口腔衛生学会雑誌
Online ISSN : 2189-7379
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73 巻, 2 号
令和5年4月
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
原著
  • 瀬古 雄亮, 村井 浩紀, 松村 玲子, 平田 善彦, 久保庭 雅恵, 天野 敦雄
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 73 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

     クルクミンはウコンの根茎に含まれるポリフェノールであり,Porphyromonas gingivalisへの増殖抑制効果を有していることから歯周病予防を目的としたオーラルケア製品への応用が期待されている.歯周病原菌への増殖抑制効果の評価には,ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したクルクミン溶液が用いられていた.しかし,DMSOは安全性が低いため,オーラルケア製品には配合できない.本研究では,DMSOまたは2価アルコールに溶解したクルクミンを用いて,溶媒の違いが増殖抑制効果に及ぼす影響およびその要因を検証した.DMSOまたは2価アルコールに溶解したクルクミンを液体培地に添加し,P. gingivalisを嫌気培養した.溶液中のクルクミン溶解濃度は,溶液を遠心分離し,上清に含まれるクルクミン濃度をHPLCで定量した.0.1, 1%のDMSOに溶解したクルクミンによる増殖抑制率は対照の77.5, 79.1%であった.0.1, 1%のプロピレングリコール場合は40.8, 56.8%で,溶媒による違いがみられた.0.1, 1%のDMSO中には1.7, 2.5 µg/mL,0.1, 1, 5, 10%のプロピレングリコール中には0.4, 0.7, 2.2, 2.7 µg/mLのクルクミンが溶解していた.増殖抑制効果の差異は,クルクミンの溶解濃度が異なることが要因であると考えられた.10%の2価アルコールにおけるクルクミンの溶解濃度がDMSOと同等程度であったことから,この濃度においてP. gingivalisの増殖抑制効果を発揮すると想定される.2価アルコールは安全性が高いため,オーラルケア製品にクルクミンを配合する際の溶媒として有用である可能性が示された.

  • 宮野 貴士, 穴田 貴久, 古田 美智子, 山下 喜久
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 73 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

     2018年度より特定健康診査の標準的な質問票に咀嚼についての項目が追加された.厚生労働省が咀嚼機能の都道府県別データを公表しているが,その地域差の要因については調べられていない.本研究では地域相関研究で,40~50代の主観的咀嚼機能の地域差とその要因について男女別に検討した.咀嚼機能に関する質問項目で,歯や歯ぐき,かみ合わせなど気になる部分があり,かみにくいことがある・ほとんどかめないと回答した者を咀嚼機能低下とし,その割合を集計した.咀嚼機能が低下した者の割合の都道府県差は男女ともに認められ,40~44歳の女性において最も割合が大きい県で14.0%,最も小さい県で7.1%であり約2倍の違いがあった.次に,都道府県別の咀嚼機能低下者の割合と関連する要因を各官公庁の統計資料を用いて調査した.その結果,男性では,大学進学率が低く,離婚率が高く,12歳児DMFT指数が高く,心疾患の死亡率が高い都道府県ほど咀嚼機能低下の割合が高かった.女性では,大学進学率が低く,離婚率が高く,第二次産業従事者の割合が低く,一般診療所数の数が少なく,1歳6か月児および,3歳児う蝕有病者率が高い都道府県ほど咀嚼機能低下割合が高かった.これらの結果は,都道府県レベルでの社会経済状況や小児のう蝕経験状態が主観的咀嚼機能の地域差に関連することを示唆している.今回の地域相関研究の結果を基に,個人単位の研究により詳細を究明していく必要があると考える.

  • 増澤 美有, 葭原 明弘, 山賀 孝之
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 73 巻 2 号 p. 112-121
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,高齢者における口腔保健に関する信念や口腔保健行動と歯数との関連を明らかにすることである.1998年に新潟市に在住する70歳の者600名を対象とし,口腔診査と質問紙調査を実施した.口腔保健に関する信念や口腔保健行動を点数化した後,口腔保健に関する信念と行動の関連をロジスティック単回帰分析により,また歯数を目的変数として口腔保健に関する信念および行動の関連を共変量とともに単独あるいは両者を組み合わせた3つの順序ロジスティック回帰モデルを作成し最終評価した.

     ロジスティック単回帰分析では,口腔保健行動スコアは口腔保健に関する信念スコアと有意な関連を示した.また,順序ロジスティック回帰分析では,現在歯数と口腔保健行動が有意な関連がみられた.以上の結果から,口腔保健行動は口腔保健に関する信念と相互に関連しており,さらに,望ましい口腔保健行動が高齢期における歯の維持に寄与している可能性が示唆された.

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