本研究はNH
4F溶液のフッ化物洗口液および歯磨剤の応用を考えて,フッ素濃度100ppmおよび900ppmのNH
4F溶液をエナメル質に5分間作用させ,エナメル質への影響についてNaF溶液と比較検討した。ヒト永久歯エナメル質粉末を用い,溶液作用直後および1M KOH溶液洗浄後の試料についてフッ素,カルシウム,リン量の測定ならびに各試料の酸抵抗性試験を行った。また, intact enamelを用い,走査型電子顕微鏡(SEM)によるエナメル質表面の形態観察,電子線マイクロアナライザ(EPMA)による元素分析ならびに状態分析による反応生成物の同定を行った。その結果,100ppm作用ではNH
4F群はNaF群と比較して,エナメル質表面の反応生成物(CaF
2およびフルオロアパタイト)の生成傾向に差は認められず,フッ素取り込み量はNaF群より少ないことが認められた。しかし,酸抵抗性獲得効果はNaF群と同程度もしくはそれ以上であることが示された。900ppm作用では,NH
4F群はNaF群と比較して,CaF,を多量に生成し,フッ素取り込みおよび酸抵抗性獲得効果が高いことが示され, CaF
2が酸抵抗性獲得に影響していることが確認された。以上より, NH
4F溶液は作用時間5分において,900ppm作用ではNaF溶液より高い, 100ppm作用では同程度のう蝕抑制効果が期待でき,NH
4Fの洗口液および歯磨剤への応用の可能性が示唆された。
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