口腔衛生学会雑誌
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44 巻, 3 号
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  • 葭原 明弘, 小林 清吾, 佐久間 汐子, 安藤 雄一, 峯田 和彦, 堀井 欣一, 瀧口 徹
    1994 年 44 巻 3 号 p. 260-266
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化物洗口法と小窩裂溝填塞法 (シーラント) との複合応用において, シーラントの適応歯を4指標 (う蝕診断基準: CO, 咬合指数, 咬合面歯垢指数, 学年) を用いてスクリーニングし, シーラントを応用するプログラムの合理性を評価した。
    対象者は, 施設単位で4歳から標準的なフッ化物洗口法を行っている隣接した2村の2小学校の1~3年生計640名である。これら学童の第1大臼歯を対象に, 第1段階としてCO歯をスクリーニングし, 第2段階としてその他の上記3指標を用いて, ハイリスクCOとローリスクCOに分類した。一方の小学校児童では, ハイリスクCOにシーラントを応用し, ローリスクCOは6カ月間の経過観察とし, 他方の小学校児童では, ハイリスクCOもローリスクCOとともに6カ月間の経過観察とし, それぞれの歯面における6カ月後のう蝕進行状況を比較し相対危険度を求めた。結果は, CO歯面の健全歯面に対する相対危険度は18.8, ハイリスクCO歯面のローリスクCO歯面に対する相対危険度は1.9であった。また, シーラントの保持率は93.1%であり脱落歯面からのう蝕発生は見られなかった。
    健全歯面からのう蝕罹患リスクが非常に低いことから, 全ての小窩裂溝をシーラントの対象とせず, 適応歯をスクリーニングする方法は合理的である。適応歯としてCO歯を, さらにはハイリスクCO歯をスクリーニングすることは, 費用軽減の上からも有用であると考える。
  • 高徳 幸男, 小林 清吾, 佐久間 汐子, 鍛治山 徹, 安藤 雄一, 矢野 正敏, 堀井 欣一
    1994 年 44 巻 3 号 p. 267-276
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化物配合歯磨剤 (以下F歯磨剤) の生涯を通じた利用を推奨・啓発していく過程において, その利用状況および, F歯磨剤を含めた歯磨剤に対する住民の評価を把握する必要がある。本研究の目的は, 新潟市, 笹神村, 弥彦村の住民の口腔保健行動 (歯磨きの頻度, F歯磨剤の利用状況および, 歯磨剤の選択理由) を明らかにすることである。
    その主な結果は以下の通りである。
    1. 歯磨きの状況は, 新潟市群, 村部群とも全年齢層を通して, 「毎日する」と回答した者の割合が最も高かった。中学生以上の年齢層では, 「毎日する」と回答した者の割合が95%以上の値を示していた。
    2. 歯磨剤利用者に占めるF歯磨剤利用者の割合に地域差は認められなかった。
    3. 歯磨剤利用者に占めるF歯磨剤利用者の割合は, 年齢層が高くなるに従い利用率が低くなる傾向にあり, 80%以上から約40%程度まで推移した。
    4. 歯磨剤の選択理由として, 歯磨剤の薬効性に関連すると考えられる項目を挙げた者は歯磨剤利用者の45.9%であり, 36.8%の者は「特に理由はない」と回答していた。
    5. F歯磨剤利用者の内, 「フッ素が入っている」ことを選択理由とした者の割合は, 13.2%であり, また, 非F歯磨剤利用者の内, 1.6%の者が「フッ素が入っている」を選択理由としていた。
  • 塗布要領の再検討 第II報
    西田 晃子, 可児 瑞夫, 生田 俊治, 横井 憲二, 磯崎 篤則, 可児 徳子
    1994 年 44 巻 3 号 p. 277-285
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本研究はフッ化物歯面塗布術式のうち塗布時間および塗布後の洗口・飲食禁止時間について再検討を行うため, ヒトintact enamelを用いて基礎的研究を行った。塗布時間を検討するためにはエナメル片にAPF溶液 (pH3.6, 9,000ppmF-) を0, 1, 2, 3, 4, 6分間作用させ, それぞれの群についてフッ素取り込み量の測定, 酸抵抗性試験を行った。その結果, 1分作用群は常に4分作用群の80~90%程度のフッ素取り込み量を示し, 他の群は4分作用群よりフッ素取り込み量は多かった。酸抵抗性試験では脱灰時間が長くなると2分作用群と3・4分作用群のあいだに差が見られたが, 他のフッ化物作用群は4分作用群と同程度の酸抵抗性獲得が認められた。塗布後の洗口・飲食禁止時間の検討のためにはAPF4分作用エナメル片を用い, 8時間の人工唾液浸漬実験を行った。その結果, 人工唾液中に浸漬している時間が長いほど残留フッ素量は多かったが, 0分浸漬群においても対照群の2倍以上のフッ素が残留していた。以上のことから4分間の塗布時間短縮の可能性および30分間の洗口・飲食禁止時間短縮の可能性が示唆された。
  • 口腔内エナメル質脱灰装置に基づく評価
    飯島 洋一, 田口 円裕, 高木 興氏
    1994 年 44 巻 3 号 p. 286-293
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    食品の相対的な齲蝕誘発性を評価するために, ポジティブコントロールやネガティブコントロールとしてのショ糖やソルビトール溶液の使用が推奨されている。本研究の目的は, 口腔内エナメル質脱灰装置 (EDD) を用いて, これら糖質の脱灰程度におよぼす影響について決定することである。エナメル質薄切切片 (700~800μm) を有するEDDは, 第一大臼歯の頬面に装着された。被験者 (n=6) はエナメル質表面にプラークの蓄積を促進するためにブラッシングを行うことなくEDDを5日間装着し, 次に被験糖質 (10%ショ糖および10%ソルビトール溶液) を用いて3分間, 1日4回, 10日間の洗口を行った。装置は取り除かれた後, エナメル質薄切切片 (100μm) は, マイクロラジオグラムによって脱灰程度が評価された。
    10%ショ糖溶液の洗口後, 6例中の3例に脱灰像が認められ, 残り3例は健全エナメル質であった。10%ソルビトール溶液の洗口によって2例に脱灰像が, 残り4例は健全エナメル質であった。同一被験者内比較では, ショ糖溶液の脱灰程度におよぼす影響は, ソルビートル溶液に比較してより進行性の所見を示した。in situにおける脱灰像の特徴は, 同一切片内に健全部ならびに脱灰部領域が頻繁に観察されたことである。二種類の病変部, 表層下脱灰と表層軟化脱灰部が観察された。病変にかかわりなく, 脱灰程度を評価するためには, 画像処理に基づいた脱灰面積の評価が有用であることが示唆された。
  • 磯崎 篤則, 石曽根 典久, 横井 憲二, 可児 徳子, 可児 瑞夫
    1994 年 44 巻 3 号 p. 294-299
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    う蝕予防施策を検討する上で, フッ化物応用の現状を把握することは重要である。本研究は, フッ化物配合歯磨剤の利用状況を調査することを目的にアンケート調査を実施した。
    調査対象は, 3歳児105名, 小学校低学年児童413名, 高学年児童405名, 中学校生徒722名である。その結果, 調査対象のほとんどすべての者が毎日歯を磨いていた。歯磨剤使用者は, 3歳児50%, 小学校低学年児童75%, 高学年児童85%, 中学生95%を示し, そのうちフッ化物配合歯磨剤使用者率は3歳児では80%, 中学生でも50%を越えることが示された。しかし, フッ化物配合歯磨剤を使用している者の中でも, 歯磨剤にフッ化物が配合されているとの認識の低いことが認められた。
    フッ化物配合歯磨剤の応用が, う蝕抑制に影響する実用的方法であることは疑う余地がない。よって, 歯科保健指導にあたっては, 歯磨剤の有効性ならびにう蝕予防に対するフッ化物の効果について, 正しい知識を伝える必要のあることが強く示唆された。
  • 石曽根 典久, 磯崎 篤則, 横井 憲二, 可児 徳子, 可児 瑞夫
    1994 年 44 巻 3 号 p. 300-307
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    家庭における小児のフッ化物配合歯磨剤の使用率は, 保護者が使用する歯磨剤の種類に影響されることが考えられる。そこで, 3歳児105名, 小学校低学年児童260名, 同高学年児童231名とそれぞれの保護者を対象に, 家庭で使用されている歯磨剤の種類と親子での歯磨剤共用率, フッ化物配合歯磨剤の使用率を明らかにすることを目的に本研究を実施した。
    その結果, 親と歯磨剤を共用している小児は, 3歳児15%, 低学年児童33%, 高学年児童53%であった。
    小児のフッ化物配合歯磨剤使用率は, 親と異なる歯磨剤を使用している場合80%以上を示したが, 歯磨剤を親と共用した場合, 40~55%と低値を示した。
    フッ化物配合を意識して歯磨剤を使用している者は6~17%にすぎず, フッ化物配合歯磨剤使用者に限定した場合でも10~22%にすぎないことが明らかになった。
    今後, フッ化物配合歯磨剤の使用率を高めるために, より多くの歯磨剤にフッ化物が配合されることとともに, フッ素に関する正しい知識, 使用者の年齢とそれぞれの目的に合った歯磨剤の選択などを指導していく必要性が示唆された。
  • 日野出 大輔, 増田 かなめ, 吉岡 昌美, 林 祐行, 中村 亮
    1994 年 44 巻 3 号 p. 308-314
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    Porphyromonas gingivalis培養上清からアセトン分画, ゲル濾過, Biofine IEC-DEAEカラム及びSuperose 6カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー (HPLC) により, BApNA分解活性を有する可溶性プロテアーゼ (Pase-S) を分離・精製した。この酵素は抗Pase-S血清を用いたウエスタン・イムノブロッティングにおいて単一バンド (43kDa) として認められた。N-エチルマレイミド, ロイペプチン, アンチパイン, TLCKはPase-SのBApNA分解活性を強く阻害した。また, この酵素は未変性タイプIコラーゲンに対する分解活性は示さなかったが, タイプIVコラーゲン及び変性タイプIコラーゲンを分解した。Nα-Benzoyl-DL-lysine-pNAの分解活性及び赤血球凝集活性は認められなかった。以上の所見より, Pase-Sはclostripain様であり, 以前我々が精製した膜結合プロテアーゼであるPase-Bと類似した性状を示した。
  • II. フッ化物洗口による歯科医療費の軽減効果について
    安藤 雄一, 小林 清吾
    1994 年 44 巻 3 号 p. 315-328
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    著者らは, すでに1990年度の新潟県内各市町村の国民健康保険による歯科医療費のデータを用いて, 若年者の歯科医療費と永久歯う蝕有病状況に強い関連がみられたことを報告した。今回, 同一資料を用いて県内108市町村の5~19歳を対象に, フッ化物洗口の実施が歯科医療費に及ぼす影響について要因分析とコスト・ベネフィット分析を行った。その結果, フッ化物洗口の実施経験の長い市町村ほど一人あたり歯科医療費が少なくなる傾向にあり, 未実施群と比較した長期実施群の減少率は5~9歳が19.8%, 10~14歳が48.7%, 15~19歳が34.2%と, 10~14歳が最も高かった。10~14歳に対してパス解析を行った結果, 歯科医療費に最も大きな影響を与えていたのはフッ化物洗口の実施経験で, フッ化物洗口の長期実施によるDMFTの低減が受診率の低減に与えている影響が大きかった。歯科医師数は有意な要因ではなく, 若い年齢層の永久歯う蝕に対する歯科医療の供給量は疾患量をかなりカバーしていることが示唆された。コスト・ベネフィット分析により示された分析対象年齢の歯科医療費の軽減額は県全体で3億8040万円であった。県全体のフッ化物洗口に要するコストから求められたコスト・ベネフィット比は,フッ化物洗口の直接的経費 (一次コスト) のみの場合では16.08, 推進事業関係 (二次コスト) を含めた場合では10. 06と高く, フッ化物洗口の医療経済面における優れた有用性が示された。
  • 筒井 昭仁, 瀧口 徹, 斎藤 慎一, 田村 卓也, 八木 稔, 安藤 雄一, 岸 洋志, 小林 秀人, 矢野 正敏, 葭原 明弘, 渡辺 ...
    1994 年 44 巻 3 号 p. 329-341
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    著者らは, 日本における飲料水中フッ素濃度とエナメル斑の発現状況の関係を明らかにすることを目的に, 1978年以来, 東北, 関東, 甲信越地方で飲料水中フッ素濃度の測定を継続的に行ってきた。その結果, フッ素濃度の変動が少なかった7つの天然フッ素地域を確認した。水道給水系は26あり, フッ素濃度は0から1.4ppmの範囲に分布していた。フッ素濃度を確認してきた地域に生まれ, 当該の水道水を利用して育った小学5, 6年生1,081名を対象に, 1987年歯牙フッ素症検診を行った。歯牙フッ素症の分類にはDeanの基準を使用した。また, 非フッ素性白斑についてもDean基準の白濁部面積算定基準を準用して分類した。
    確認された歯牙フッ素症はいずれもmild以下の軽度のものであり, very mild以上のフッ素症歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間に有意な正の相関関係 (r=0.485, p<0.05) が認められた。また, 非フッ素性白斑歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間には有意な負の相関関係 (r=-0.429, p<0.05) が認められた。全エナメル斑発現状況と飲料水中フッ素濃度の間には特別な傾向は認められなかった (r=-0.129, ns)。CFIは0.04から0.30であり公衆衛生上問題のない地域と判定された。
    この度の研究結果は, わが国の歯牙フッ素症に関する疫学研究において不足しているとされていたデータ部分を補うものであり, わが国の至適フッ素濃度研究に寄与するものであると考察した。
  • 副島 隆
    1994 年 44 巻 3 号 p. 342-353
    発行日: 1994/07/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    う蝕予防のためのフッ化物の応用に際して使用すべき適正量の検討には, あらかじめ通常の生活の中でのフッ素摂取量を把握しておくことは意義がある。本研究では, 福岡市で日常的に入手できる14食品類の65食品目を測定の対象とした。
    食品試料中のフッ素含有量は, 前処理に乾式灰化法と微量拡散法, 測定法をイオン電極法でそれぞれ8回の繰り返し測定を行った。
    その結果, 測定値の範囲は, 穀類0.19~6.04μg/g, 種実類0.13μg/g, 芋類0.01~0.02μg/g, 豆類0.42~41.75μg/g, 果実類n. d. ~0.02μg/g, 野菜類n. d. ~0.94μg/g, 茸類0.01~0.75μg/g, 海草類0.06~0.58μg/g, 飲料類0.17~2.99μg/g, 魚介類n. d. ~2.87μg/g, 肉類0.04~0.21μg/g, 卵類n. d., 乳類0.35~1.52μg/gであった。
    これらの結果を基にして, 平成3年度の国民栄養調査にある食品群別摂取量を利用して成人1日あたりの食品からのフッ素摂取量を推定したところ, 全国平均は1.44mgおよび北九州ブロックは1.42mgであった。
  • 1994 年 44 巻 3 号 p. 369a
    発行日: 1994年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 44 巻 3 号 p. 369b
    発行日: 1994年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 44 巻 3 号 p. 369c
    発行日: 1994年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
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