頭頸部がん治療の予後を知るうえで,小野寺の予後推定栄養指数(O-PNI)は重要な指標であるが,O-PNIと栄養摂取器官である口腔内の状態との関連について検討したものはない.本研究の目的は,頭頸部がん患者におけるO-PNIと口腔内状態との関連を調べることである.嚥下機能への影響を考慮するため,がんの発生部位を口腔内と口腔外に分け,それぞれのO-PNIと口腔内状態との関連について比較検討した.
岡山大学病院にて頭頸部がんと診断を受けたがん治療開始前の150名を分析対象とした.がんの部位,進行度(ステージ),body mass index,飲酒経験,喫煙量,肝機能,腎機能,C反応性タンパク(CRP),口腔内指標を調べた.口腔内外それぞれのがんにおいて,O-PNIと各指標との重回帰分析を行い,O-PNIとの関連因子について検討した.
重回帰分析の結果,口腔がん患者においてはO-PNIと年齢(p=0.017),平均クリニカルアタッチメントレベル(p=0.049),CRP(p<0.001)との間に関連を認めた.一方,口腔がん以外の頭頸部がん患者においてはO-PNIとCRP(p=0.005)との間に関連を認めたが,口腔内指標との関連は認められなかった.
以上より,頭頸部がん患者におけるO-PNIを左右する因子として,口腔内のがん患者については歯周状態が関連しているのに対し,口腔外のがん患者については口腔内指標との関連はなかった.
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