値を認めた。本研究の結果より髄腔内液が生理的な要因として根面病巣の形成に無視しえない影響を及ぼすことが示唆された。
  • 稲葉 大輔, 阿部 晶子, 米満 正美
    1998 年 48 巻 2 号 p. 222-229
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    Dentocult[○!R] SM Strip Mutans Test(SMT;Orion Diagnostica, Finland)の樹脂ストリップ上に形成された唾液由来mutans streptococciのコロニー数を定量的かつ標準化して評価するためのコンピュータによる客観判定法(Analytically Digitized SMT;ADS)を提示した。本法の基本的な手順は,(1)10%メチレンブルーによるコロニー染色,(2)パーソナルコンピュータに接続されたCCDカメラによるストリップ画像入力,(3)コロニー領域の画像抽出,(4)自動コロニー計数,から構成される。本研究ではADSの実用性を評価するため,ADSを6歳児とその母親からなる集団に適用した結果を報告した。手法の利点として,染色処理は視覚判定の信頼性をさらに向上させ,ADSはコロニーが密集した試料,あるいは通法では脱色状態の例に対してとくに有用であった。また,本法では600付近までのコロニー数を高い精度で再現性よく計測でき,一方,ADSの計測値からStrip Mutansのスコア(0〜3)をより正確に決定することが可能となる。このような特性から,ADSは齲蝕リスクが極度に高い値人のスクリーニングにも有用であり,Strip Mutans Testによる唾液中mutans streptococciレベルの定量的判定に有効な手段となりうるものと考えられた。
  • 松平 文朗, 北村 中也, 山田 秀則, 藤本 泉, 荒井 美香, 軽部 裕代, 柳田 顕郎
    1998 年 48 巻 2 号 p. 230-235
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    リンゴ未熟果実抽出物(ポリフェノール)の歯垢抑制効果をみるため,洗口液を使ったランダム化比較対照試験を行った。対象は19〜20歳の女性20入で,3日間の歯磨きを禁止し,4日目に歯垢の付着を検査した。歯垢付着はDebris Indexの変法で点数評価した。試験法は試験液と対照液を参加者にランダムに割り付け,試験参加者にも検査者にもマスク化した二重マスク法で,さらにクロスオーバー試験として比較検討した。その結果,対照液での洗口と比較して,試験液での洗口には歯垢付着の抑制効果を認めた(p<0.05)。
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